富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六年ぶりの台湾

fookpaktsuen2010-10-23

陰暦九月十六日。霜降。台風は北に反れ香港は平穏。Z嬢と早上七時すぎ香港空港。夏のハノイ行きに続きドラゴン航空で台湾高雄行き。予めYクラスで席を指定してあつたのに「申し訳ありませんが満席でお席がご用意できませんでしたので」と職員は丁重にCクラスに。大いに結構。さすがにラウンジアクセスはなくPパスでラウンジ。離陸五分後に朝食のサーヴィス始まらないと、の一時間のフライト。ふと四半世紀前に中華航空で香港〜高雄でFクラスにアップグレードあり出発スタンバイの間にスープから夕食の提供始まつたこと思い出す。福茗堂の烏龍茶が供され炒麺も美味。機内食は好きじゃないが機内食として中華は悪しからず。六、七年前に台湾周遊に遊んだが高雄は十四、五年前だか故・羽左衛門の歌舞伎があり当時、外務省で友好協会の高雄のT所長に誘われ大橘の歌舞伎見て以来。高雄は風強いが曇天。MRT(地下鉄)で火車站。連絡よく台南行きの鈍行あり。昼過ぎ台南に着くと暴風雨。東口に出て目の前に遠東シャングリラホテルあるが大雨に駅舎から出るのも厭われ雨が弱まるを待つこと暫し。部屋の仕度に少しかゝるといふのでヘルスクラブで雨用に着替えさせてもらひ荷物預け市街へ。幸い雨も収る。お決まりで度小月で坦仔麺。お決まりで福記肉圓。松山松之助(1869-1949)設計の旧台南州庁舎は台南の裁判所だったが数年前に国立台湾文学館となつてをり参観。中華民国文学館ではないので清朝時代の漢文学から日本語、原住民の口承文学まで蒐集が見事。アルタイ語などの録音を聞けば「復興」だの「学校」だのの日本語混じり。戦後=民国時代は白先勇は当然として三毛の記録あり。三毛が亡くなり、もう二十年近く。あの物語の世界を思い出し不覚にも涙腺緩む。合成帆布行(公式)で布鞄購ふ。散歩しながらホテルに戻ると38階建て36階、バスルームだけで陋宅書室より広い60平米くらいの部屋に通される。スパ。早い晩にタクシーで小西門。矮仔成田蝦仁飯。國華路から西門市場を抜け赤崁樓。石春臼の坦仔麺。台南駅で明日の列車の切符購入してホテルに戻る。見事な、見事な十六夜の月を愛でる。
▼僕は自尊心ゆえに、この奴隷の境遇に慣れはじめていた。自らを否定否定しないためには、状況に対して頷いてやらなければならない。ねじ伏せられているのではなく、自分からすすんで行っているのだと自分に言い聞かせ、それを信じ込むのだ。いま思い返せば、それが宗教の発生ではないだろうか。そんな気がする。単純な言い方で気がひけるが、苛烈な現実の肯定が宗教だ。(萬月、舞踏会の夜)