富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

關子嶺温泉へ

fookpaktsuen2010-10-24

十月廿四日(日)台風一過の青空。旅先なのに朝六時には目ざめ七時には朝食も済んでしまふ。このホテル(台南シャングリラ)期待以上は施設もだが若いスタッフたちの見事な働きぶり。敬服。十時半過ぎに在来線特急・自強号で嘉義へ。新幹線の開通で近い将来は廃止が予定される在来線の優等列車。在来線は(戦前の駅舎や設備そのままの←これは歴史的に貴重な財産となつたが)従前にもまして整備は滞り1997年の韓国現代製の列車もかなり老朽化。だが座席の広さなど新幹線(普通車)に比べたら在来線の方がゆったりで車窓の風景も楽しい。嘉義に着き改札を出ずに不通となつてゐる阿里山鉄道のホーム、線路眺めたり弁当売りの売り声を生録したり……で台中から来られるU女史待つ。那覇のS女史は昨日、那覇から晝の飛行機で来台のはずが整備不良といふ理由でフライト取り消され晩のフライトで遅く桃園空港に着き台中へ来られた由。かなりの暑さのなか市街漫ろ歩き噴水鶏肉飯でお昼。麦酒で再会祝し乾杯。午後一時の嘉義客運の路線バスで白河を経て山間ひの關子嶺温泉。關子嶺温泉大旅社に投宿。戦前に出来た日本人相手の温泉旅館で最も伝統あるが噂どおり老朽化も著しい。宿泊費も安い(一泊二人一部屋で二千元)が「おい、これかよ」の水準。それでもこゝを選んだのは温泉の水質がやはり最も源泉に近いといふから。元湯であるこの温泉宿集落から散歩かねてかなりの坂を上り新しい温泉地へ。儷景温泉会館のスパに浴すが温泉の泥湯の質はやはり格段の差で元湯の方が上。ただ施設的にはこの高さにあるリゾート温泉は立派。どちらを選ぶか、は難しいところ。見事な夕暮れ。大旅社に戻り、あらためて湯に浸かる。元湯の集落にある阿興の店なる食堂に夕食。店頭に並ぶ高原野菜の新鮮さに惹かれて、だが正解。野菜はおかわりするほど美味。地鶏と川魚も大変美味い。S女史が持つて来てくれた泡盛は12年物の久米仙。いかにも酒好きの、焼酎で内臓が火傷してしまつたやうなこの食肆の主人にも泡盛をお振る舞ひするが50度超える地場の米酒愛飲する彼には35度の泡盛は「比較、薄」らしい。このくらゐの年齢のオジサン、オバサンだと日本語通じるのは当たり前で、とくに南は國語を解せず、で当然のやうにアタシなど日本語での会話だつたものだが、この主人も日本語は解せず、当たり前だが日本統治を12歳で知る方は、もう77歳とかなり年配なのだ。これは驚かぬが、驚いたのは、ホテルでも何処でもアタシが中国語を話すと十中八九相手は「中国語が上手いな、韓国人?」と。否、十中八九は間違ひで100%、ホテルのスタッフから食堂の娘まで「韓国?」と。それだけ日本のいはヾ国力が翳りを見せ韓国が台湾にとつて重要なパートナーとなつてゐるのだらう。結局、今回の台湾でたヾ一度も「日本人?」と尋ねられたかつたのはかなり驚き。旅館に戻りU女史ご持参のヴァランタインの30年を賞味。博多の明太子と板わさまで供されかなり満悦。

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