十一月十四日(金)朝から母と郵便局で満期の保険の解約手続きだの銀行だの諸事済ます。ほとんど使ふことのない携帯もソフトバンクにて解約。バタ/\するうちに昼に至る。午後、まづは新橋。汐留なんて昔は貨物驛が「潮騒と」なんて名の開発地に変貌。ロイヤルパーク汐留タワーに投宿。充分なシングルの客室。都営大江戸線で六本木。母より貰つた入場券で国立新美術館にて「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」なる作品展参観。青の時代から変遷を見せようとする。「本来、ピカソは非政治的な人間であつたが」と、さういふ解説文があり、それがずつと気になる。若いピカソに政治的主張がなかつただけ、で言葉として「非政治的」と片づけて良いのかしら。で「非政治的であつたがフランコ独裁の西班牙と第二次世界大戦でのナチスの……」と続けるのはあまりに紋切り型すぎないか。何年ぶりか、の六本木で青山ブックセンターなど流してカフェで吉田健一対談集成(講談社文庫)を読む。佐伯彰一との荷風論が面白い。夕方、鳥居坂の国際文化会館。面談一つ。早晩に新橋。オヤヂの殿堂ニュー新橋ビルのはつ花なる小料理屋にK氏に招かれ飲み食ひ。日本に戻ると「生牡蛎がこの値段?」と驚くばかり。築地が歩いて10分といへばさうだが。「やつぱり地下鉄は銀座線」で見附経由で新宿。御苑の近くを鳥渡流してから三丁目。末広亭隣のLe Parrainなる酒場。久が原のT君、築地のH君と再会。T君に連れられるまゝジュクの酒場を回遊すること深更に至る。景気づけにVeuve Cliequotまで開栓。御苑の緑を窓越しに主人(ピアノ)と客(チェロ)が合奏するやうな店があらうとは……。電車などとうに逸し自動車を雇ひ汐留に戻る。月が見事。
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