富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-08-05

八月五日。朝五時に目が覚め七時には朝食を済ませ……と連日の如し。Viet Nam Newsといふ英字紙は官製で正直言つてつまらない。夕方には部屋に昨晩、日経が届いてゐたのがせめてものお慰み。ちよつとハノイの市街から出てみませう、と東南10kmほどに位置する陶磁器の生産地、バチャンへ半日遊ぶことに。「地球の歩き方」にロンビエンバスターミナルから市バス47系統でも行けるがが「非常にわかりにくい」とあり。ロンビエンのバスターミナルらしきところまでバスで行つたが47番の乗り場が確かに何処かよくわからず(結果的に復路でわかつたのはバチャンから来たバスがこのバスターミナルらしき場所に到着するとそこで適当に客を拾つて出発する由)面倒なのでとにかくハノイ市街の東を北から南に、京の鴨川の如く流れるホン河にかかるチュオンズオン大橋を渡る系統のバスでとにかく川向かうに行つてからバチャンに向ふ道路に入れば間違ひなく47系統のバスに乗れるから、と判断。でホン河は鴨川の流れとは大違ひの荒川用水路や利根川や広州の珠江も比べ物にならぬ中国の揚子江に次ぐくらゐの豊かな水量で赤土を多く含み文字通り紅河。でこの大川を渡り47番に乗り換へ川向かうのロンビエン区で(つまりロンビエンバスターミナルといふのはロンビエン区方面に行くバスのターミナル、といふことでこのへんがやはり巴里のリヨン驛とかと一緒)Ai Moといふ町の裏道を抜けバチャンに行く道路まで散歩して47系統のバスでバチャンへ。紅河の広い河岸段丘の堤防上に走る、砂ぼこりの舞ふ道路。牛が草を食らひ馬車が資材を運ぶ。四十分ほどでバチャンの集落に到着。片道3,000ドン。日本にもかなり陶磁器の輸出あるさうで観光客相手に製造元販売も盛ん。観光案内の半日ツアーはUS$25〜とあり。路線バスなら往復で6千ドンで40円程度。本日は観光客は集落全体でも数へるほど。だが製造元で小皿などUS$2からでは正直言つて高いし旅先でわざはざ購ふほどの物に非ず。陶磁器屋の並ぶ通りの雑貨屋で缶ビールとジュースを買はうと思へばUS$2といふのでドンでは?と聞くと4万ドンだ、と店の女。ハイネケンは高くて25千ドンの由。馬鹿馬鹿しく「冗談ぢやない」と店を出るがハノイ市街に戻るとハイネケンは14千ドンでジュースなら5千ドン。観光地といふのはその倍値でふつかけても買ふ客がゐるから観光地値段といふのが成立するのは世界共通なのかしら。バチャンは結局、社会科見学に終はりハノイ市街に戻り旧市街の食堂で早めの昼食済ませホテルに戻る。昼過ぎまでホテルの中庭のプールのパラソル下に寛ぎ微睡む。買物に出かけるZ嬢と別行動で路線バスで昨日見逃したホーチミン博物館へ。ホーチミンは党内の権力闘争や粛清、クメールルージュや文革の如き極左路線に陥ることもなく20世紀の独立運動共産党指導者世界としては尊敬に値ひしよう。展示を見ても、その質素な生活ぶりはほんたうに私らの知る通り。で、そんな質素なホーチミンの生涯の展示をこの巨大な博物館がどう演出するのか、と思つてゐたらホーチミンついては1フロアのみで階上はベトナム統一と独立をテーマにした抽象的なアート展示なのだが、これが驚くほど嗜好が社会主義リアリズムのオンパレード。1930年代のソ連共産党指導下、といつた感じの社会主義芸術で今日ではそれは歴史的価値はあつても芸術としては鳥渡、といふものばかり。それがホーチミン博物館でこんなに盛んなまゝだとは。因みに掲載の画像は社会主義リアリズムのアートではなくバチャンの路地の壁(笑)。小雨。市街の社会見学続け昏刻にホテルに戻る。晩はホテルのLe Beaulieuなる仏蘭西料理屋に食す。食前にドライシェリー(Perez Barquero)を一杯注文すると供されたのは赤の甘口。鳥渡これは違ふんぢやないの?と給仕に質したが「間違ひございません」と。だつてドライ、つて酒リストにも書いてあるでせう。「ですが銘柄に間違ひがないので」と給仕も多少不安げ……でソムリエ兼任らしい給仕長現れ銘柄は確かにさうですがお客様のご指摘の通りドライは白で辛口なはずで……と暫くすると「申し訳ありません。バーカウンターで同銘柄の白が在庫切れしてをりまして何も知らずに赤の甘口を出しましたやうで」とシェリー酒を引つ込めたのは、まぁご愛嬌。アスパラガスの冷菜、マグロの冷菜、ラムの肋肉のローストはZ嬢とシェア。料理は美味。葡萄酒は「今月のワイン」に選ばれてゐたBordeaux Grande Reserve de Beau-Rivage(Cab Sau、05年)といふお手頃ボルドーハノイは昼からビールは当たり前、今日も安食堂でウォツカの瓶を空ける御仁ら見かけ大したものだと感心したがレストランの酒の値づけではビールとウイスキーなどスピリッツ系は手頃で葡萄酒はこれもUS$40と割高。ハノイなので一流の仏蘭西料理屋でもドレスコードはせいぜいTシヤツと短パン、サンダル穿きはご遠慮ください、程度なのは良いし客の中でジャケット着用なんて冷え性のアタシくらい。だが薄汚いランニングシャツ、短パンにビーチサンダルでレストランの中を平気で家族で横切れるア**カ人の感性(の無さ)は疑はざるを得ず。ア**カ人といへば食後に中庭のプールサイドに近い屋外のバーで食後の一杯と思つたらア**カ人の夫婦で娘をプールで泳がせておいて夫婦水入らずで一杯、は良いが水着姿でびちや/\の娘をバーに呼んでパイナップルシェイクだか飲ませて、また泳がせて、とこれも亦た困つたもの。この人たちは「場に相応、不相応」の区別が出来ぬらしゐ。で平気でベトナムイラクには介入するのだから。
▼久が原のT君より「波乃井のお宿の目の前にござんしよ、オペラ座が」とメールあり。歌劇好きのT君がウィーンのシュターツオーパーや巴里のオペラ座、ミラノのスカラ座は済ませて、一度でいひから行つてみたい小屋の一つが、恐らくブエノスアイレスのコロン劇場などもでしようが、このハノイの市民劇場ださうな。確かに宿泊のホテルのすぐ近く。残念ながらこの二晩公演は一切なく館内見学は常時不可。残念なところ。「海外に出るとイギリス人は公園と競馬場をつくり、フランス人はオペラ座と監獄をつくる」なんて言葉もあるさうで(「建築のハノイ」より)。今回は初めてのベトナムホーチミンからハノイを旅してみてホーチミンハノイのどちらが好み?といへばあたくしはハノイ

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/