五月十七日(土)天気予報は昼は摂氏卅度と告げるが朝晩の涼しさ廿数度で山に隣接の陋宅は窓開けれると心地よき冷風あり。昼にかけZ嬢と香港会議展覧中心にてHK Int'l Art Fair(ART HK 08)参観。香港国際芸術展と銘打つがLehman Brothersがスポンサーで折りからの現代アート「投資」ブームで香港に世界各地の現代美術扱ふ画廊百軒以上集め、の現代アート即売会。入場料もHK$150だかとお高めで「美術館ぢやございません」の姿勢、ゆゑに土曜昼でも閑か。個人的には倫敦のMarlborough画廊の、殊にスペインの画家Juan Genovésの絵画が素敵。草間彌生を扱ふ店子もいくつかあり、ふと昨年来港の大田ファインアーツのK嬢思ひ出してゐたら同画廊も出展してをりK嬢に再会。東京の現代アート界では著名なる同画廊の御主人・大田秀則氏を紹介いただき余も関はり今秋に香港で草間彌生さんのドキュメンタリー映画「みんな大好き」の上映決めたことお伝へす。湾仔のSubwayにサンドヰチ食す。所用済ませ晩に陋宅にて餃子茹で食す。香港はかつて湾仔碼頭餃子が一番だつたが大量生産で完全冷凍のうへ小振りになり味も落ち中国産の冷凍餃子の方が(日本では拒絶反応だらうが)美味。早寝。
▼Time Out誌の香港版刊行。無料情報誌氾濫の中でHK$18で「情報を買ふ」か、かなり微妙。香港の邦字紙老舗「香港ポスト」紙も今月より無料化。
▼香港証券取引所(HKEx)で殊に法令遵守につき歯に衣着せぬ発言続けしDavid Webb君が突如、理事の座から辞任。40代の元投資銀行家で殴り込みの形でHKExに加はり謂わば「鬼つ子」的存在。FT紙の記事曰くDavid君から見れば経験も知識も浅き役人が国家的背景で加はつたHKExの不健全さ。
▼四川大地震で李嘉誠さんの一筆HK$33.4m(4億円)の義援金には及ばぬが李嘉誠財閥の番頭のCanning Fok君もHK$5m(6500万円)で大したものだがSCMP紙のLai See曰く年収(HK$148m=19億円!)の3.4%に過ぎぬ、と。日本のサラリーマンMDでは考へられぬが。
▼孔在齊氏の「顧曲集」(信報に連載)で梅蘭芳について(続き)。日本の侵略で上海を逃れし梅蘭芳そして孔在齊氏家族も香港に逃れ幼き孔氏香港のスターフェリー上で梅蘭芳の尊顔に拝すばかりか挨拶していただく幸運。香港では当時、利舞台の戯院完成し梅蘭芳の舞台も期待されたが香港陥落で日本軍統治下で舞台に立たぬと梅蘭芳は「もう四旬で今さら白塗りは」と髭を蓄へ隠遁の日々。南京の傀儡政府の手配で上海の要人らは日本の郵船で「平和裡に」上海に戻らされ梅蘭芳もその一人。だが上海でも戦時中は一切舞台に立たぬ矜恃。戦後、晴れて舞台に戻つた梅蘭芳、七、八年のブランクを全く感じさせぬ艶つぽさ。戦時中ここまで徹底して舞台に立たぬ俳優は梅蘭芳只一人、と孔氏。
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