富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-01-16

一月十六日(水)朝六時すぎに届いた朝刊(蘋果日報)に香港時間午前一時から米国桑港で開催のApple社のMac WorldでSteve Jobb氏が紹介の新製品MacBook Airについて発表の様子、詳細な報道あり。事前にかなり準備した予定稿に現場からの写真などはめ込んだものだらうが三、四時間で紙面に載り、朝五時に印刷の版が一時間後には配達されるとは……。朝七時半に紅磡站。コンコースのファーストフードで朝食済ます。構内に雀鳥数羽。迷ひ込み住着いたのだらうが鳥インフルエンザとか慎重な時代に、よくぞ放置されてゐるもの。湾仔のグランドハイアットもロビー空間に雀がゐたがどうしたものか。私一人で高速直通特快で久々に一路、広州。車中、マクドナルドの臭いとゲーム機のピコピコがバスでもさうだが今更苛々しても仕方ないのだらうが不愉快。マスクと耳栓は必携のキョービ。広州着。驛舎も地下鉄も広告は北京オリンピック一色。香港のオクトパスのやうな「羊城通」カード購入して広州東站から地下鉄で珠江新城。二沙島まで散歩、といつても縮尺のない地図で見ると近いが実際に歩くと3kmくらひ(香港だと金鐘から銅鑼湾か)。広州には何度か来たが珠江の中洲、二沙島は初めて。広東美術館。日曜日にアート系タウン誌眺めてゐて知つたのが、この美術館での「美麗新世界 − 当代日本視覚文化」なる特別展(20日まで)。昨年初秋に北京の798大山子芸術區で同展開催が好評、と記事を読んだ記憶あり、広州に昨年末から来てゐたとは、で慌てて参観。展示会場5つと草間彌生さんのオブジェはお庭で、かなりの規模と内容。この美術館、展示室の作りが良く、二階までの吹き抜けの展示室などかなり上手に使つて見事な展示ぶり。どのアーティストの作品もかなり面白く2時間も見続ける。この広州で最も人気は押井守の映像作品 Tokyo Scanner である。確か六本木ヒルズ落成記念で森ビルが製作の東京俯瞰の空撮作品。たぶん小型機から(ヘリコプターぢやないから振動と揺れがない)かなり高度なハイビジョンでの撮影。空中から都庁のビルの窓際の人までくつきり。ただの空撮ぢやなくて押井守が徹底的にカッコいい映像作品にしてゐるのだが、中国有数の大都会である広州から東京を眺める面白さ。この特別展、平日の昼にそれなりにアートな人出。だけどみんなデジカメでの作品撮影会状態。それも携帯電話のデジカメなんかぢやくてニコンデジイチや高性能機で、そんなにアート作品撮影してどうするの?つて感じ。作品を看るより先から撮影、撮影、撮影。もつと作品と対峙しようよ、一期一会で此処だけ、の気合ひ入れて作品を看ようよ、光の具合、照明、空気がみんな一緒になつての此処だけのこの作品でせう、と思ふのだが。香港からわざはざ足を運んで正解、の特別展にかなり満足。四半世紀前の広州を知るアタシとしては感慨もあり。昼から午後は青空。美術館の横から路線バスで天河。一人だから「やつつけ」の昼食が地元中華ファーストフードで予想以上に美味。昊源撮影器材城。先週末の香港の中古カメラ蚤の市に出店の「阿楚影像」といふ中古カメラ屋の本店が此処。この店に限らずフロア全体、どの店も品薄で寂しいがライカやハツセルブラッド、ローレイなど扱ふ店少なからず。ContaxのGシリーズがかなりお買ひ得値段で何台か、レンズも並ぶ(当然、買はない=買へない、が)。デジカメ修理専門店もあり中学生くらゐの子が器用にコンパクトデジカメ分解して修理してをり、才能か見様見真似か、いづれにせよ大したもの。体育中心公園を横切り広州購書中心。CD売場に赴けばグラムフォンなど中国国内販売限定か、オリジナル名盤が廉価。アルゲリッチが弾くバッハのトッカータ BWV 911とイギリス組曲が30元。ミケランジェリのピアノで維納フィル(指揮:ジュリーニ)のベートーヴェン・ピアノ協奏曲1&3番が45元。香港価格の4掛くらひかしら。この2枚とキーシンのピアノで小澤征爾&ボストンのラフマニノフのピアノ協奏曲3番(15元、は広州でも安すぎ=ケースに傷あり)で、その3枚と、ゲオルグショルティ卿の指揮で当然シカゴ交響楽団マーラー交響曲全集10枚組(原盤は英国デッカレコードの倫敦レーベル、発売は広州の地場音楽会社)190元をお買上げ。香港ならCD2枚しか買へない金額。昔は中国国内で販売のクラシックCDなど安からう悪からうだつたがグラムフォンやEMIなど大手レーベルのオリジナル盤の充実、而も廉価、は驚いた。文芸書なども眺めてゐたら、もう夕方。地下鉄で広州東站に戻り5時の直通列車で香港に戻る。往復の車中、岡田暁生西洋音楽史中公新書を読む。西洋音楽史の本は多からうが作者の不思議な音楽と歴史への視線が秀逸。「バッハの置き場」も凄いしモーツァルトをオペラを褒めるくらゐでさらつと通り越して「絶対にまとまらないだらう」と誰もが思ふロマン派の料理の仕方は秀逸。マーラーシュトラウスストラヴィンスキーあたりの記述も實に面白い。京劇のDVDも眺めたが白先勇による青春版「牡丹亭」のDVDはさすがに出てをらぬ、か。今朝の信報に周凡天氏が北京で大好評のこの牡丹亭について詳細に解説。読めば読むほど垂涎。牡丹亭といへば久が原のT君に教へられたが大和屋が三月に南座昆劇「牡丹亭」(朝日)。五月に北京公演。京劇に女形で看板役者をらぬのだから大和屋も梅蘭芳の次はアタシよ、と張り切り、か。朝日の記事で大和屋の蘇州での稽古に立ち合ふのは梅派の女形・胡文閣だらうか、多分。帰宅して土曜晩のパーティからお持ち帰りの羊腩煲の残りでうどん煮て食す。
福田内閣支持率低迷、と云ふのは簡単。だが、どんなものか。例へば「あなたは小泉内閣を支持しますか?」や「安倍内閣を支持しますか?」と比べた場合「福田首相を支持しない、と言ふのは容易」といふコトを考慮すべきでは? 例へば、日暮里の居酒屋でテレビニュースを見ながら「バカヤロー」と、小泉不支持は声を上げるのに少数派としてかなり勇気が入り、安倍不支持=左翼非国民のレッテル、と思へば「俺は福田を不支持しないね」といつても熱烈な福田支持者がゐるはずもなく「なんとなく場の空気として」「さうだよね」で済んでしまひがち。強烈な支持者がゐないぶん非難も簡単、なのだ。

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富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/