五月廿九日(火)胃痛ひどく夜中に何度か目も覚める。香港はここ数日の雨で緑がぐっと繁る。いきなり夏。快楽亭ブラック師匠のブログで雑誌『演劇界』休刊と知る。版元のHPには今夏「100周年記念新創刊」のための三ヶ月休刊とあるが。香港でかつて定期購読していたのもあたくしくらい。『演劇界』は正直言って中途半端なスタンス。ヅカ雑誌ほどこてこてのファン誌でもなく競馬ブックのような情報誌でもなく地味な徹底した評論誌でもない。そういう意味では往年の『演藝画報』は見事。この『画報』の創刊が1907年で、それで『演劇界』が創刊100周年と宣うのだが……。あたしは当然『画報』オンタイムで読んではおらぬが松竹本社にある図書館に20年くらい前に暇を持て余し通ってざっと読み通したことがある。当時の役者のグラビア写真を見続けたおかげで、九代目團十郎、十六代目(羽左衛門)、弁慶役者の七代目幸四郎、五世歌右衛門、勘弥、二代目左團次……といった花形役者の姿が今でも浮かんでくる。芝居評も遠慮がなく、それも著名な評論家ばかりか、人形町の商家の旦那が芝居好きで評論までしてしまう。今のようにネットなどで演劇情報が流れる時代でなく、この『画報』一冊で前月の各座の芝居への痛烈なる批評、今月の芝居や役者の紹介、今後の芝居日程などが見事に収まり、見ていてほんと楽しい雑誌なのだった。であるから歌舞伎座にかかった芝居、役者へヨイショはできるが評論など能わぬ『演劇界』が『影藝画報』を前身といい百周年ということに戸惑いを覚えるのだ。早晩にジム。一時間の筋力運動。筋力運動などしているほうが胃痛など気にならず。帰宅。禁酒二日目。炊き込みご飯。「のだめ」のテレビドラマ続き(第6話?)見る。酒に酔っておらずやけにアタマが冴えており、ふと文春文庫の『民族の世界地図』という新書が途中で読み残しになっていたのに気づき読了。21世紀研究会という9名の専門家による共著だが、あらためて読むと民族問題や国際紛争などじつに客観的な立場で分析しており手軽にリファレンス本とできる内容であった。
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