富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-05-19

五月十九日(土)午後遅く昨晩にも勝るとも劣らぬ豪雨。黄色雲警報となりぬ。早晩に尖沙咀にてZ嬢と待ち合せ。印度料理でも食そうかという話となり重慶大廈に入り十五年ぶりかしら(とはっきり覚えるのは月刊誌『香港通信』の編集者U嬢の取材での食事に誘われたから、で)E座のKhyber Pass Mess Club(7E??王)訪れる……とE座の昇降機に並ぶ地場の若者の数にイヤな予感したが「なんじゃこの人ごみは〜っ」というほど盛況。午後6時すぎで、である。不自然に二十代の若者多いのは何か雑誌に紹介されたからかしら。かつては重慶大廈というだけで二の足踏む人多かりしが今では物騒な事件もなくアミューズメントパークの如し……といいつつ食後、狭い昇降機が何度か満員なので裏の階段から脱出図ると階段にはちょっと危ない人も臥せっていたりし裏口出るとかなり汚穢な世界。でKhyber Pass Mess Clubだが「並んでまでカレー喰う気もせむはな」であったが店員に「こっちもあるから」と隣室に通されると此処にもほぼ満席の客だがぎりぎり最後で二人卓あり。いきなりVIPメンバーカード登録させられ何かと思えば1割引き、とあるが、よーは拡張部分だろうか、レストランとしての営業許可取れておらぬので会員制ということで当局の規制掻潜るための客のメンバー化かしら。いずれにせよ七、八十人の客が午後6時くらいに一気に入り厨房が料理に追いつくはずもなし。あたしらはサモサとカレーくらいだったので後続のはずがかなり早めにカレー供され助かったが焼き物系の料理頼んで後からカレーの客はかなり待たされた模様。店の入口にはさらに数十人の客。恐ろし哉。で今晩は香港フィルのコンサート。香港フィルはおそらくEdo de Waartが芸術監督兼総指揮者に就任直後の2004年以来かも知れぬ。今晩は指揮者はアイスランド交響楽団の総指揮者務めるRumon Gambaなる人が振りヰリアムテル序曲から始まる。数年前から比べると見違えるように香港フィルの質は向上している(とくに弦楽)。で今晩は“Cello World”と題し豪州出身の呉沛祺(Pei-jee Ng)と呉沛軒(Pei-sian Ng)という若い兄弟のチェリスト二人のサイト)招く。写真によれば前者が当世風のロン毛のPei-jee君で、後者が当世風の短髪のPei-sian君。パンフレット見るとお互い1984年生まれ、とあるから双子かしら。で、最初に出てきた長髪であるからPei-jee Ng君がチャイコフスキーのPezzo Capriccioso(カプリッチョ風小品)を弾く。で次に同じチャイコフスキーで「ロココの主題による変奏曲」なのだが舞台に出てきたのは、やはり似たような長髪で多少染色しているがほとんど「見分けがつかない」一卵性双生児。だが、テクニック的にはこのロココの主題による変奏曲の弾き手のほうがほんの少し上に聴こえ、パンフレットにある二人の経歴(といっても全く一緒にアデレードでチェロを学び始め英国に留学して同じ師匠らに師事なのだが)比べるとPei-jee君のほうがコンテストなど少し評価高く、このロココの主題を弾くこちらがPai-jee君なのか、と思う。いずれにせよ双子のチェリストでお互いそれなりにソリストとしての技量があれば面白いには違いない。休憩はさみコープランドの『アパラチアの春』は1944年のバレエ音楽。日本が本土空襲に逃げ惑う最中にこんなバレエ上演していると思うと日本が戦争に勝てたはずもない。今晩の目玉はこの双子のチェリストがKalevi Aho(1949−)というフィンランドの作曲家の「2台のチェロとオーケストラのための協奏曲」を弾いてみせた。このカレヴィ=アホという作曲家の曲ぢたい初めて、で評しようもないが、この二人がさすが息の合ったところを見せ、また、曲中に何度も登場する対立するフレーズの葛藤が面白い曲であるし二人が上手くこなす。この曲が2003年の作品とあとで知ると、まるでこの双子のために作られた曲のようにすら思える。この双子のチェリストは七月は豪州縦断の維納少年合唱団の如き強行軍で16都市での公演。まだ学徒の身なれば次なるご予定は思いっきり飛んで年末にフィンランドにてOulu Sinfoniaとの共演というのは当然、Kalevi Ahoの絡みなのであろう。
▼四月に亡くなった?如心の遺産相続人と?如心認めた遺書に名のあった、?如心とは「赤の他人」であるはずの謎の風水師・陳振聰君、この登場以来ずっと行方くらましていたが昨日、突然、中環のFour Seasons Hotelで弁護士と密会の由(といいつつ有名ホテルのラウンジとは明らかに、わざと、か)。でこの陳振聰が白花油の御曹司(といってももういい年だが)で「歌う貴公子」と人気の顔福偉と瓜二つなのが可笑しいが、この和興白花油薬廠有限公司といえば、たかだかメンソールオイルの製造販売で(ちょうど今日の信報の報道によれば)昨年の売上げは前年比4%増で1億ドル(15億円)。で何が「やっぱりたかだか薄荷油」なのは純利が4.2千万ドル。トヨタ自動車が24兆円の売上げで利益(税前)で2.4兆円で、売上総利率は1割。白花油の4割は、商社も顔負けだろうし暴利貪ることでは電通なみか、と思ったが電通も売上総利率は16.6%で白花油の足下にも及ばず。で白花油、驚くなかれ、というか所詮メンソールオイルだからな、といえばその通りだが従業員数はわずか103人。でこの売上げとは優良企業中の優良企業……ただし顔福偉は可笑しい。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/