富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月廿一日(木)朝日新聞に「自民党の新総裁になった安倍氏が国会で首相指名受けるまで小泉首相と安倍総裁の動静を両方掲載します」とあり。唖然。「もしも」自民党の安倍不支持にまわった議員総数三分の一が「まさか」で民主党ら野党と結託し福田首相、小沢副首相、加藤紘一外相といった布陣で反安倍大連合となり共産党までが福田首班にまわり「与党であること」が信条の公明党まで加わり安倍首相が誕生しなかった場合、朝日新聞は「安倍氏が国会で首相指名受けるまで」未来永劫ずっと安倍総裁の動静掲載するのかしら。まさに浅野史郎氏の指摘する「与党ボケ」。朝日新聞もすっかりこの<國軆>がからだに染み込んでいるらしい。本日が「小泉内閣メールマガジン」最終号の由。小泉三世曰く「話し合ったり、相談したり、専門家の知恵を借りたりすることは必要ですが、重要な決断は一人でしなければなりません。時には、友情や好みを捨てて非情にならなければならないときもあります」と。国家の運命左右する重要な決断をこの人が一人でしていたと思うと今更ながら恐怖覚ゆ。「24時間公人として、何かあったらいつでもすぐに対応できるように、5年間精一杯努力してきた」のだそうだからプレスリーの真似に興じている時もモンゴルの砂漠の中でも危機管理の精神であったのか。「徳のある人は才能がない、才能ある者は徳がない、といわれますが、私は自分では気の弱い普通の常識人だと思っています」と宣われ、普通の常識人?と一瞬思ったがある面では当世の日本の「非常識であるからに普通の人」の象徴なのかもしれぬ。本当に、あれだけ危ない橋を渡りながら「いつも何かに守られている、運がいいな」の五年であったことだろう。首相退任の短歌は
ありがとう 支えてくれて ありがとう 激励 協力 只々感謝
だそうな。大学出たての新任教員じゃあるまいし……言葉もなし。宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」から
小泉の大和心を人問はばブッシュに媚びる山桜花
とでも贈ろうか。本日諸事忙殺され晩に至る。夕餉の機会すら逸す。湾仔新鴻基中心の星巴珈琲に寄り珈琲一杯喫しチョコ菓子流し込み遅晩に至る。深更本日の新聞数紙捲り乍らBowemoreのモルトウヰスキー飲み柿の種にて空腹満たす。
▼泰国首相タクシン失脚させる政変につき朝日新聞は「タイ投資に冷や水」と見出しでトヨタ日産自動車など「一部工場が停止」と伝える。が、よく記事読めばトヨタは「20日は日中は通常通り工場を操業したが、夜間は停止」で21日は未定、で本田は20日の日中の操業中止で夜間は通常に戻る……とその程度。紐育にて国連総会参加のところ国内の政変で首相の座を追われしタクシン君、タイ航空のチャーター機にて倫敦に飛び倫敦空港からは“THAI 1”というナンバーのベンツ高級車で3.2億バーツ(約10億円)の自邸に向う。この豪邸に普段住うは倫敦に留学中のタクシンの娘。自邸もありながらDorchester Hotelに滞在という噂も。タイの銀行に預ける資産だけでも730億バーツ(2,000億円以上)でバミューダなどにさらに海外信託の財もあり。通信バブルで巨額の財産築き政界に進出とはいえ警察官僚出身でわずか二十年でここまで財産築ける世の中尋常でなし。信報社説曰く、群衆が市街での座り込みなどで元首の失脚求めねばならぬ台湾と同じく、タクシンの政財界でのワンマンぶりこそあれ形の上では「民選」の首相が軍事クーデターで追われることの政治の脆さ。この社説に興味深き話あり。今回のタイのクーデターに米国が「状況を見守る」といった程度の態度にあるは、実はタイこそ米国にとって反テロ対策のアジアの旗艦拠点でバンコク郊外にはタイ国軍の反テロ専門部隊の精鋭基地もあり、とか。バンコクの米国大使館こそ華盛頓に次ぐ規模の対戦司令部、とか。言われてみればバンコクインターコンチネンタルホテルから見下ろせばバンコク市街の中心地に鬱蒼とした森に囲まれ米国大使館と大使公邸あり。
▼タクシンの財力も呆れるが香港の財閥、李嘉誠一族もかなり「きてる」ことには変わりなし。「李嘉誠の次男」のリチャード君、東京の汐留だったか国鉄跡地の再開発で98年に900億円だかでビル購入し、このビルにあるフォーシーズンホテルの権益除き購入時の二倍額で売却の由。日本の地価上昇での濡手に粟だが、この次男坊の所有する香港の電信電話独占企業体PPCWは梁某なる中国の中信集団の息かかる投資家にPPCWの発行株の20%余買収されているのだが、その買収資金に李嘉誠がHK$5億だか資金提供の由。李嘉誠と嫡男たる長男の仲良しに比べ次男の鬼っ子ぶりも噂されるが(とくに李嘉誠夫人の90年だったかの死去……自殺との噂もあり、以降のこと)李嘉誠の今回の息子所有のPPCWの敵対買収への資金提供にいったいどういう意図ありや。我が子可愛さの星一徹的な策略か、財界人としての非常なビジネスか。いずれにせよ「金持ちすぎる」一家の奇妙なる業にただ唖然とするばかり。
▼信報の劉健威氏の随筆によれば旺角の活魚販売店が長年にわたりビルの水道施設より不法に「鹹水」用いて海水魚の水槽に水満たしていた由。上水道での真水備蓄に難しい香港は上水道は台所など飲用か(といっても直に飲む人も少なかろうが)煮炊き、洗濯のため、として便所の水洗のためには海水をあまり浄化せぬ「鹹水」を提供。各住宅には上水道とこの鹹水、二本の水道管が配られ、それでビルの壁に余計に水道管が目立つ。で、この魚屋、海水魚の販売に新鮮な海水用いるには費用も嵩むという理由からか便所用の鹹水を用い、これは旺角ならさしずめ九龍の汚れた海水をちょいと浄化しただけだからバクテリアなど含有量高いわけで活魚も当然、汚染とはそりゃ恐ろしい話。
▼仙台の梅原市長は安倍三世の総裁就任にあたり「就任は個人的にもうれしく思う。新首相に就任後は、『日本丸』の新しい船長としてかじを取り、強力なリーダーシップを発揮することを期待したい」と祝意表す。「地方が豊かであってこそ本当の先進国。新総裁は山口県の出身ということもあり、地方の思いを理解してくれるはずだ。今後は、地方・国のために一緒になって働いていきたい」とエールを送るが、伊達藩たる者が長州に尻尾振るとは……。