富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月十二日(月)昨日の暖かき快晴から一転して気温摂氏15度の曇天。湾仔のGloucester Rdを車で走れば銀行や商店など防御壁に覆われ警戒物々し。市街を走る自動車も少なく見える。香港政府が期待せしは96年のIMF国際蔵相会議の華やかさと賑わい。ちょうど開催前日であったか湾仔のグランドハイアットホテルにて玄関からロビーに入ろうと思えば思いっきりドアが開けられ当時の日本の蔵相であった羽田孜君が現れリムジンに乗り込んだが羽田君までの距離わずか数メートル。のどかな時代であった。当時は香港バブル最盛期にて何かといえば知人などとの待ち合せだのもグランドハイアットのロビーであるとかマンダリンでお茶、とか。懐かしき時代。早晩に「うどん」食したく尖沙咀の某フードコートのうどん屋できつねうどん注文。かつてかなり本格的と評判の店。実際に美味かった。だが今日はほんとうに「ぬるすぎる」汁にコシがあるのではなく、ただ固いうどんに愕然。「なんぢゃこりゃ?」で食べられたものぢゃない。口直しにCook Deliのさんぱちラーメン。十時すぎに薮用済ませるとコンサート帰りのZ嬢とちょうど時間が合い二人で珍しく銅鑼湾のバーSで待ち合せ。ハイボール。City Hallで香港ショパンソサエティの主催でVladimir Krainev先生のピアノとAlexander RudinというチェリストのコンサートでZ嬢はDebussyのチェロとピアノのソナタニ短調ショスタコーヴィッチのチェロとピアノのソナタニ短調作品40をいたく楽しめた、とZ嬢。ハイボール一杯で三更になる頃にバーSを辞し帰宅。
▼十日の日剰で書きわすれ。香港映画資料館では展示室にてコクトー展開催中。入口からしコクトー風でコクトーの用いた鏡や影、光といったモチーフを香港の地場の若い芸術家十名だかがそれぞれのオブジェを制作し展示。入口からしコクトー風なのだが一昨年、巴里のポンピドゥセンターにてコクトー展を観てしまった時の印象がいまだ強く(03年10月06日の日剰に記述あり)それに比べるとこの展示会場の入口の仕掛けも遊園地のお化け屋敷の如く見えてならず。唯一この展示でポンピドゥに負けなかったのはかなり露骨な性描写あるオブジェ展示について香港も18歳未満禁止にせず子連れに「性描写ある展示があります」と注意喚起で済ましたこと。
▼昨日紹介せし柄谷先生による書評につき築地のH君から「国家主義グローバル資本主義の戦いならどっちを支援しますか?」と質される。具体的に言えば「安倍晋三竹中平蔵のどっちがマシか?」(笑)であると。可笑しい。が笑えない究極の選択。個人的には「まだ」安倍晋三国家主義のほうが「マシ」と思う。このほうが叩こうと思えば叩くに能う。竹中グローバル資本主義はぬるぬるしていて叩きよう無し。だが竹中グローバル資本主義は理屈によって論破できるかもしれないが安倍ナショナリズムは小泉思考と同じで超理論、は論理の力では倒せぬ鴨。いずれにせよいずれも「悪気がない」というところが最悪。
▼京都で塾講師の学生が小学生を刺し殺しの事件。H君はテレビで精神科医だか犯罪心理学者だかが「自分の学生を見ていてもそう思うが、最近の若い人は他人に対する共感能力が低く、自己中心的」であると述べたのを聞き、思わず小泉三世は「最近の若い人だった」とわかった、と(笑)。確かに旧自民党を「ぶっこわす」様子は世代間抗争の如く見えなくもなし。爆笑問題太田光氏は「ホワイトバンドとかはめて社会に貢献したつもりになってる奴が、選挙では小泉に入れてるんだから、俺は社会よりもオマエを救ってやりたいよ」とけっこう本気で怒ってたといふ。小泉三世が「若い人」の場合、都知事は「若い人」(……という裕次郎主演の映画もあったが)どころかもっと幼い鴨しれない。
民主党党首前原某の米国での親米国防論や中国脅威論が民主党党首としての発言としてはと物議かもす。毎日新聞夕刊のいつもなら地味なコラム「近時片々」が今日はいつになく激しい調子だった、と聞く。
民主党の前原代表が訪米して自民党より自民風味の安保防衛論をぶち、党内にざわめき。でもワシントンは、日本の与党が野党と同じになったら驚くだろうが、野党が与党と同じ歌を歌ったところで無関心だろう。小泉首相靖国神社を参拝しても「中国脅威論」は言わぬ。地雷を踏まない外交の芸。前原氏は靖国に行かないが、「中国は脅威」と米国で講演してから北京に飛んだ。唐家?国務委員は「軍事専門家とお話しなさい」。勉強して出直せ、ということ。首相はいまマレーシア。ASEAN10カ国を中にはさんで、中国に「開かれた東アジア共同体」を説く。もちろん米国に開かれた、ということ。
小泉三世ですら「外交の芸」があるといわれるくらい前原外交は外交の体を成しておらず。民主党の悲劇。わざわざ訪中前に当の相手を「脅威だ」というのは靖国参拝以上に無神経。やはりこれは大連立→新党結成が急務、と築地のH君と話す。それをやってこそ前原代表こその存在意義。いったん一緒になり前原ら民主党右派は小泉、安倍の路線で保守新党加藤紘一福田康夫自民党左派に民主党から菅直人小沢一郎らに加え横路ら旧社会党、それに自民党追い出された良識派の亀井静香国民新党などで民主新党。これにヤマタクが入るのが意外だが(笑)。そう考えると民主党でなぜ前原某が党首となったか、政界再編成のための「担ぎ上げ」説も可。民主党を内側からぶっ壊すには、で小沢君の戦略とか……まさか。

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