九月十六日(木)饒舌陽気なタクシー運転手たまにあり。無愛想よりマシだがたまにうるさいだけで新聞読み運転手の饒舌遮ることもあり。本日乗り合わせのタクシー運転手「ここ数日の大気汚染醜悪」と語り始め適当に相槌打ったが「董建華の手腕より大気汚染はもっとひどい」と(笑)。董建華の話から先日の立法会選挙の話題となり運転手民主派支持らしく余も「それにしても民主党のマーチン李当落線上の危機なる急告」に余も民主党に一票投じ結果的に何少蘭の落選につながった、と述べると運転手「それは大変申し訳なかった」と謝られ、よくよく聞いたら運転手は民主党の党友だそうな。今回は民主党は戦略で失敗したが終わったことは十分に反省し次回の選挙に活かすことが大事、今回の選挙で民主派に投票した市民を四年後の選挙までいかにつなぎ止められるかに挑むこと、と。車は余の行き先にと近づいたが運転手「さいごにあと一つだけ」と余が日本人であることに関して「中国人はすぐに第二次世界大戦での日本の罪について言及するが、けして日本人が憎いとか、日本を許さない、と思っているのではない。戦争は国家と国家の争いであり、人はみんなが被害者。第一次大戦でも、その他の戦争でも多くの市民が殺され悲惨な目に遭っており、その過去を活かしてこれからどれだけ友好的になれるか、が大切。ただ例えば日本の総理大臣であるとか政治化の言動、歴史教育の問題が浮上することで「まだわかっていないのか」という反発が起きる。中国の民主化や自由など国内問題もかかわっている。たんに反日とかでないことをわかってほしい」と力説。また偶然乗り合わせたら続きを話そう、と別れる。中環に用事済ませふと戯院里歩いていて「あ、この建物が」と徳成大廈がここだった、と思い出す。Des Voueux Rdの電車道に面した街路沿ひは今ではつまらぬ店舗並び当時の面影もないが戯院里の大廈入り口は重厚なモダンの装い、エレベータホールもかつての萬宜大廈彷彿させる重厚な落ち着いた雰囲気(写真)。昭和三十年代、日本の総領事館や香港線飛び始めた日本航空が、仮オフィス程度のビルの一室からきちんと立派なオフィス構えたのもこの徳成大廈。帰宅して栗ご飯など秋の味覚。NHKのニュースで石破坊やと網貞次だったか米国高官会談し石坊は武器輸出三原則について日本政府は見直しを進めており政府内で年内にも結論出すと発言。厳密には日本にとって武器輸出は相手国が共産圏だのテロ国家だのに関係なく違憲のはずだが、今さらそんなことも空論なのだろうか。ヤクルトの古田は昼はプロ野球存続の重大問題に選手側代表として調整に当たり夜は試合で連日の大活躍。立派。昼は政治家並みに働き夜は野球できるのだから夜は密談しか出来ぬ小泉三世らよか古田のほうがずっと立派。日本からもらったビデオなど見ていれば「最も嫌われる女優対決」だかの番組あり、日本をながく離れているから余もとんでもない幻想抱いていること少なからず、余にとっては「パパと呼ばないで」から金八の頃の清純派のままでイメージが凍結している杉田かおるが杉本彩だかと、その悪女対決でとんでもない破廉恥女優ぶり演じており、そんなこと日本では常識なのだろうが、その姿に余は唖然としたままテレビ消す瞬間にニュースで董建華が23条立法をひとまず政治日程に入れぬ発言見て民主党もこれを歓迎で「杉田かおるの悪女対決の場合ぢゃない」と慌てて日刊ベリタに送稿(こちら)。
▼中国の異見分子で98年に中国民主党結成し懲役五年の判決受けていた徐光氏が刑期満了で釈放。刑務所でも毎年六四には絶食など抗議続け毒打、虐待など受け身体衰弱極まる。改革派と見做される胡錦涛君は四中全会にて西欧型民主主義は中国に適合せずと強調。現在の共産党主導下で民主的な法治、汚職浄化などは可能であり、民主主義には様々な形があり普通選挙、三権分立や多党制だけが民主主義でない、と。香港の立法会選挙についての国内での報道見れば結果も六〇名の改選が順調に実施され、と紹介し政党別の得票数や民主派の過半数獲得失敗といった具体的な報道は勿論なし。中国にしてみればシンガポールなど一党独裁で民主的社会実現可能の好例か。その中国相手に日本は中国をかつてのソ連、現在の北朝鮮に加え中国をこのまま経済成長続け軍事費の増大と軍装備の増強続ければ日本にとって軍事的脅威となる仮想敵国に指摘と日経の報道(これ)がこちらでも流れる。米国はブッシュ路線貫徹にせよ欧州もスペインの追米主義からの離脱や中南米とてコスタリカにて政府のイラク侵攻での米国支持を違憲とする最高裁憲法法廷の判決あり。その状況に比べこのアジアの不安定さは如何なものか。
▼武蔵野のD君より「はらっぱ祭り」の中止が決定と報せあり(こちら)。この夏は吉祥寺駅前センター街でのイラク人からの大麻購入の東大生が職質受けて現行犯逮捕されたり大麻撲滅盛んなようだが、このはらっぱ祭りも参加団体に大麻解放主張するグループがあることが中止の要因。この程度の「一部の市民」の活動など社会の多様性として含有できることが都市の都市たる力、それを大麻解放団体の参加程度で「近隣住民に不快感と誤解を与えた」といふ程度の思慮で異形をば排除して何が近代か、何が都市か。祭りで公然と大麻吸引でもしていれば現行法で逮捕されるのは法治社会として理屈も合うが、大麻解放といふ主張の弾圧は違憲。だが憲法すら国家政府がそれを蔑ろにして改憲に向かうのだから違憲などと語ったところで誰も気にもせず。而もそういった動きに危惧を表すのも数日前の朝日新聞に大江健三郎君が「せめて子供を社会包む闇から救いたい」と書いていたが大江ノーベル賞先生が「この人の言ってることもわかるけど、なんかこの人、ちょっと変わってるよね」と思われてしまふ程、大江センセイが社会から乖離してしまっている、D君は「誰かが不快に思うかもしれない言論は存在することも許されない」のが今の日本社会。許されるのはNHKのテレビ番組「難問解決ご近所の底力」に見られる、ゴミ処理やカラス問題、不法駐車などに「立ち向かう」社会道徳、倫理や正義?ばかり。
▼上述の中国の問題と二つ目の「難問解決ご近所の底力」に格好の事例が中国にあり。広州市海珠区で九月六日から十五日の衛生週間に市民に対してゴキブリとネズミの捕獲促し公共団体が「ゴキブリ1キロ二百元、ネズミ1匹三元」で買い取り実施。三歳の子供も参加し十日間で百二十キロのゴキブリと一万匹に近いネズミ死骸を収穫と。ゴキブリとネズミの繁殖力考えれば一部のゴキブリやネズミを数万匹捕獲したところで何の意味もなし。半世紀前も「大躍進」の頃か欧米並みに衛生的な新国家建設のため国家をあげてハエ捕り運動展開され党幹部もハエ叩きもって運動に参加の革命運動?あったこと彷彿。何も変わっておらず。
▼十月一日の國慶節には当日、香港でも記念式典あり。政府要人、在香港の党中央政府代表、駐港軍代表や各国総領事らと一緒に立法会議員六十名も参加。昨年までこの式典当日は警察のバリケードで会場に近づけず「平反六四」「結束一党専政」とシュプレヒコールあげていたトロツキストの立法会議員「長毛」梁國雄君が今年十月一日の國慶節名の一人として参加か(笑)。本人は招待も受けておらず参加未定。この梁君の当選は党政府方面もかなり気になるようで党政府の香港出先機関中聯辨の幹部は「もし議員が一党専制終結を叫ぶことは愛国愛港の意識なければ立法会議員の資格なし」と苦言呈す。梁君にしてみれば本人の愛国心高きゆへの共産党政府への非難。愛国愛港といふが実際には愛党。全人代常委の香港代表の地場ネクタイ製造会社オーナーの曽クロコダイル憲梓は梁議員に対して立法会に入ったら理性をもつて」と提言。クロコダイル曽といへば中国国内絡みの贈収賄で有罪受け親中派への転向で今日の政治的地位築いた人。それが「理性をもて」と発言(笑)。梁君の理性といへば選挙運動期間中に候補者討論会などで対立候補の自由党・田北俊君にバナナを見せ「これがスーパーマーケットと町の市場のどちらが高いか、値段がいくらか知っているのか」とピークにお住まいの億万長者が突然、新界東で立候補して庶民の生活の何がわかるのかと指摘し、田君は経済語るばかりで政治知らずと指摘。FCCでの討論会では田君に対してジョージ=オーウェルの『動物農場』のペーパーバック取り出して、その一節を朗読して聞かせるパフォーマンスにFCCの記者ら感嘆させもする。また「学者は知識はあるが智慧がない」と指摘したのは、同選挙区で立候補の「在任年数だけは」ベテランの黄宏發議員への当て擦り。黄宏發は無所属で時々民主派に与して政府に反対票投じることもあるが、それだけで、飲酒運転で警察には捕まったことも記憶せぬほど泥酔も有名、中文大学の政治学系の講師長年勤めるが講義で学生相手に「立法会では……」と内情話するだけの才器、梁國雄君の当選の煽りで今回落選。そういった梁君の言説が市民の間で「長毛はただの過激派じゃない」と評価されたのが事実。クロコダイル曽と梁君のいずれが理性的かは明白。また今回も立法会に当選してしまった中華総商会副会長の黄宜弘(写真)は、二十三条立法化反対で立法会取り囲んだ市民に車窓から中指立てる壮挙(〇三年七月十日の日剰参照)、立法会で居眠りが取り柄、は梁君や辛口政治評論で有名な「大班」鄭経翰君らが当選したことで「今回の立法会選挙で、もう誰も立法会に代表性がない(=民主的に推挙されてない)とは言えない」と皮肉を口にしたが、裏を返せば黄宜弘自身が中華総商会といふ地盤だけで議員当選でいつも本人の資質問われ、今回は個性派の当選で自分の推挙も合理的と言いたいのだろうか(笑)。