富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

八月廿八日(土)雨。昼前に中環。銀行にてファンドなど諸手続き済ます。Colorsixにて写真現像依頼。Stanley街のApple Centre寄ればiPodなどに客多く繁盛。Appleの客といふのは灣仔電脳中心とか旺角、Sham Shui Poの電脳とは全く客の雰囲気異なり興味深し。春回堂にて涼茶。陳成記にて牛南伊麺。ジムにて一時間鍛錬。尖沙咀の街頭にて久々に紙撒き先生に遭遇(写真)。ズタ袋に廃紙大量に保管し丁寧に紙は掌ら大の四角に切ってあり、ブツブツと何事か喚きながらその紙に賢明に何か記載続け書き終わると紙を細かく丁寧に破いてそれを放ればおりからの風に紙は宙に舞い彼のまわりは紙「屑」だらけ。ロラン=バルトならこの情景をどう書き残すであろうか、何が記載されているのか、書かれた瞬間に破かれて誰にも見られぬまま葬られるエクリチュール。スターフェリーにて中環。Z嬢とIFCの映画館にて岩井俊二監督『花とアリス』観る。『リリィシュイ』でもそうだったのだがフィルムでないデジタル録画の映像は余は好まぬが岩井俊二のソフトフォーカスはフィルムでは映しきれぬのかも。この映画、朝日新聞にて沢木耕太郎の『銀の森へ』の映画評あり、それ読めば筋が見事に説明され而も沢木耕太郎の「物言い」余は好まず敢えて目を通さず。どこか宮崎駿のアニメ映像の雰囲気漂ふが岩井俊二でなければこの筋で二時間余の作品にはとても出来ず。全編に渡り音楽うるさすぎ。花(鈴木杏)とアリス(蒼井優)の演技お見事。二人の「キミはナントカか?」の掛け合いがエンタツアチャコの漫才の如き紳士然としてとても面白い。それに比べて郭智博演じる「先輩」がなぜ花やアリスにとってそれほど魅力あるのか全く理解できぬが(少なくとも事情判明してからの最後は多少魅力もあるが)Z嬢曰く「アトになって思ふと「なぜあんなのに」と理解できぬぼーっとした男子」が何か魅力的に見えてしまひ恋してしまふのが思春期、と。アリスの父親役の平井成が助演男優賞当確の見事な演技。文化祭の鉄腕アトムの気球が何の意味もないのだが岩井俊二だからこその演出。そして出演キャストにも名前出て来ぬ「風子」役の女の子がじつにいい。もう一度じっくり観てもいい作品。百年ぶりに上環の韓国料理・梨花苑。牛ミノの白湯鍋が実に美味。土砂降りの大雨に恰度空車のタクシー来て幸いに帰宅。

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