富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月十一日(金)晴。▼中国内地子女の香港居留権審判については99年1月29日に香港終審法院が居留権有りと判決に対し99年6月に全人大が香港の判決を覆し居留権なきことを決定、香港基本法が普遍法にあらず全人大の決定が優先されることで香港の自治なるものがかなり制限されることが(あたりまえだが)露骨に示されたが、この全人大決定を受けての再審が昨日判決を出す。およそ人生の岐路に立たされる内地子女は凡そ五千名、そのうち内地にて出生したものの父母のいずれかが香港永久居民で97年7月1日以前に来港した者(33名)と返還より前述の99年1月29日判決までの間に居留権を申請し受理されなかったが法律援助署に申立てし当署からの批准の文書を得ている者凡そ1,000名(このうち八割方はすでに香港身分証の発給を受けている)それに保安局長より同様の批准を受けている者若干名については居留権あり、それ以外の返還前でも親が永久居民となる以前に出生来港した返還前の駆込み移民子女、返還後に来港して役場の批准を受けられなかった者その数凡そ4,000名については居留権なしということにて三月を居留期限とし内地に戻ることを判決す(三月としたのはせめて二月の旧正月の年越しは香港にてなる温情だそうな)。▼台湾亜扁総統が香港行政長官董建華君を北京の操り人形と揶揄。台湾は自ら投票で領袖と議員を選ぶことができる、と。そりゃそうだ、香港は中国の一部なり。▼ペルーのフジモリ元大統領日本に亡命し隠遁していたが拓殖大学で講演し客員教授となり公然と活動を開始。これが自国にあって政治活動や言論の自由が脅かされ自国にいては投獄や処刑の怖れでもあるならまだしもペルー政府が具体的な証拠をもとに公金横領の罪で裁判にかけようとしている人物を人道的見地から日系人であるという理由で(もしくはこの元大統領に語られるとまずい対日本の政経的背景があるかもしれぬが)国籍を与える日本なる国家は日本に居住する日本語で日本社会で生活する市民にすら朝鮮系だ中国系だといい市民権を与えず。名前を出すのもオコガマシき東京都知事は都内の「第三国人」を差別抑圧しこのペルーの「元日本人」を援護する。呆れて言葉もなし。▼数日前の話だが中国福建省に昨年五月に16,280冊の聖書を密輸したとして香港市民の男性が死刑判決。中国公安当局はShoutersなるこの基督教の一派(急速に拡大し50万人の信者?)を狂信的宗教団体として抑圧しておりこの密輸はこの団体のため、と。ただしこの男性が実際に属する教会関係者はShoutersとの関連を否定。香港の人権団体によるとこの男性がShoutersのために聖書を運んだのは二度目で一度目は四月に16,800冊。こんなことがないと知る機会もないが香港のカソリック神父によると海外から中国に渡航した場合は個人用途に一冊の聖書の携帯が許可されており聖書を頒布する場合などは特別許可が必要。テロ国家が対テロ戦争を続けカルト国家がカルト撲滅する摩訶不思議な世界。▼大学といふのは実に能天気な世界にて世の中の実態とはかなり懸離れた処で研究という名の無駄に明け暮れているが『信報』を読んでいて目を疑りしは香港大学の都市計画及環境管理研究センターが(この組織だけでもかなり胡散臭いが)香港が今後も経済的優勢は保つものの単独での発展はありえず珠江デルタ地区との相互関係が重要になってくるということで香港珠江三角州研究発展センターを開設する、と。こんなお題目は大学のセンセイであらずとも誰でも解りきった事にて「珠江デルタ」の研究など90年代前半に日本のアジ研だの商社証券系総研だの銀行の香港事務所レベルでもう必要以上に語られ今更という感。かりにである、登β小平復活し三中全会のあった70年代末にこの題目に気づいていたらこれはノーベル賞モノの研究だろうが、すでに現実社会で動き出しており今更いったい何をするというのか。せいぜい珠江デルタに筍のごとく創設されつつある大学のセンセイたちが研究目的にと動きまわる出張先にしからなず……あ、これが目的か、研究者の職場確保。