富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

水戸肯定感とは

辰年四月初七。15.8/20.6度。曇りのち晴。大相撲五月場所は昨日、大ノ里を負かした高安がまさかの休場。今朝の稽古で腰を痛めたのださう。

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水戸市のLINEに驚いた。水戸肯定感。「自己肯定感」といふ発想はある。いかにもいまの無力な日本で注目されさうな感覚。

ありのままの自分を肯定する感覚のこと。他人と比べることなく、自分をかけがえのない存在として肯定する、誰かに好意的に受け止められることで生まれる自己肯定感。それは自分が前に進むための原動力となり、仕事を進める上でも重要な感覚です。

それで、それでもなぜこども対象のイベントにこれなのか?

水戸肯定感とは水戸に住み暮らす私たちが水戸の魅力を知り、今以上に水戸を好きになることです。水戸を好きになった私たちはきっと、色々な人に水戸のことを自慢したくなると思います‼︎

こんなI❤️MITO感覚は思想信条の自由で、それはそれであれこれいはないが何故に「ちびっ子広場」のイベントで水戸肯定感を打ち出すのか。この主催は水戸青年会議所。そこがこのキャッチフレーズが好きなのだらう。セカンドフレーズの「このまちをもっと好きになろう」で十分な気がする。そも/\子どもに地元愛なんて意識して培はせる必要があるのか。楽しければそこが好きになる。それだけ。その結果「水戸も悪くないんぢゃないのけ?」で地元への肯定感が生まれる人もゐるのかもしれない。青年会議所って地元のそれなりの会社や商家の倅が家業を継いで、それでメンバーになる組織であるから地元で商売を続けていく方たちが「水戸肯定感」といふのが大切に思はれるのは納得できるところ。だけどなぜ「ちびっ子広場」で水戸肯定感なのかしら。

三井康壽『筑波研究学園都市論』

辰年四月初六。気温摂氏13.1/21.9度。終日大雨(47.5mm)。大相撲五月場所二日目。横綱照ノ富士大関高景勝本日より休場。昨日横綱に土をつけた小結大の里を高安が見事に負かす。実に立派な相撲。だがまだ二日目で高安は後半崩れるのが心配。

三井康壽『筑波研究学園都市論』(2015年、鹿島出版会)一読。茨城県民とはいへ突然この本を読んだのは、この著者のお名前が今月末に開催される水戸芸術館での小澤征爾さんお別れの会で「発起人」にあつたから。発起人は筆頭がマルタ アルゲリッチ刀自で、続いて芸術館運営に功績のあつた方々の名前が並ぶなか三井康壽といふ名前だけピンと来ずネットで調べたら、この著作に行き当たつた次第。昭和38年建設省入省で都市計画に携はられ国土事務次官を最後に退任。茨城県には昭和55年に県庁の企画部長職に出向歴あり。この著作のタイトルからして研究学園都市建設の建設省の総設計師、プランナーなのか、と思つたが筑波研究学園都市建設の閣議了解が昭和38年9月なので三井の入省年であるから計画当初ではまだ若手すぎ。当時は第二次池田内閣で建設大臣河野一郎。聞かずとも明らかなことは三井の建設省時代の上司が後の茨城県知事の竹内藤男。竹内の建設省都市局長就任が昭和40年。参院議員を経て竹内の茨城県知事就任が昭和50年。竹内知事二期目の昭和55年に三井は茨城県庁に招かれ研究学園都市担当に。当時の筑波研究学園都市は国などの研究機関の移設はされてゐたが研究社の定住が進まず人口計画は20万人だつたが「都市」としてのインフラも整備されず。商業施設や文化施設、都心とを結ぶ公共交通機関(鉄道)の整備、また起爆剤となる科学万博の開催(1985年)などが計画実現されてゆく時代。1897年に「つくば市」が誕生し鉄道(TX)開通が2005年で今では人口も26万人規模(近々県庁所在地の水戸を抜くはず)。この都市計画は成功といへるだらう。それでも三井さんと水戸芸術館とどういふ関係なのでマエストロオザワのお別れ会の発起人なのかは私にはわからない。水戸芸術館の有力な賛助者のお一人なのかしら。いずれにせよ、この『筑波研究学園都市論』は計画立案から50年が減るなかで当時(2015年)関係者の物故、資料の散逸など懸念されるなか、この国家プロジェクトの都市建設を一冊の本にまとめた貴重な記録。

筑波研究学園都市論

(読書メモ、付足)それまでも多摩ニュータウン千里ニュータウンなど建設されていたが東京や大阪といふ大都市のベッドタウンであつて都市建設も容易だし「自立した都市づくり」といふわけではなかつた、と前置きした上で筑波研究学園都市が当時の日本としては画期的な国家プロジェクトであつた理由は「東京から70キロ離れ、通勤がかなわない立地特性から単なるベッドタウンでなく新しい自立都市を造る、しかもこれからの日本の発展を支える研究機関を中心とした都市を造る、という錦の御旗を掲げたから」であつた。田園都市であつて道路や公園が最初から織り込まれ、その街並みを整備するため独自の区画整理が最初からされてゐるといふ都市計画。

 

縛られる日本人

辰年四月初五。気温摂氏15.6/24.9度。曇。

本日の競馬(G1)はヴィクトリアマイル。3番人気のウンブライル(川田)を軸に馬券を組んだが6着と振るはず優勝は15頭だて14番人気のテンハッピーローズ(津村)。1-1/4差で2着にファラスプライド(ルメール、4番人気)、首差3着がマスクトディーヴァ(モレイラ、1番人気)。払戻金は単勝20,860円でこのレースレコードでG1歴代4位(1位は1989年エリザメス女王杯のサンドピアリスの43,060円)。津村騎手もGRAのG1初勝利。本日、武豊騎手がヴィクトリアマイルでは2番人気のナミュールは8着だつたが2RでJRAで通算4,500勝。ちなみにJRA重賞は360勝で同G1では81勝でいずれも歴代最多記録で自身で記録更新中なのださう。競馬も大波乱なら大相撲もまさかの横綱、4大関の総崩れ。まさかこんなことにならうとは。

Marry C. Brinton『縛られる日本人 人口減少をもたらす「規範」を打ち破れるか』(中公新書、2022年)通読。読む前からわかりきつたことだが日本は人口減少もたらす「規範」打ち破ることなどできないことは明白。著者はハーバード大学ライシャワー日本研究所所長の社会学教授。まことに社会学の教科書のやうな日本社会の分析。だが、いくら分析したところで日本の社会的病理の解決はできない。

日本は治安がいいし、住宅は閑静で、道路は清潔。人々は親切で礼儀正しい。鉄道やバスも時間通りに運行し、もし遅れることがあれば車掌や運転手が丁寧にお詫びの言葉を述べる。多くの住宅地では、日曜でも郵便ポストの郵便物が回収される。宅急便も利用しやすく、配達も早い。外国に行くとき、重たいスーツケースを引きずって空港まで行かなくても、近所のコンビニから宅配便で空港まで送ってくれる国なんて、ほかにあるだろうか。日本はとても便利で秩序立っていて、暮らしやすい国と言っていい。(序章より)

日本人が大好きなこの日本への好印象である。確かにこんな素敵な国なんて他にないだらう、と。しかし少子高齢化といふ問題にも何ら解決策が見出せない。この著作でも「問題を解決するために、一人一人の日本人が、カップルが、企業や政府がどのような行動を取るべきかを論じたい」としてゐて細かい提案はいくつも述べられてゐる。だがさうした問題を総じて解決できないのは日本といふ国家のもつ、解決できてゐない病理そのもの。近代革命を経ることなく近代化した(ことになつてゐる)社会の、これまで誤魔化してきたものぢたいの問題。

縛られる日本人 人口減少をもたらす「規範」を打ち破れるか (中公新書)

人権、個人主義天皇のお世継ぎ……何一つとつてもきちんとしたポリシーを見出すこともできないのだから、この「子ども社会」で自分たちが少子高齢化の問題の解決などできるはずもない。

齋藤誠「一経済学徒として常木淳『国民国家とは何か』を読む」(東大出版会『UP』2023年7月号」もさうした点への考察として興味深かつた。戦前の政体について。伊藤博文を中心とする明治国家立ち上げの大立者たちが大衆向けの「顕教」として「無限の権威と権力を備えた絶対君主」としての天皇を国民に対して提示する。それに対して「密教」として生み出された現実の統治手法で「天皇憲法に基づく制限君主として、自分たちの政治目的を効果的に実現する操作対象(ロボット)としてきた。後者には美濃部達吉も相乗して天皇機関説が認識され陸軍統制派、革新官僚民政党がこれに加担したのに対して前者(顕教)が政友会的なもの、陸軍皇道派や右翼となる。政友会の大敗、226事件など政治クーデターの失敗、陸軍皇道派の失脚で政治が密教的となる。しかし、その勝利した側も立憲民主主義体制は棄却して政党内閣制も形骸化させてゐて、そこで「寡頭制による立法手続きを通じて経済社会を統制していく合法的ファシズムが確立した」。「日本のファシズム天皇ファシズムと規定することがいかにミスリーディグであるのか」。戦後は戦前の顕教的な体制が戦後は「平和と民主主義」に置き換はり、密教の方はアメリカとの軍事的協調により軽武装下で経済復興を優先する現実主義(吉田ドクトリン)となる。「日本の国家が直面している現況は、クーデターで政権を奪取した独裁者の政策ではなく、立憲民主主義の正当な手続きに従った政策の帰結であった」。戦前は政治体制の行き詰まりの結果「合法的ファシズム」の体制を立ち上げ、戦後は革命すらないまゝに平和と民主主義を希求できる。この曖昧さこそ上述の『縛られる日本人』で悲しき現実と捉へられる日本の病理の根本的に同じものなのでせう。

志の輔独演会@水戸芸術館

辰年四月初四。文殊仏誕。気温摂氏10.0/26.6度。晴。一晩を土浦駅前で明かしたが幸はひにスマホも電池切れもせず。それどころか数日前から昼間は全く通じなかつたJREバンクの口座開設申し込みも本日分で未明に済ますこともできた。さすがに日の出前はぐつと寒い。バスプールのベンチから駅舎の東西連絡通路に移動。ほとんどホームレスさん。JR土浦駅は上りの始発が05:22で午前5時くらゐに駅の改札が開いた。鉄道職員の早朝の作業も眺めることもできた。改札口前にプラレールの展示があつて改札を開けた職員が最初にしたことがプラレールの電車を走らせることだつたのも微笑ましい。まことに早起きは三文の得。05:48発の下りの始発で水戸まで小一時間眠る。午前七時前に帰宅して家人を前に這々はふ/\の体だが*1朝食に珈琲を淹れていつもの朝が始まる。シャワーを浴びて少しでも寝ようかと思ふが明るいので目が冴えて少し読書して2時間ほどウト/\とする。午後、水戸芸術館志の輔独演会。

いま一番テケツの取れない噺家である。それが迂生最前列中央で志の輔師匠から見下ろされ、まるで昨日のお能(鵜飼)の閻魔大王の姿が目に浮かんで志の輔が判官のお白洲のやう。目が合ふが師匠かなりの近視でそれほど見えてないかも。弟子#8(志の大)の「初天神」のあと師匠は愉快な長いマクラがあつて、するっと「試し酒」熱演。中入り後はインバウンドで外国人訪日客が多いといふマクラから「まぢ?」で「メルシー雛祭り」とは。今更これかい?と思ふが確かに新作には新作の志の輔の上手さ、その自信があるからこゝで掛けられるのか。志の輔がマクラの小言がやはり談志のやう。日本人の美徳、それに対しての外国人の無礼。とても「ガッテン!」できず。外国人への小言に少し傲慢さも感じなくもないが立川流である、少しくらゐ談志のあのアクは必要かもしれない。落語は志の輔と三三しか聞いてゐないが三三にはかうしたテレビのバラエティのコメンテーターのやうな言ひたい放題のコメントがマクラにないのが志ん朝師匠からの粋な流れなのか、と思ふ。


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アタシもこの高齢にしてほゞ徹夜になつてしまつたが家人もこゝ数日体調すぐれず粥食。まるで香港のやうな鶏肉の痩肉粥と二杯目は京都雲月の小松こんぶ。美味。さすがに眠くなり晩八時半くらゐに就寝。

 

*1:ちなみにこれでは誤用。「這々の体」は「今にも這ひ出さんばかりの様子。散々な目に遭つて辛うじて逃げる様子」【広辞苑第七版】である。

土浦止まりの終電で土浦泊まり

辰年四月初三。午後遅くに銀座。観世能楽堂。ずつと水道橋(宝生能楽堂)だつた銕仙会がこちら(銀座)開催になつて(今年1月から?)アタシは初めて。

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最近、ある程度、シテ方はこんな感じだらう、と想定ができるときワキとワキツレの謡が面白いと思ふやうになつた。万作師の狂言〈孫聟〉の味はひ。このシテ(祖父)など万作師の他の狂言師ではこの人物の思考までは演じられないでせう。後ろ姿の首の少しの動きだけでも至高の芸。観世御家元の〈鵜飼〉は小書「空之舞」はシテが中入りで早装束での登場となるためアイ語りは省略され冒頭に語りあり(野村裕基)。昨年七月に渋谷で友枝昭世師のこれで鵜ノ段の舞がまだ印象に残る。今晩はお能の終ひは21時半過ぎと遅かつたが能楽堂で碰見の畏友と銀座→数寄屋橋とサンボアを梯子。東京駅を22:53発の特急(ときわ)に乗るはずで有楽町から急いだが八重洲の浜で真砂は尽きぬども……で特急を逃し最終の普通列車に乗れば良いか、と思つたら最終は特急より前に東京駅を発つてゐるではないか。南無三宝。ほんの一昔前の昭和53年10月のダイヤ改正(ゴーサントウ)でも上野発23:24で勝田行きの最終があつて水戸着25:15で当時からグリーン車も用意されてゐたといふのに。ダイヤ改正で終電の時刻も早まる傾向にあつたのだ。この後は土浦止まりが2本のみ。東京で一晩明かす方のが賢明だが取り敢へず土浦へ。ホテルは金曜晩でそれなりに混雑で1泊8千円くらゐのところがスマホで見てゐたら終電の時間で瞬時に満室となり早朝までの数時間の滞在で1万5千円とかばか/\しい。深夜零時半で早朝まで営業の居酒屋など土浦駅近くにも何軒かあるが寒くもない晩で酔ひ覚ましに歩きたくなり徘徊。高校生の頃から夜の土浦は遊んでゐたのでお世話になつた牧師のゐた教会や昔は賑やかだつた古い商店街など徘徊。桜町の歓楽街も昔に比べたらソープや風俗も半減かもしれないがまだ少しだけ賑やか。ピンサロだかの前で客を送り出すお嬢さんに「オトーサン」と声をかけられ呼び込まれるのか、と思つたら「後ろからクルマ来てるから気をつけて!」。ほんと優しい素直な娘なのだらう。午前2時まで開いてゐるオーセンティックなバー(Toshizo Bar)があつたのでハイボール一杯。また桜町の昔の赤線跡の仲之町を歩く。今は「きらゝ通り」なんて呼ばれるが昔の六間通りで、八間通りの間の細い通りだから七間通りなのか、そこの薄暗い駐車場の隅で、さっき通りかかつたときに地べたに這ひつくばつた泥酔の男がゐて、そのときは通り過ぎたが、ふと気になつてそこを復た通ると男の姿は見えず。あんな泥酔で歩き去つたのか、と思つたが地面に何だか黒いブツあり。近づいてみてみたら財布。かなりの現金と銀行カードなどあり。駅前の交番など今では深夜は不在だらうし土浦市街はそれなりに詳しいので亀城公園のお堀端をまた歩いて土浦署へ届け出。それでもまだ深夜3時前。今更朝まで営業の居酒屋に入る気もせず駅前のバスプールのベンチに坐り手持ちの本を読み始める。意外と睡魔にも襲はれず。


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東大出版会のPR誌『UP』(2023年7月号)も読んだ。東大の先生方のリレー連載なのだらう坪井貴司「よく聞く健康知識、どうなってるの?」第16回「男性ホルモンは毛髪に良くないの?」で指摘してゐるのは男性ホルモン=ハゲの元凶ではなく(まだマウスでの実験結果だが)高脂肪食の過剰摂取や肥満が脱毛を引き起す、といふこと。これが男性に多い。高脂肪食の摂取で毛包幹細胞内に脂肪滴蓄積で炎症起し毛包幹細胞が自己複製されなくなり表皮細胞や脂腺へ分化が始まり、その結果、毛包幹細胞の数を維持できなくなり毛包のサイズ小さくなり毛が細くなり最終的には毛の再生ができなくなる、といふ。加齢による薄毛は、この毛包幹細胞の減少によるものなのだといふ。アタシ自身は薄毛やハゲに悩まされることもなく髪の毛ふさ/\なのだが。

夜中の鉄道駅前などたまに誰だかやつて来ると思ふと泥酔客ばかり。タクシーでご帰宅。駅前の道路のなかの緑地帯に座り込み寝てしまつた輩とか。一人、また千鳥足の男が今度はアタシの方に近づいてくるので一寸面倒だな、と思つたら「大変失礼ですが、勝手なことでごめんなさい、このお茶、今そこで買つたんですが、温かいやつなんで良かつたら飲んでいたゞけませんか?」と呂律は回らないが丁寧にペットボトルのほうじ茶をくれようとする。一緒に飲んだ会社の同僚をタクシーに乗せるのに飲料を買つてやつたら貰つてくれなかつたさう。この勤め人は歩いて帰るのでお茶は要らないから、くれるのだといふ。密封だし駅舎のコンビニ(ミニストップ)の価格シールは貼つたまゝだしありがたく頂戴する。「始発待ちですか、気をつけてお帰りください」と言はれたのでホームレスと思はれたのではないやう。空が少しずつ白んできたのでまた桜町の歓楽街のあたりまで歩く。これでフーゾク店などの賑はひが潮が退くやうに閑静となつてゐれば、それならまるでお能の世界のやうだが現世は幽玄能のやうにはいかないわけで朝だといふのにまだキャバクラなど何軒か賑やかに営業してゐて卡拉OKも泥酔系飲み屋もまだ客足は絶えず。いやはや。

仙人になる

辰年四月初二。気温摂氏9.2/17.6度。曇のち雨(3.5mm)で午後遅く晴。

那須町での夫婦殺人で殺人行為の実行役から指示役、仲介そして首謀者まで身柄拘束が続くが、はたしてこの事件は連日、トップニュースなのかしら。この殺人にこれほど誰彼と関与する点ては不思議だが何らかの諍ひか怨念あつての身内の殺害であつて社会性は何もない。それが連続殺人事件が発生して犯人にじつは幼いころからさまざまな困難があり殺人行為に至る道筋を知れば知るほど深刻な社会病理もあることまで痛感させられるやうな事件なら報道する価値もあらう。グリコ森永事件のやうに社会に不安を与える目的であるとか朝日新聞神戸支局での記者殺害であるとか言論や報道の自由への攻撃といつた意識もない事件なのだから。

 (自民「裏金問題」に思う)佐伯啓思「権力者は責任と矜持を」山陰中央新報

共同通信?の配信で地方紙に掲載のこれ(有料記事のみ)。佐伯先生が自民党の裏金問題に苦言を呈す。

今回の安倍派のぶさまな様相を見ていると、今日の派閥から、真の意味での信条の共有や相互の人格的な信頼さえも失われてしまったのか、という気にもなってしまう。

その通り。だが続くフレーズが気になつた。

安倍晋三元首相と同志であったという派閥の中心人物たちが、安倍氏を裏切るという行動は、人間的な信頼で結びついていたはずの派閥そのものの空虚さを示している。

死人に口なし。晋三が裏金を続けぬやう決定した、といはれてゐるが。そも/\裏金のシステム容認してゐたのが晋三本人だらうに。桜を見る会、森友、加計学園……いくつもの疑惑が解明されぬまま晋三他界。とても晋三を誠実さといふ前提で語ることなどできない気がするのだが。

静岡の川勝知事が退任会見 「仙人になる」朝日新聞

何なのだらう、この記者会見での知事の態。自分の舌禍で辞任のところ反省もないアッケラカーのカーである。本人も本人だが記者会見で知事の言動に記者からは明るい笑い声すら聞こえる。知事となぁなぁの記者クラブ体制がまさにこれ。この変人知事を見送る県庁職員の笑顔も薄気味悪く感じるのはアタシだけかしら。

水原一平元通訳起訴 司法取引で罪認める方針 | NHK

この問題も司法取引ありきとはいへ、こんなに畳みかけるやうに事件の収束に向け、まるでシナリオ通りのやうに迅速にコトが進むのも何だかおかしな話。水原さんは大谷さんに対して数十億円の返済の義務を負ふことになるがが彼が今後巨額の収入を得ることなんて無理な話。賭博でとんでもない大博打に出でるワケにもいかない……となると将来、釈放された暁に手記か、できれば暴露本でも書いて印税でも得るか。だがさういふ行動に出ないこともすでに当事者間では約束材料になつてゐるかもしれない。

甲辰年四月初一

気温摂氏10.3/21.7度。曇。早晩から小雨。朝の気温は16度くらゐだつたが晩にぐっと気温低下。陰暦ではまだ四月になつたばかり。

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昨日の〈先代萩〉について。大型連休明けとはいへ團菊祭での團十郎菊之助のこの芝居で始まる夜の部でも客の入りは今ひとつで一階席でも二、三列目にも空席目立ち三階席は七分の入り。三階の西扉席は客はゼロでこんなのコロナでの入場制限でもあり得ないかつたこと。久ヶ原T君に聞いたが大成駒のその最後の政岡勤めた昭和63年12月の国立劇場も、大成駒の最晩年の異常な人気の前で3階席などほとんどお客がゐないほどガラ/\だつたのださう。勿体ないこと。播磨屋の弾正はこれが初役でまことに色気があつたとT君。この前月が今でも印象鮮やかな〈娘道成寺〉の白拍子花子。昭和が終はる寸前の至高の舞台。

JR東に本がみどりの窓口削減いったん凍結:朝日新聞

よほどやゝこしい乗車券を買ふでもないかぎり鉄道駅でみどりの窓口に並ぶこともない。自販機ばかりで窓口をあそこまで閉鎖されるとサービスは何なのか?とやはり思ふ。昨日の往路の特急(ときわ)で車掌が車内放送で「この列車には車内販売のワゴンサービス、自動販売機の設置もありません、あらかじめご了承ください」と。「予め」といふのは「結果を見越して、その事が起こる前から。まえもって。かねて。」なのだから広辞苑第七版】それを列車に乗る前にホームででも聞けば「予め」だが既に乗つてしまつた電車でそのなこといはれても「予め」ではないだらう。車掌といへば昔は立派な紳士の職業だつたが最近は服装からしてだらしない車掌多く、それでは信頼もおけない。