富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦八月廿四日

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支連会は正式に団体の解散を決め清算手続き始めようとしたところ保安局は国安法に抵触する危険団体として「六四記念館」の不動産と銀行口座を最長二年凍結として、その額は1.54億円に相当。当局にしてみれば支連会解散は幸甚なところさっさと清算されて活動資金がどこかに流れることは許しがたくこの措置。これで支連会は解散もできず

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区議会議員は港島の7人に続き九龍の10人も議員宣誓無効とされ議員資格即時失効。規定通りに宣誓してもこれまでの活動で香港独立支持などの言動問はれての措置。区議会は区議会だが一昨年の反政府抗議活動で警察の鎮圧行動が暴力的で過激だとして民主派が圧倒的多数の区議会が区内の問題として警察署長らを区議会に呼び事情陳述させ徹底的に批判したりしてゐたので政府にとつて「憎き区議会」でエコエコアザラクなのである。
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政治的に絶望的ではあるが、それでもやはり香港がとても懐かしい。

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▼(北京五輪)海外観客受け入れ断念 何だか今から東京2020+1では曖昧に比べ完ぺきに制御される予感 https://t.co/kLKCUxbNLI

▼痴呆症にならないやうに毎日きちんとやつてゐる紐育時報SUDOKUであるが最初に1がぴたりとはまるとそれだけで快感。慣れてゐない方にはなぜ1確定できるのかピンとこないかもしれない。


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自民党総裁選挙

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香港大学「民主牆」2017年(左)と今(右)、(中)香港大学生会(2019年)

香港で大学の学生が自由に発言できる「牆」の張り紙は1970年代に授業料値上げ反対とか学生寮食堂の味や衛生への苦情などから始まつたさう。アタシの知る90年代初頭は六四抗議が目立つた点では政治的になつてゐたが大学運営への学生会代表参加云々とかが主だつたと記憶する。2003年以降、普選実現や基本法23条立法反対など民主化要求が強まり2019年には大学中が大字報のやうだつた。それが今は「民主牆」(香港大学では中央図書館前)に張り紙の一枚もない。学生会が大学から駆逐されたのだから。近いうちにこの牆も大学のおそらく大学図書館の広報掲示板になるのだらう。

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自民党総裁選挙。人流の制限といふ政府なのに国会議員による投票は都心のホテルで(それだけでいつたいどれほどの人が移動するのか)開票も選挙後の集会も密、密、密。岸田君当選と聞き、ちょうどその場にゐた数名と宏池会は誰以来?ゼンコ―か?まさかそんな昔ぢゃ……と思つたが事実、喜一ちゃん以来であつた。自民党ハト派で名門の宏池会だが首相は池田隼人君以来5人で平成はゼロ。5人のうち池田、宮澤そして岸田が広島。岸田君は父(文武)は旧制東京高校ナベツネが同級の親友。しかもナベツネ開成中学出身なので文雄は開成でナベツネの後輩にも当たり可愛がられる。まだナベツネが政界に絡まうとは。決選投票での結果発表を聞く岸田君の左右にはホステスのやうに女性議員が侍り(偶然ぢゃないだろ)まるで銀座のクラブのやう。河野太郎は地方票は得票トップだつた石破君が国会議員票で晋三に敗れたのと同じ結果に。河野家は首相になれない運命なのか。祖父の一郎は日本を見据ゑ、父洋平は世界を見渡してゐたが太郎に至つては宇宙に逝つてしまつてゐた。岸田君は当選後の派閥の集会で「民主主義の危機」と宣つてみせるが民主主義を危機的状況にしたのはあなたも外相で与した晋三政権であり後継のスガ政権ぢゃないか。それに反省もなく「民主主義の危機」とは言葉遊びがすぎないか。この集会に「え、誰?」と岸田がパーティー会場の入口の方を見てサプライズゲストは高市先生で宏池会に極右乱入とは自民党にとつては危機的状況での大同団結なのか。集会の最後では「岸田、岸田!」と岸田コールで感染防止でスポーツ観戦も黙視のなか国会議員だけは大騒ぎは良いらしい。うんざり。

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西日本豪雨の夜「晋三を囲んで」議員会食に岸田君も仲良く

平井デジ大臣「会食費、早く払っておけば」 半年後の支払い「請求書来ず」 NTTのデジ庁接待:朝日新聞

これもまことにふざけた話だが、このときの記者会見でのコメントをきちんと読んだらさらに呆れて言葉もない。昔だつたら大臣でこのやうな失言なら大臣の椅子も危なかつたが今ではあっけらかーのかーである。

NTT接待「国民の疑念を招くかは人によって違う」 平井デジタル相の会見詳報 :東京新聞

最後の首相記者会見も「すがらかし」

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香港で一昨年の抗争中に建制派の何君尭議員が暴漢に襲はれたのは11月6日。その月の24日に区議会選控へ民主派優勢が伝へられるなか建制派でも反政府派に毒舌も歯に衣を着せぬ何君尭は腹を切られつゝ勇気振り絞り暴漢取り押さえる気概を見せたが(何君堯議員刺傷 - 富柏村日剩)昨日その暴漢の刑事裁判あり何君尭に傷口1.5cmの切り傷といふ重傷負はせ周囲の人員十数名を引っ搔いた暴行につき禁固9年の判決。暴漢に精神障害があるともいはれてゐるが判決ではそれが襲撃に与へた影響は部分的なものとして何君尭はこの判決も刑が軽すぎると憤る。何だかよくわからない「テロ」であつた。かうした襲撃は加害者が自殺してしまつたり精神異常だつたりで結局のところ真相は不明が少なくない。


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年に1度くらい突然、朝ごはんで温かいご飯にバターをのせて溶けはじめるところに醤油を少し垂らして食べたくなる。なんて美味しいのかしら。幼稚園から小学校に入つたころ、これが大好きだつた。ご飯は新米。常陸太田の栗を毎年仕入れる方から甘露煮にした栗をいたゞいた。直径3センチ大の栗なのだが栗の風味がよい。柿もいたゞいた。庭木の柿ださうだが実るのは数年に1度ださうで自邸の柿が実る年は市街でも他の場所の柿もよくなつてゐるやうに見えるとℕ氏。たくさんいたゞいたうち完熟の触つただけで皮がやぶけてとろけるやうなものを先に頬張る。すつかり秋の味覚三昧。食べ物といへば私は旅館の夕食が苦手。指定の時間に卓上にずらりと調理済みの料理が並んでゐて、殊に固形燃料の据ゑられた小鍋を見た瞬間にげんなり。仲居さんがあれにチャッカマンで火をつけるのを呆然と眺める。それぢゃ一品一品運ばれてくる懐石のやうな料理は良いかといふと、これも食べきれない量の料理が次から次へとで途中でもう脂汗。ナントカ牛のナントカ焼きとかになると味覚ももはや麻痺してしまふ。よつて温泉旅館でも「朝食のみ」とかの宿で夜はどこか温泉街の小料理屋か赤ちょうちんででもと思ふのだが豪華な夕食が売りの旅館が多く「朝食のみ」は歓迎されない。また秘境の高級リゾート旅館なんかでは夕食に外食ともいかない。そんな話を顔本に上げたら同感といふ知己が思つたよりも多かつた。宴会でお女中がチャッカマンで固形燃料に火をつけてくれるのままだマシでチャッカマンを上座から次へ次へと客が渡して自分で火をつけるなんてことすらあるといふ。

▼感染状況はかなり波も退いてゐることは確かだらうが全国一斉に緊急事態や感染拡大地域の指定を解除できるものなのか。カミュの『ペスト』を読むとあれだけの悪疫のあとまたかつてのやうな日常が取り戻せることにアルジェの町も喜びにあふれ人々が市街に繰り出す。だが今の状況でこれでまた久々にと繁華街で酒盛りや賑やかな会合では第6波の襲来をまるで招くやう。アタシも疫禍にかなり出歩いてゐる方だが元々誰彼と接触して騒いだりもないのだけで日常は変はらない。いずれにせよスガにとつては首相としてスガ最後の首相記者会見(首相官邸)で毎回この記者会見を見続けてきたアタシも感慨深いものあり(うそ)。まともに見てゐたらアタマがおかしくなるのでTBSラヂオ荻上チキSession総理会見実況ライブ - YouTubeを見ながら少しでも溜飲を下げる。ところで夜6時のNHKニュースで「嵐の桜井さんと相葉さんが婚約発表」とテロップにあつたのだが「それぞれ」くらゐ入れてよ。

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今朝の朝日新聞にスガ記者会見での質問指名に関する記事あり。

(首相会見)質問指名に偏り 質疑が成立しないケース続々

スガのつまらない上に滑舌にも何あり意味不明の独白を聞いて広報官のヒカリコが記者を指すのだが朝日とさらに東京新聞がどれだけ忌み嫌はれてゐるか。フリーでも神保哲生とか西村カリンとか質問するとスガの目が三角になる。今日の会見で興味深かつたのは大川興業大川総裁が幹事社代表以外でフリーで質問した時で総裁は身障者施設における感染防止とワクチン接種について質問したのだがスガは「前回の記者会見でも質問された内容をさらに細かく」と用意した原稿で回答し始める。これはこの回答をするために「間違いなくこの質問をしてくるであらう」大川総裁が意図的に指名されたわけで、そこで総裁が全く違ふ質問をすれば可笑しかつたのだが真面目な総裁はそんなことをしない。さらにヒカリコマジックはまともに挙手してゐたでもない西村さんを多くの記者の中から指名して彼女が「外国人の入国が制限され留学生も入国できないのにスポーツ選手や芸能人は優遇あり今後、留学生など何うなるのか」と質問するとスガはプロンプタで原稿を読むやうにAI制御の人形のやうに回答し始めたのだといふ。奇怪。光栄なる最後の2問は朝日新聞とフリーの江川紹子さま。

朝日新聞臨時国会の召集について総理は与党と相談しながら対応と答弁していたが総理は自民党の総裁でもある。憲法上の義務として指示を出せばよかったのだと思うが、なぜなかなか速やかに召集を指示できなかったのか。また専門家からは憲法違反との指摘が出ているが、そうした指摘をどう受け止めているのか。
(スガ)まず、今日の国会での質問にもありましたけれども、召集については、これは政府が決めるわけですけれども、党と相談をしながら様々な政治日程の中で相談をして決めさせていただきます。(略)それと同時に、コロナ対応については、閉会中審査をかなりやっていることも事実だと思っています。そういう中で政府の対策を野党の人に答えている、そういうことで配慮をしながら行っている、こういうふうに思います。
朝日新聞憲法違反ということについては。
(スガ)そこはないと聞いています。

スガの記者会見での質問に対するまさに典型的がはぐらかしを最後にまた披露。「すがらかし」。記者の「総理総裁として何うして国会召集できなかつたのか」といふ質問をすがらかし憲法違反については回答せず再度質され「そこはないと聞いてゐる」。誰からか。子飼ひの内閣法制局か。部下が「憲法違反はない」で鵜呑みか。さらになぜ憲法違反ではないかの説明もできない。わからない上に回答する意思もない。首相の答弁がこんなもの。1年間本当におつかれさまでした。

すがらかす(動五)「はぐらかす」の派生語

① 記者会見で記者の質問への回答をそらす。「なぜ国会を開かないのか質問したがうまく—・された」

② 責務を果たせぬまま役を辞任する。とくに辞任理由ははっきりとさせない。「政権を—・す決意を固めた」

香港の自由 (社説)「愛国」装う弾圧やめよ:朝日新聞

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香港で12月に予定されてゐる立法会選挙に民主党が参選するか何うか考え倦ねてゐるのだといふ。反政府派排除が前提の立法会で立候補望めばまず資格審査があり当選しても議員宣誓あり何らかの過去に遡るいひがかりつけいくらでも議員資格失効の判定手段あり。かりに議席を守つても圧倒的少数で何ら議決に影響もなく少しでも反政府的発言も許されず。今とりうる選択としたら民主党が変節して政府寄りの中道路線となり、それでは中共に逆らわず存在だけが維持される中国国内の中共と統一戦線を維持する「民主党派」の一つのやうになること。それなら、もう結党以来の民主党の存在意義も何もない。

(明報の1面下段)香港の選挙登記者数は昨年比僅か400人増で18歳から20歳の「首投族」(選挙権得て初めて投票する若年層)が22%と大幅減少で高齢者は増加。香港は選挙権を得る年齢になつて選挙人登記することで選挙で投票できるやうになる。選挙への関心低く登記率は成人の1/3程度といはれてきたが昨今の政治関心高まりで選挙登記者数上昇で殊に首投族の若年層の登記が目立つてゐたのだが香港政府による理想的な選挙制度改革によつて「投票しても票をドブに捨てるだけ」のやうな状況。高齢者の登記増は政治的関心の高まりがあらうはずもなく民建聯とかの議員の唆かしで「ぜひ投票を」に煽てられたか「こゝにサインして」だらう。なにせ選挙となると老人院からマイクロバスで投票所に連行されるのだから。

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国安法施行でもう十分な気がするのだが、それでもまだ基本法23条での治安条例制定が必要ださう。保安局長曰く国安法では罪状にできない犯行を23条立法で補完するのだといふ。具体的には間諜罪や政府機密漏洩。政府の小役人のお粗末な失態をリークすることも間接的に反政府運動への加担ならアウト。或る組織が抗議活動のヘルメットを提供してもダメ←これを保安局長が例に挙げたとき、武闘派が装着してゐたヘルメットは香港警察のものより高機能で、それを提供できる組織を「国家レベル」と形容。「香港民主化運動は米国の後ろ盾ありき」と市役所の保安局長レベルでよくも言及と思ふが考へてみたら、この保安局長自身、米国政府のブラックリストに名前があつた*1のでした。23条立法してアトは社団条例改正をすれば政府に好ましくない団体は組織されただけで法律違反で潰すことができるわけで平和で安定した香港社会の完成も目前なのである。

(社説)香港の自由 「愛国」装う弾圧やめよ:朝日新聞

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▼この週末、清水義範の作品を続けざまに読んでゐた。『国語入試問題必勝法』は表題作は読んでゐたが「猿蟹合戦とは何か」など未読の短編をいくつか。「猿蟹合戦とは」は丸谷才一風の文学論なのだが丸谷先生自身が清水の一連のパスティーシュ作品を喜んでも自分を扱はれた内容には感心してゐなかつたさうで確かに丸谷先生なら「自分ならもつと面白い『猿蟹合戦とは何か』を書ける」くらゐの自負だつたのだらう。講談社文庫『大人のための文章教室』は真面目に書いてゐて面白くないし文章読本など読んで文章が上手くなるはずもない(本多勝一日本語の作文技術』だけは読んでおくと良い)。『夫婦で行く東南アジアの国々』(集英社文庫)もツアーで行つた先の訪問先の細々とした説明ばかりで飽きる。何うせなら紀貫之芭蕉金子光晴とか沢木耕太郎山下洋輔でやつてほしいくらゐ。

*1:林郑市長もさうだが米国に入境したら身柄拘束され米国内の資産は凍結、米国系のクレジットカードも使えない。

水戸の西洋堂

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HUAWEI副会長兼CFO女がカナダで金融問題で逮捕され身柄拘束が解かれ中国に生還。

「没有強大祖国,就没有我今天的自由」

なんて素晴らしい発言なのだらう。まさに、これ。この逮捕がかなり政治的だつたのは事実だが中共も彼女の帰国をこゝまで政治的に演出できるのだから大したもの。深圳の空港には深夜ながら愛国的市民駆けつけ革命歌を歌ひ赤旗振って彼女の帰国を祝つてゐた。強国万歳。それにしても香港にとつては何も騒ぐほどのことではないのだが大公報の一面にかうもデカ/\と報じられるとうんざり以外の何ものでもないだらう。しかしこのタームで重要なのは香港にとつても祖国は一つの大きな家なのである。本当は香港的には「没有強大祖国,就有我今天的自由」だがさういふことをいふと叱られるどころか国安法で逮捕されてしまふ。この牢固な家の家族の一員であることをしつかりと心に銘じて生きていかなければいけないことを大公報は教へてゐる。

香港で天安門事件追悼集会を毎年主催「支連会」解散決議 :朝日新聞

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支連会が昨日、幹部会議開き正式に解散決議。これでついに中国国内で天安門事件追悼は一切駆逐されたことになる。20数年間の香港でのこの運動で「中国の民主化」を香港の自分たちにとつても必須ととる従前からの民主化世論に対して香港本土派が発生したことは興味深い事実であつた。香港にとつて1989年のこの天安門での民主化運動はまことに大きな影響であつた。台湾でも六四追悼の動きはあるが香港以上に台湾の本土派にとつては距離のあることである。

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家人がまるで里斯本のやうな、否、澳門のやうなポルトガル風の夕食を拵へてくれた。

水戸の老舗の西洋料理店・西洋堂(こちら)が10月20日で閉店の由。1ヶ月前の急な発表でご亭主が呟板に書かれてゐたが感染も堪えたが311のあとはもう客足が落ちてむしろ今日までよくやつてきたといふ感だつたさう。かつて西洋堂で会食だとか披露宴だとか水戸で最も堂々としたものだつた。それが、もう昔からのオーセンティックなフレンチが地方都市の旧市街でやつてゆくのは困難な時代。松本の鯛萬(こちら)のやうに松本城とか観光地近くで建物も由緒あるとか金澤や長崎とかならまだしも、である。西洋堂は今の場所に昭和40年代に移る迄はうちと同じ商店街のご近所。今の傾城水戸の東側の道路を入つたところにあつた経営者のご自宅の一角で昭和50年代にはアンジュといふ小さな温かい雰囲気の小さなレストランも営まれてゐた。テーブルクロスの柄が優しかつた。そこがとても好きだつたが今はもう道路拡張でその敷地も残つてゐない。

佐伯啓思「国民主権」の危うさ 佐伯啓思(朝日新聞)

佐伯先生がよくぞ書いてくれた、といふ内容の正論である。保守とは何か。主権の責任意識のない国民。危なげな民主主義。曖昧な民意。それを汲み取る政治家のポピュリズム。この佐伯先生の連載が朝日で始まつて「なんで朝日に」「朝日の変質」ともいはれてゐたが今のアタシにとつては(同時代的なところがあるからだが)丸山真男よりも佐伯啓思の方が納得するとこは大きい。

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陶傑先生離開香港

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米国が中国の内政である香港事務にどれだけ干渉してゐるかを中共外交部が102項目列挙して批判(大公報)。本当に粘着質。102も挙げたならあと6つ増やして108ツで煩悩にでもすりゃ良かつたのに。それでもせいぜい米国のシンクタンク系列の団体が香港の運動団体に助成程度で具体的に中共政権を転覆するための運動のノウハウを示して具体的な壊滅運動に着手の手順書が存在とかCIAの極秘文書暴露とかないと面白くもない。

今朝、顔本で陶傑先生が英国牛津に移住とあつて驚いた。すでにシンガポール経由で英国に旅居の身。

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香港を離れる前に香港の景色をスケッチ画に残した陶傑先生。「香港才子」と称される文人だがさすがに絵筆も見事。改めて敬服。

人間的離合悲歡有如夕照,是短暫的,然而黑夜與白晝的輪迴是永恆的。許多年來在香港寫生無數,要以這幾張心情最複雜。
許多事情年少時不明白,辜負了許多恩典,長大後方有感悟,譬若再識這片養育我們的海山。人生每值霞彩漫處,回眸方知情深。

香港ではもう辛辣でかつ笑ひもある政治評論もできず離港しか選択はなかつたか。

移民是第二次投胎,而投胎的父母不由你選,但移民的國家和地區你可以。若帶同子女,還是你攜同幼年的子女再選擇一次。既然在感性和政治上已經決定,則在理性和經濟上,身為香港人,如果能幫忙我一定幫。其中必以真相、真話、真確為底缐,英國的好處我固然會講,英國的壞處,也一樣會講,希望香港人不論去留,對於這個前宗主國之千面都多一點了解。

為什麼要這樣做?不因為英國,只因為縱有恩怨無限,香港有許多我珍敬的人,有的還活着,許多前輩教過我智慧的已經不在了,香港是生養我前半生的地方。

香港で毎年春秋に開催されてゐる日本留学説明会でも今回は例年にない参加者数を記録で日本語学校と大学に加へ高校も参加してゐたため香港の若者がかなり留学熱高まつてゐることは明らか。もはや香港には住めないといふ覚悟か。80年代の移民潮は取敢へずカナダや豪州で市民権確保して香港に戻り往来しつゝ生活だつたが今回はさらに深刻な状況となつてゐるのは陶傑先生の心情吐露の通り。

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アタシにとつては外に飲みに行くのも誰かとといふのは以前から少なく外でもバーとかパブで独飲がほとんどで家でも日常的に飲んでゐたが古呂奈で自宅にゐることが多く酒の買ひ出しも頻繁となる。今日はやまや(水戸千波店)でいつも通り菊正宗、薩摩の芋焼酎小波とヰルキンソン炭酸水と買つて何か足りないと思ひつゝ帰宅してしまつてビール、サッポロの赤星(大瓶)を買ひ忘れたことに気づき同じ店に行くのもシャクなので「やまや」の水戸石川町店に行つてみる。店内にはかなり酒焼け?とお見かけできる方々が少なからず。皆さん「こんなに?」と思ふほど酒を買つてゆくのはリットル単位の甲類焼酎とか缶チューハイが目立つて多く日本酒や麦酒でも瓶ビールなんて本当にマイナーになつてしまつてゐる。酔へれば良いは一寸残念。

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年に6場所の大相撲が待ち遠しくなり幕下以下の若い力士の勝ち負けまで気になるやうになつたのも古呂奈での在宅から。贔屓では幕下14枚目の大辻君と西三段目51枚目の丹治君(写真右)がいずれも4勝3敗で勝ち越しは何よりだが三段目では最低でも5勝はしてゆかないと番付を上げることも六ツかしいので今がいちばん大変なところだらう。ところで阿武咲関のエピソード(wiki)で(それを見たのは最初「阿武咲」を何う読むかわからなかつた時だつたが)

貴景勝とは親友であり、巡業では昼休憩になると2人仲良く裸になって一緒に寝そべって、携帯電話で遊んでいた。しかし小学生の頃から土俵の上では良きライバルである。貴景勝については、最初はふてぶてしいので大嫌いであったため口も聞かなかったが、2014年11月場所前に出稽古に行ったときに初めて喋ったのがきっかけで友達になったといい、考え方や見方、持っているものの違いから貴景勝と接することは勉強になるという。

ヰキペディアの表現はときどき可笑しなものが少なくないが「昼休憩になると2人仲良く裸になって一緒に寝そべって」はヘンな表現。相撲とりだから裸にまわし姿が当たり前で「2人仲良く裸になって」はないだらう、せいぜい「裸のまゝ」だ。

▼(町田小6自殺)端末で悪口を書いた方法「先生が画面を見られないような状態の時に素早くやっていた」教師の目かいくぐるには「端末を操作して画面を切り替えてチャットが見られない状態に」もオチャノコサイサイでは教師がついてゆけない。 https://t.co/29WBshVsjg

立憲民主党は「辺野古中止・地位協定改定」を公約として現実的外交とするがこの2つを公約にするかぎり睨まれ、仮に政権取ったら今度は大地震じゃなくて富士山爆発 が起きてもおかしくない。それくらゐ日米地位協定金科玉条なのだ。 https://t.co/qhZTMw94MI

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兩地一檢

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香港と深圳のボーダーを「国境」といつてしまつたら、それだけで国安法で逮捕か。老朽化してゐた皇崗の口岸(kŏuàn、今では特区と内地の関所の意)は建替へで「両地一検」となり「越境者には更に便利に」と大公報。「両一」はイメージ的には私鉄からJRへの乗り換への改札でSuicaとか一枚で私鉄の精算とJRの入鋏(ってもう言はないか)が同時に済んでしまふやうなもの。但し現時点ではカードは香港市民の場合はHKIDと回郷証の2枚が必要だが一つのゲートでそれが済む。そのうちHKIDに回郷証がデータで入り更に将来は内地と香港のIDが同企画になるのだらう。これでかつての(今でも羅湖はそれだが)両地両検が15分かゝる通関が20〜30秒で済むことになるのだといふ。高鉄の香港段の完成で九龍站に中国側の出入境事務が出しゃばり「一地両検」実施がかなりの反対運動になつたが特区制度も2047年までで後四半世紀と思ふと遅かれ早かれボーダレスに向かふのは当然のことなのか。

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かつて香港は十月になると一日の国慶節🇨🇳があつて十日には双十節🇹🇼があつて尖沙咀の彌敦道で旗の交代が香港の立ち位置を象徴するやうな光景であつた。それが1997年以降、台湾勢力が中共領の香港で活動は制限多くなり、それでも個人の双十節祝賀の自由は残されてゐた。友人の一人も双十節には数年前まで自宅のバルコニーに🇹🇼旗を掲げてゐたが叱られもしなかつた。辛亥革命国共合作中共の歴史においては正当なのだから。それが香港での逆権運動で中共否定の意味で民国旗が振られ台湾支持が大きくなるにつれ当局は当然のやうにそれを危険視する。それがついに香港市役所の保安局長・鄧某が「国家分裂の意図なしといふのなら何故に双十を慶祝するのか?」と疑問呈して、その忖度でもはや香港では辛亥革命すら記念できず(と明報)。中共でも公史としては肯定してゐる五四運動だが、これの記念祝賀が反政府運動につながることで事実上禁止されてゐるわけで香港では辛亥革命を声高に評価することが叱られるわけだ。

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傾城水戸の店頭で昭和38年製造の日野ルノー4CVを350万円で売つてゐて「高っ!」と思つたがHK$246Kだと換算したら思はず「安くね?」と思へて香港Amexのカードで大人買ひしさうだつた。危ない、危ない。昭和38年なんて東京五輪の前の年で東海道新幹線首都高速道路の建設が着々と進んでゐたわけでユーリ=ガガーリンが宇宙有人飛行で「地球は青かった」も2年前なのにまだこんな美しいフォルムの自動車が製造されてゐたなんて。思はず感涙に咽びさう。家人と一緒だつたので「きれいだねぇ」でため息で終はつたが一人だつたらマジにかなり危ないところであつた。


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傾城水戸の角で家人と待ち合はせしたのは水戸芸術館でピピロッティ=リストなる瑞西独逸語圏出身のビジュアルアートの展覧を見に行くから。最初からわかつてはゐたが招待券貰つたので伺つたがやつぱり苦手な世界。閉館直前であつたが4、5人の参観者は存在。会期が観戦対策の休館で減るに減つて不運な展覧となつてゐる。

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水戸芸術館は古呂奈対策で午後6時の閉館で外に出るともう日が暮れてゐる。人里離れたやうな暗さだがこゝは水府の中心地なのである。薄暗いなか鉄砲町の方に歩くと暗闇のなかに灯りが見える。直侍の入谷ぢゃないんだから。此処はアルコイリスといふ食肆で“Arco -Iris”は葡語で「虹」の由(仏語なら“arc-en-ciel”である)。Notfallerklärungゆゑに店舗での営業は昼だけで夜は店頭に屋台を出して、そこでハンバーガーなど外賣で供してゐるのだといふ。飲食店も厳しい日が続く。常陸牛のバーガーと肉詰を贖ひ帰宅して飰す。


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数日前にNHKのニュースで鹿沼市崎陽軒創業者が鹿沼出身といふだけの理由で鹿沼を宇都宮の餃子に肖りシューマイで売り出さうとあまりに浅はかな気がするが駅前に〈シウマイ像〉設置だといふ。地元出身の塑造家の作品ださうだがあまりに抽象的で、これのどこが焼売なのか判らないが少なくともモダンアートっぽくて水府の駅前にある〈納豆像〉に比べたら百倍素敵である。

清水義範蕎麦ときしめん講談社は表題作や、これに収録される何本かのパスティーシュ作品は読んでゐて、今回は『商道をゆく』『三人の雀鬼』と『きしめんの逆襲』の三作を読む。『商道』は当然、司馬遼太郎で大変可笑しいが『三人の』は阿佐田哲也の麻雀物だがアタシは麻雀が全くわからないので面白いのだらうが珍紛漢紛。『逆襲』はつい『笑犬樓の逆襲』を想像してしまつたが当時はまだ筒井先生のこれは始まつてゐなかつた。

なぜ写真を撮るのか? それは写真を撮る行為は自分の過去と未来に深く関係してくる殆ど哲学的なアプローチであると言って良い。即ち言葉を変えれば自分とこの周囲を取り巻いているこの不可思議な現実と言うのは一体何であろうかと考えてそれを視神経によって記録していく知識の冒険である。#田中長徳