富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

公平と正義に満ちた国


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香港の教育機関で「副学士」を取ればストレートで深圳の大学で本科生に、と大公報。香港では今でこそ大学(4年制)が10に増えたが香港大と中文大が双璧は変はらず高校生の時の人生一度きりの試験の成績で人生が決まつてしまふ。大学進学ができない場合に「副学士」といふ日本でいふ短大のやうな制度があるが大卒に比べ見劣りは明らかで、その副学士から四年生大学に転学希望する学生も多いのだが、これも難関。そこで内地で大学の本科生に、と。かうして内地アレルギーの払拭といふわけ。蘋果日報は香港市役所が米国で8.4千万香港ドル(約1.2億円)浪費して御用論客雇ひ<人権民主法>反対のキャンペーン展開。電通使へば良いのに。また台湾で壹媒体(蘋果日報の親会社)が台湾蘋果日報売却の噂につき「売却検討はまだ初歩的な段階」と報じてゐる。社主・ジミー黎智英は拘留中で集団の資金枯渇もあるなか台蘋なら売却益あるのも確か。追ひ込まれてゐるのは確か。

中共は疫禍などものともせず海南島でボアオフォーラム開催。昨年はさすがに武漢肺炎でそれどころぢゃなかったが今年はもう大丈夫。これが日本なら「疫禍に打ち勝つた証として」なんて謳ふだらうが中国のやうな文明国にあつては防疫などできて当然なのだらう。習帝は米国の覇権主義と反中国キャンペーンでのDecouplingを批判。「政治と経済は別」ださう。アタシが高校のときに習つたマルクス主義では(いま思ふと「政経」の授業で当時はマルクス主義がじつに詳しかったぜ)生産諸力と生産諸関係の総体としての経済構造があつて政治もその土台の上にあつて必然的に制約を受けるわけで経済と政治は別ではないのだが中共マルクス主義ではなく中国の特色ある資本主義なのだ。今更何がマルクスだ、だらう。マルクス主義中共が政権を掌握し覇権を得るための手段にすぎない。国家を政治ばかりか経済まで掌握するには資本主義より社会主義の方がずっと効率的か……あ、やはり下部構造に立脚してゐるぢゃないか……なんて矛盾。中共といへば温家宝前首相が澳门导报なるメディアに投稿で「中国は『公平と正義に満ちた国』であるべきだ」と述べたといふ(読売新聞)。澳门导报のその記事(4回連載)はすでに電子報からも抹消されてゐるが内容について米国政府系のRFA(Radio Free Asia)に詳細記事あり。

中国前总理温家宝忆母亲文章被删禁转载 只因提到“公平正义”(自由亚洲电台) 

温家宝といへば趙紫陽子飼ひで温情的な人柄で人民からも慕はれてゐたが不正蓄財の隠し資産疑惑報道(紐育時報)もあり首相退任後は隠居。北京中心部に豪勢な四合院建築の自宅も有したとか。何ういふ経緯でこの温発言なのか知らないが習帝にしてみれば「蟄居してゐれば良いものを」だらう。函館М記者曰くカネに汚れた穏健派か廉潔な独裁者か、の二者選択なら前者の方がマシ、と。御意。

気候変動対策推進のための有識者会議( 令和3年4月19日) | 首相官邸

世界のものづくりを支える国として次なる成長戦略にふさわしい野心的な目標とすることで我が国が世界の脱炭素化のリーダーシップをとっていきたいと思います。

とのたまふスガ。小6の社会科のテストでも「この首相発言の誤りは何ですか?」に「日本は世界のものづくりを支える国ではない」とわかる子どもは少なくない。「世界のものづくりを支える国」の正解は中国。誤認はこればかりではなく今だに「成長戦略にふさわしい野心的な目標」なんて国力に見合はない、といふかもはや陳腐な20世紀的発想。これで世界のリーダーシップ取らうなんてちゃらちゃらおかしい話。ボアオフォーラムにでも行つて中共への朝貢外交に徹する方が日本にとつての実利がある。

中共といえば日本でのJAXAなどに対するサイバー攻撃で、その実行犯の容疑者が「中共党員」と。だから、それが何うしたのか。本来であれば「中共政府に関連のある人物」なら「やっぱり」である。中共党員なんて日本の総人口に近い1億人くらゐゐるわけで家族も含めたら石を投げたら中共党員に当たる。香港の行政トップすら隠れ党員だといふ噂もあるくらゐ。だから中共党員にレッテル貼つても所為もないのに。党員じゃなくても中共の意のまゝに動くヒトだつて幾らでもゐる。これが「人民解放軍の外部のエージェント」とかなら「おー、すげー!」だが。

トリチウムゆるキャラ」が非常識と非難轟轟で発表当日に引退。「また電通かよ」と冗談で言つてたらマジにこの風評払拭事業の受注は電通。とにかくオリンピックからマイナンバーカード、福島復興までカネが沸くところに電通が群がる。それで昔はどの企画も成功させてゐたが調子に乗りすぎて東京五輪2020以降は何もかもすることなすこと顰蹙かつてマイナスイメージばかり。フツーに考へたら、こんな失敗続きの会社にカネなど払はないが政府がバカだから電通に委託する以外の事業感覚がない。

浅田次郎『地下鉄に乗って』


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大公報報じるのは「外国の月は中国より圓く美しいわけぢゃない」と新西蘭の親中共らしきキモいお兄さんのコメント。北朝鮮に「よど号」で行つてしまつたやうな感じか。蘋果日報は香港で海外渡航なしで初の転移制ウイルスの感染と。

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本日農暦二月初八。初夏のやうな陽気。今日も朝餉から餅を焼いて頬張る。餅と醤油があれば他には何も要らない。

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代々木系病院での血圧と血糖の処方でまだ2週間分の薬はあつたが周末は出かける可能性もあり予め病院で問診を受け2ヶ月薬を処方してもらふ。

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昼は水府は下市の洋食こばやしの今日はカツカレー。米飯が余つてしまつて申し訳ないほど。夕方歯科治療。こゝ数ヶ月かけて前歯の差し歯とブリッヂの治療で差し歯の元歯など劣化もあり、その復旧に数週間を要してやつと見た目もきれいな歯の並びとなる。

▼先週末だつたかの朝日新聞に10年毎の名著といふ特集記事あり1990年台の名著に浅田次郎『地下鉄に乗って』(講談社文庫)あり、さういへば浅田次郎って読んだこともないとわかつて慌てゝ初期の作品『地下鉄に乗って』を読む。思はず惹き込まれる物語だが地下鉄……当時は銀座線と丸の内線だけしかなかつたが、その地下鉄駅に入る毎に起きる主人公を巡る不思議な現象で最初はぐぐっと引っ張られるが、その展開が何度のくり返されると「またかよ」感もあり戦後の新宿の闇市で偶然「アムール」と呼ばれる悪賢い青年の登場で、そこから「あ、結末は……」と察するところもあり、それは当たつてゐたが地下鉄に乗るたびの時代を超へた不思議な体験は、ちょっと「これでもか」で食傷気味になつてしまつたかも、アタシ。

地下鉄に乗って 新装版 (講談社文庫)

新井一二三『中国語は楽しい − 華語から世界を眺める』(ちくま新書)


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香港で変異型ウイルスに感染してゐた男性が感染後8日市中漫遊してゐたさう。大公報と蘋果日報は同じ記事だが蘋果は記事本文読まないと、この感染者が男性でインド籍だとわからないが大公報は見出しから「印度男」。かうしたところで人権感覚の有無が問はれる。

▼本日農暦三月初七。昨夕から降り出した雨は今朝までに45mmの降雨量。今日は終日強風で最大瞬間風速は18.9mであつた。未明に目覚めて小林信彦『名人 志ん生、そして志ん朝 を読む。落語の〈寝床〉の不条理さに気づいてゐた人は小林信彦をして「ぼくの知る限りでは」と山下洋輔氏の名前が上がりエッセイ「ベートーヴェンは笑わない」で、それに触れてゐる、と。昨晩まで読んでゐた本のことが出てくるとは。


昭和36年志ん生は倒れて奇跡の復活を果たしたが「病後」はもう昔の志ん生のやうなキレはなかつた。その志ん生が倒れたときのことは知らなかつたが昭和36年12月15日で、この日は読売巨人軍の優勝祝賀会があり志ん生はそこでの営業。川上監督送迎の車が渋滞で遅れ監督を待たず宴会は始めることに。志ん生が宴会場に設た山台の高座で一席始めるタイミングで巨人軍選手の家族めらがバイキングで料理めがけて皿をもつて押し寄せて落語どころぢゃない。志ん生はそこで喋り始めたがかーっとなつて間もなく意識を失つたのだといふ。つまり志ん生といふ落語家をダメにしたのは巨人軍であり讀賣新聞といふことになる。それにしても昭和36年末で岩戸景気が終はる頃。巷間ならまだしもプロ野球で巨人軍の選手の家族ともあらうものが配給ぢゃありまいにパーティで料理に群がるとは何とはしたないことなのかしら。ところで直接、志ん生志ん朝に関係ない筋なのだがジョン=レノンが歌舞伎座歌右衛門の〈隅田川〉に涙したといふ話(木村東介)。

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水戸の瀬戸物の老舗・十銭屋さんでいたゞいたお餅を焼いて頬張る。これがじつに美味かつた。あまりに強風で外に出るのも厭ひ肩の凝らないところで水道橋博士の『藝人春秋 』と『藝人春秋2 ハカセより愛をこめて』を読む。

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もう皐月賞である。競馬新聞ではアドマイヤハダル、エフフォーリアとダノンザキッドを選んでゐるが1番人気のダノンザキッドを外してタイトルホルダーを入れて三連単。エフフォーリアが横山(武)騎手の見事な手綱捌きもありデビューから無敗のまゝ4連勝。近年ではディープインパクト(05年)、サートゥルナーリア(19年)とコントレイル(20年)に続く快挙。横山騎手は祖父からの三世代で皐月賞。これも大したもの。ダノンザキッドはブービーでタイトル2着、ルメール騎手のハダルが最後直線で3着に食ひ込むか!と息を呑んだが伏兵のステラヴェローチェが3着。


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このChristofleのワイングラスはもう30年以上使つてゐるのだつた。細かい傷一つないのだから我ながら大したもの。今晩はこのグラスで「気分は維納」でGrüner Veltlinerの白葡萄酒をいたゞく。 

旺盛に執筆活動続ける畏友の一二三同志がちくま新書で『中国語は楽しい』上梓された。これも今日やつと読めた。全くの中国語初心者から中国の政治思想に興味あるレベルの方まで楽しめる内容だが特筆すべきは第3章「中国語で「中国語」は何と呼ぶ?–始皇帝と毛澤東をつなぐ中国語史」で、これは中国語といふ言語を俯瞰的に理解する上でとても大切なことが書かれてゐる。そして第5章「漢字の創造は中国版「バベルの塔」という以上の原罪にあたり……」の下り。

世界に冠たる華麗な中国文明を開花させた中国知識人たちを象徴する「漢字」には、不思議なことにその始まりからなぜか一貫して、悲しき予感がしみついているのである。

これはチュウゴクジンが漢字によって授けられたしまつた文明的呪縛。良いとか悪いとかぢゃない。漢字がなかつたら、あんな〈帝国〉は始皇帝から中共までできない。その漢字の呪縛から地理的な幸いで逸脱できたのが新加坡の華人社会であり台湾なのか。香港は粤語表記に目覚めてしまったがために中共🇨🇳に睨まれるわけで。昨年この執筆中に香港の広東語の白話ばかりか「書き言葉」としての普及についていくつか確認があると連絡をいたゞき、それに答えたりしてゐたら、この本のあとがきで香港研究の専門家・倉田ご夫妻に続いて迂生に謝辞をいたゞいてしまひ恐縮するばかり。

成田屋のマメなネット投稿で偶然見かけたが倅が十一代目の面影があつて驚いた。この子からすると曽祖父である。歌舞伎といへば日本俳優協会が毎年出してゐる『かぶき手帖』だが2021年版の案内がないので協会に問い合はせたら昨年からの休演続きもあり21年版は休刊とするのだといふ。確かに20年版からのアップデートといへば播磨屋の〈須磨浦〉と海老蔵ファミリーでの演舞場占拠くらゐしかないかも。


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山下洋輔『ピアニストを笑え!』


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香港民主化運動の重鎮ら一斉に国安法で有罪判決。一昨年の大規模デモ組織したといふが彼らが一部呼びかけ人に名を連ねてゐようがゐまいが数十万人は自分の意思でデモに参加してゐたのであつて彼らの責任など問へはしない。これが具体的な暴力行為を扇動しただとか中聯弁包囲を率ゐたとか何もない。だが象徴的リーダーであるから見せしめに有罪となる。

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蘋果日報社主・黎智英は他にもいくつかの罪状が上げられてをり「米国からの活動資金提供」でもあれば終身刑もおかしくない。中共にとつては天安門事件が契機で反中共メディア創設などしたジミー黎が「国内」にのさばることなど絶対に許せることではない。何らかの形で米国からの資金が彼の運動にカンパされてゐてもおかしくはないが少なくともCIAからの資金で反中運動するやうなダミーでないジミーであることだけは確か。

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選挙活動でなど顔を合はせれば笑顔で気軽に話をしてゐた人がかうして政治犯実刑判決で収監されるとは。梁耀忠元議員とはランニングの大会に出るとだいたい同じペースで走つてゐた。

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 一昨年の818は当局が許可したのはあくまでヴィ公園での抗議活動で遊行は不許可。それまでの抗議活動が過激になつてゐたことに対して 「和理非」が唱へられ、この日は黒蟻君たちも非過激な抗議活動に徹底したのである。この日の抗議活動では取り締まるには「生ぬるい」と判断された結果が831に至るのか。当時も何うも疑ひ深かつたが今になつて思ふとうやはり昨日有罪となつた民主派の大物たちではなく2019年の抗議活動を不安なものにした偉大なる演出家がゐたのではないかと思へてくる。警察が抗議デモを一切取り締まらず、やりたい放題にしておくなか運動は反特区政府から反中央政府に仕向けられ国家転覆といふ罪状が用意されてゐたのかも……泛民主派も「まんまと」嵌められたもの。中共の方がずつと上手だつたのだらう。一昨年の818の日が雨だつたことは朝日新聞の社説も書いてゐるが、この日の悪天候はどこか不安なほどで「運動」全体の雲行きの怪しさを予感させるものであつた。富柏村日剩20190818(こちら)。

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夕飯の前に家人が厨房で料理するなか、そこで何も手伝はずに立ち飲みとは失敬な。でもこれがとても美味しいのだから。

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日光「吉田屋」の羊羹

家人が図書館から借りてきて山下洋輔著『ピアニストを笑え!』(晶文社)を何十年ぶりかで再読。先々週の土曜日にリサイタルで尊顔を拝した御大は老禅師のやうだつたが、もう半世紀近く前の山下洋輔は荒削り。欧州に修行のやうなツアーを仕掛けサックスは坂田、森山のドラムで暇さえあればポーカーとか博打でラリパッパ。

農家と木を左側に、森を右側におく視点でなにかが起きた。その景色が固定された。農家の赤い屋根が、目に見えない布でふかれた。一瞬、景色全体がキラリと光って、おれの中に入ってきた。すべてがあるべき所にあった。視線を近くに移す。コップ、皿、グラス、ワイン、豚の残骸、すべてが完璧に配置されていた。ジミー、森山、坂田が並んで座っている。、完璧な構図だった。ポショコが隣の婦人に話しかける。その表情、口調、そうでなければならなかった。
すべてのものが、完璧に配置され、その配置のされ方の意味がおれには分かった。皿とコップの間の距離が、ある十代なことをおれに語っていた。グラスの中でゆれる木の葉の影が、そうだそうだといっていた。

それが公然と?活字に出来たのだから。それにしても美談の数々。北海道でのツアー。北見から飛行機で札幌。鉄道で室蘭へ。室蘭駅のホームで停車中の列車の食堂車に新宿でのライブの常連氏を見つける。走り出さうとする列車の窓を叩き3秒ほどの奇遇。室蘭でのライブの翌日、洞爺湖に遊んでゐると大雨で室蘭からのフェリー欠航と判り洞爺湖の鉄道駅で慌てゝ青函連絡船の切符を買ひ求め夜中に青森へ。ホテルでメッセージが届いてゐて封を切ると五木寛之からで「同じホテルにゐる、明日会はう」。或る雑誌で二人の対談が企画されてゐて日程調整中だつたのだといふ。それが偶然に青森で。携帯電話もネットもない時代に、かうした「成り行き」がステキ。この晩も夜中に山下洋輔トリオはポーカーとオイチョカブである。面白いのは雑誌に掲載された当時のエッセイをまとめた本とはいへ欧州ツアーのほとんど同じ話がこの本の中に二度出てくる。この本での後先からいふと『宝島』(1975年3月号)の「さらば碧眼聖歌隊」と『ライトミュージック』1974年7〜75年6月号の連載「コンバットツアーⅡ(海外編)」。ふつーならほゞ同じ内容でどちらかを削るところだが両方掲載されてゐるのは前者がフリージャズで後者は十分にエッセイとして残る小慣れた筆致ゆゑ。山下洋輔まだ三十そこ/\である。

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ピアノの弦が切れるのは、山下洋輔は過激にピアノと格闘してゐたから、それが原因と思はれるフシもあつたが、山下さんは、それは単にハンマーと弦がぶつかり合ふ衝撃の強弱だけによるものではなく「鳴らされたすべての音程の全体としての振動の仕方」とも関係があるのではないか?と書いてゐた。つまりは一種の殺人音波と同じこと、と。

全民国家安全教育日


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香港は本日「全民国家安全教育日」。香港警察の警察学校も開放日で、そこを見学した小学生は訓練用の地下鉄車両を模した施設で模造銃でふざけてみせる。一昨年の831の太子站での警察の暴力沙汰を彷彿せざるを得ず。警察の開き直りの狂気。

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香港警察トップの鄧某が「トップ逮捕された某マスコミなど国安法違反なら代償払はないといけない」と公言。蘋果日報にはさんざん顔に泥を塗られ私怨もあらうが警察トップにこんな発言が許されるのだから中共内地よりも劣化はひどいか。「香港の自治を毀すのは一部の香港市民自身である」(クリス=パッテン)。

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その警察トップ暴言に呼応するかのやうに大公報も国安がため、それを破壊する蘋果日報を取り締るべき、と。 何うすればこんな警察国家になるのかしら。


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日本沈没


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今日は香港は「全民国家安全教育日」でさまざまな愛国イベントが開催されるさう。あの自由といふか「ルールがないことがルール」のやうな香港がこんなオーウェル的都市にならうとは。家庭内暴力を1面で報じる蘋果日報はそのトップに民研の調査で民主派市民の61%が選挙では白票投じるといふ結果だと。白票投じるやう煽ると犯罪。これについてのアンケート調査、そして報道もそのうち禁止か。ぎりぎりのところでの抵抗。さうした社会不安がない世の中を希求するのが国家安全か。

成田悠輔「コロナ失策からの発見 崩れる民主主義の常識」朝日新聞

民主主義は奇怪な制度である。誰が、人の生活どころか生命さえ左右する致命的な決断を、どこの馬の骨ともしれない街頭の一般人アンケートに委ねようと思うだろう? 実際、つい最近まで民主主義は眉唾だった。アリストテレスが紀元前に書いた『政治学』も言っている。「過激な民主制からも独裁制は生じる」。

と、この論説は過激に始まる。思ひ出すのはウィンストン=チャーチルの「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」。

封建領主や貴族の横暴はひどかった。けれど、民主主義が可能にするマスの横暴がそれよりマシだと信じる理由は実は薄い。マスのふところに飛び込むことが政治の標準規格となったのはここ200年余り、若く特異な現象だ。
しかし、ここに来て民主主義への疑問が再燃している。格差と憎悪の拡大、SNSによる情報汚染、ポピュリズムの台頭……だいぶ前から危機にさらされてきた民主主義に、とどめの一撃が加わった。コロナ禍だ。

民主主義の象徴・米国での感染抑制の失敗。武漢から新型コロナが発生した中国は日常を取り戻して防疫の成功を誇つてみせる。米国の失敗と中国の成功。「これは民主主義が呪われた制度だと暗示しているのだろうか?」。民主主義こそ人命と経済を殺めた犯人なのか。実際に「世論に耳を傾ける」民主主義的な国ほどコロナで人が亡くなり経済の失速も大きく、逆に専制的な国は封じ込めに成功し経済の打撃も小さい。まるで「民主主義がコロナ失策を引き起こしているよう」。なぜ民主主義は失敗するのか?「何をすべきか政治家はわかってるんだ。すべきことをしたら再選できないこともね」。(ジャン=クロードユンケル・元EU委員長)

感染症の流行やウェブ上の情報流通など、いま世界が直面する最大の課題群には共通点がある。人の日常的な認知能力を超えた速度と規模で問題が爆発することだ。超人的な速さと大きさで障害物が現れる世界では、凡人の日常的感覚(=世論)に押し流される民主主義はズッコケる運命にあるのかもしれない。

複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」(アルベルト=アインシュタイン

複利のように倍々ゲームでウイルスやフェイクニュースや誹謗中傷が社会を覆い尽くすようになった。だが先進国の人々が受ける義務教育は何十年もほとんど変化がない。その結果、人類はどんどん「知らない人」になっている。人類全体が民主主義を通じて利息を払わされているかのようだ。
近代社会の経験則は「民主的な国ほど生命は安全で経済は成長する」だった。この常識が崩れかけている。民主主義を諦めるのか?人の脳内を改造するのか?技術環境の規模と速度にストッパーをかけるのか?政治の土台をどう作り直せばいいのか、私たちは文字通り命がけの選択を迫られている。

(時代の栞)小松左京『日本沈没』1973年刊 - 災害と戦争の記憶をSFに:朝日新聞

子どものときに映画『猿の惑星』でラストシーンを見たときの衝撃。そして『日本沈没』は怖かつた。どんな繁栄も最後はかうなつてしまふのか。

僕は「本土決戦」「一億玉砕」という言葉に死を覚悟していた、あの絶望的な日々は忘れることができない。玉砕だ決戦だと勇ましいことを言うなら、一度くらい国を失くしてみたらどうだ。だけど僕はどんなことがあっても、決して日本人を玉砕などはさせない。(小松左京

「あまりにも情けない戦争」をした日本への憤りと「毅然とした自己犠牲」を貫いた日本人への敬意と誇り。小松左京の内面には相反する二つの思いが渦巻いていたいふが片山杜秀先生は「小松の中にあったのは「総力戦」への拘りであり『日本沈没』はそれをシミュレートする壮大な思考実験だった」と分析する。

島国の国土に守られてぬくぬくと過ごしてきた日本人が本当に成熟するに、国自体が消滅するほどの危機に直面し今度こそ国民一人ひとりが全力を出し尽くす「真の総力戦」をやり遂げるしかない……そんな思いが(小松左京には)あったのでは。(片山杜秀

あれだけの誤謬を犯して焦土となつた敗戦。それでも近代市民革命は起こらず漠然とした「國體」が護持されただけ。ゴジラに首都破壊されても「こゝからまた再建してゆく」といふ希望ばかりで思考回路は何も変はらないのだらう(シン・ゴジラ)。あの時もゴジラは皇居は傷一つつけなかつた。311の東日本大震災と核禍は、これで日本も変はるのではないかと痛い思ひだつたが国土強靭化は土建だけ。東京五輪でおめでたく復興が謳はれる(だから中止すべき)。そしてかつての一等国はもはや今日日の疫禍では防疫すらまともにできない現実を露呈(だから東京五輪は中止すべき)。まさかこんな形で「日本沈没」が現実にならうとは。

▼一昨日、水府の町名で「まち」と「ちょう」について書いて「まち」が城下の中心部にほとんどなことまでは書いたが偶然に水戸市立図書館デジタルアーカイブで3月下旬に水戸城下絵図が公開されてゐる*1のを見つけた。「まち」も「ちょう」も総じて「町」とする地図もあれば逆に「丁」とする地図もあるなか「天保12(1841)年以降」とされる地図(こちら)だけは丁寧に「町」と「丁」を書き分けてゐる。仲町、大町、南町と「町」が水戸城西に南北に並行して鷹匠町もある。二の堀を渡り備前町もある。それでも現在「まち」と呼ばれる金町と大工町は「上金丁」「下金丁」と「大工丁」(旧町名の西町も西丁)になつてゐるた。

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この千波湖がまだ埋立てで小さくなる前の水府城下は那珂川千波湖に挟まれた、まさに水府でまことに美しい。堀と運河。お城の東がまさに「城下」の商人町で水害もあり次第に武家屋敷の並んだ城西の高台も商業地として開けてゆく。

*1:郷土史に詳しい畏友J君によれば、今回公開された城下地図は少々考察が必要だといふ。明らかに後世加筆されたものもあり表題の年代もその通りかだうか。

農暦三月初三


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中共中央の香港選挙制度見直し決定で香港市役所が準備する選挙制度の見直しは選挙区区分から。もはや反政府派は絶対的に2割にも満たない議席しか確保できないのだが念には念をいれて立法会の地区選挙でも民主派2議席なんてことのないやうに。また選挙では反政府的な候補は立候補すらできない茶番選挙で国安法で反政府抗議活動も制限されるなか期待される抗議の意思表明は選挙で棄権か白票投じることくらゐ。それに対して市役所は選挙で棄権、白票を扇動する行為については3か月の禁固刑まで用意検討だとか。ある面全てが後手後手。用意周到に見える悪意ほど実は悪意だけが目的で戦略も戦術も疎かになるもの。

香港民主活動家 マスクして反政府デモ「違法」で実刑禁固4か月:朝日新聞

そもそも覆面禁止条例ぢたいが粗忽な発意。これを制定したら新型コロナでマスクしなければいけなくなり、そこで抗議活動ぢたいを取り締まる法律が必要になった……と談志なら総じるだらう。ジョシュア=ウォン君がこの罪でも有罪に。一昨年11月の高裁判決は覆面禁止条例は「市民の権利を必要以上に制限してゐる」と判断したが1年後には最終裁はこれを覆しての有罪。裁判もすつかり政府にとつては自家薬籠中のもの。とにかく国家転覆を図つた(といふことになつてゐる)彼なのだから、どんな行為でも罪となる。これも悪意に基づく正義。

(感染防止)トイレのハンドドライヤーOK:朝日新聞

昨年からのコロナ狂騒曲で、このハンドドライヤー不使用と並んで首を傾げさせられたのが「ウイルス感染防止のためにトイレはフタをしてから流しませう」だつた。どこまで実際の効果があるのか。風評じゃなくて天下の東京ガスTOTOにきちんと問ひ合はせて、こんな情報を出してゐた。

 結局、新型コロナで抜本的な防疫対策ができないなかで「ミクロの理性」でハンドドライヤー使用禁止や「便器のフタは閉めて」が提案され誠実な国民はそれを実行する。それをしたところで感染防止にどれだけの効果があつたのかわからないが、さうした善行の大切。それで感染が収まらなくても根本的な問題解決の方法は探れもせず。大阪が2日連続で感染者数千人突破で感染蔓延でも「蔓延防止」云々でスガや専門家が「レベル4といつてもおかしくない状況に近づいてゐる」と言葉濁して終はる悪夢。

本日農暦三月初三。それにしても夜遅くまで終日続いた下雨。天気予報では朝少し雨が残る程度といつてゐたが朝からひどくなり1時間に10ミリ、計48ミリの降雨。夕方は風も強く傘が折れさうなほど。

高田文夫『私だけが知っている 金言・笑言・名言録』新潮社 読む。新型コロナ対策もあまりにおバカで理性を保つにはアタマの凝らないものでも読んでゐるしかない。

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他にも「我が家の姉も色づいてまいりました」とか三宅裕司夫人のパーティ会場で「あそこが立っているのがうちの主人です」とか素直に面白い。それにしても談志は「落語を現代に」はクリアだつたが「業の肯定」で何か深淵に入つてしまつて、そこから「イリュージョン」なんて。それが最後「江戸の風」になつてゐたさうで、それがいちばん落ち着くか。それにしても談志師匠逝去での毒蝮三太夫の「よく焼いとけよ、また生き返ってこられたら、たまったもんぢゃねぇ」が良い。親愛に基づく罵倒の調和。

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池澤夏樹「青春と青年と中原中也岩波書店『図書』より