富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦二月初三

農暦二月初三。小雨の土曜日。時折、強い通り雨。

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薄ら寒く晩に韮と大根おろしの鍋ぐつぐつと豚肉のしゃぶしゃぶ。ドソノ『夜のみだらな鳥』読み始める。

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もう何年も前に筒井康隆朝日新聞の読書欄で連載していた「漂流 本から本へ」で「読んでるうちにだんだん気が変になってくる」と筒井氏が言うくらいだったが本当だ。

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これでドソノの奇想天外なこの物語を知つたが1976年の集英社・世界文学全集の一冊は廃刊で古書で値もはつたが今年二月に別の出版社から復刻された由。

blog 水声社 » Blog Archive » 2月の新刊:夜のみだらな鳥《フィクションのエル・ドラード》

農暦二月初二

農暦二月初二。氷雨。党紙『大公報』は連日、大湾区についての喧伝甚し。

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王志民在十三屆全國人大二次會議香港代表團審議政府工作報告時的發言 https://t.co/h4NUgEloWE 堅守“一國”之本 善用“兩制”之利 加快建設粵港澳大灣區美好共同家園

もはや香港の一国両制など付き出しの扱ひなり。広東省珠江下流の大湾区あつての香港。

テレビはなるったけ見ないやうにしてゐるが、ふとBSの日本映画専門chで昭和39年の『モスラ対ゴジラ』見てしまふ。片山杜秀的に伊福部昭の音楽を聞きたかつた。作品としてはモスラの幼虫が東京タワーで蛹から孵化する昭和36年の『モスラ』が秀でる。


原作が中村真一郎福永武彦堀田善衛って、どこの文芸誌か、と思ふがモスラなのだ。こちらの音楽は古関裕而。それでも『対ゴジラ』も伊勢湾台風、南洋の核実験、干拓地の開発にレヂャーランドと昭和30年代の時代的社会背景を見事に描き人々は相互の信頼と希望で平和に幸せになれる、といふ理念に満ち溢れてゐるのだから。自衛隊もまさにゴジラといふ敵から我が国を防衛する任務に忠実で、そこに丸腰平和論もない。つまり「矛盾は承知」で保守的な戦後日本の理念に基づいてゐる。映画は見出すと止まらず続けて小津の『浮草』も久しぶりに見る。

昭和34年で主人公の旅芸人演じる先々代の鴈治郎はアタシがこの映画見た時には随分と老けた役者だと思つたが撮影時56歳とは。夏の巡業で伊勢志摩の集落で一膳飯屋営むお芳を訪ねるシーンが素敵だが鴈治郎は杉村先生と十数年ぶりの再会なのに見世の奥の座敷に先づは「上がって」といはれ「一本つけてくれ」と猛暑の最中、お燗。冬でも冷酒(れいしゅ)で、酒を「冷やで」どころか「常温で」といふと「レイシュですか?」と言はれる今日日からすると「夏に熱燗」に驚くが酒は冷酒(れいしゅ)どころか冷酒(ひやざけ)も映画では旅巡業先の芝居小屋で楽屋酒がそれで客に冷酒を出すことへ憚られたもの。久が原T君に言はせれば火事見舞ひの酒も「見舞ふ方は燗酒差し入れ迎ひには逆に冷や酒を供されるのが定法」と。そこから火事見舞ひといへば「富久」で黒門町の、といふ話になり、これも久々に寝しなに黒門町の「富久」を愉しむ。

アタシの若いころも薄給でカネ使ひは荒かつたがアベノミクスの好景気wの下、40代で貯金ゼロだとか平均で200万円下回る預金高とは。このまゝ彼らが年老いてゆくと思ふと大変な時代に。

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農暦二月初一

農暦二月初一。小雨。阿武隈の紅葉漬けで朝餉、幸せ。

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かつては阿武隈川を産卵のため川上りする鮭を獲り冬の間の貴重な保存食として麹漬けにしたといふが近年は(といつてもだいぶ前からだらうが)気候変動で阿武隈の鮭川上りも減り鮭の産地は別か。それでも核禍思へば別産地で、この美味なる麹漬けも「あり」かも。

アベノミクスがアホノミクス©浜矩子なのは明白な事実だがアベノミクスに効力あり、平成の長い好景気と吹聴に国民も「安倍さん以外に適任がゐない」とアホな消極的支持。さすがに厚労省の調査粉飾も問題になり景気判断も下げざるを得ずアホノミクスも限界に来てゐる。それでも

国内景気「緩やかに回復との認識に変わりない」と官房長官・菅某:日本経済新聞 https://t.co/B6maRPqdj8

なんて嘯くのだから。中共も今まで欺瞞とされた経済成長の陰りを認めてゐるといふのに。

樹先生のこれ、パリコミューンの失敗について。パリコミューンはマルクス曰くまさに「ついに発見された(非権力階級による理想的な)政治形態」であつたにもかかわらずではなく、そうであったがゆえに血なまぐさい弾圧を呼び寄せ、破壊し尽くされ、二度と「あんなこと」は試みない方がよいという歴史的教訓を残したというものです。パリ・コミューン以後の革命家たち(レーニンもその一人です)がこの歴史的事実から引き出したのは次のような教訓でした。
パリ・コミューンのような政治形態は不可能だ。やるならもっと違うやり方でやるしかない。
で、それがレーニンによりボリシェリズムに再構築されるのだから何たる因果。

レーニンは、生産手段の社会化が達成されるとともに、搾取階級は廃滅され、国家は死滅するという明確で断固たる原則から出発する。しかし、同じ文書の中で、彼は生産手段の社会化の後も、革命的フラクションによる自余の人民に対する独裁が、期限をあらかじめ区切られることなしに継続されることは正当化されるという結論に達している。コミューンの経験を繰り返し参照していながら、このパンフレットは、コミューンを生み出した連邦主義的、反権威主義的な思潮と絶対的に対立するのである。マルクスエンゲルスのコミュ―ンについての楽観的な記述にさえ反対する。理由は明らかである。レーニンはコミューンが失敗したことを忘れなかったのである。」(Albert Camus, L'homme révolté, in Essais, Gallimard, 1965, p.633)

アルベルト=カミュにかのやうな卓見あつたのか寡黙にして知らず。

農暦正月晦日

農暦正月晦日啓蟄。曇。小雨。昼に大雨。黄色警報。

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晩に自宅でハッピーバレーの競馬をするが結果惨憺たるもの。

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福島からの知己が贈つてくれた「ままどおる」頬張る。

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1ヵ月に海外通話が1本しかも日本に電話して6分話して60円……母と電話するのもLINEの今。昔は1ヶ月に千ドル単位。この支払ひ、郵便で請求書を送つてきたら、もう利益は無いのでは?

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大丈夫か、日本相撲協会……

知識人とご養子

農暦正月廿九日。曇。晩に、もう寒くもないのだがキムチ鍋。いくつもの新聞や文芸誌にドナルド=キーン翁と橋本治の追悼記事が載るなか毎日新聞に鳥越文蔵先生のこれ。文蔵先生まるで人形劇に出てくるインテリのおじいさまのやうで可愛らしいったら、ありゃしない。

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そして都新聞にはキーン先生ご養子の雅己さんの話。キーン先生生前最後の言葉が「君は僕にとっての全てだ」。養子とはいへなかなか父が息子にいへる言葉ではない。平成に折口信夫父子あり平成にドナルド=キーン父子あり。日本文学史上に名を残しキーン先生も本望か。

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農暦正月廿八日

農暦正月廿八日。早晩に中環。上環に近い白耳義酒場FritesにてLeffe啤酒飲みながらM君を待つ。まはりの客は皆むしゃ/\とムール貝啜つてゐるのだが隣の三人など0.5KGで供されたムール貝を一皿ぺとりと平らげ、それが前菜で何か他のものを食すのかと思へばムール貝二皿目(更に少なくとも私らがゐる間で三皿)。私らも二杯目の啤酒で0.5KG注文したが女給に「二人でそれぢゃ少ないわよ」といはれ1KGを注文したが、もうそれでお腹いっぱい。

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香港で豪州産ムール貝は安からず0.5KGでHKD250で1KGで350也。仙台で学生時代に近所の魚屋で「三陸沖で今朝上がったムール貝だよ、持っていきな!」と勧められキロ700円くらゐだつたと思ふが学生の身分でバターと大蒜で炒め白ワインをさっとかけて何て美味しかつたことか。このFritesではクリームソースや何とかトッピングばかりで、やはりシンプルな食べ方がアタシ好み。湾仔のバーMへ。先週ふと立ち寄り財布を官邸に忘れ恐縮ながら売掛けになつてゐたので、それの清算もあり。小雨が本格的な雨となつたが家に帰ると夜半に大雨で雷鳴轟く。

▼やはり柄谷行人は、よくわからない 週間読書人2019年3月1日号 https://t.co/JqStKod3mj

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農暦正月廿七日

農暦正月廿七日。日曜日。朝、驟雨。「モバイルSuica」なるもの確かdocomoソフトバンク等、特定のケータイ会社販売する須磨帆しかもAndroid系ですか利用できないと思つてゐたが日本もやつとSIMフリーとなり何れの須磨帆でもアプリインストールで使へることを知り早速手続き。

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Suica付きのJR東日本のViewCard所有してゐたので、それで紐付きにできると安易に考へたら「取り込めないクレジットカード」に、これ(Suica付きViewCard)が指定されてゐて何とも……。NHKで昨日再放送された昨年のNスペ「大江戸」3回分をまとめて見る。

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オーストリアで見つかった幕末の江戸の街並みの写真と、それを元にしたCGによる立体画像は見事だつたが第1回は家康が築いた水の都、第2回がその江戸を繁栄させた商人たちの努力、そして第3回が度重なる大火と、その復興といふ多少なりとも江戸好きには目新しい内容でもなし。これも国営放送一連の2020東京新五輪に向けた東京気分高揚宣伝番組の一つ。50分番組3回で150分だが松平健がマスターの江戸趣味の喫茶店での寸劇を飛ばして見れば100分ほどだつたか。松平健といふ役者、喫茶店のマスターでは精彩欠くが話に夢中になると家康や鰹節「にんべん」の伊藤屋忠兵衛、火消しの親方になると突然ニンが映えるのは、この人ならでは。午後、ジムで珍しく筋トレ。昨日ひょんなことで右背筋をおかしくして昨晩から筋痛に悩まされジムのマシンでトレすると痛みも大分解消。太古のHotel Eastの前に、よく見るとロビーにも何だか澤山の低頭族がゐて何かと思へばPokémon Goなのである。


 別に他人の趣味にあれこれ言はなくてもいゝが日曜の夕方に何だかの拿捕のために時間を費やすのだから大したもの。晩に新暦お雛祭りだからかちらし寿司。昨日の東テレ「アド街ック天国」で博多天神を見る。先週の「水戸」に比べるとネタ多し。
▼鰂魚涌でSwire財閥のTaikoo Placeは古い工業大厦を毀してオフィスビルの建て直し続きOne Taikoo Place(旧 Somerset House)竣工で、これが既存のLincoln HouseとOxford Houseに空中回廊で繋がつた次第。

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残るは旧 Cornwall HouseとWarwick House跡地に建設中の二棟、多分、Two & Three Taikoo Placceになるのだらうが、これが建立されると次は唯一、空中回廊で連結されてゐないBerkshire Houseが気になるが、このオフィスビルは一連のSwire財閥のこゝ四半世紀の都市再開発コンセプト以前の設計のビルヂングなので早かれ遅かれDemolish & Buildで、それまでは孤立なのであらう。

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Oxford HouseはかつてTaikoo Placeの中心部からCornwall Houseを経て迷路のやうに繋がつてゐたが新同樂魚翅酒家もあり何度か訪れたが空中回廊で、この大厦に辿りつくといきなり屈んだ全裸の男性がまるで肛門露はに尻をこちらに見せてゐるので、いくらブロンズ像の芸術作品とはいへ、これをこゝに置いたSwire財閥の勇気に感動すらするが、この数年この大厦が孤立してゐたので久々に訪れ、この羞恥像と再会。 

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▼藻岩浩介(時代の風)辺野古埋立強行「歴史と教養に学べ」毎日新聞(2019年3月3日) https://t.co/t9LJv1xzWg

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