富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦正月廿六日

農暦正月廿六日。曇。土曜。燈刻に家人が野暮用あつた中環の大舘(旧中央警察署)で待ち合はせ。何だか中身は空疎な感じする歴史的建物の文化商業利用の空間だが賑はひあり。Hollywood Rd歩いてすぐのFCCで早めの夕食。


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家人と二人で道すがら「何を食べる?」と話してゐたら偶然に二人ともハンバーガーだつたのだが食譜のハンバーガーの項目に“US Beyond Buger™ ”美國未來漢堡なるものあり何かと思へば「大豆やエンドウ豆などを主原料として植物だけを使用して「本物の肉と全く同じ味の食品」の開発を目指して」と何やら薄気味悪い。菜食なら肉を喰ふな、である。帰宅して早寝。

世界でもっとも正確な長さと重さの物語

世界でもっとも正確な長さと重さの物語

 

メートルはかつては「地球のパリを通る北極点から赤道までの長さの1000万分の1」とされたが誤差あり今では「真空中で1秒の299,792,458分の1の時間に光が進む行程の長さ」とされ、時間もかつて「1秒は1日の86,400(60秒×60分×24時間)分の1」だつたものが今では「セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9,192,631 770倍に等しい時間」となつた。かうした自然そのものの性質である基礎物理定数に基づき計測基準を定める努力に対して今でもまだ未解決は「質量」でミクロ世界の自然現象から定義してマクロ世界で使へる単位にすることの困難で1kgは「最大密度温度での1 Lの水の質量」でフランスにある「国際キログラム原器(IPK)の質量」が世界基準のまゝ。アタシが理系の本を読むのも珍しいが度量衡、それの世界共通水準の定着がいかに政治的なことか。最初にメートル法が生まれたのが法蘭西革命。法蘭西はこれを国際基準とすべく、このメートル法を法蘭西の国家「所有」から国際度量衡委員会に権利を委ねたのは、まさに基本的人権であるとか理念を普遍的に世界共有のものとしようといふ姿勢。これは国家から国家連合へといふEUの理念とまさに同じ。それに対して英国が、その国際基準に同調せぬのも正に英国のEU離脱問題と一緒。そしてメートル法を未だに国家での単位とせぬのが米国。ちなみに英国は国内はまだ英国の度量衡を用ゐるが1884年メートル条約に署名し輸出品などはメートルで、日本もこの国際基準にいち早く同調。スポーツでは100m競争に象徴されるやうに、走り幅跳び世界新記録8.06米を「8ヤード2フィート5と64分の21インチ」(笑)と言はないやうに米英も致し方なくメートル法に従つてゐる。10進法は易く、それに基づく世界共通の度量衡は便利。スニーカーを買ふ時に香港で箱にcmに慣れてゐる日本人にUK、USも面倒。だが日本でも相変はらず「坪」や「畳」が使はれ永六輔が「生活単位として」尺貫復活に拘つたやうに(大正10年制定の法律で尺貫法の計量器を売つたり取引で尺貫法使ふと法律違反として処罰が課されることへの疑問)香港に暮らしてゐるとフィートといふ長さが部屋の面積や高さ、家具の調度の具体に実に適してゐると実感する。布地の販売もヤードで、女性のワンピースならドレスなら、男性の背広なら……とヤードが合ふ。グローバル化、それの世界基準、それが度量衡では一国のエゴに基づかぬ不公平のない自然定理に基づくことは少なくても英語が世界を席捲する言語世界よかまだマシな気はするが、それでもそれぞれの生活と文化に基づく度量衡は大切にしたいもの。それにしても米国の孤立は何とも……。

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今日のFT週末版の読書欄より。“The reality was that Brexiters did not cherish Northern Ireland, rather it was a convenient tactics employed in a distinctly English power game” Diarmaid Ferriter wrote 100 years ago. 北アイルランドの帰属問題から今日のEU離脱まで問題は何も変はつてゐない。

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Tax is paid by property and land owners at a standard rate of 15 per cent of their rental income. In the 2017-18 financial year, 27 per cent of Hong Kong’s HK$612 billion revenue came from land sales. Higher property values mean greater property taxes, which some say is making the city less attractive.

農暦正月廿五日

農暦正月廿五日。曇。新暦でもう三月。早い。

大規模な再開発の進む観塘。戦後、香港の軽工業勃興で地下鉄観塘線で見れば、その海側に工業地区、山側に雑居ビル立ち並び独特の市街地を形成。MTR観塘站に高架線の列車が近くと目の前に乱雑で巨大なビルがあり、それが裕民坊。

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先週土曜にバスで通りかゝると大方のテナントは立ち退き済みで路面のいくつかの小汚い商店が営業続けてゐたが昨日の二月末で期満で全てが追ひ出されビル取り壊しの由。

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これまでの都市再開発に比べると緑化にも重点置いてはゐるが何処にでもある変はり映えなき消費場所の楼上にオフィスビルや高級マンション。かつての猥雑な市街が懐かしい。

中環で老舗の茶樓・蓮香樓が昨日で閉業。廃業のはずが惜しむ声もあり古株の従業員らが共同で営業権を創業家族から借り受け「蓮香茶室」として営業継続の由(晩の営業はせず)。清朝の光緒十五年(1889年)に広州で創業され(第十甫路に現存)1927年には香港に分店を開いたもので90年で一区切り。茶樓として古くからの環境を維持してをり食事も悪くはないが前回訪れた時も埋單で帳場仕切る女の態度最悪で不愉快な思ひ。経営が変はり、それも改善されるのかしら。


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農暦正月廿四日

農暦正月廿四日。薄曇。燈刻、官邸から尖沙咀に行くのに同行のS君がUberで行くといふ。金曜の夕方からなんて道路渋滞で金鐘まで行つてMTRで行けばいゝのにS君のおごりだといふのでUberに乗つたが案の定、紅磡隧道大渋滞で尖沙咀まで1時間。料金もHK$250くらゐチャージされてゐるのでは。尖沙咀の元気一杯居酒屋。尖沙咀のミラマモールといふ好立地=家賃高なのに料理価格は実にリーズナブル。「夢嬉」といふ焼酎が「無料」なのだ。K貿易のご厚意で宮崎産の謂はゞオリジナル焼酎で開業10周年の時に無料で焼酎お振る舞ひとされたものが好評で期間限定の筈がもう7年も無料。酒代で稼ぐのが飲食店の基本なのに無料で焼酎を出してしまふといふ同業他社から見ても奇跡の経営方針。毎晩ウォークインの待ち客がゐる繁盛。今晩は暖簾潜ると盛り澤山の野菜や果実がディスプレイされてをり何か?と思へばヤマト運輸とのコラボで日本の産地直送食材使つた試食イベント。

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トマトや菠薐草など美味。Uberの強烈な冷房で身体冷えてしまひ鍋と決め込み豚しゃぶも食べたが、それでも一番美味しかつたのは同行のS君お勧めの「チキン南蛮」で、これは白飯で食べたら実に美味。

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帰宅で乗つたミニバスで隣にハノイでの米朝首脳会談終へた金正恩委員長がゐて驚く。

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▼トランプ氏指示で「10年で500回脅迫」元側近証言 https://t.co/mnv1h8Yu19 日本なら官僚はさしずめ「安倍政権になって6年で500回忖度」だろ。これを揶揄して築地H君曰く「やはり日本の官僚は世界一優秀、いちいち指示を出すまでもないから証拠も残らない」。厚労省の調査疑惑でも一切、知らぬ存ぜぬ。H君続けて「暴対法だとヤクザの親分は具体的な指示命令を立証できなくても共同正犯で立件できるのに」と。確かにそれに比べると永田町は超法規的。仁侠のヤクザどころかまさに暴力団

(要旨)「日本人はプラグマティスト」で絶対平和主義を信奉していたわけではない。9条への支持が高まったのは敗戦直後ではなく1960年代以降で、それは自衛隊日米安保が定着した時期だった。つまり国民の多くは「9条は『存在しても国防上の実害がない』」から支持したのであって法的な整合性に深い関心はなかった。またそれは、自民党政権の方針とも合致していた。
敗戦時に11歳だった評論家の田原総一朗は若い頃、無謀な戦争の総括さえしていない「偉い大人たち」が、声高に「日本の自立」や国家理念を語るのを危険だと考えていた。その彼が共感したのは、憲法自衛隊の矛盾を承知のうえで9条によって自衛隊を「戦えない軍隊」に留めていた自民党ハト派の政治家たちだった。
国民の多くは憲法自衛隊の矛盾を承知のうえで理念や法的整合性よりも実利を優先し平和と繁栄のために憲法の有用性を評価していた。
冷戦が終わり戦争体験世代が減って状況が変わったという。かつての日本には戦争体験から発した「不文律」があったが、それが壊れてしまった現代では自衛隊の任務を明確化する「立憲的改憲」が必要だという主張がある。
憲法をよりよくするために「自由に話せる時代になるといい」といっった意見は立場をこえて多いようだ。安保法制を批判する憲法学者も、憲法改正を支持する元陸将も、集団安全保障と国際主義を支持する学者も「国民的な議論が足りない」という論旨では一致している。
憲法を改善する可能性を語り国家の基本方針を議論するのは危険だと考えられていた。戦争の記憶が生きていた時代には、そんな議論をしなくとも「不文律」としての憲法評価もあった。だが今では憲法や「国のかたち」を再確定するために自由な議論が必要だと多くの人が感じている。
それに異論はない。9条だけでなく他の憲法上の論題、例えば同性婚地方自治なども論じていい。タブー視されがちな天皇憲法上の地位も「国のかたち」の議論には欠かせないだろう。
冷戦が終わって30年、憲法が制定されて73年になる。世界が変わり世代も変わったいま「国のかたち」を再確定する議論は大切だ。たとえそれが一昔前ならタブー視され「非国民」扱いされかねないテーマだったとしても。

農暦正月廿三日

農暦正月廿三日。晴。早晩に帰宅してハッピーバレー競馬場の競馬中継。沙田に比べるとアタシにはハッピーバレー夜競馬の方が相性がよい。

▼本日、香港特区役場で財政司が今年の予算案発表。この発表でタバコの税金値上げが発表されると翌日から値段が上がつたりワイン免税も突然だつたり香港の機敏性にはいつも驚く。

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北京中央の意で「大湾区」発展にHKD45b投資で民生還元は削減。所得税減税は上限HKD20K(約28万円)で、それがほゞ毎年あるだけでも日本よりマシだが昨年に比べると約14万円減少。固定資産税も年10万円減税。

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別に読みたいわけぢゃないが陋宅マンションのエントランスに毎朝、香港市民の赤化狙ひでフリーペーパーとして置かれてゐるので『大公報』をぱらぱらと眺める。香港独立標榜するとする「民族党」につき「絶対に許すまじ」の北京中央の意思は驚くにも値せず。それでゐて党中央機関紙らしく中国ネタでは「発表に問題ないものは」他より充実も事実。例へば

(大公報)AlipayHK下月可灣區支付 https://t.co/1t8u17SwmN

Alipayが香港でのアプリ(香港ドル決済)がこの春から湾区……って何かと思へば湾仔区ではなくて大湾区で、つまり広東省の主要地域で香港ドルAlipayのまゝ利用可能となり年内には中国全域に、ださうな。人民元との換算はAlipayの優遇レート適用ださうで便利といへば便利。現状ではAlipay利用の場合、大陸は大陸で人民元、香港は香港ドルの別々のアプリを使はなければならず香港市民の場合、大陸の人民元Alipayは入金すら面倒。これが一気に改善される。だが、これも香港がより中共管理下となることで状況は着々とさうなつてゆく。ちなみに中国のお財布ケータイでAlipayと並ぶ大手のWeChat(微信)は一つのアプリで人民元香港ドルそれぞれの通貨別の口座もてるが入金や送金など不便あり。そのうち香港でも毛澤東の人民元になる日も近いかしら。

「ひとたび口にした言葉は生涯かけて実行する、実行できないことは口にしないという覚悟」今上天皇のご性格はこの言葉に端的、と久ケ原T君。御意。T君の話では聖上は「新聞を取ってくるだったか、秋篠宮が幼時に課した日常用務を怠った時、珍しく厳格に叱責した」といふ一例を思ふ、と。この聖上のお言葉、どこかの首相に聞かせたい。

台北でアタシが最初に訪れた誠品書店は確か西門だつたか。白先勇の『孽子』が2003年に台灣公視でテレビドラマ化され好評で、そのVCD版の購入。その後、台北に行くたびに敦南旗艦店に入り浸つてゐたが最近は足も少し遠のいたか。2012年には香港にも開業、今は家から歩いていける太古城にも店舗あり。こゝまで立ち読みどころか座り読みのスペースまで提供で「これでよくやつていける」と驚くばかりで書籍に限らず音楽や映画からファッション、食品まで百貨店化してゐるが正直なところ書籍等文化商品以外は「どこにである商業施設」。店舗内に「なんでこんなテナント入れるのかしら」と首を傾げたくなるわけで年間150億円以上の売り上げだが一昨年逝去の呉清友氏が創業から30年一貫して赤字。あくまで書籍を中心にした文化関連の商品に絞り店舗も狭めてもいゝのでは?と思ふところ。

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農暦正月廿二日

農暦正月廿二日。曇。毎年春の香港国際映画祭、今年は3月18日から2週間。チケット発売は明後日(28日)からで毎年チケット発売の2日前にやつと上映スケジュール発表で今日か?とチェックしたら午後になつて発表となり早晩に銅鑼湾のTom Lee楽器店に寄り映画祭の厚いパンフレット探せば試弾き用に置いてあるエレピの上に10数冊。

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帰宅して200本は超へる映画のリストをぱらぱらと眺め選んだのは台湾の蔡明亮監督の当然、李康生主演の『你的瞼/光』、Markus Schleinzer監督の“Angelo”ともう何度も見たが4Kの高画質版だといふ『2001年宇宙の旅』3本に過ぎず。蔡明亮の上映とは別に香港大学での講演会もあり、これは早々に予約。

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硬骨頭 ngaang6 gwat7 tau4 in Cantonese
1. (figuratively) strong-willed person; person of unyielding character
2. (figuratively) hard nut; arduous task

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Babel is better

農暦正月廿一日。曇。今年は早くも雨期かしら。降るか降らぬかの不安定な天気で折畳み傘は必携。

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傘とか帽子をつい買つてしまふわけで折傘を並べてみると(画像で右から順に)倫敦のFox商店、小宮商店、(以下は晴雨兼用で)前原光榮商店、もう1本小宮で伊勢丹2本あり。久々に早晩に湾仔のバーMに酌す。

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MRTのなかで普通の青年が手指にド派手なピンクのマニキュア。多様性の時代でいろいろなことがあつても社会がそれを許容すれば良いだけのこと。

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▼今朝の新聞一面(毎日新聞)。辺野古について沖縄の県民投票は反対7割。天皇在位30周年。ドナルド=キーンさん死去。

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▼昨日、ネット経由で一昨日放映のブラタモリ「パリ編」その②を見る。モンマルトルに若い芸術家たちが住まひ、昔はこの地域はパリ市「外」で賃料など安かつたから、でムーランルージュなど如何はしい系の歓楽もあり……といふ話から「東京でいへば新宿」といふ見方からタモリ氏が「新宿も昔は芸術家やミュージシャン、若い連中がなんだかわからないけど集まつていて、そこから……」ととても熱く語り始め、これはクールを決込むタモリ氏に殊にこの番組では珍しいこと。さらに番組の最後でもまた熱く昔語り。

▼これも昨日のことだがミニバスの中で休日の日本人親子。父親は日本語で話すが年上の男の子は英語に片言の日本語が混じり妹は父の日本語は解すのか、たゞ話す言葉は典型的な米語。他人家のことながら、この家の言語環境は一体だうなつてゐるのかと心配。かりに母親が米国人で、ならまだマシだが今まで少なからず英語圏ではない香港で両親が日本人で子どもは英語環境で教育を受けさせ、この結果、望ましくもない言語思考力になつた例を見てきてゐる。今週のエコノミスト誌の英語での教育に関する記事が興味深い。

Teaching children in English is fine if that is what they speak at home and their parents are fluent in it. But that is not the case in most public and low-cost private schools. Children are taught in a language they don’t understand by teachers whose English is poor. The children learn neither English nor anything else.
English should be an important subject at school, but not necessarily the language of instruction. Unless they are confident of the standard of English on offer, parents should choose mother-tongue education. Rather than switching to English-medium teaching, governments fearful of losing custom to the private sector should look at the many possible ways of improving public schools—limiting the power of obstructive teachers’ unions, say, or handing them over to private-sector managers and developing good curriculums and so on.

日本でも小学校からの英語教育が盛んにならうとしてゐるが、この記事の言ふやうに最悪なのは英語力のない、ネイティブでなくてもネイティブ並の教員による指導ができない環境での英語教育で、少なくとも日本がマシなのはあくまで母語たる日本語による初等教育の中に英会話導入程度であることだが、いずれにせよ10歳くらゐまでの教育は母語にすべき、といふのは道理あり。ちなみにこの記事、元々のタイトルは“Babel is better”であり(それが“The perils of learning in English”に代はつてゐる)英語の世界席捲よりバベルの時代の人々が全く異なる言葉を喋つてゐる方が良い、といふ意味深な名題。この記事の冒頭にあるウィンストン=チャーチルの話が面白い。

When winston churchill was at Harrow School, he was in the lowest stream. This did not, he wrote in “My Early Life”, blight his academic career, for “I gained an immense advantage over the cleverer boys. They all went on to learn Latin and Greek and splendid things like that...We were considered such dunces that we could learn only English...Thus I got into my bones the essential structure of the ordinary British sentence—which is a noble thing.”

香港街道地方指南

農暦正月二十日。小雨残り朝の気温は摂氏13.8度と随分下がる。昨日やつと香港街道地方指南の2019年版を入手。

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昔は年末のうちに次年度版発行されてゐたが、それが年明けとなり1月下旬となり今回はついに2月も、それも春節明け。かつては「これがないと」で配達のスタッフや運転手など必需品だつたが地図がネット化され更に須磨帆アプリでGoogle Mapなどお手軽な時代となり、この地図本の需要がいつたいどれだけあるか。今ではアタシのやうな蒐集家アイテムかも。それにしても集合住宅の一軒/\から精緻なこと、地図としての色彩も美しく毎年新しい宅地や道路、公共施設などできて、この地図本は進化する。ちなみに2019年度版には高速鉄道香港西九龍站、港珠澳大橋香港口岸、中環湾仔隧道と蓮塘口岸などアップデート。

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昔の地図と比べるのが面白いが西九龍站など30年前は佐敦碼頭手前の海の中で比べやうもない。

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さう思ふと香港空港東側の港珠澳大橋香港口岸どころか中環湾仔隧道の中環側出入口とて海の中なのだつた。晩に自家製croquetteと書くと資生堂パーラーみたいだがコロッケだが、それをいくつも頬張り赤葡萄酒飲む。

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Ch. Mouton CadetのVin de tableは日本で1,650円くらゐでワイン高値の香港でもほゞ同額でありがたい。本日、半蔵門の芝居小屋での天皇在位三十年記念式典の中継をネットで見る。

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晋三の式辞は早口で着座も起立と礼もだらしない。式辞読み終はつての所作の粗さに言葉もなし。国歌「君が代」斉唱は当然、天皇皇后は歌はない。謳はれるお立場。陛下の表情はどこか恍惚、皇后は表情にあふれ相手の言葉に厳しさや優しさが伺へる。晋三式辞の淡泊で緊張もせぬ開き直りに対して大島衆議院議長の祝辞は緊張の極み。文節の切り方が変。「国と国、民のため」とか「苦難の道のり、をたどって」とか。読み終りで二月を十二月と読む。途中「いやすかで」と聞こえた意味不明、これは後になつてテキストを読んだら「幾久しく心穏やかで」のあたり。気のない晋三、緊張の大島衆院議長に続く伊達参院議長の祝辞は三人の中ではいちばん普通に収まつてはゐるが田沢湖の観光船で録音されてゐる観光案内のテープのやう。天皇御製、御歌の朗読は波乃久里子。あの低音の少し擦れた声はかうした朗読に合ふかしら。着物も着付けが後ろ襟が何だかとんでもなく開いてゐるのが気になる。この朗読には大竹しのぶを推したかつた。この式典の極みは三浦大知君による御製で皇后さま作曲の琉歌「歌声の響」の歌唱。


千住兄のピアノで妹のヴァイオリン伴奏。これを聴く皇后陛下の表情、陛下への語らひ、終はつた時の拍手……沖縄のことを思ふ両陛下。

本日は奇しくも沖縄で在日米軍基地巡る県民投票。両陛下退場でも晋三ら三権の長の前はさらりと通りすぎ舞台袖の久里子、大知らのところでは親しげにお言葉かけ振り返り客席にお礼。

「ついに日本文学の終焉」と言つたら大げさかしら。1938年に16歳で!コロンビア大学文学部入学し中国語、漢字に魅了されるが18歳のときにアーサー=ウェイリー訳の源氏から日本文学へ。ウェイリーは終ぞ日本の地を踏まなかつたがキーン先生は太平洋先生で日本人捕虜の通訳として従軍、戦後はコロンビア大学に復学し修士、哈佛を経て渡英し剣橋へ。日本に来たのは昭和28年で30余歳。京大大学院で永井道雄と出会ふ。荷風から谷崎、川端、三島、大江、安部公房、夷斎先生そして吉田健一と戦後の誰彼の半生にもキーン先生は登場するから、どこか親しみすら感じる。東日本大震災のあと日本国籍取得して浄瑠璃三味線の上原誠己を養子にしての老後。

対談もよくしたが、最晩年はいつも養子になった誠己さんが隣に座っていて、対談をなめらかにしていた。誠己さんは若くて、一見キーンさんの孫のようにも感じられたが、優しく、よく気がつき、キーンさんの隅々まで気を遣っていた。キーンさんが誠己さんを心から愛していることが、言葉や態度に表れていて、キーンさんがこの人の故郷に最後の棲家(すみか)を定め、日本人としての国籍を取ったこともうなずけた。

と寂聴先生。寂聴さん「私を呼びに来る日が待ち遠しい」 ドナルド・キーンさん死去でコメント - 毎日新聞

国立公文書館で来年度から首相の口述収集 - 毎日新聞 https://t.co/b6J8HjcyqF つまり晋三の口述は残さない、と。