富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

安部公房展「21世紀文学の基軸」神奈川近代文学館

辰年九月十三日。気温摂氏15.2/26.2度。晴。水戸から横浜にJRで行く場合(営業距離121.3km)大人の休日割引は片道か往復で200km以上なので往復とすれば割引だが帰りに新宿に寄るとすると「東京近郊区間」のエリア内のため途中下車不可。シミュレーションしてみたところ水戸~東京(山手線内)で往復として品川~横浜を乗り越し(IC運賃303円)復路は横浜~渋谷を新宿湘南ライン東横線で移動して山手線内から水戸まで復路の割引運賃を使ふのが最もお得。今朝は特急が鶯谷駅を通過して上野駅のホームに入るところで「緊急停止します、ご注意ください」で飛び込み自殺か?となつたが上野駅で「具合の悪くなつた客の対応」だつたさうで6分の遅れ。

本日は家人と神奈川近代文学館へ。安部公房展。安部公房生誕100年なのださう。1993年に68歳で亡くなつた作家が今年で生誕100年といはれると何だか時間軸が歪んだ感覚に陥る。そんな時は早く流れないだらう、と。そのへんからどこか安部公房の世界。高校の教科書に『赤い繭』があつて現国の若杉先生は(学生時代に芝居をやつてゐて)かなり安部公房に対する思ひ入れもあるのだらう、授業はとても熱のこもつたものだつた。『繭』は正直何だかよくわからなかつたし高校生に現国でこの作品から何を学ばせないのか?と疑問だつたが新潮文庫で『他人の顔』『壁』や『箱男』を読むと面白くて授業をサボってまでよく読んだものだつた。

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戦後、日本共産党の党員ですらあつた安部公房は1956年にチェコ作家大会に出席のため布拉格を訪れるのだが実際に自分の目で社会主義国の現状を見てしまふ。この世には天国はなく矛盾しかない。資本主義のマイナスの矛盾。社会主義圏ではプラスの矛盾が支配的になる安部公房作品で挿絵を描いてゐるのが夫人の安部真知(1926〜93)で女子美出身の真知は夫が戯曲を書き演劇界に入るなかで俳優座などの舞台装置などの分野で活躍。この真知の存在は今日まで全く知らなかつた。

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安部公房の書斎がこんなに無機質に整頓されてゐたのではなく実際には雑然としてゐたわけで、これはあくまで愛用の椅子やワープロ機(シャープの文豪)、辞書などを並べただけのもの(展示でこゝだけが撮影可)。今回もたつぷりと1時間40分くらゐは展示を眺めた。映像作品もいくつかモニタで放映されてゐたが安部公房の作品を見て、その表現がMummenschanzに見えるのはまだしも、それがワハハ本舗に見えてしまふとは我ながら……。この文学館に今年4月に開業の「すゝゝ」といふ鮨喫茶?の「細雪」と銘打つたちらし鮨を食べてみたいのだが今日は休業日。けして眺めのよくない港の見える丘公園から元町に下り昼はいつも“Jo's”といふダイナーでハンバーガー🍔なのだけれど今日は向かひの蕎麦屋(零そば)へ。なぜか店内に身体セラピーのブースもある不思議。鴨南蛮せいろ。今日も横浜は27度超で汗ばむほどで元町中華街から和光市行きの急行に乗り午睡のうちにみなとみらい線→東急東横線→地下鉄副都心線新宿三丁目。丸の内線に乗り換へ西新宿。柏木の花屋(le panier de fleurs)で供へ花を受け取り常園寺。今年はお盆も秋のお彼岸も墓参せず久しぶり。今年また掃墓に来れるかどうか、墓地の来年の護持会費も納めてしまふ。

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新宿西口駅から都営線に乗ると列車はぐるんぱのようちえん|福音館書店の内装であつた。幼いころに大好きだつた絵本。神楽坂。バーMに家人をお連れする。家人がチーフバーテンダーのEさんにお会ひするのは5年ぶりくらゐかもしれない。ドライマティーニ。家人には洋梨のフィズを供された。


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神楽坂を下り飯田橋駅に向かふ途中、外濠の茂みの向かふに家人が不思議な鳥を見つけた。サギのやうな違ふやうな。ジブリの映画(君たちはどう生きるか)に出てきさう。

Web東京創元社マガジン : 校正課だより 飯田橋・鳥見レポート〈青は黒か、それとも白か?〉

総武線で新宿に戻り髙島屋に買ひ物のある家人と一旦別れてお決まりでBERGへ。久しぶりだつたがカウンターで注文の際にマスク着用を求められず。実際に注文でわざ/\マスクする客もおらず。やつとマスク解禁になつたのかしら。伊勢丹ほていやを少しブラついて西口の鮨いしかわへ。今日はちょっと贅澤で松茸の土瓶蒸、毛蟹の蟹味噌和へもいたゞく。いつも大変よくしていたゞき幸せ。中央線快速で東京駅に着いて3分後の常磐線特急に滑り込みで乗り水府に戻る。