陰暦正月十二日。気温摂氏▲2.9/8.4度。快晴。母が県北に住む妹(私からすると叔母)のところに顔を出すといふので自動車で往復。
那珂市の木倉にある〈常陸ハイエッグ〉に寄る。平飼ひの鶏で〈ひまわりっこ〉といふブランドの黄身の濃い鶏卵を販売してゐるが作業所に購めに来る客も少なからず宅配など発送も盛んなやう。夜ごはんで試しにスクランブルエッグにしてみたが確かに美味しい。
茨城県は鶏卵の生産量は全国一位で9%だかのシェアなんださう。
殺される「無用な」ひよこ年4500万羽 規制に踏み切ったドイツ:朝日新聞(13日)
といふ記事を読む。普段何も意識せず鶏卵を食べてゐるがこんな記事もあつた。
格安卵のウラにある「深刻すぎる実態」(細川幸一)現代ビジネス(講談社)
午後からは家人と土浦へ。土浦市街には一昨年九月に母と土浦市博物館に小川芋銭展を見に来て以来。昼ごはんを食べるのに道順を一つ間違へ桜町のソープ街(きらゝ通り)を抜けることに。関東では浅草吉原、川崎宿の堀内、千葉栄町に次ぐ規模で20軒近くあつたはずだが古呂奈の影響もあり遊びがキャバクラや他のフーゾクなど軽薄化するなかで桜町は如何なものか。昼間から客引きのお兄さんもちらほら。昔は大学生どころか高校生で学割や「筆おろし特価」なんてあつたものだが今はもうさういふ時代ぢゃないだらう。八間通りに戻り〈洋食大かわ〉へ。土曜のお昼1時すぎでしつかり行列。相席させない所為でもあるが。
土浦はこの〈大かわ〉やちょっと高級で〈レストラン中台〉とか洋食屋があるのは戦前の海軍航空隊があつたころからの何かあるのかしら。この〈大かわ〉の昔からの洋食にとてもほっとする。高校生のときに一度来たのが最初で最後だつた。当時、土浦にはよく遊びに来てゐたが洋食はM兄がいつも連れていつてくれたのは〈アトム〉で、その食肆もこの桜町界隈だつたが夜の営業でカウンターで食べさせる洋食の〈お弁当〉は格別だつた。高校生なのにウヰスキーをロックで飲みながら〈お弁当〉の具を肴にして。本当に美味しかつた。それからM兄の「離れ」で朝まで本当によく飲んだ。
その人の書架を見ればその人の思考世界は一目瞭然だが、この〈大かわ〉の帳場横の棚に並んでゐる本が良い。ご亭主は二代目?か客席の壁にはウッドストックの大きなポスターで書架に大瀧詠一の“All About Niagara”がある。そして池波先生の銀座日記1と2。丸谷才一『食通知つたかぶり』や『夢二デザイン』があつて加藤嶺夫のかつての東京の写真集や開高先生の『食卓は笑う』に〈なべ家〉ご亭主・福田浩の江戸料理本“MESHI”が並んでゐるのだから、もう脱帽である。本当に「お見それしました」以外の何ものでもないぢゃないか。この本の背表紙を見ながらウヰスキーでも飲んでゐたいくらゐ。
話は戻るが高校生の頃にハッピーな土曜日の午後に土浦に行くと裁判所の近くの路地にあつた〈珈琲ブラジル〉で最高に美味しい珈琲を飲むのが楽しみだつた。路地は再開発となりブラジルもなくなつてゐたが郊外に移転されてゐると知り前回、何十年ぶりにこちらの移転先で珈琲をいたゞいたのは3年前の6月でご亭主は矍鑠としたものだつたが当時「もうすぐ卒寿」といはれてゐて果たして今もやつてゐるかしら。電話すればわかることだが、それぢゃつまらないので伺つてみよう。営業中。それだけでとても嬉しい。ドアに「感染対策で豆販売のみ」と張り紙。店内ではご亭主が先客相手に珈琲説教中なのは元気な証し。説教を聞き終はらないと珈琲は出てこない。今日は珈琲はテイクアウトもしてゐないので淹れてはいたゞけないのでブレンドで豆を購入。オリジナルブレンド。ブレンドは平成ブレンドに令和ブレンドもあるさう。昨日、水府で珈琲豆を購入してしまつたばかりなので100gだけで、とお願ひすると「あたしはね、豆は少しずつ買つてもらへるのが嬉しいの。その方が美味しいでせう、豆はたくさん買つちゃダメですよ」とご主人は見た目も口調もほんとうに大成駒にそっくりなのだ。昭和5年生まれで昭和24年に18歳で銀座の珈琲店のウェイターからの珈琲人生。当時まだ占領中で銀座は進駐軍の兵隊ばかりで珈琲は統制品で……と昔語りを聞く。裁判所の頃の店を知るお客さんも少なくなつてねぇ、と。そりゃさうだらう。当時は昔話でご主人は大好きなアメリカ映画のことになるとハンフリー=ボガードとか昔、映画で見ては真似して覚へた俳優たちのタバコの吸ひ方をやつてみせてくれた。高校生がそれをまた真似して覚へてゐた時代。
見たい映画のためにつくばや土浦まで来ないといけないとは。水戸では映画館はかろうじて2つ(+政治映画専門の銀星が)あるが本当に見たい映画がかゝらない。ビートルズ晩期のアルバム制作時の映像はディズニープラスで計3本6時間だかが配信されてゐるさうで見てみたいものだがディズニーがイヤで見てゐないまゝ。そのうち有名な屋上コンサートの映像だけがデジタルで高音質処理もされ9日から明日まで全国のIMAXの劇場で上映中。もう何度の場面、場面は見てゐるがやはり大きな画面で見てみたい。Aeon土浦にある映画館の広い小屋でコロナ禍でも80人ほどの観客はゐたかしら。老人世代が大半だが遅れて遅れてビートルズを知つた若者もちらほら。とにかくテンションの高い、この制作をきちんとしたものにしたいポールが太陽なら月の神さまのやうなレノン、美丈夫のジョンと口数少ないリンゴ……本当にみんな何を何う考へてゐるのかよくわからないがでれでれとしたなかで一旦、演奏が始まるとリハもしてゐないのに1テイクでOKのやうな見事なアンサンブルにしてしまふ。ヨーコ=オノが魅惑的。
Opinion | What the Beatles Tell Us About Fame - The New York Times
昨日が紀元節の祝日で今日が土曜日。この映画を見るのは昨日でも良かつたのだが今日にして正解であつた。
土浦と大曲の花火師競演 茨城の霞ケ浦湖畔で華やか2千発(茨城新聞)
土浦で開催される全国の花火師集まる花火大会は昭和の頃から有名でアタシも高校生のとき櫻川の堤防で友人とビールなど飲みながら、確かもう少し肌寒い初秋の開催だつた気がするが、大きな花火がじつに見事だつた。古呂奈で大会は2年中止となつたさうだが代替で昨日この花火大会が開催されてゐたのださう。これがあつたら、とても今日の行程では動くことも能はなかつた。