富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2017-04-06

農暦三月初十。日本からの来客が開口一番「何だか爆発か何かでトラムが倒れて死傷者が出ているらしいですね」と。テロなどあるまい。慌てゝニュース見たら中環の旧中国銀行前のカーブの坂で速度出し過ぎのトラムが勢ひ余つて横転。夜中で乗客少なく怪我人数名。トラムの脱線等よくある危険なポイントだが世のなか事故は全てISなどテロリストが仕掛けた爆弾によるものに映るらしい。市川のぷんぷく堂といふ文具店謹製の「あなたの小道具箱」入手。かうした小物の世界に幸せ感じてしまふアタシ。晩に北角の順徳料理・鳳城酒家で会食あり末席汚す。
▼心臓動静(5日)18:38に皇居。昭恵夫人とともにフェリッペ6世スペイン国王夫妻歓迎の宮中晩餐会。22:03に公邸戻り。宮中滞在が随分と長かつたこと。

イラク戦争について)結果が最悪だったのだ。あるとされた大量破壊兵器がなかった以上あの戦争には大義はなくイラクの社会を破壊したのみ。そこに生まれた力の空白からやがてイスラム国が台頭した。戦争は結局、暴力の時代を招来しただけだった。去年(2016年)イギリスでイラク戦争に参加を決めたブレア政権の判断を検証するチルコット報告書が発表され結論は「開戦は誤り」ということだった。あの時点で戦争をはじめる理由はなかった。国連による大量破壊兵器の査察の結果を待っても何の危険もなかった。これを聞いてブレアは「結果論」だと言ったが、それは違う。あれは明らかにブッシュ・ジュニアの判断の誤りであり、尻馬に乗ったブレアの誤りだった。ブッシュは任期の最後に「大統領の職にあった中で、最大の痛恨事はイラクの情報の誤りだった」と言った。実際には情報ではなく判断の誤りだ。それでも彼は反省したからまだまし。開戦の日に「アメリカの武力行使を理解し、支持します」という声明を出した小泉元首相はこの件について今もって何も言っていない。外務省もこれには触れない。日本の官僚は過去を検証せず、責任を取らず、文書を公開せず、重大な局面で記録さえ残さない。あるいはこっそり破棄する。冷戦の後の安定は9・11で崩れた。イラク開戦がそれを拡大した。イギリスのジャーナリスト、ピーター=オボーンはこの戦争の失敗で「エスタブリッシュメントへの信頼感がガラガラと崩れた」と言った。その結末がイギリスのEU離脱であり、アメリカではトランプというトンデモ大統領の登場ではなかったか。国際政治はかくも大きく崩れるものであるか。
脱原発に共鳴し、巨大防潮堤の建設に疑問を呈し、有機農法に取り組む。左派的イメージの言動で右派的な夫との〈違い〉が注目されてきた昭恵氏。だが石井氏は今回「ふたりは価値観の基礎の部分を共有」し「安定した関係性」を築いている、と記した。共有点の一つは、「日本の伝統」を称賛し、それが敗戦を機に米国によって奪われたと考える傾向だ。もう一点として「信仰」も挙げた。水は人間の思いを受け取ると主張した「水の波動」理論で知られる江本勝氏(2014年死去)。昭恵氏がその主張や神道に共鳴している点を紹介しながら石井氏は「首相夫妻が「信仰」的なものも媒介にして深く結びついている可能性」を示唆した。⇧政治家といふのはやはりこゝまでの発想が出来ないと通じないのか、と敬服の至り。⇧結婚といふ近代の制度。LGBTとかでアタシがよくわからないのは制度的に「なぜ結婚がしたいのか」。むしろ結婚してゐてもしてゐなくても同じだけの福利を得られることが重要では。結婚率低下はいゝと思ふ。それより少子化こそ深刻。
(ドイツでもAfD(ドイツのための選択肢)など右派台頭について)AfDは数年前にできた新党で極右・反ユダヤ主義者、反ユーロのリベラル、反欧州、そして国粋主義者もいる。現時点では投票する人の多くはこの党への支持ではなく「既存政党に移民政策などで政策的な変更を求めるシグナル」として投じています。ドイツには(議席を得るための支持に必要な)5%条項があり現時点で彼らはそれを超えていますが過去の経験ではこういった抗議政党は12%までは上がるものの、その後、消滅していくものです。(既成勢力への批判は世界的に広がっているが)この状況にドイツの主流政党、中道政党がどう対応するか。60年代の極右政党NPD(ドイツ国家民主党)が台頭した時のようにSPD社会民主党)は左の、CDU(キリスト教民主同盟)は右の「疎外感を持つ有権者の支持を吸収できるか」にかかっています。それによって過激な政党の支持は干上がる。中道が議会の7〜8割を占め、安定化できます。この点が20〜30年代のドイツとの非常に大きな違いです。(いまのドイツの有権者意識は当時と比べて)どうでしょう。全く異なります。70年に及ぶ安定した民主主義と議会制度を経験し、同性愛の権利、男女同権といったあらゆる面で社会が自由になった。全体として成功の物語であって、それは「欧州という文脈」の中で発展したものです。現代のドイツ人で周辺国から領土を得ようという人はいないでしょう。(EU本部のある)ブリュッセル支配への不満などに比べて欧州が発展したこの70年間の平和ははるかに重要なものです。
(牧原出・東大教授)冷戦終結共産主義の脅威がなくなり、リベラルデモクラシーは世界中に広がって「勝利した」はずでした。その民主主義が今、危機にさらされています。民主主義を支える経済の豊かさが2008年の金融危機以降、持続可能でなくなった。今なおすべての国で市民社会が成熟したわけではなく、民主主義を保てる国と、保つのが困難な国に分かれつつある。社会の不満が増すと独裁化ないしファシズム化という現象が出てきます。(略)そもそもグローバル経済には、バブルの発生と破綻が不可避で、ポピュリスト政治家はその点を攻撃します。公正な貿易や温暖化対策を通じ、持続可能な形で調整し民主主義を進める新たな動きが長期的には必要です。ただ、そうした調整で鍛えられた「公正なグローバル化」が出てくると、より戦略的で周到な一国主義的、排外主義的なイデオロギーが出てくる可能性がある。それが21世紀におけるファシズムになるかもしれない。