富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

内閣が統制しうる範囲での象徴としての行為

fookpaktsuen2016-12-19

農暦十一月二十一日。晴。世界一レベルが高い都市地図帳『香港街道地方指南』の2017年版入手。毎年何かしらのアップデート。今回はMTR観塘線の黄埔までの延長に加へ年末に開通するといふ南港島も地図はアップデート済み(運賃、始発終電は未確定で情報なし)。地図を見ながらニヤニヤ、は子どもの頃からの楽しみ。風邪はだいぶ治つたが身体の怠さと悪寒は続き今晩も飲まずアルコール抜きは三日目に。記録的。
▼陶傑氏が蘋果日報の連載で題して「南屠千古唯一抱」(こちら)。

在香港特區政府悼念「南京大屠殺」(以下簡稱「南屠」)七十九周年的盛會之中,當四周出席的賓客,包括署任財政司司長「傻強」,以及一干不知名的老男人在悼念許多許多年前中日戰爭中被屠殺據說剛好高達齊頭三十萬的死難同胞而沉浸在悲傷中、甚或表情如喪考妣之時,獨女政務首長林鄭榮獲「特區第一長者」董建華公公的政治欽點式的擁抱而歡欣笑魘如花,此一哀喜兩極、有趣的對比鏡頭,不知是哪個攝影記者捕捉拍下的,這位記者應記一功。
我看到照片,也一則以悲,一則以喜。悲者,當然是見圖而想起「南屠」慘死於非命的大量炎黃子孫沉冤尚未完全得雪;喜者,則是為了林鄭得到董長者高度肯定、以擁抱而向習近平總書記引薦之又一領導人才而高興。多幾個入閘競選特首,對香港越好。

香港政府が開催した南京大虐殺79周年の記念会で、香港政府が「なぜこれを催すか」といふと北京中央からの指示で全国一律に南京大虐殺追悼することで愛国心高揚させるためなのだが、いずれにせよさういふ厳かであるべき席で、こともあらうに行政長官選挙に立候補ありやなしや、の政務司長(キャリー=ラム)が「特区ファースト爺」の董建華と笑顔で抱擁しあつた、といふ記事。これで董建華がキャリーを支持か、と噂されたが陶傑先生皮肉的に曰く場を弁へろ、と。
▼岩波『世界』十二月号読む。憲法学者で東大名誉教授の高橋和之先生の「天皇の「お気持ち」表明に思う」が19頁に及ぶもの。まるで有斐閣のジュリストでも読んでゐるやうな法学論証。最後は「現天皇に限定して退位を承認し、その結果が(略)天皇の懸念をどの程度緩和するかを見てから恒久法として立法するかどうかを考えるというのも一つあり得るアプローチではないか」とコメントしてをり、それなら政府与党の「一代限りの特例法容認」と大して変はりないもの。その論証に、眠い目をこすりながら付き合つたかと思ふと何だが、一つ興味深いのは天皇に対して憲法の定めた国事行為以外の〈象徴的行為〉につき、例へば国会に参列し挨拶といふ行為は「天皇が自由に決めうる私的行為ではなく公的行為であるから内閣が統制しうる必要があるし、またそれによって天皇に責任が及ばないようにする必要あるとかが得た」もので、それで「象徴としての行為」といふ概念が構成されたといふ。なるほど、それを思ふと、なぜ晋三らが天皇の被災地見舞ひや国見にまで「不愉快を感じるのか」もわかる気がするところで、要するに「天皇に責任が及ばないようにすること」は「内閣が統制しうる」範囲内での行為であるべきといふこと。それが今上様の場合、政府的には「天皇の象徴としての行為から逸脱した」行為に映る。なるほど。そんなことを考へてゐたら2つのニュースがもれなくついてきた。一つは聖上陛下お風邪お召しあそばされて本日の晋三ら主要閣僚招いての昼食会取り消しになつたこと。もう一つは毎日新聞編集委員が雑誌で明かしたさうだが
「ある有力政治家の話ですが、彼が官邸の総理執務室で安倍さんと生前退位の話をしたら、安倍さんはカーペットに膝をつきながら『こんな格好までしてね』と言ったらしいのです。ちょっと何て言うか、天皇陛下が被災者の方々に寄り添うお姿を、そういうふうにちゃかしてみせるというのは......。信じがたいですね」
と。これが本当なら不敬甚だしきこと。陛下との昼食会が風邪を理由に中止になつたのも事情ありか、とすら思へてならず。

世界 2016年 12 月号 [雑誌]

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