富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-04-06

四月六日(火)曇。肌寒い日続く。復活節と清明節の連休五日目だが早朝から官邸にて針仕事。早晩に尖沙咀。文化中心。映画祭の最終日で閉幕上映。旧知のIT実業家であつた雲翔君(Scud)が映画製作志し私財投じた三部作の三作目「安非他命」(Amphetamine、公式)。雲翔君の個性的な感性と哲学が前二作(香港の野球チーム舞台にした処女作「無野之城」、彼の半生記と生死観描いた「永久居留」)より鮮明。Love, Drug and Sadnessといふ感ぢ。前作同様に男色で裸族ぶりは雲翔君の芸風そのもの。開通間近だつた昴船洲大橋(江蘇省揚子江跨ぐ蘇通大橋に次ぐ世界で2番目のスパン長の斜張橋)の橋が両岸から繋がる瞬間までを主人公の二人の愛情故事に結びつける。物語の終はりを「死」に至らせることはアタシは苦手だが、ヒトが最後は必ず「死」となることを思へば当然なの鴨。映画終はり場内明かりつくと一列前に陶傑氏。映画評楽しみ。監督と出演者が観客對手にQ&Aとなりアタシは苦手で会場を辞す。観客にも自費で特製の袋に紀念品詰めお土産あり「今晩、このアト、事務所でパーティしますから誰彼構はずどうぞ良ければご参加を」と自腹きつても徹底して誰彼楽しませたい雲翔君らしさ。かなり久々にペニンスラホテルのバーで独酌。また新入りの若いバーテンダーか、でドライマティーニ註文したらなか/\の作法。「如何ですか?」とちよつと心配さうで「そこ/\イケますよ」と少し祝言を告げる。米国加州Napa ValleyのSterling VineyardsのCab Sau 06年。文化中心に戻りZ嬢と待ち合はせ。「晩ご飯は済ませた?」と云はれて食事もとらずに独酌は恥づかしいかぎり。二つ目の閉幕上映は麥曦茵なる監督の「前度」(EX)は会場周辺も騒々しいのは二年前の春に陳冠希(Edison Chan)猥褻画像ネット流出事件で芸能活動停止に追ひ込まれたTwinsの鍾欣桐(Gillian Chung)の芸能活動再開がこの映画出演ゆゑ。本人も堂々の舞台挨拶。苦難の二年だつたらうが疾うの経ちつゝあつたアイドルが女優としての箔がつき大人の女として毅然たる態度。大股開き淫らな痴態をば画像で曝され巷民なら二度と人前には出られもせぬだらうが、その醜聞すら肥やしにして更に磨きをかけるのだから芸人とは、その属す芸能の世界とはまさに恐ろしいかぎり。異人境。偶然にも讀んでゐたのが三国連太郎と仲浦和光の「「芸能と差別」の深層」ゆゑ、さうした芸能の世界の化外ぶり痛感するばかり。映画ぢたいはさして語るところもなし。
▼昨日、橋本治の「リア家の人々」讀む。かなり期待して月刊「新潮」の書き下ろし入手したが一言でいへば昭和史の説明多すぎ。さうしないと若い読者には昭和も遠くなりにけり、なのかしら。それがなければ向田邦子のやうな家族の物語になつたのだらう。

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