富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-04-05

四月五日(月)曇。清明節。陰暦に基づく廿四節気にあつて清明節だけは毎年、太陽暦四月五日(何年かに一度だけ四日になるが)となるのは清明節の日は「太陽黄経が15度」の時だからださうな。午前中、科学館で王全安監督の「團圓」見る。蒋介石の国民党軍に従ひ台湾に渡つた兵士と生き別れになつた妻、その数十年後の再開。往年の大女優、盧燕(1927〜)が久々に銀幕に現れる。続いて昼からタイのAnocha Suwichakornpong監督の“Mundane History” 見る。タイで裕福な家庭に育つ十代の若者は足が不自由で看護士が雇はれ始終その介護。母はをらず父との静かな暮らしの中での葛藤……と抽象的で、現代のタイの閉塞感?、朦朧?アタシには今ひとつ不明。途中で一カ所、この若者が風呂場で自慰する場面あり(陽具が露骨に見えるでもなく)それだけが理由で成人映画指定は如何なものか。若松孝二監督の「キャタピラー」も芋虫と妻との性交の場面があるから、と成人指定なのも感性ある十代には勿体ない話。尖東で十勝豚丼食す。讃岐うどんがHK$18なら(同じ経営だが)豚丼は30ドル。安い。夕方、整体按摩。早晩に久々にFCCで独酌。Z嬢来て軽く夕食済ます。読書。三國連太郎沖浦和光の「「芸能と差別」の深層」半分ほど読む。半ば<悪所>育ちのアタシには異界に思へず。二更に尖沙咀。文化中心。松ちやんの「しんぼる」(公式)見る。前作の「大日本人」が酷評もあるなかアタシは面白かつたのでこの「しんぼる」も期待したが一言でいへば大コケ。松ちやんが閉ぢ込められた世界でのシュールなお笑ひはそこ/\笑へたが、もう一つのメキシコの田舎町でのプロレスの場面と、どこでどう繋がるのか、おそらくそれがどうにか空間を脱出した松ちやんが突然出てきたのがプロレスのリングで、對手のヒールに椅子ででも殴られ「痛ーつ!」くらゐで終はれば良かつたのだらうが、そこから先がもうまとまりがつかず、最後はまるでオウム真理教のイメージビデオ。松本人志松本智津夫になつてしまつた感あり。もと/\一人善がりな芸人で面白ければそれでいゝのだがテレビや舞台のショートのコントなら多少、ズレてゐても流して済むが映画となると「つまらないものはつまらない」と誰か言つてあげないと。企劃から脚本、監督から出演まで一人で裸の王様そのもの。本人も悪いが吉本興業も「まぁ儲けさせてもらつたさかひ、これくらゐは本人の好きに遊ばせたろか」かしら。これでカンヌなど外国映画祭意識した、としたらそれだけが最も大笑ひのオチかも。
▼昨日の朝日新聞の読書欄に「ゼロ年代の50冊」と2000〜09年に出版された書籍を識者アンケート。その結果の50冊。自分で読んでゐた書籍を確かめると一位の「銃・病原菌・鉄」、二位「海辺のカフカ」、四位の山本義隆「磁力と重力の発見」、十位柄谷行人トランスクリティーク」以下、釋迢空ノート(富岡多恵子)、PLUTO、敗北を抱きしめて(ジョン=ダワー)、ナショナリズムの由来(大澤真幸)、1968(小熊英二)、滝山コミューン一九七四、マオ-誰も知らなかつた毛沢東(原著)、伊勢神宮井上章一)、建築家(安藤忠雄)、国家の罠、帝国(ネグリ=ハート)、帝国以後(トッド)の16冊のみ。まぁ在外で書籍入手だけでも一苦労、と思へばこんなものかしら。

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