十二月三日(水)少し曇る。晩にZ嬢との約束より十数分遅れで太古城の西苑。映画見る前のやつつけ飯だが食のツンドラ地帯の太古坊で数少ない「食べられるレベル」。叉焼、菜心、例湯に揚州炒飯。食後に少し時間あり太平洋珈琲に寛ぐ。最近こんな時間潰しも稀、とZ嬢と嘆く。台湾で「空前のヒット」の映画「海角七號」Cape No.7 を見る。香港でも先月廿日に鳴り物入りで公開、だが不評で閑古鳥。上映もあと数日だらう、とZ嬢と慌てて今晩見る次第。今晩も観客は数名。台湾以外での映画の不人気に比べ中国での上映不許可が話題に。映画は閩南語(台語)、客家語、日本語などが主で字幕が繁体字の中文のみで大陸用に簡体字字幕がないので不便といふ「技術的な問題」とするが、本音は映画の「親日的な点」が槍玉に挙り映画のヒットが皇民化が繋がる、といふわけ。劉健威兄は台湾で大人気の映画が香港で興業的にダメなのは台湾には「日本情」があるから、と指摘。William鄧達智君は「国境之南」といふニュアンスが日本から見て其処(台湾)が国境の南なのか、国土としての南端なのかが微妙、とか書いてゐた。面白い。が、この映画にそれほど日本情があるか、アタシには疑問。、日本へのオマージュなら侯孝賢監督の「非情城市」だとか、近年の日本感覚大好きなど同監督の「珈琲時光」なんかの方がベタ/\。二時間以上見てゐて「なぜこれが台湾で空前のヒット?」と思ひ続ける。レベルとしてはベタな作品。確かに台湾語の、とくに中年以上のオヤヂたちの台湾語の掛け合ひこそ面白いが、それ以外は特筆することもなし。何が台湾の観衆の琴線に触れたのか?と考へた時に、それを「日本情」と思つたら間違ひだらう(といふ意味で中国当局も誤謬あり)。あまり説得力ない指摘になつてしまふが、敢へて言へば「映画に出てくる台湾人がみんな善良」といふことぢやないかしら。強面の親分からチンピラ、主人公の友だちも小米酒のセールスする青年も、みんな市井の何処にでもゐさうな、ちよつとピントがズレてはゐるが良人ばかり。で、台南のこの映画の舞台となる小巷は桃源郷。日本はそのモチーフとして良い役柄が与へられる。台湾人にとつてこのフェルモサが、其処の人々が我彼も含めなんて愛をしいか、と安らぎを与へてくれること。さういふ意味では日本人にとつての「男はつらいよ」に近い世界。台北での夢が破れ地元に南下したロッカーの阿嘉(范逸臣飾)と最後に結ばれる音楽事務所の友子(田中千絵飾)で続作、続々作となるのかしら。台湾の人々に安らぎを与へてくれた、といふことが全島挙げてのこの海角七號ブームなのだ、と理解したい。が、最後にもう一度言ふが映画としては平凡な出来、で大したことはない。
▼ブッシュ総統が大統領としての最大の痛恨事はイラクの大量破壊兵器所有に関する情報の誤りであつた、と発言。今更何を、と呆れるばかり。サダム=フセイン氏に倣ひ、この人も軍事法廷で裁かれるべきでは? 本来の通行時は誤つた情報ではなく、その情報に則り自らがイラク征伐を実行してしまつた事であり、更に敢へて言へば米国がデマ情報を意図的に流し多くの人命を断つたことであるはず。でその情報を流用した小泉三世の責任は?
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