農暦十月初十日。立冬。朝四時起床。世の中が動き出すまでの数時間の寂寞よ。暦では立冬だが汗ばむほどの暑さ。日暮れだけはすつかり早まる。二更に原武史『昭和天皇』読むがまた残り廿数頁残し睡魔に襲はれ読了せず。
▼気になる言葉。大リーグで活躍の岩村選手が帰国。空港で長旅の疲れも見せず会見に応じ……の「長旅の疲れも見せず」。エコノミーの狭い座席に窮屈に座つての十数時間ぢやあるまい。今季活躍して自分へのご褒美でFに踏ん反り返り……少なくても有名人にとつてフライトはマスコミやファンの目も気にせず寛げる場では。さういふ意味では「長旅の疲れも見せず」は無意味なベタな言ひ回し。
▼ピナ・パウシュ、シルヴィ・ギエムが愛してやまない現代コンテンポラリーダンス界を牽引するリン・フアイミン率いるクラウド・ゲイト・ダンスシアターが、2009年3月オーチャードホールで、2006 年に制作された「WHITE ホワイト」を上演いたします。……つてカタカナの羅列(公演情報)。もしこれが、伝統と現代舞踊、禅と視覚芸術を見事に融合させ台湾から世界に美しさを発表し続けた林懐民率ゐる雲門舞集が2006年の作品「白」を東急文化村で上演。……とか書かれたらアタシにはピンと来る。ただ「発表し続けた」と過去形だらう。
▼朝日新聞で連載中の島田雅彦の小説『徒然王子』が朝日新聞出版より「空前絶後の冒険ファンタジー」として第一部堂々の刊行!の由。連載開始の頃は何かとバッシング対象の皇太子殿下思はせる殿下の自分探しの旅が興味深く皇室ネタで何処まで面白い小説になるか、と島田雅彦に期待したが物語は何だか国内のアウトローの世界から異界、霊界、そして過去の日本にまでタイムトラベルしてしまひ今では安土桃山で皇太子殿下は転身し伴天連の宣教師の通訳の身。途中から読んだ者にはいつたい誰が主人公か、この通詞役がまさか21世紀の皇室の皇太子とは全くわからず。やはり時節柄、皇太子ネタはまづい、といふ然るべき筋の判断でもあつたのかしら。それにしても「二千年の歴史を駆け抜け、日出る国へ、ふたたび」つてコピー、まだ連載は二千年の歴史に停滞してゐる最中で現世には戻つてきてもゐないのに(笑)。
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