九月三日(水)築地のH君から聞いたが今朝の下らないワイドショー、総裁候補として名前上がるのが麻生太郎、小池百合子、野田聖子、石原伸晃……とほとんどお笑ひ番組。H君指摘の通り自民党の人材不足の極み。小泉三世が自民党をぶッこわして、の賜物。順当にいけば、加藤紘一、山崎拓、亀井静香、高村…あたり「派閥の領袖」が総裁選に立候補すべきところ。これらの人なら「総理になッても簡単には辞めない」のだらうが安倍や康夫チャンだと「人からつけてもらッた地位」だから淡々として地位に執着もなし。美徳か(嗤)。安倍三世の力量不足は当然として安倍路線否定、軌道修正するために登場したはずの康夫チャンまで同じ辞め方をした末に、その後継が麻生、小池、野田、石原ジュニアぢや、どうしやうもない。で興味深いのが石原慎太郎の「森君がやればよい」。石原にしては卓見、「最大派閥の領袖が本格内閣を組織する」といふ本来の(といふかそれしかない)自民党のあり方ですよ。初心に返れ、と。H君の見立ては自民党としては本命は麻生としておいて、その本命を国民的人気の伏兵小池百合子が破り、その勢ひで解散総選挙。この、森の後に小泉が登場したパターンで一挙、期待回復ッて、もう飽き/\だし手詰まり感あるが良識ある国民の皆さんがこれに応へさう。それに比べ石原の森擁立論は「国民的人気」を敢へて無視して憲政の常道に復したところが新鮮か。そも/\考へてみれば、森さんが首相になッたことがそのあと小泉、安倍……と続く「迷走の平成」の始まり。そのスタートまで戻してみる、は卓見か(なにせ森さんの。前任者は二人もう他界)。だが石原都知事はほんとは自分が一番、首相になりたいのかしら。息子の名前が挙がり「冗談でせう」と吐き捨てた石原さんは「本当にいま/\しさうだッた」由。内心は「伸晃より俺だろ!」か。かうして考へると石原が都知事でゐることは不幸中の幸ひ、もし無役の陣笠代議士だッたら間違ひなく総理候補の一人なのは「国民的人気」ゆゑ、今や「テレビに出て一般の人気はあるが、党内に基盤がない陣笠代議士」であることが総裁候補。さう考へると石原さんを都知事に選んだ東京都民に我々は感謝すべきか。
▼蔡瀾さんが蘋果日報で数日前に二日に渡り「杭州菜」と題して述べるは最近、某雑誌でご本人が「杭州酒家は天香樓に遜色なし」と語つたとされるのは誤解招く書き方で、と。湾仔の杭州酒家が人気なのは、その手頃な価格、とピシャリ。この食肆のオーナーシェフの父親が天香樓の主厨18年務めた御仁で引退後、息子の開業扶け、であるから蔡瀾氏本人も湾仔での開業に出向き求められるまま揮毫もした、と。但し杭州酒家は依然評判だが「進歩がない」といふ意見もあり。一理あり、は敢へて言へば……と前菜から醤鴨舌、東坡肉、煙燻大黄魚から炸臭豆腐に至るまで杭州酒家の天香樓に至らぬ点を綴る。天香樓は創業主も老い肆に現れぬやうになり久しいが、後継の娘が奮闘、と誉める。杭州酒家初めて訪れた際に「吃得開心」と揮毫したが、もし天香樓に一筆求められれば即、「天下第一」と認めるだらう、と蔡瀾氏。杭州酒家には手厳しい、が的確な評価。ある程度の常連の一人としてアタシも、いつまでも「父は、父は」と言ふな、と二世首相、ぢゃなかッた二世シェフの甘さを感じざるを得ず。
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