富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-05-08

五月八日(木)五輪聖火がチョモランマ頂上へ。無感慨……言葉もなし。東都では中国胡錦涛主席の中曽根大勲位以下歴代首相との朝食会に小泉三世招かれず。台湾で民進党の支持率僅か18%に下落。今回の外交機密費横領につき行政院副院長らの個人的犯罪で阿扁総統は関与なく免責と民進党。スターフェリーは中環側の埠頭移転で利用客18%減。
▼信報で毎週水曜に連載続く孔在齊氏の京劇回顧談「願曲集」愉しく読む。今回(第22回)は思はず「待つてましたぁ!」と言ひたひ「童年初看梅蘭芳」。民国24年の上海。当時、梅蘭芳の芝居となると入場料は四塊大洋(耶蘇暦1935年の上海はすでに仏租界のフラン通貨流通してをり、その通称)。この金額は当時の女中の月給に相当。父親が所有したSPレコードで「探母坐宮」や「玉堂春」「霸王別姫」など、孔氏はまづ梅蘭芳の歌声を聴く。で芝居好きの孔在齊氏とはいへ晩九時半に寝てゐた幼い子どもにとつて深夜に至る観劇で客席で寝てゐると、両親に「ほら!」と起され舞台を見上げると、舞台には若い女優が剣術を舞ふ傍らで秀麗な「蚌殻の精」が企ち、それを孔氏はてつきり梅蘭芳だと思ひ眺めてゐたが、じつは、その剣術遣ひ(廉錦楓)が梅蘭芳。在齊君の芝居への入れ込みは大したもので、ご本人の回顧によれば、幼い頃、祖母が購ひし食材の中に「見たこともないもの」あり。祖母曰く「それは海鼠だよ」。孔氏は直ぐに「海鼠なら食べるよ。海鼠は陰虚を治す効力があるからね」と答へ(陰虚は漢方でいふ津液の滋潤作用の低下した虚弱)祖母と母は「なんでそんなこと知つてるの?」と驚いたが幼き在齊君にしてみれば聴き馴染んだ「廉錦楓」の中で梅蘭芳が「老娘親她得了陰虚之症、用海参療此病什麼什麼」つて歌つてるぢやないか、と(海参は海鼠の意)。いひねぇかういふ話。久が原のT君やアタシ好み。ところで孔氏が梅蘭芳が何が立派か、と讃めるのは(芝居の見事さは言ふに及ばず)1930年代といふ軍閥割拠内憂外患の混乱の時代で京劇の梨園もかなり社会的地位も低下し乱れてゐたが梅蘭芳はさういふ時代にあつても京劇の芝居の向上に研鑽続け品行端正、汚れぬ矜恃あり、と。

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