富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-12-06

十二月六日(火)曇。厳寒。摂氏12度。この「寒さ」は服飾の楽しさ。帽子を被れるのも嬉しい。早晩にFCCに向かおうと車で通ると政府総部に向かう路にてAM68だかのナンバーのBMW7系列の車両。政府がBMW7系列を上級職用に何台所有するのか知らぬが(他は全てMazda車であるのも興味深い)部局長レベルでこの厚遇。香港は人口700万人で職員厚遇では馳名の大阪市と同じ規模だが大阪市役所とて部長レベルにBMW7系列は供すまい。呆れるばかり。FCCにてハイボール二杯。バーテンダーハイボールといえば氷なし、と覚えられた様子。あの注文があたった時のバーテンダーのにんやりとした顔がいい。新聞じっくりと読む。FCCを出たところで民主党のMartin 李柱銘氏に遭遇。尊顔を拝す。陶傑氏はマーチン李氏を見るたびに憔悴しきって骸骨の如し、と称していたが、やはり香港の「民主の父」は一見して華がある。すらりとした姿に一流のスーツ。FCCの入口で待ち合せの相手に携帯で電話。ドアマンが扉を開けるが携帯で電話中であるから倶楽部内での携帯使用は不躾とドアマンに手で入場を固辞して電話する、その仕草ひとつとっても絵になる御仁。尖沙咀に地下鉄で渡り尖沙咀東のRoyal Garden Hotel地下「東来順」にてバンコクから来港中のY氏とO君といつもの羊肉鍋。この寒さに店は盛況。この店に来るといつもの山西省Grace Vineyardの赤葡萄酒を三人で三本。飲み過ぎか。でも心地よく帰宅し11時には就寝。
▼香港の政局に面白い動きあり。124の市民デモでの普選要求に対して北京中央は民主派に対して中間人通して、香港の民主派が2017年の普通選挙実施を受入れるならば中央のかなり高位の指導者が公式にこの「時間表」を提示することを承認、と条件交渉開始とか(信報)。07年の行政長官と08年の立法会議員の選挙で普通選挙実施は基本法で認められているが全人代常委が時期尚早として、自称政治家Sir Donaldも北京中央の意図と世論の折衷案的な政治改革案を提示しているが、最大の問題はその改革案に具体的な「時間表」がないこと。これに対して北京中央は遅くとも2017年と譲歩することで民主派と世論の取込みを意図。そのような動きのなかで124のデモに参加のアンソン陳方安生女史(陳太)の舞台への復活。陶傑氏はこの陳太の「跳出来」は普選実施が2017年にずれ込むことと相まって07年の次回選挙でSir Donaldと陳太が争えば現行の間接選挙でも結果はこれまでの御用選挙とは異なりかなり選挙らしい選挙となるのは必至。普選は実施されないまでも海外に対して香港の民主的選挙とアッピール出来るのは確か。かりに陳太が勝てばSir Donaldは再び政務長官に甘んじるが少なくとも董建華退任から2年のリリーフ役満了で面子は保てる。Sir Donaldが勝てば陳太がこちらも再び政務長官に就任することで香港政府公務員の士気をば改めて高め組織再編成も可。陳太が長官就任してうまく二期満了すればSir Donaldも公務員の鑑として任務遂行し2017年をば迎えるわけで、これなら中港陳曽の誰もが勝ったも同然。……と陶傑氏は陳太再臨にかなり楽観的観測。
▼一言でいえば「絵になる」のがサダム=フセイン。米国に「逮捕」され憔悴した感じが気品となる。この法廷での場面は、どうでがす、旦那、まるで一流の歌劇。巴里のオペラ座、いや、これはバスティーユの方が似合う歌劇の舞台の如し。フセインを取っ捉まえた方の役者Bではスタインベックの小説に出てくる、田舎の無知で性格の悪い男という端役しか出来ぬ。
▼香港の誇るスプリント馬サイレントウィットネスが香港国際レースでのスプリントレース辞退。11月の予選辞退は本番に万全を期すとされたが不調回復せず。この春にはMr. Vitality、Grand Delightに続き地場のスプリントレースで三年連続の覇者となり、この国際スプリントで三年連続優勝に期待かかったがTony Cruz調教師もコッチ騎手もサイレントウィットネスは他の馬に比べればまだまだ快調であるがこの馬の本来の優秀さには欠ける、と断念。マイルでは英国馬のMajors Castの辞退で香港からTown of Fionn(芙蓉鎮)が参戦。楽しみ。
▼1988年より旅米の中国作家・劉賓雁氏が米国にて客死。享年80歳。1925年黒竜江省ハルビンに生まれ若い頃に中共に入党。地方紙記者から人民日報記者、編集者となるが56年に官僚主義や腐敗をば主題とした『在橋?工地上』『本報内部消息』発表し大きな反響あるが57年に反右派闘争にて右派として党除名。文革を経て78年に名誉回復され80年代にルポルタージュ文学の傑作とされる『人妖之間』『第二種忠誠』など社会暗部描く作品を発表。「北京の春」ののち87年の反動で再び党を除名され88年に訪米。89年の天安門事件で中国政府から帰国禁止されハーヴァード大学にて研究と指導続け退職の後も米国に留まる。
▼その中国が人権問題であるとか劉賓雁の故郷であるハルビンでの松花江の汚染であるとか国際的に批難されても、たとえば巴里にシラク大統領と会見する温家宝総理の上品さを見れば、この中国という国が、その指導者レベルの極端な品格の高さと「その他大勢」の格差、に尽きる鴨。それに比べ日本は「押し並べて」平凡。悪しくはないが温家宝の柄が日本の政治家にあるか、というと巴里に似あうのは温家宝。その中国がエアバスを150機!、97億米ドルの発注。フランスにしてみれば対中の蜜月も当然。
▼政府統計署によれば10月期の小売業の営業額の伸びは4.8%に留まり中国国慶節と鼠効果で政府予期の5.6%に及ばず今年10月までの7.0%増に比べても遜色あり。マカオリスボアのサウナでウェイターと雑談で「マカオもこれだけ賑わえば儲かって仕方ないだろう」と言えば実は意外と商売は低迷と打ち明けられたが大陸からの田舎漢の旅行者が実際にどれだけ経済波及効果があるか、は疑問。

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