十二月十六日(木)快晴。晩六時半金鐘地下鉄站にて尖沙咀方面に向かおうとせばホームで列車三本待ちの混雑。東京の国電ぢゃあるまいし香港では稀。だが列車十二輌だかの編成で一本発てば一分後には次の電車到着。それでも混雑とは。いずれにせよ待ち時間も少なく混雑とはいへ車内にて「奥に詰めぬ」文化ゆへ車内の混雑も身動きとれぬ程でなし。諸事多忙極み。晩食時間すら割ず三更に帰宅してカップうどん食す。結果的に休肝日の幸ひ。『世界』十二月号にルモンド紙よりの転載でOlivier Royの“Al-Qaida, lavel ou organisation?”あり興味深く読む。元来ソ連アフガン侵攻に対して米国組織の民兵組織が今では「世界の敵」となったアルカイダなる組織は現実には脅威と思われるより寧ろ弱体化しており構造化した組織(organisation)であるより寧ろ「テロが実行された際に人々の心に最大限の衝撃をもたらすことを約束してくれる」ブランド(label)であり彼らの抵抗運動の論理とは「イスラム教を守ることよりもアメリカが確立した世界秩序とアメリカの超権力への異議を唱える運動の前衛を確立することにある」と。尤も。だが結局はソ連なきあとアルカイダあっての米国の国威と思えばアルカイダなる組織は結成から今までなんら変質なし。ところでこの記事でテロリスト、Ilich Ramirez Sanchez(通称カルロス=シャカル)の著書『革命のイスラム』にビン=ラディン師絶賛する部分あり、とあり。シャカル?はジャッカルでなるほど。The Assignmentといふ映画もあり。だが翻訳大国日本にもこの『革命のイスラム』といふ本存在せず本人の著書とあるがフランスで無期懲役服役中で調べるともしかすると別な書き手の“Sword of Islam : Muslim Extremism from the Arab Conquests to the Attack on America”といふ書かも知れず。もう一つ。加藤哲郎(かの大月書店店員から一橋大学教授……今ぢゃ考えられぬ)の「米国「日本プラン」と象徴天皇制」といふ文章も興味深く読む。ライシャワー博士提言といふ、だが元を辿れば新渡戸博士の天皇象徴論が基盤となり天皇をば平和の象徴として利用する米国の日本統治プラン練られたことの細緻なる論考。その戦後は今度は政府が天皇をどう利用するか、が平成の提灯行列で二重橋での陛下の間接的謁見などまで続くのであり、政府ばかりか陛下の護憲、愛国心強制懸念などは反対の勢力とて、このご時世に警笛の如き陛下の御言葉に期待ももちもする。