富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

JR東日本 大人の休日倶楽部

辰年二月初初四。気温摂氏3.7/12.4度。晴。廿年以上前に茨城県西で医療に携はるT先生が東南アジアへの往復の途中で香港に立ち寄られるのでお会ひして食事に何度かお供。鯉魚門などに行くと会話も面白くT先生の記憶あり。昨年の秋だつたがT先生が今でも東南アジアなどで難民医療ボランティア活動されてゐる記事あり。先日やつと葉書を出してご挨拶。本日T先生の財団の方から電話をもらふ。アタシ自身がなぜT先生とお会ひすることになつたのが記憶が不確かだつたのだが先生の方が私の名前を見てアタシの亡父の友人から紹介されて、と記憶確か。もう傘寿を過ぎたさうなのに。高齢でも皆さんしつかりとされてゐる。

JR東日本〈大人の休日倶楽部〉でかねてから疑問だつたのは会員資格の男女格差。

大人の休日

ミドル

ジパング

男性

5064

65歳以上

女性

5059

60歳以上

細則はいろ/\あるが運賃でいへば往復も含め200km以上で「ミドル」は5%割引が「ジパング」では30%割で「ジパング」はJR全社適用。一見して判る通り女性の方が男性より5歳若く満60歳でジパング会員になり女性は余命も長いのだから男性の方が不利。これは男性蔑視ではなくJR東日本の当時のオジサンたちの感覚で婦は男性が年長の方が多く女性は主婦など収入もなく優待を多少若くから、なのだらう。これを男女同等にすべきと思つたが高齢化のなか男性のジパング年齢引き下げはないかと予想はしてゐた。

JR東日本はこの格差見直しで結果的に女性の資格条件を男性に合はせた。人生百年で旅行などできる高齢者増加で高齢者優待を引き上げた。昔なら若いときから忙しく働いた年寄りに老後くらゐゆっくり旅してもらはうといふ好意だつたが高齢者こそ生活に余裕がありカネもある連中が多いのだから寧ろ若年層に何か優待でも必要なのかもしれない。たびキュンパスなどほんと購入できる年齢を制限して優待条件を良くして若年層こそ優遇とすべきである。

茨城新聞(12日)に掲載されたチェロ奏者堤剛氏の小澤征爾追悼より(拔萃)。

小澤さんはオーケストラを「歌わせる」のが抜群にうまかった。それは斎藤先生の教えです。アスリートのように俊敏で、彼の動きを見ていれば、奏者は自然に、自分なりにベストな演奏をしている気になる。個々の奏者たちのベストを引き出し、全体を高みに導く神通力がありました。(略)偉大なのに親しみを感じさせる人柄で(略)学員は「この人をサポートしよう」という気になり、小澤さんが指揮台に立つと、皆がすっと一緒に音楽をつくろうという気持ちになるんです。

この記事をテキストにするのに読み上げでiPhoneに聞き取らせたらAIなのかもはや句読点もきちんと打つて記事本文と寸分の違ひもないのには驚いた。「神通力」を「陣痛力」としてゐたのが唯一のミスであつた。

<香港>新たな治安条例案 スパイ活動禁止、統制強化の懸念:朝日新聞

香港基本法23条による国家分裂、政権転覆の動きを禁じる法令は、もはや国安法制定されたのだから、こちら(23条立法)は要らないのではと思つたが香港政府はこの条例案を立法会に提出。23条に基づき「香港政府自らが制定」が大切。中央政府の強制ではないこと。現に23条条例に関して政府に寄せられた市民の意見約1.3万件のうち98.6%が制定肯定なのださう。香港市民の大多数がこれを支持してゐるのだ(なんてね)。倉田先生は朝日の取材に対して「扇動罪の対象拡大と厳罰化」を懸念。保安局長は『蘋果日報』のバックナンバーを所持してゐることでも罪に問はれる可能性があると明言したのださう。狙ひは「香港中の人々が持つてゐる歴史の記録の破棄」。

逃げずに、自由にモノを言はう

辰年二月初三。気温摂氏3.8/10.0度。曇のち雨(29mm)。風17.1m(最大)。夜はもつと雨風強くなる予報だつたが水戸は少し外れて南関東よりも雨少なし。館山は56.5mmの大雨。

(坂本龍一が遺したもの)金平茂紀さんが語る「逃げずに、自由にモノを言おう」朝日新聞

坂本さんの世界の核心は受け継がれず、亡くなった時も坂本さんが声を上げていた神宮の森、沖縄や東北支援や核エネルギーの話は「言えない」「言わない」「それはイデオロギー、社会的な問題だから」と言って一斉に逃げようとする。私はこの弔い方には疑問を感じました。坂本さんの世界の核心は受け継がれず、亡くなった時も坂本さんが声を上げていた神宮の森(東京)、沖縄や東北支援や核エネルギーの話は「言えない」「言わない」「それはイデオロギー、社会的な問題だから」と言って一斉に逃げようとする。私はこの弔い方には疑問を感じました。

宮崎駿「君たちはどう生きるか」アカデミー賞長編アニメ賞受賞:朝日新聞

この映画についてはアタシは「何だかよくわからない」 - 富柏村日剩(20231028)のだけれど宮崎駿監督のアカデミー賞での評価はあつても宮崎監督の政治的なコメントについてはマスコミの多くはそれに触れないのは坂本龍一忌野清志郎の場合と同じ。これが日本のマスコミの「中立」の現状で日本国民も同じやうに政治的なことを禁忌とする。その結果が今の日本の為体そのもの。

自民党過半数以上の支持を得たのではなく多くの人間が投票しなかった事によって天下を取った。ですから、これはまた変わります。永続的なものではないと思います。(宮崎駿

東日本大震災と核禍から13年

辰年二月初二。気温摂氏▲1.8/12.6度。晴。家人がこんなスタンプラリーをやつてゐると教へてくれてスタンプ集めるのが好きなので本日家人と実行。

水戸のロマンチックゾーン 早春のスタンプラリー | 水戸観光コンベンション協会

昔でいふところの常磐村の谷中一帯でスタンプを集める。水戸八幡宮から始めて廿三夜尊、保和苑のあたりがラリーの中心。保和苑の山村暮鳥詩碑を保和苑から少し離れた廃寺の墓地にある暮鳥墓と勘違ひで墓前で「スタンプがない!」と焦る。水戸藩筆頭家老中山備前守墓地もてつきり水戸藩常磐共同墓地にあると思つてゐたら桂岸寺。いずれにせよ徒歩圏内で幼い頃から遊んでゐたエリアなので2時間余でスタンプ10個ゲット。これで(水戸市外在住者はスタンプ3個で)来週末に抽選あるのださう。

山村暮鳥墓の手前で「展望台」と「五角堂」なる個人の敷地内に建造物あり。

水戸マニアックスポット!松本町 隠れ家的展望台編 - | LI WEB

水戸市外の高台から眼下には那珂川の低地から遠く福島との県境の八溝山まで眺める展望台だが高所までは怖くて登れず。こちらはテレビでも紹介され舞の海さん来られてゐたさう。

ぶらり途中下車の旅(2017年4月29日)日テレ

今日も回天堂のある水戸藩殉死藩士の共同墓地のところに猫の「ふうちゃん」がゐた。

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少し離れた愛宕山古墳にある愛宕山神社と、その西北の崖にある曝井さらしいまで歩き本日のミッション終了。曝井は万葉集三栗みつくりの中に向へる曝井の絶えず通はむ彼所そこに妻もが」と詠はれた場所で古へには女たちがそこの湧き水で衣を洗ひ、つまり裸体を曝すこともあり、それに男たちも誘はれ男女の交はふ場でもあつたさう。そんな昔話からこの一帯を観光協会がロマンチックゾーンと名付けたやう。曝井はアタシが幼い頃はこのあたりにゴミの不法投棄あり市役所がそれの防止にフェンスを立てゝ曝井も汚れた場所でフェンスの向かふにかすかに覗けただけだつたが昨今本当にきちんと整備され今では公園に。本日も整備委託の庭師が入つてゐた。


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スタンプラリーのスタンプ用紙のほかに自分の手帳にもスタンプを押したが〈月の井〉の酒のラベルはプラシートでスタンプのインク乗らず。

翁と摩多羅神

辰年二月初一。気温摂氏▲1.8/11.5度。晴。大相撲三月場所(大阪)初日。初日から大関豊昇龍が宇良に、霧島が阿炎に、そして横綱照ノ富士が錦木に黒星。

宮城野部屋閉鎖も 力士らを別の部屋に転籍方針 伊勢ケ浜一門:朝日新聞

コトの発端は北青鵬による暴力沙汰だが宮城野親方白鵬)に対する処分がかなり重く協会としての実質的な白鵬粛清、追放処分か。日本相撲協会もあのクローズドな組織でBBCに取材報道してもらはないといけないか。

翁と摩多羅神 ―中世寺院の秘神と芸能の世界ー online event by A&ANS | Peatix

このサイトの紹介文は何だか「その秘密に迫る!」でバラエティドキュメンタリーみたいだが内容は、こんなテイストではなかつた。講師は宮嶋隆輔先生(静岡文化芸術大学客員研究員)。能で〈翁〉は大切な場で舞はれる神事のやうな能で演じ手も観客も緊張を伴ふ。だが能披露の前に演者たちには酒が振る舞はれ翁の面も笑顔。このあたりがいつも不思議に思つてヰたが本日のレクチャーでは奈良・多武峰とうのみね*1常行堂の修正会*2法会の記録から摩多羅神*3の祭りと、その奉納芸能について。多武峰では〈翁〉の前に綱丁かうていといふ演目あり。綱丁とは荘園で年貢輸送する責任者で網丁が領主(多武峰)に多くの年貢を運んでくる=おめでたい(領主にとつては、だが)内容。そして〈翁〉により国家安泰、五穀豊穣を祈る。酒宴と乱舞。先月、山形の王祇祭もまさに酒宴と能楽の披露。宮嶋先生もオンラインで催馬楽総角あげまき〉など歌はれる。なか/\上手。角髪の稚児の存在。酒宴での若衆いぢり。わけのわからないことをする=巫山戯る。狂ひ。このあたり日本でも摩洛哥でも世界中に同じやうな〈悪さ〉がある。

一見くだらないものと見えるかもしれないが、その根底には天災・疫病・人災に満ちた中世、“自力救済”によって生き抜く人々のしたたかな心がある。(宮嶋隆輔)

「奉納 翁」(2011)翁:観世清和

多武峰摩多羅神、翁についてネットを見てゐたら、かういふ動きがあつたこともわかつた。

梅原猛氏が談山神社長岡千尋宮司案内のもと神社に所蔵されていた翁面・摩多羅神面と対面されたことを皮切りに多武峰能楽の結びつきを復興させるべく2011年に長年待ち望まれていた談山神社権殿(旧・常行堂)の改修完成に伴い観世流26世宗家・観世清和師による摩多羅神面を用いた能楽《翁》の奉納が実現しました。以後、談山神社での能楽奉納を継続すべく新たに多武峰談山能実行委員会を立ち上げ2012年より5カ年計画の「談山能」が始動しました。そこでは毎年錚々たる面々の能楽師が全国から集結し観世清和師監修による摩多羅神面を用いた《翁》奉納のほか神社蔵の能面を用いた能楽奉納が行われました。多武峰 談山能アーカイヴ

*1:多武峰奈良県桜井市南部にある山、およびその一帯にあった寺院のこと。飛鳥時代道教を信奉していた斉明天皇が『日本書紀』に「多武峰の山頂付近に石塁や高殿を築いて両槻宮たつきのみやとした」とある。-wiki

*2:仏教寺院において毎年1月に行われる法会。修正月会ともいう。この法会は前年を反省して悪を正し、新年の国家安泰、五穀豊穣などを祈願するものである。-wiki

*3:摩多羅神密教、特に天台宗玄旨帰命壇における本尊で阿弥陀経および念仏の守護神ともされる。摩多羅神の祭祀は平安時代末から鎌倉時代における天台の恵檀二流によるもので、特に檀那流の玄旨帰命壇の成立時と同時期と考えられる。この神は、丁禮多ていれいた爾子多にしたの二童子と共に三尊からなり、これは貪・瞋・癡の三毒と煩悩の象徴とされ、衆生の煩悩身がそのまま本覚・法身の妙体であることを示しているとされる。-wiki

Dans une nouvelle ère d'anarchie

辰年正月晦日。気温摂氏▲1.0/10.0度。強風(15.9m)。晴。水戸の梅まつりに合せ週末、弘道館公園で八卦堂と孔子廟特別公開あり。この週末まで。

弘道館記碑は徳川斉昭(烈公)の選文による書で藩校弘道館の教育の基本を示したもの。弘道館開設と同時に建立された、常陸太田産の寒水石(大理石)の石碑(高さ3.1m)。寒水石は風雨による浸食をうけ易いため(では何故にそれを用ゐたのか、このへんが水戸らしくよくわからない)当初から覆堂が設けられた。八角の堂は各面の上欄に八卦(易)の算木取付けられてゐたため八卦堂とい。創建時の八卦堂は昭和20年8月の空襲で焼失し石碑も破損あり。昭和28年に八卦堂再建。戦後の調査で弘道館記碑も以前に補修ありと判明。墨拓で碑文は見てゐたが八卦堂の開門で現物は初見。


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孔子廟も現存の弘道館本館敷地隣接だが塀に囲まれ施設(有料)内部からは入れず通常非公開。弘道館の正門は東(水戸城本丸)の方を向くが孔子廟は曲阜の方角を向いてゐるのださう。長崎の孔子廟も同様だが湯島聖堂はもつと南向きか。


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弘道館公園(第二公園)の梅も満開の盛りを過ぎて花びらが強い風に舞ふばかり。

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神崎寺掃墓。昨日先考命日だつたが朝から悪天候で墓参りできず。午後は水戸市民会館で茨城県弁護士会主催の会合あり末席を汚す。

憲法改正問題に取り組む全国アクションプログラム「大軍拡と経済~防衛費と私達の暮らし」|茨城県弁護士会

憲法改正について。憲法憲法で改正が認められ手順が定められてゐるが実際に憲法改正目指す動きがあるなかで日弁連としては全国的に憲法について先づはよく知らうといふことで勉強会を開催。その一環がこれ。その意図そのものは公正中立だが(公正中立なら良いといふものでもないが)日弁連だから産経新聞が叱るやうに左傾で基本は現行憲法尊重で護憲の立場。

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講師は山田博文氏(群馬大学名誉教授)で経済学が専門の先生。著作の出版元は新日本出版社と大月書店だから、わかりやすいかも。県知事選に代々木推薦で地元の国立大学の先生が出るみたいな。日本は国家財政破綻の危機たる債務超過のなかで軍備増強で軍事費増額ができるのか。米国と日本の軍需産業企業に利益もたらすだけで東アジアの緊張高め米国追従で良いのか。近隣の大国たる中国の対日貿易や市場の大きさなど考慮すれば対米よりも対中こそ重視すべきで東アジアの安定図るためには日本はEUのやうな東アジアの平和的な同盟関係の構築など考へるべき。理想的にはさうだらう。だが現実として日米地位協定に象徴される日本の対米での地位は米国従属しか認められておらず。また中国も習近平体制の強権独裁と、その今後のリスク、また経済成長の鈍化(どころかマイナス)など考慮すべき点はいくらでもあるのだが本日はそれについて一切言及なし。これからはアジアの時代とはとても期待で叫ぶことはできない……なんて感想を抱きながら、この会合のあと市民会館の一角で水戸芸術館眺めながらアタシが読んでゐたのは岩波書店『世界』4月号なのだから「日弁連の護憲集会に参加とは」と嗤はれても致し方ないか。『世界』は十年以上講読中断してゐた。何だかいつも論調が同じ気がして「タイトル見れば中身がわかる」と築地H君と同意。それでも今年1月の紙面リニューアルで購読再開。


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市民会館はフリースペースで勉強に来る高校生らで賑はつてゐて高齢者がそこに割り込むのも憚れるところ。だがグロービスホール(大ホール)でイベントがないとホールの広いホワイエは外の眺めもよく窓際に椅子席が並び快適。水戸市民会館のご立派なところはホール、ギャラリーと音楽室など除き館内での飲食は自由。オープン前の内覧の機会に職員に尋ねたところアルコール類だからダメといふ規定もない。セコマで購入の白ワイン(小瓶)飲めば一人でコンサート幕間気分。母と京成百貨店で待ち合はせ強風なので歩くのも憚れタクシーで大工町。Y寿司。家人も来てK先生夫妻と会食。K先生はアタシの中学のときの担任。亡父が生前に仲良くしてゐて昨日が命日、明日がK先生誕生日なので今晩となつた。

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岩波書店世界 2024年4月号』で特集(トランプふたたび)の鼎談「なぜトランプなのか - 極端化と幻想の果てに」一読の価値あり。イスラエルの問題になると「穏健派」でも国際社会の圧倒的多数による停戦要求を無視。ガザ聞きは「超党派アメリカ」の問題を露呈。バイデンがガザ危機対応できるとは思へずトランプなら、といふ期待。民主党左傾化

民主党に穏健・中道派が残っていれば、共和党の穏健・中道派もごランプの影響力をそぐために一期くらいは民主党の穏健派に大統領をやらせてもいい、ビル=クリントンあるいは以前のバイデンだったら、そう思わせたかもしれません。しかし共和党からすると今の「サンダース化したバイデン」は論外で、バイデンに不測の事態があればハリス政権という彼らにとっての悪夢になる。すると消去法でトランプのほうがマシとなるわけです。(渡辺将人)

選挙をやればやるほど国内の分裂を深め、対外的に民主主義の魅力を全く見せられてゐない米国。海外からは「世界の盟主」として振る舞ひ、すぐに軍事力に訴へるアメリカこそが秩序を破壊してきたと思はれる。今日の講演でも「米中を比べたら中国の方が突然、軍事力で攻撃してこないだけ米国とりマシと思はれてゐる」といふ話あり。確かに。そしてこの鼎談で日本についてのコメント(遠藤乾)も重要。

日本のリベラルの弱さは、日本は平和と安全のためにどこにステーク(掛け金)をかけていったらいいのかというリアルな議論ができていないことにあると思います。

民主党から共産党まで、中道左派から左翼までこれは事実だらう。所謂「保守」がしつかりしてゐれば保守の修正促す意味で所謂「革新」が騒ぎ中道がキャスティングボード握ればバランスが取れたのだが、そんなのは昭和、前世紀の調和の時代のこと。保守は崩壊して保守の右に晋三や維新、トランプのやうな「革新」が現れ本来の保守と中道(米国でいへば共和党)が立ち位置失ひ全体がそちら(保守とはいはない)に傾いた結果、従前の中道左派から「革新」は伝統的な左傾の立ち入り固守するだけ「保守」なのだが、その保守も現状に争ふだけの力ももはやない。

樋口陽一先生も今年、卒寿迎へられる。新刊のこちら『戦後憲法史と並走して - 学問・大学・環海往還』(岩波書店)は幼い頃からの回顧録と先生の重要な判断基準を述べたもの。戦後の憲法「史」と並走して、どころかまさに戦後の現行憲法そのものと並走して、だと思ふ。聞き手はおそらく先生の最も優秀な門下である蟻川先生(東大法学部の憲法学で残つたのは石川先生、で自民党の西村某などといふ不肖な門下もゐる)。今日は前書きを読んだ程度。

70年代、国内は「経済大国」化と利益集団多元主義、国際規模では東西緊張の緩和(デタント)で始まり、南北問題については一定の期待とその破綻がありました。1989年のフランス革命200年記念の学際大会で私の報告*1がひとつの反響を得たとき、それは、戦後民主主義の安定と国際新秩序の到来を思わせる中でのことでした*2。しかし実はそれと間を置かず、内は「戦後レジーム」の解体、外では国際「新・無秩序」へと移行しながら21世紀へとなだれ込んで今日に及んでいる、というのが私の基本的な見立てです。

まさに戦後の高度経済成長からの日本の状況をさすが樋口先生が簡潔にまとめてゐる。この国際「新・無秩序」のなかでいかなければいけないのか。本日は弘道館の水戸学から孔子廟儒教)、午後の弁護士会の勉強会、『世界』にあつた「日本のリベラルの弱さ」から樋口先生のこのコメントまで(悲観的にすら思へた状況も含め)いろ/\考へさせられることが続く。

戦後憲法史と並走して 学問・大学・環海往還

この「新・無秩序」の時代にあるからこそ自分自身だけでもせめて自律神経をきちんと率いてゐるしかないのだらう。

*1:Yoichi Higuchi, "Les quatre〈quatre-vingt-neuf〉 ou la signification profonde de la Revolution frans:aise pour le developpement du constitutionnalisme d'origine occidentale dans le monde", L'image de la Revolution Jran,a'ise, dirige par Michel Vovelle, t. 1, Pergamon Press, 1989, pp. 989-994.

*2:フランシス=フクヤマ『歴史の終わり』も同じやうな当時の認識に基づくものだらう。

首都圏住みたい街ランキングで水戸39位

辰年正月廿八日。気温摂氏0.8/9.3度。夜中から午前中まで雨(22.5mm)。東京は積雪で水府も朝七時すぎから少しみぞれに。午後晴れる。

SUUMO住みたい街ランキング2024首都圏版茨城県ではつくばが29位でトップなのはわかるが水戸が39位に(トップは断トツで横浜が人気)。何故、水戸?といふ感あり。そも/\首都圏ぢゃない。宇都宮(栃木県)や前橋・高崎(群馬県)が入つてゐないのは調査対象が東京、千葉、埼玉、神奈川と茨城だから。首都圏の定義も曖昧だが、東京からの電車特定区間(かつての国電でE電は死語)常磐線は取手(茨城県)までの各駅停車がこれに入つてゐるためか。宇都宮や高崎を結ぶ路線は大宮までが電車特定区間。ならば厳密に電車特定区間だけを調査対象にすればよいと思ふが茨城は全域が対象に。それにしても都道府県魅力度ランキング最下位の茨城県で水戸の39位は善戦。浦安や所沢、たまプラーザを差し置いて、である。茨城でも東京通勤圏で取手、牛久やぎり/\土浦もあるのに。なんだか評価基準も曖昧な気もするが調査報告書(PDF)を見るかぎりかなり分析も精緻。水戸は2020年の75位から着実にランキングを上げてゐる。偕楽園公園(従前の偕楽園と周辺公園)の面積は都市公園として紐育の中央公園に次ぎ世界第2位の広さ(笑)で千波湖を含む市内の景観は確かに美しい。だがいずれにせよやはり東京まで100kmの距離でJRの特急でも70分くらゐかゝるのだから首都圏ではない。

サントリーが社長(新浪)の所為で印象悪くアタシなど「サントリー不買」をしてゐるがキリンが成田悠輔起用で悪評立つ。

A Yale Professor Suggested Mass Suicide for Old People in Japan. What Did He Mean? - The New York Times

なぜわざ/\この人を選んだのか会社広報のセンス疑ふばかり。

梅乃宿

辰年正月廿七日。気温摂氏2.7/10.2度。晴。明日が先考命日。亡父晩年愛飲の清酒〈梅乃宿〉を献杯といふことで飲む。辛口の純米酒が好きだが、この酒は甘口なのだが上品で後味もすっきりで佳味。焼き魚でもよく合ふ。先考は高野山参拝の宿坊で般若湯にこれを供されて好きになつたといつてゐた。アタシが十歳くらゐのときに「ダイヤ菊」といふ日本酒を見つけた、これは美味いと喜んでゐた記憶あつたが後になつて、そのダイヤ菊は小津安二郎監督愛飲の酒だと知つた。

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