富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

君たちはどう生きるか

癸卯年九月十四日。気温摂氏10.7/21.4度。薄曇。昼前に雷雨(3.0mm)。

もう公開3ヶ月になる映画だが水府でもまだ上映中。朝08:20からの1回だけだが。一昨日の段階で数席売れてゐたと記憶するが実際には観客はアタシ一人(180人規模)とはホラー映画ぢゃなくて良かつた。この映画がコペル君のもの(吉野源三郎の書籍)とは直接関係のないと聞いてゐた。また武田砂鉄君が映画を敢へてご覧にならずに映画の内容を想像しながら批評を試みたのも面白かつた。実際にどんな作品なのか。今週は予定もない週末になつたので、これを見ることにしたのだつた。映画館でちゃんと見るのは宮崎駿作品では〈千と千尋〉以来に続き二作品目。

画像は「常識の範囲でご自由にお使いください」ジブリスタジオ

この映画の評価が分かれるところは実によくわかるところ。宮崎駿作品ならもう聖地巡礼のやうな方々には最高傑作だらう。さうでない輩には「何だかさっぱりわからない」「気持ちわるい」となる。アタシはどちらかといふと後者。巨匠の晩期の作品は黒澤明でももう脚本から演出まで誰も口も出さず(出せず)観客数がどれ程期待できるかも採算度外視で兎に角、監督のお好きなまゝにとなりがちだが宮崎駿のこれもそれに近い。いくら空想で非現実的な世界の物語とはいへ「そりゃおかしいだらう」が少なからず。何よりも主人公の少年・ 眞人 まひと(山時聡真)に何も魅力が感じられない。戦争で軍需産業で大儲けする父親(木村拓哉)は妻を空襲で失ひ、息子を連れてかなり田舎に疎開する。そこは亡き妻の実家のあるところで素封家の大きな屋敷を妻の妹・夏子(木村佳乃)が仕切つてゐる。屋敷には見た目から薄気味悪い七人の老婆たち (大竹しのぶ竹下景子風吹ジュン阿川佐和子ら)。その土地には父親の経営する軍需産業の工場もあつて何一つ不自由もない生活で(加藤周一『羊の歌』以上に)戦時中にそんなところで生活した少年が、そりゃ作品のなかでは偶然に迷ひ込んだ異次元の空想世界でワケのわからない擬人化された奇形の動物たち(菅田将暉國村隼小林薫ら)と、どんな冒険したからか知らないが、それは〈オズの魔法使ひ〉とか〈不思議の国のアリス〉とかと同じ空想娯楽の世界で、一転してリアルで戦後、東京に戻り……でこの少年の戦後の日々に何も興味ももてない。あの世で大叔父から現実の人間社会で「より良い世界を築いてほしい」みたいなことを言はれるのだが……せいぜい日本テレビの社長にでもなるのかしら。実際に戦争中にこの少年よりももつと悲惨な目に遭ひ、もつと苦労に苦労を重ね、もつと将来に何か画期的な起因になる出来事を体験した少年など幾千万ゐるだらうか。しかも眞人からみたら叔母の夏子はすでに父の子を宿つてゐて思春期の少年がその父と叔母の関係などさう易々と受け入れられるはずもない。ところが眞人は魔界に連れ去られた義母を命がけで助けにゆく。まだ戦時中……って一寸待ってよ。東京の空襲なんて昭和19年秋以降なんだから妻の妹との再婚は空襲で妻を失つてから半年くらゐ?つまり父親はまだ妻がゐるうちに妻の郷里でその妹を孕ませてたことにならないか。とんでもない背徳アニメでもある。そしてアタシは久石譲の楽曲が苦手なのだつた。


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映画が終はつたら天気急変で雷鳴轟き雨も降り始める。水戸駅ビルの無印良品で買ひ物したりして茨城交通の水戸「市内循環」といふバス(内回り)に初めて乗車。裁判所の次が水戸二高前で陋宅直近。映画に続き路線バスの乗客一人だつたらイヤだな、と思つたが水戸駅から他に2人が乗車。水戸の感度良好の理容室で散髪してゐたころ(この5月まで)に用ゐてくれてた整髪料REUZELのグリーミングクリーム)購入したが匂ひは人が騙されさうな甘い香りは嫌ひぢゃないが自分の髪質に今一つ合はず若い友人T君が整髪料にこだわりあり、このルーゾーのグルーミングクリームも熟知してゐて甘さは好きといふので早速あげてしまふ。晩に家人が香港の筲箕灣街市(場外)で買つてきた餃子の皮を用ゐての餃子。この店の餃子の皮で包むと同じ具が断然、美味しくなるから。