富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

翁と摩多羅神

辰年二月初一。気温摂氏▲1.8/11.5度。晴。大相撲三月場所(大阪)初日。初日から大関豊昇龍が宇良に、霧島が阿炎に、そして横綱照ノ富士が錦木に黒星。

宮城野部屋閉鎖も 力士らを別の部屋に転籍方針 伊勢ケ浜一門:朝日新聞

コトの発端は北青鵬による暴力沙汰だが宮城野親方白鵬)に対する処分がかなり重く協会としての実質的な白鵬粛清、追放処分か。日本相撲協会もあのクローズドな組織でBBCに取材報道してもらはないといけないか。

翁と摩多羅神 ―中世寺院の秘神と芸能の世界ー online event by A&ANS | Peatix

このサイトの紹介文は何だか「その秘密に迫る!」でバラエティドキュメンタリーみたいだが内容は、こんなテイストではなかつた。講師は宮嶋隆輔先生(静岡文化芸術大学客員研究員)。能で〈翁〉は大切な場で舞はれる神事のやうな能で演じ手も観客も緊張を伴ふ。だが能披露の前に演者たちには酒が振る舞はれ翁の面も笑顔。このあたりがいつも不思議に思つてヰたが本日のレクチャーでは奈良・多武峰とうのみね*1常行堂の修正会*2法会の記録から摩多羅神*3の祭りと、その奉納芸能について。多武峰では〈翁〉の前に綱丁かうていといふ演目あり。綱丁とは荘園で年貢輸送する責任者で網丁が領主(多武峰)に多くの年貢を運んでくる=おめでたい(領主にとつては、だが)内容。そして〈翁〉により国家安泰、五穀豊穣を祈る。酒宴と乱舞。先月、山形の王祇祭もまさに酒宴と能楽の披露。宮嶋先生もオンラインで催馬楽総角あげまき〉など歌はれる。なか/\上手。角髪の稚児の存在。酒宴での若衆いぢり。わけのわからないことをする=巫山戯る。狂ひ。このあたり日本でも摩洛哥でも世界中に同じやうな〈悪さ〉がある。

一見くだらないものと見えるかもしれないが、その根底には天災・疫病・人災に満ちた中世、“自力救済”によって生き抜く人々のしたたかな心がある。(宮嶋隆輔)

「奉納 翁」(2011)翁:観世清和

多武峰摩多羅神、翁についてネットを見てゐたら、かういふ動きがあつたこともわかつた。

梅原猛氏が談山神社長岡千尋宮司案内のもと神社に所蔵されていた翁面・摩多羅神面と対面されたことを皮切りに多武峰能楽の結びつきを復興させるべく2011年に長年待ち望まれていた談山神社権殿(旧・常行堂)の改修完成に伴い観世流26世宗家・観世清和師による摩多羅神面を用いた能楽《翁》の奉納が実現しました。以後、談山神社での能楽奉納を継続すべく新たに多武峰談山能実行委員会を立ち上げ2012年より5カ年計画の「談山能」が始動しました。そこでは毎年錚々たる面々の能楽師が全国から集結し観世清和師監修による摩多羅神面を用いた《翁》奉納のほか神社蔵の能面を用いた能楽奉納が行われました。多武峰 談山能アーカイヴ

*1:多武峰奈良県桜井市南部にある山、およびその一帯にあった寺院のこと。飛鳥時代道教を信奉していた斉明天皇が『日本書紀』に「多武峰の山頂付近に石塁や高殿を築いて両槻宮たつきのみやとした」とある。-wiki

*2:仏教寺院において毎年1月に行われる法会。修正月会ともいう。この法会は前年を反省して悪を正し、新年の国家安泰、五穀豊穣などを祈願するものである。-wiki

*3:摩多羅神密教、特に天台宗玄旨帰命壇における本尊で阿弥陀経および念仏の守護神ともされる。摩多羅神の祭祀は平安時代末から鎌倉時代における天台の恵檀二流によるもので、特に檀那流の玄旨帰命壇の成立時と同時期と考えられる。この神は、丁禮多ていれいた爾子多にしたの二童子と共に三尊からなり、これは貪・瞋・癡の三毒と煩悩の象徴とされ、衆生の煩悩身がそのまま本覚・法身の妙体であることを示しているとされる。-wiki