富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

大槻文蔵〈通小町〉銕仙会@宝生能楽堂

陰暦十月十八日。快晴。気温摂氏6.9/21.1度。昼前に常磐線藤代駅付近の踏切で自動車の脱輪事故あり土浦〜取手間が不通。12時半頃に水府のステンショに行くと先発の特急ヒタチがまだ出てをらずアタシの乗車予定のトキワは運休ださう。ホームに停車中のヒタチに乗り赤色のランプの座席(未指定)に坐るやういはれる。出発予定時刻を過ぎると遅延の列車でも座席指定はできない。2人掛けでも通路側はかなり空いてはゐるがコロナで窓際に座つてゐる客の「となりに来るなよ、来るなよ」感たつぷり。グリーン車を通ると空いてゐる席あり。差額払へばよいと思つたが検札はないまゝ。33分遅れて水戸を発ちヒタチは普段は停まらぬトキワ停車駅の赤塚、友部*1、石岡、土浦等に臨時停車で乗客を拾ひつゝ上野着が1時間の遅れ。東京駅から丸ノ内線淡路町。まつや。お能の前は御酒をいたゞかないつもりだが未だ3時間もあり。このあと歩くので今日は一合だけ。なめこそば。しつかりした「なめこ」で、これだけよいアテになるから。


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檜書店。さゝまで練り切り2つ求め1つは公園でぱくりといたゞきもう1つは家人へのみやげ。手塚書房で本数冊入手。すつかりアートしてゐる小宮山書店。高山書店。能楽書林を外なから眺め水道橋まで歩く。宝生能楽堂。銕仙会。定期公演。大槻文蔵師シテ〈通小町〉。大倉源次郎(小鼓)。これで成仏できたの?の物語だが演じ手が見事だとこれほど素晴らしいものになるのか。ツレ谷本健吾(小野小町霊)、ワキ殿田謙吉(僧)。狂言山本東次郎師〈素袍落〉。今年の春、旭日中綬章受章の東次郎さんのまことに溌剌としたお姿。体調不良で代演となり拝見できなかつた後なのでまことに喜ばしい。能〈殺生石〉は講談を聞いてゐるやう、だが講談も上手くないと面白くない。地謡が揃はないといけない。

お能のあと村上湛君が水道橋から東京駅まで付き合つてくれ彼から能のお話を直で聴けるのだから実に楽しいこと。22時発の高速バス。東京からの帰宅が遅くなるときは鉄道で水戸駅に着くよりバスを泉町1で降りた方が便利。

東京五輪フェンシングで香港選手応援のPB会場で英国領香港の旗を掲げ“We are Hong Kong”と叫んだ市民の国歌法に関わる初の国安裁判で実刑懲役3ヶ月。

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*1:友部駅からは朝からのゴルフ帰りのオジサンたちがビール片手に赤ら顔で乗り込んできた。

TAROMAN

陰暦十月十七日。気温摂氏7.8/21度。快晴。

(時代の栞)岡本太郎『日本の伝統』1956年刊・ 縄文土器の芸術性、発見:朝日新聞

〈展覧会 岡本太郎〉は東京は年末迄、上野の東京都美術館で開催中。今年7月にNHKEテレ)がこの展覧会に拠る番組放映で、その中で1話5分の「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」挿入したところ反響呼び、これの第5話だかが今日再放送でこれを見る。

番組HPからDLできるTAROMANのVRで遊ぶ

「TAROMAN」10話を一挙再放送 12月2日(金)深夜「展覧会 タローマン」も – 美術展ナビ

▼香港で蘋果日報社主ジミー黎智英の国安裁判続く。いくつもの罪状で起訴されてゐて、これがいつたいどれで何なのかもよくわからない。黎智英は英国の一流の弁護士雇用。そもそも中共的には香港がいつまでも英米法で英国司法のシステム採用で英国出身の裁判官や弁護士などがのさばることが不愉快で裁判官こそ反中法官は放逐できたが弁護士は雇へば好ましくない弁護士もかうして来てしまふから困る。それでもどれだけ法廷で反論したところで国安裁判なので公平な裁判など期待できないのだが。

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茨ギ県で震度5強

陰暦十月十六日。気温摂氏4.5/19.2度。快晴。早晩にご近所の商店街の花屋*1に寄つて何だかおかしなミニカボチャ?があつて何かと思へば花ナス(ソラヌムパンプキン)でハロヰンの売れ残りなのださう。これだけ床の間に飾ればそれはそれで面白く一枝安く譲つてもらふ。それを持つて帰り他にも荷物があつたので陋宅玄関前に屈んで荷物を床に置いてカバンから扉鍵出そうとしたらドン!と揺れた気がして身体のバランスが崩れ床に尻餅をつき眩暈か?と思つたら地震で暫く揺れてゐたが、けして震度も大したことなく自分が身を屈めてゐたからの尻餅に過ぎないと思つたが(事実、この地震で尻餅ついたのは茨城県でもアタシだけではないかしら)家に入ると携帯の災害速報で茨城県北部で震度5+と出たのには驚いた。水府から西、那珂川上流にある城里町がその震度5+で水戸は震度3。城里町(旧常北町)石塚に家人が出かけてゐた。NHKは17:40の地震直後から緊急報道始まり18時過ぎて地震は県西を震源とするM5.0の直下型で城里町も大した被害もなかつたやうだが緊急報道は続く。水戸放送局から城里町に向かひ取材チームが急行してゐるやうだが国道123号線は通常の郊外への帰宅ラッシュのなか。NHKは「被害の情報は入つてゐない」としつゝ30分過ぎても緊急対応続き更に大きな本震や余震への対応なのだらうが「やりすぎ」。水戸放送局前の道路(大町通り)からの中継では付近の建物の室内照明も街灯も信号機も点灯してゐて停電等の被害はないやうです、としか言ひやうもない。「普段はこの時間、通勤通学で人が多いのですが」は明らかに虚報。NHK水戸放送局の前など普段から人はあまり歩いてゐない。「自動車もゆっくりと走つてゐます」もNHKの中継の照明が明るくて「あ、何かやってる」と減速してゐるだけ。この報道が18時台の地方局からのローカル番組(いば6)まで1時間続いた。


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帰宅した家人の話では「Vt₫!」と一度大きな縦揺れがあり地鳴りの方がよっぽど凄かつたさうだが緊急災害時の警報もスマホで鳴らず近くにゐた幼子が冷静に「だんごむし!」と言つて両手で頭を抱へて地面に屈んだのには本当に大したものだと感心してゐた。

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香港で中央政府(党中央)直轄の国安公署が国安トップの公邸にと豪邸(といつても床面積700平米のコンドミニアム型マンションの一棟なのだが)購入で価格は5億香港ドル、これは円安でこの程度の豪華マンションで93億円。中共から派遣され香港の政治信条や言論の自由を抑圧するだけで何ともオメデタイ役職である。成仏できぬこと祈るばかり。

*1:こちらのお花やさんはY花店といふのだが花店は「はなてん」で所謂「湯桶読み」の「はなテン」が好きじゃない。

皆既月蝕

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陰暦十月十五日。気温摂氏7.9/21.2度。大陸から高気圧が張り出し典型的な冬の青空で雲もなく今晩の皆既月蝕はかなり期待できさう。しかも今夜は満月なのだ(笑)。実際に今日の月蝕は食分が1.364と大きいのでかなり期待……なんて書いてはみたが食分の理解は六つかしい(こちら)。国立天文台三鷹キャンパス)からの実況中継に期待したが専門家二人のお話は少し面白いが肝心の映像がとてもチープで期待してゐただけに残念。NHKは18時すぎからの地方局ローカル番組の時間帯に月蝕が始まり水戸放送局では福嶋アダムさんの中継に期待。こちらはさすがお上手。


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それにしても今晩は天王星蝕もあり皆既月食に惑星蝕が重なるのは永禄3年の土星蝕以来442年ぶりだといはれても天王星蝕は肉眼で見られるものでもなくピンとこず。陋宅からは東の空で皆既月食を見事に愛でることができた。偶然だが大洗の純米酒〈月の井〉を飲む。

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陰暦十月十四日

気温摂氏6/20度。立冬。夕方、郵便局に行き近くから水戸芸術館のタワーを仰いだが「塔」といふのはやはり周囲が平地だから勃起がシンボルたるゆゑんであつて周囲の構造物は邪魔である以外何物でもない。

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昨日、大洗の酒舗おそのえ商店で鹿児島は小正の蔵の師魂で「いもいも」を購入したところ実は小正からノンアルコールの焼酎擬きも出てゐて酒のやまやに在庫あり購入して先づは試飲と飲んでみたがノンアルコールの啤酒、そして日本酒以上に飲めたものではなかつた。蔗糖水といふかサッカリンの水溶液の如し。

伊丹十三ヨーロッパ退屈日記 』再読。白人の下層労働者を初めて目にしたときの衝撃。アメリカ人に対する彼らの屈折のない心、含羞のない心が我慢できない十三。自らそれをアメリカ人に対する人種的偏見といふが米語の「汚さ」とかアタシの今の時代では当然その通り!と思ふが、それを昭和40年!くらゐに言ひのけてしまふことの凄さ。伊丹十三がこの文章を書いたのは昭和37年のサントリーの広報誌『洋酒天国』で十三は昭和8年生まれだから、その当時20代後半である。その当時の書いたものが昭和40年に新刊となりアタシが今回読んだものは昭和49年の新装版。アタシはそれを高校1年の頃かに読んでゐたのだが当時どれほど内容を理解できてゐたのかしら。今になつて読むと伊丹十三のいふ通りで「ふむ、ふむ」と納得なのだが十三がこれを書いたのが半世紀以上前なのである。飲食、ファッション、風習そのどれに関しても20代後半の若者が!と思へば信じられぬ感性、素養そして教養。今かうして読んでも何も古びてゐなのだから。当時、US$1が360円の頃に英国で自動車はジャグァアを購入したり映画出演が決まつたギャラで購入したスポーツカーをドーバー海峡は飛行機で運びフランスを快走なんて。どれだけ。その旅でスペインのマジョルカに遊び、その光景はスペインといふよりむしろ南仏で「セザンヌの光景画」といつてのける。

殊に空の色と岩肌と松の木の形がセザンヌの影響を露骨に受けたという感じなのです。

こんな表現、伊丹十三以外の誰もできないだらう。

ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)

▼先週土曜日に土浦の花火大会あり。ソウルでのハロウィン惨事あり土浦の花火大会では警察の警備も徹底だが群衆も警察の指示に従ひ突飛な行動もなく事故にならず。それはそれで立派だが随分と従順。何か意義申し立てとか出来るのかしら。土浦の花火大会といへば高校1年生の時に、ふと小6の時に知り合ひ中学時代も仲良かつた土浦のH君が、その年は高校入学のため中卒で浪人してゐて彼を訪ねて、土曜日の夕方、水戸から土浦に行き二人で早晩から櫻川の土手でビールを飲みながら花火見物をして、もうカネもないので中学の頃に面倒見てもらつてゐた学習塾の先生を尋ね遅い夕食をご馳走になつた上に明け方まで酒まで飲ませてもらつた。当時16歳である。なんて愉快だつたのかしら。

陰暦十月十三日

気温摂氏6/18.1度。快晴。家人と自動車で大洗。護国寺初訪。日蓮宗の寺院だが境内には血盟団事件(昭和7)の首謀者である井上日召銅像が立ち昭和維新列士之墓まである(この石碑の揮毫は四元義隆)。土佐出身の田中光顕(宮内大臣)が明治天皇から拝領の品々を保管展示する記念館を薩摩に非ず水戸の大洗の大洗に建立したのが常陽明治記念館(昭和4)で広大な敷地内に付属施設として立正護国堂を設け井上日召が地元の血気盛んな若者を集め水戸藩が失敗つた明治維新を昭和のこの世で!と起こしたのが血盟団事件。「立正」の名の通りこの寺院は戦後は日蓮宗の寺院となり井上日召が亡くなる昭和42年迄この地に。


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常陽明治記念館靖国神社遊就館の如き国粋主義軍国主義の展示ばかりだつたが平成9年に田中光顕以来の明治記念会による運営が継続困難となり記念館は所有権が明治記念会より大洗町に移り今では茨城大学OBの小野寺先生が館長で展示内容もかなりニュートラルに。それにしてもこゝが小学校の時も遠足でも見学。みんな適当に遊んでゐたが明らかに戦意高揚のやうな展示内容に「よくもこんなところに連れてくるもの」と呆れてきた記憶。大洗海岸にあつた水族館は竜宮城を模した建築でとても印象的であつた。

かつての常陽明治記念館(左)と大洗海岸の水族館(右)

こちらで〈懐かしの水浜電車と大洗の観光〉開催中で参観。本日は堤一郎先生(日本工業大学工業技術博物館特別研究員)の公演「水濱電車から水浜線へ」あり拝聴。水浜電車は水府では水戸駅から上水戸まで市内電車として走つてゐて昭和41年の秋に廃線となつた。赤塚からは上水戸を経由して御前山まで茨城交通線も走つてゐたのだから当時の電車による輸送網の充実。

水府に戻り東町の行列のできる町中華来々軒〉で昼食のあと県立美術館へ。敷地内(旧水戸農業高校)の銀杏が黄色に色づき始めてゐる。

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こちらでは東洋文庫の所蔵する文献の展覧〈知の大冒険〉開催中で参観。

マルコポーロの東方見聞録(1496年ヴェネチア刊)、ロビンソンクルーソー漂流記(1719年)、ナポレオン辞典、ガルチェリの天正遣欧使節記、シーボルトの日本植物誌、日本幽因記(ゴロヴニン)、ダフカディオ=ハーン書簡、写本だが文選集集、万葉集御成敗式目、西欧紀聞(白石)、伊能忠敬大日本沿海実録選など歴史では知つてゐるが実物の文献を見ることなど珍しい機会。実は昨日、家人が散歩がてら来てゐて江戸地図(遠近道印の改撰江戸大絵図、元禄14)が見事だつたのだが拡大鏡でもないと細部が全く見えないといふことで家人は本日再訪。確かに見てゐて飽きない江戸地図絵であつた。

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家人が親元からまとめて持つてきた郵便切手を整理。これでもだいぶ使つた残りなのださうだが何万円分の切手。アタシもそれなりに筆マメではあるが一生かかつても使ひきれないほどの記念切手の類ひ。これでもバラの切手がこれだけで他にシートがかなりある。

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水戸黄門まつり

陰暦十月十二日。気温摂氏7.5/16.5度。晴。疫禍で2年連続で中止となつた「水戸黄門まつり」が例年8月初旬を今年はこの秋まで延期して規模縮小で開催となる。

水戸黄門まつり公式HP

例年なら市中の大通りを神輿や山車、大名行列や踊りのパレードなどお練りとなるが今年は水戸城址の二の丸と三の丸の内での開催。

 

昭和30年頃に全国で商工会議所や商店街が集客目的で始めた夏祭りで神社仏閣の祭礼だとか古くからの民俗に基づくものでもなく仙台や阿佐ヶ谷の七夕だとか成功例もあるが水戸は水戸黄門に肖り黄門まつり。今年は先月22日(土)に千波湖花火大会、30日(日)に水戸黄門漫遊マラソンで今日がお祭りで3週連続で週末の催事。防疫で感染拡大防止だといふが三の丸公園の狭い会場で神輿だ山車だで踊りまで披露ではソーシャルディスタンスもなからうに。アタシは泉町の商店街で育つたが子どもの頃から神輿を担ぐとか山車に乗つてお囃子を奏でるだの出汁を引くだの踊るだのさうしたこと苦手で祭りでテンションが上がらない。ハレの場が苦手。今日も祭りの賑はひを見に行くでもなかつたが県立図書館に予約した本が取り置きとなつてゐたので早晩にそれを受け取りに出かけたら図書館は本日は午後5時で臨時閉館。三の丸公園はそれほどの人出でもなかつたがさっさと帰宅してしまつた。