富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陰暦十月十一日

気温摂氏10.5/18.2度。快晴。菊正宗の「雅」を飲む。普段の上撰本醸造に口が馴染んでゐて高級なお酒は何だかおちつかない。信州長野のTさんからいたゞいた八幡屋礒五郎の「辛くない七味」は最近、塩辛いもの、刺激物に一寸敏感なアタシにはありがたい。

▼テレビの天気予報。今日は洗濯日和だとか洗濯物は室内にだとか風が強まるので洗濯物が飛ばされないやうにご注意くださいだとか。服装も今日は一枚羽織って出かけたほうがだとか折り畳み傘を持ってだとか……天気予報でこんなことまでいち/\言つてゐるのはおそらく世界中で日本だけだらう。雨が降らうが風が強からうが寒からうが余程の危険を伴ふやうな気象の変化でもないかぎりいちいち注意などしないのである。雨が降るのも晴れるのも暑さ寒さも当然のことなのだから。かういふ「注意される、してもらふ」ことに子どもの頃からアタシたちは慣れきつてしまつてゐる。

 

 

Kafū et András à Saitama

陰暦十月初十。気温10.2/23.1度。快晴。朝「Jアラート」発令。何うせ警報が「遅い」か「ハズレ」で誰も信用せず。今日は埼玉に行くので気象庁の全国の気象データみたら「あれ?」。フツーは各都道府県の県庁所在地で、茨城だと水戸に県西の館野(つくば)、栃木だと宇都宮と近いが山間の日光、千葉だと千葉に漁業があるから銚子、館山、勝浦なのだが埼玉はさいたま(浦和)がない。すると熊谷。確かに関東地方の天気予報で「水戸、宇都宮と熊谷は」なんて聞こえてゐた。なぜ埼玉は熊谷なのか?と思つたら浦和は東京に近く気温も大きな違ひもなく明治期に養蚕の盛んだつた埼玉県北の天候は大切で熊谷に測候所が置かれたのださう。渋沢栄一深谷で、といふ熊谷偏重ではないらしい。秋晴れの空の下、常磐道から圏央道で桶川へ。愛車はタイヤ履き替へ高速道路の運転も楽。陋宅から90分ほどでさいたま文学館。久が原T君からこのチラシ見せられてあばらかべっそん。なんだこれは?これが荷風散人か。

文豪とアルケミスト - 公式 - DMM GAMES とのコラボなのださう。

チラシや入口のディスプレイはこのキャラでドン引きだが展示は一部がこのコーナーあるだけで他は当たり前に永井荷風。お昼は桶川の隣の北本にある手打ち蕎麦やへ。

太治平(地図/桶川・鴻巣/そば(蕎麦)) - ぐるなび

お店のお勧めのメニューで「花巻そば」とは珍しい。上品な手打ちのお蕎麦でご立派。桶川から所沢まで30kmも離れてゐないので高速道路(圏央道→関越道)ではなく一般道で川越を抜ける。荒川渡るあたりまでは武蔵野の面影だつたが川越は自動車通行多くかなり辟易。80分ほどかゝる。所沢ミューズ。アンドラーシュ=シフ卿のピアノリサイタル。シフさまは2008年春の香港芸術祭以来。今回の来日公演で東京はオペラシティで2回(今月1日と4日)あるのを知つたが谷間の今日が所沢。ミューズの音の良さも聞いてゐたのでこちらに。ピアノはシフ先生お好みのベーゼンドルファ。モーツァルトソナタ17番(K570)からベートーヴェン30番でアンドラーシュ=シフと同じ時代を生きてゐることが本当に嬉しいことと感じる。ちなみにアタシがアーカイヴでデジタル保存してゐるピアノの音源はシフのベートーヴェンソナタ集とパスカル=ロジェのドビッシー全曲だけ。シューベルトピアノ曲はいつも寝てしまふのだが今日は飽きないどろこか聴き入つてしまつた。一昨日迄だつたか演奏曲目発表もされず発表されゝば今回の日本ツアーで曲目発表は所沢公演のみ。といふのはTOCでのコンサートは当日ステージでシフ先生自らが楽曲紹介をして演奏ださうで(奥様の塩川女史が通訳)今日は幸ひに?それがなくシフさまのお好きな曲が好きに並んだもの。さういふわけでチラシに曲目もなし……なので自分で曲目を入れたチラシを作成してみましたとさ。

アンコールではアタシでもなぞられるK545のソナタも美しくバッハの平均律ハ長調でプレリュードからフーガに入つたとき(時間もまだ午後6時だし)このまゝ第1巻全48曲やつてしまふのでは?と思ったほどシフ先生も楽しそう。20分の休憩含み3時間の至福のとき。本当にすばらしいピアノリサイタル。

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この所沢ミューズのホールも音も良くどのお席からもステージが見渡せてステキ。パイプオルガンもきちんと正面に。それを思ふと水戸芸術館の硬い音、ホール内の風景を邪魔する柱、ロビーのパイプオルガンは失敗であつた。2千人規模で通常開催で満席は人が出てくるとこんなになのかと驚かされる。コロナ前ならフツーの光景だつたのだが。地下の駐車場もスムーズに車が出せてありがたい(入場時に500円徴収済みで出口ゲートもない)。所沢から関越道、外環道を走り三郷から常磐道常磐道上り渋滞は祝日で秋の国営ひたち海浜公園帰り名物の「コキア渋滞」なのかしら。所沢から1時間半ほどで水府に戻る。この時間に鉄道だと所沢から西武線で池袋に出て上野から特急でも最速で2時間20分で自動車の方が早くガソリンと高速料金も1人分の運賃より安い。水戸インター近く知己のご夫婦が切り盛りする中華料理や。

王府 水戸店(地図/水戸/中華料理) - ぐるなび

味は当たり前だがあまり日本風味に妥協せず。今日は往路復路ともずっと運転したご褒美にこゝで啤酒を飲ませてもらひアトの運転は家人任せでほろ酔ひ帰宅。

陰暦十月初九

気温摂氏10.2/22.8度。快晴。

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週刊文春仁左衛門丈が37歳年下の女性と不倫と報じられる。御殿山のご自宅から線路を越えウォーキングで品川神社で落ち合つたり大阪での興行中の逢瀬など家人がご存じないはずもなくアタシも今更役者の色事に驚きもせぬ。むしろ松嶋屋さんがあれだけ健康を損ねながら今もタバコをやめず愛煙家といふことには情事よりあばらかべっそん。それに週刊文春が450円もすることに驚いた。この記事が何故に「今」なのか。このタイミングを狙つたものではなく週刊文春海老蔵團十郎襲名に合はせ本当に欲しかつたのは海老蔵醜聞だつたのだらう。それが仕上がらず御大の登場となつたか。

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お弁当包みの端がずいぶんと解れてゐたので家人の裁縫箱を開けてさっと針仕事。老眼なのだが裁縫はウソでも手が覚えてゐるといふか勘で意外と当たりがつくもの。


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陰暦十月初八

気温摂氏7.8/18.1度。曇。

成田屋は不幸である。成田屋團十郎XIIIの襲名が疫禍で二年遅れ昨日やつと晴れの襲名となつて野球の日本シリーズも終はつた今日のスポーツ新聞のトップは團十郎襲名になつても良かつたのにタッキーがジャニーズ退社のニュースにお株を奪はれてしまつた。近代の市川宗家は「劇聖」といはれる九代目は男子に恵まれず松本家から養子に入つた十一代目は襲名後3年で癌で他界(56歳)。十二代目も癌で66歳で九年前の2013年に亡くなり当代も悲しいかな妻(小林麻央)と死別。かうも不幸が続くと成田山のご利益も何処にと嘆きたくなる。64歳、56歳、66歳……平均62歳とはあまりに短い役者の生涯。


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アラヂンのストーヴがいつからなのか安全上の「ガード」が周囲についてゐる。これが見た目もうるさいが点火に上層部を倒すときもガチャ/\と五月五月蝿い。このガードを除去すると昔ながらのアラヂンのストーブに戻つた。

團十郎XIII襲名披露記念特別公演@歌舞伎座

陰暦十月初七。気温摂氏6.3/20.1度。快晴。来月から二ヶ月、木挽町で成田やの團十郎XIII襲名披露公演開催であまり乗り気ではないが冥土の土産にいずれか一日くらゐは見ておくべきか程度に思案してゐたところ今日と明日の二日間、襲名の手打ち式含む特別公演開催と報せあり。観世ご宗家の〈神歌〉もあり遉が團十郎襲名ともなると能楽からも観世のご宗家が歌舞伎座の舞台に上がるのかと思つたが従前からさうした仕来りあるのでもないさう。今回は松竹からの要望に観世ご宗家が了承されてのこのなのか。番組も〈勧進帳〉で成田やの弁慶に義経が大和屋、富樫が仁左衛門といふもので、これが見られたら来月から二月の本興行襲名披露は見なくてもよいかと思ふ。たゞこの特別公演、松嶋屋の事務所でもテケツの承りなしで歌舞伎会でも先行販売しないさう。さすがにそれぢゃテケツも入手困難かと諦めてゐたら畏友の配慮でテケツ確保できた次第。ありがたや。

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実ハ今朝とんだ珍事あり家人が車で買ひ物に出かける際、アタシはまだ少し時間があつたのでパジャマ姿でのんびりしてゐたが家人のお出かけに合はせゴミ出しに出たところ家人が習慣で玄関の鍵をしてしまつてゐてアタシは部屋に戻ると入ることもできず慌てゝ駐車場に戻つたが家人はもう車で去つた後でスマホもなく電話もできず。マンションでお向かひの方が在宅してゐてワケを話して電話をかけさせてもらふことになつたが生憎、家人の携帯番号も覚へてをらず。母の携帯もわからず固定電話にかけたが見知らぬ番号に応答もなく妹の職場の電話番号をGoogleで調べてやつと身内につながり家人に電話して戻つてきてもらふことに。その間、パジャマ姿で外で寒さしのぎで日なたぼつこしてゐると呆けた老人か白痴にしか見えぬだらう。乗る予定だつた特急を1本遅らせて昼すぎに上野まで。銀座線で田原町。菊屋橋を抜け三筋にあるトンボ洋傘の前原光榮商店。杖のかはりになるやうな長傘で雨傘のほかに日傘も通販で入手の1本あつたが(日剩2013年6月5日)丈があつて荷風散人なら良いが背の低いアタシが持つと格好が良くない。そこで前原商店の晴雨兼用の長傘で丈85cmはやはり実物を見てから、と参つた次第。さんざん迷つて薄灰色のペイズリー柄の傘を購入。偶然にも今日まで日傘は季節終ひで3割引きであつた。

三筋から小島町、鳥越、二長町と歩き秋葉原

もうこゝまで来れば万世橋を渡れば神田淡路町。近いものである。


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神田まつやで久ヶ原T君と待ち合はせ午後の一盞。頻繁に訪れる馴染みの蕎麦やでも注文したことないものがいくつもある。並木藪の〈うどんの抜き湯〉でも「花巻」や「しっぽく」の扱ひが別格だなんて話してゐたので食べたくなつたが「しっぽく」がないので「おかめ」か。おかめそばなんてもう半世紀以上前に食べたつきりだ、なんて話してゐたら横をお店のおねえさんが通りすがりにこちらも見もせず「おかめ美味しいんですよ」。振り向きもせず。だがその一言がアタシたちをどれだけ喜ばせてゐるかわかつてゐて背中で聞いてゐるから愉快。これが芝居のやりとりの基本でせう。地下鉄で銀座乗り換へで東銀座。

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成田やの團十郎襲名の特別公演とあつてはいつも以上に随分とお客さま方も艶やかで賑やか。観世ご宗家の〈神歌〉で、これは本当に改まつた場でも特別なものなのだが客席はまだざわついてゐるし能楽堂でのときのやうな張り詰めた空気もない。この〈神歌〉のあとロビーで遅れてきた「お偉いさん」的なオッサンに先に来ていた部下が「何だかよくわからないのがあっただけです」。そんなものだらう。顔寄せ手打ち式は役者がずらりと並びさすがに豪華なもの。月の晦日で他の劇場でも芝居のないタイミング。松竹三役の下手に高麗屋(白鴎)で成田や父子。その後ろに松島屋と大和屋。右手は音羽屋(菊五郎)。中央上手に凛とした殿様のやうな大きな格は梅玉丈(村上湛君もずいぶんと立派なものと褒めてゐた)。ダウンタウンの松っちゃん?と思つたが身体が大きく目立つのは松緑。後列までよく見渡したがさすがに中車の姿は見受けられず。大上手を占めるのは高島屋左團次)で口上を言はせたら何を喋るか楽しみだが本日は手打ち式でそれもない。松嶋やはじつに終始柔らかな表情で笑顔ですらあつたが他の誰もが随分と硬い表情ばかりと思つたのはアタシだけかしら。〈勧進帳〉の舞台に拵への時間を要するところ成田やの映像を15分ほど見せられる。九代目の見事さ、当代の祖父にあたる十一代目の美貌と助六でもセリフの良さ、先代(十二代目)の知性とお人柄まで表れる舞台も懐かしい。〈勧進帳〉は仁左衛門丈の富樫をしつかりと見せていたゞいた。丑之助君がセリフもない太刀持ちなのだが、これが所作も見事、見事。大和屋は「べんけい」がしつかりといへず。成田やの弁慶は折角の襲名披露公演だからあれこれ言及は控へておきませう。たゞ弁慶の「状況」をあそこまで顔の表情作つて見せなくとも……。四天王は雁治郎、芝翫愛之助といふ大物と並び成田屋の番頭格で新蔵さん大抜擢。


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本日はとてもよいお席を手配いただいてしまひ恐縮。お隣も然るご立派な方で一つ前の席に高校生くらゐのお坊っちゃま連れの若いお母様は誰かと思へば実は知己の元女優さん。そのお隣には山階彌右衛門さま(観世ご宗家の弟)で正月に観世で〈安宅〉のシテを勤められる予定。それを歌舞伎(勧進帳)で何うご覧になつてゐたのかしら。会場には役者の奥様方数えきれぬほど。松嶋屋の奥様にもコロナのなか初めてお会ひしてご挨拶。

水戸黄門漫遊マラソン

陰暦十月初六。気温6.5/19.4度。快晴。本日3年ぶりだかで水戸黄門漫遊マラソン水戸の市街中央から出て南に県庁まで行き西をぐるりと回り市街に戻り千波湖1周半して水戸の台地の下を梅香トンネルで潜り那珂川南の低地を走り残り1.5kmで国道349号(棚倉街道)の旧道急坂を上る。


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午前9時に南町2の交差点スタートで国道50号線は朝7時半から自動車通行止め。今日は秋の天皇賞で日刊スポーツ買ひに出て発走30分前ににスタート地点を通りかかつたが4車線の道路を水戸駅から大工町交差点まで2kmにわたつてマラソン専用とするわりには「こんなものか」の人出でアトでわかつたが参加者8千人たらず。10分もあればスタート完了だらうが道路通行止めは10時まで。スタートのあと「誰も歩いてもゐない歩行者天国」が寂寥感たつぷり。スタート地点周辺の商店街が何軒か朝から店を開けてゐて便乗で商売?と思つたらランナーや関係者にトイレ貸したりの協力だつた。スタート地点から1ブロック離れたところにあるおにぎり屋(地元茨城の食材を活かしたおにぎり専門店)が朝から開けてゐたから売上協力と思つて初めて入つたら「見てはいけない」感のあるおにぎりこちらが何とも。茨城の常陸牛で茨城の県花はバラなのでローストビーフでバラをあしらつたのだらう……それにしても。フツーのおにぎりがなくてコンビニへ。さすがに水戸のローカルマラソンケニア出身の選手は出てゐないだらう、と思つたら2時間18分2の大会新記録で優勝はケニア出身のガンドゥ=ベンジャミン選手。ケニア出身だが山梨学院大OBで壬生町役場の職員。日本に帰化してゐるから外国人選手ではない。

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今日はマラソンのゴールから1km地点にある陋宅の周辺は午前10時40分から午後3時30分まで道路通行止め。マンションのバルコニーからマラソン応援もできるが。家人は大学のときの友人の旦那がマラソン参加で友人も来るといふので久々に旧交温めに早々に出かけアタシは道路封鎖となる前に自動車で脱出。野暮用済ませドライブなんて趣味もないが天気も良いのでマラソンのエリアを避け東の沿海の方に走つてみたら鹿島灘海浜公園まで。炎天下では肌が灼けるほどで気温も摂氏20度超だらうからマラソンのランナーには酷しい暑さだらう。旧美野里村の小美玉温泉。とても良質の黒湯につかる。


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秋の天皇賞。先週の菊花賞では1番人気馬のG1で15連敗止めるかとキタサンブラック産駒のガイアフォースに期待したが8着。今日こそキタサンブラック産駒で1番人気の◎イクイノックス(ルメール)である。パンサラッサが大逃げで1000mのラップが57秒4で4角で後続勢に15馬身くらゐの差(ドバイターフ勝利の再演か)。そこから◎が奇跡のやうな追ひ上げでパンサを差したどころか1馬身差で優勝。上がり32秒7といふ驚異的な時計(パンサは36秒8)。皐月賞とダービー2着で惜敗から初のG1勝利で3歳馬にしてデビューから5戦目で古馬G1の制覇(最少キャリア記録)。1番人気馬のG1勝利は昨年の有馬記念でエフフォーリア以来*1とは。

*1:16連敗のうち2着は春の天皇賞ディープボンド1頭のみで3着が皐月賞ドウデューズと秋華賞スターズオンアースの2頭だけといふ不振だつた。

水戸室内管弦楽団 第110回定期演奏会

陰暦十月初五。気温摂氏9/21度。快晴。本日は水戸室内管弦楽団(MCO)の第110回定期公演。アタシの帰国からは一昨年秋の106回(独奏は宮田大のチェロ)からもう5回とは。

このコンサートに信州長野からTさん来られて駅に迎へにゆくと駅北口の駐車場、乗降場がかなりの混雑。明日は3年ぶりの水戸黄門漫遊マラソン(笑)で前乗りのランナーとかも少なくないのかしら。水戸芸術館。母と家人もそれぞれ来てゐて通常通りの定員でほゞ満席。本日はモーツァルト。Sébastian Jacotでフルート協奏曲第1番ト長調K.313は彼の弾き振りならぬ吹き振りでまるで優雅にバレエ踊るやう。藤田真央でピアノ協奏曲23番イ長調K.488は第2楽章を3日前の「お別れ会」でオケの編成は少し小規模で演奏。本日は第1楽章から随分と小さな音でえっ?と思つたが左足ペダルかなり踏んでゐて同楽章後半のソロでも少し音をおとしてゐる。このくらゐの編成の室内楽団で、このホールのサイズならこれもありかしら。昨日とも曲の装飾が違ふらしい。第2楽章はやはり「お別れ会」のときの余韻があつて特別なそれと今日は全く違ふもの。楽団の同じ演奏者でもこんなに音は変はるもの。第3楽章はそれまで抑制してゐた音がはち切れんばかり。それにしてもモーツァルトもあばらかべっそんのMCOと藤田真央の23番となつた。後半は交響曲40番ト単調K.550番。ヴィオラや第2バイオリンの旋律がこんなにきちんと響くオケはやはり素晴らしい。指揮者不在もこのオケならありだが音の入りはよくてもやはり長いフレーズの終はりだとかホルンだとはいはないがリズム感に多少難があるとやはり指揮が要るのだらう。それもかうした小さな楽団で、となると小澤征爾なのだ。コーラスだとか小さな楽団がマエストロの存在で神様が降りてきたやうになるから。家人が先に地下駐車場から車を出して母がゆつくりと階段を降りてTさんと4人で裡信願寺の中川樓へ。白焼きでゆつくりと飲んでからうな重。良い音楽会のあと、その余韻でお酒を飲んで美味しいものを食べて……は幸せ。Tさんは本当は今晩、水府に一泊の予定が明日のマラソンでホテル激混み。前回1泊3,800円だつたホテルが今晩は15,000円の高値で水戸泊あきらめ普通の人なら、これで今晩のうちに信州長野に帰るのだがTさんサンライズ瀬戸の寝台車が取れたので(笑)瀬戸内国際芸術祭2022へ参られる。なんて素晴らしい発想よ。