富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

相馬沖地震

昨夜三更すでに臥床でうつらうつらしてゐたところ地震ありゆらりゆらりとゆっくりと大きな揺れで震源は随分と離れてゐるだらうが大地震であることは確かで十年前の大震災のこと頭を過り居間の食器棚など心配で起き上がらうとしたところ停電になり壁づたいに居間に入つたところ電灯がつき陋宅は幸はひ居間の棚に据ゑてあつた斑馬のぬいぐるみが床に落ちたくらゐ。相馬沖が震源で深さ55km、M7.1といふ大きな地震で福島の最大震度6強。水府は5弱。海嘯の心配もないやう。土砂災害や家屋倒壊がなければよいが。携帯電話の緊急アラートはOFFにしてあつたので、あれで驚かさなかつた。余震も心配だが寝入る。

f:id:fookpaktsuen:20210215071651j:image

朝起きてみると玄関の棚にあつた八幡宮のお札が倒れてゐた。NHKでも地震関連のニュース続き朝8時すぎからの〈音楽の泉〉は放送なし。


f:id:fookpaktsuen:20210214080742j:image

f:id:fookpaktsuen:20210214080739j:image

昨日(年初二)は車公誕。香港ではこの日が正月詣りで車公誕は新界沙田にあり新界鄉議局主席劉某が代表で神籤を引く。政治情勢不安定と疫禍のなか沙田車公曰く「下手須教一著先,世情局面苦徒然;積薪歷火非無事,識者能知火未燃」。疫病は「換醫生為佳」で蘋果日報にいはせればこれは「政府應換人」。何うであれ不安定はしばらく続く。

f:id:fookpaktsuen:20210215174251j:image

今日は異教徒の蛮族にかぎつて祝ふ聖ヴァランタイン節。「とらや」は「あんやき」カカオ味とラムレーズンの小型羊羹なんだとさ。本日晴天。家人と散歩がてらK寺に参ると来月先考十七回忌を前に墓石もずいぶんと汚れてしまつてゐて墓石を磨く。
f:id:fookpaktsuen:20210214181212j:image
コンビニで昼飯を購ひ偕楽園に往き入り口で運転免許証見せ住所確認→県民特典で無料で入園しようとしたら「お祭り期間中は県民も有料」ださう。昨日から梅祭りだつた。300円くらゐなのだらうがケチなので常磐線の陸橋渡り昔は江戸時代は田圃でアタシが子どもの頃は沼地だつたところにある偕楽園の拡張部の公園へ。そこの広場で偕楽園を見上げながらお昼。

f:id:fookpaktsuen:20210215183508p:plain

ここは田鶴鳴(たづなき)梅林と呼ぶさう。本来の偕楽園を拡張することで今は紐育中央公園に次ぎ世界第二位の広さの都市公園なのださう。紐中公園は曼哈頓の大都市の真ん中にあるから都市公園だが偕楽園拡張部は水府の旧市街から見れば「郊外」なので「世界第二位の広さ都市公園」といふにはかなり無理あり。郷土史に詳しい畏友J君らにいはせれば偕楽園からは烈公が見た眼下に千波湖、南に紫峰(筑波山)の景観といふものがあり桜川の湿地帯であつた田圃を緑化して公園化するのはおかしな話といふこと。そりゃさうだ。だが「それでも」拡張部の緑地は水戸の緩やかな公園管理方針で柵も門扉もなく犬を遊ばせ球技も凧揚げもOKでじつに大らか。偕楽園の「人皆な楽しむ」の方針が生きてゐるのは立派。ちなみに行政では本来の偕楽園茨城県の管轄で拡張部は水戸市

f:id:fookpaktsuen:20210214181047j:plain

偕楽園弘文亭を望む。紅梅は見頃で白梅はこれから。

偕楽園から千波湖をぐるりと半周。気温も摂氏18度だかで千波湖や湖畔の緑地には幼児連れた家族など楽しそうに遊ぶ。人馴れした白鳥や鴨ばかりか大きな鯉までも「餌くれ、くれ」と可笑しい。茨城県近代美術館。

f:id:fookpaktsuen:20210214081531j:image

1月16日から開催予定だつたが県独自の緊急事態宣言で2月8日から。ムーミンでもアタシらが親しんできたトーベさんの物語(挿絵を含む)とアニメ〈ムーミン〉の子どもが怖いと思ふ自然の脅威との対峙のやうな不可思議なお話と、この展示に違和感あるのは今回の「コミックス」は多少どころかかなり違和感あるのは「コミックス」は英国のイヴニングニュース紙に1954年から連載された漫画で、これを見てゐなかつたから。

f:id:fookpaktsuen:20210214081538j:image

今回の展示ではそのコミックスの原画が網羅され思はず見事なペンタッチと構図に見入る。トーヤが物語制作に多忙でコミックスが実弟のラルスに委ねられ1列3コマのコミックスでラルスの見事な構図が息をのむほど素晴らしい。アタシが見慣れたムーミンはこちら静岡県立美術館「ムーミン展」日本平のふもと、緑に囲まれた美術館 で開催中。

f:id:fookpaktsuen:20210215190002p:plain

コミックスではかういふ短い線で丹念に描かれた背景はとくに見事。

f:id:fookpaktsuen:20210214081716j:imageNHK大河ドラマ〈青天を衝け〉第1回を見る。慶喜と栄一との出会いから日本は近代に動き出すことになった」って……言ひ過ぎだろ。あまりにドラマの自己本位。もう何十年も大河ドラマは第1回を見てお終ひ。今日の番組で共演の場面はなかつたが「のだめ」の千秋先輩とミルヒー先生が幕末の前世では高島秋帆と斉昭公であつた。

f:id:fookpaktsuen:20210215162526j:plain

東京五輪音頭2020+1


f:id:fookpaktsuen:20210214080611j:image

f:id:fookpaktsuen:20210214080608j:image

中共の正月、中共の安定。香港では検疫事業で市民はモルモットと蘋果日報

f:id:fookpaktsuen:20210214180917j:image

あちこちの施設の入り口に検温センサーがあるが設備で建物入り口の動線に昨年の急場凌ぎの後付け。電源コードなどの始末の悪さが気になるところ。或る施設で昨日このセンサーが設置されたのでアタシは出しゃ張つて電源アダプタからコードの処理をやらせてもらふ。結束バンドの使ひ方もきれいで満足。
f:id:fookpaktsuen:20210214180914j:image

 昨日の天声人語(下)。冒頭にある「クイズ」読んで「ん?」と思つてしまつた。

f:id:fookpaktsuen:20210213075019j:image

父親と息子が交通事故に遭ひ二人とも大怪我。救急車で別々の病院に運ばれ息子の方を担当した外科医は顔を見るやいなや叫んだ。「これは私の息子です!」。

普段「ジェンダーにフェアだ」と思つてゐる自分も男社会の先入観があるといふこと。「外科医はその子の母親だつた」といふやうな状況を想像できなかつたとは。ジェンダーといへば渦中の森喜朗の辞任で後任とされた蹴球川淵某が突如会長就任辞退。何だかもうさつぱりわからないが「東京五輪開催がとことんダメになつてゆく」のが反五輪派のアタシですら何だか物悲しく思へるほど。2013年にリオで東京五輪2020が決定した際に晋三らの余りの大騒ぎが癪に障り皮肉たつぷりに<東京五輪音頭2020>を作詞したのだが昨年そのコロナ延期が決まり5番も追補。これで〆かと思つたら今年は長引くコロナ禍で「中止もやむを得ないのでは?」世論高まるなか今回のまさかの森喜朗舌禍。そこで<東京五輪音頭2020+1>この度6番も追補されましたとさ。

(6番)ハアー (ソレ)
晋三やめたよ 五輪までは見たかった (ソレ トトントネ) スガに五輪ができるのか (ア チョイトネ)
そこにオンナはダメなもんだと 森の喜朗 失言だ ヨイショ コリャ 失言だ
オリンピックはもう無理だ ソレトトント トトント もう無理だ

(1番)ハアー (ソレ)
あの日リオデで 眺めた月が (ソレ トトントネ) きょうは都の空照らす (ア チョイトネ)
七年たったら汚染もないよと 晋三約束 噓ばかり ヨイショ コリャ 噓ばかり
オリンピックはカネにカネ ソレトトント トトント カネにカネ
(2番)ハアー (ソレ)
待ちに待ってた 電通の祭り (ソレ トトントネ) 東のソ連は今はない (ア チョイトネ)
北のキムさんもいらっしゃい テポドン飛んでドンときた ヨイショ コリャ ドンときた
オリンピックは起爆剤 ソレトトント トトント 起爆剤
(3番)ハアー (ソレ)
慎太郎うれしや 数えりゃ八年 (ソレ トトントネ) 仰ぐ日の丸 はずむ胸 (ア チョイトネ)
邦のかたちが違うから いずれきちんと改憲だ ヨイショ コリャ 改憲
オリンピックは政治的 ソレトトント トトント 政治的
(4番)ハアー (ソレ)
国が囃せば 民草踊る (ソレ トトントネ) 菊の威光は久子さま (ア チョイトネ)
帝都改造 土建の音に 上がっていくいく安倍景気 ヨイショ コリャ 安倍景気
オリンピックはまやかしだ ソレトトント トトント まやかしだ
(5番)ハアー (ソレ)
今年いよいよ 五輪の祭り (ソレ トトントネ) 晋三政権しめくゝり (ア チョイトネ)
そこにウイルスパンデミックないと 晋三確約 噓ばかり ヨイショ コリャ ウイルスだ
オリンピックもお流れだ ソレトトント トトント お流れだ

辛丑正月初一〈恭囍發財〉


f:id:fookpaktsuen:20210212212214j:image

f:id:fookpaktsuen:20210212212217j:image

辛丑(かのとうし)年正月初一。恭囍發財。昔は正月三が日は新聞も休みだつたのに元旦新聞発行に先鞭をつけたのは蘋果日報だつた記憶。中共党紙も元旦発行あるはずだが今日の大公報はPDF版は見当たらず。香港の地方党紙(大公報)に比べても人民日報は格段に面白くない。さすが中央党紙。蘋果日報が元旦から伝へる中共のキナ臭いニュースは(WSJ紙からで)中国のネット大手Tencentの高層が中共公安解職された孫力軍にWeChat情報漏洩で身柄拘束の由。個人的な収賄といふことでTencent創業者の馬化騰に調査の手は及んでゐないが中国経済成長鈍化(それどころか悪化か)の中で財界への締めつけ厳しく馬化騰もアリババの馬雲と同じ境遇では?と。

f:id:fookpaktsuen:20210212215727j:plain

画像が上下逆になってしまいました(意図的ではありません)

香港で農暦正月といへばもう何年前からかしら米英の総領事館が競ふやうに面白可笑しい正月祝賀映像をネットに流し他国の総領事館も追従で、まるで競ふやう。

f:id:fookpaktsuen:20210212220131j:plain

米英の嗜好を凝らしぶりは大したもので毎年楽しみだつたが香港の民主化弾圧で英国が不愉快感示し米国はトランプの対中反発あり両国とも正月祝賀はするにしてはみせたが映像が投げやりで暗さすらあり。いずれも顔本に載せてあるものだが英国(こちら)と米国(こちら)。それに対して日本の在香港総(こちら)の明るさといつたら特筆すべきもの。ぴょんぴょん跳び跳ねながら広東語で新年祝詞のW総領事。
f:id:fookpaktsuen:20210212211948j:image

 

除夕かな


f:id:fookpaktsuen:20210211075233j:image

f:id:fookpaktsuen:20210211075236j:image

春節を前に香港では外食は4人で午後10時までに暫定緩和の由。「安心」アプリで安心して外食を、と大公報。ネットラジオで「林鄭一家死ね!」発言も刑事罰対象。

f:id:fookpaktsuen:20210211203856j:image

本日は紀元節皇紀二千六百八十一年ださうな。あの東京五輪(中止)の大騒ぎから八十年余。水戸市立博物館は水戸市民でも「どこにあるの?」どころか「そんなのあったんだ」 くらゐマイナーな存在だつた印象あるが昨年の「ざんねんな鳥たち」特別展はコロナ禍でもかなり反響あり緊急事態宣言休館明けで今週から始まった開館40周年記念の特別展「昭和浪漫 思い出の宝石箱」展参観。なんだか市立図書館がやたら元気が良い。


f:id:fookpaktsuen:20210211203923j:image

f:id:fookpaktsuen:20210211203926j:image

まさにアタシが生まれ育つた戦後の水戸の商店街の展示がたまらない。泉町の志満津と伊勢甚といふ二大デパートはアタシら商店街の子たちの遊び場だつた。 催事場での夏休みのお化け屋敷や昆虫展など木戸御免で連日入場するばかりかお化け屋敷など裏に回つて大学生のアルバイト君と懇意になり客を驚かす仕掛けまで動かす役目を買つて出たり。その間、学生アルバイトは仕事をサボつてゐた。昭和の戦後は、それは商都水戸の賑はひであつた。今回そこまで期待もしてゐなかつたが昭和45年当時の水戸駅から上市・泉町までの大通り商店街の何十枚もの連続写真の展示あり。これは貴重。何ういふ経緯の写真記録かは展覧の「おわりに」に掲示があつた。

f:id:fookpaktsuen:20210212154135j:plain

参観者は連続写真を眺めながら「あー十字屋」だの「ミハシは賑はつてゐたわね」だの歓声あげてゐるほどでアタシも当時が一軒一軒の商店が懐かしいかぎり。この「おわりに」にある大森さんといふ方は当時、泉町1で伊勢甚隣にあつた柏屋といふ大店の砂糖問屋の方。それで、この写真コレクションが面白いのは(といふか残念なのは、だが)大通りの商店街でも南側だけで北側は一枚もなく水戸駅前から大通りの南側がずっと撮影され、それが柏屋と伊勢甚のところでお終ひ。その先も内田肉店、常陽銀行中支店そして泉町2から大工町と賑やかな商店街が続くのだが伊勢甚まで。大森さんもあくまで自分のための記録で、まさかそれが半世紀後に水戸の博物館で貴重な記録として展示されるとは夢にも思つてゐなかつただらう。

f:id:fookpaktsuen:20210211203956j:image

市立博物館を出て県立図書館に借りた書籍返しにいく途中で南町1(仲町通り)の五鐡で昼食。奥久慈の軍鶏で親子丼。池上先生の〈鬼平〉に五徹といふ軍鶏鍋屋が出てくるが、この水府の食肆もそれを意識しての名付けで軍鶏を出してゐるのかしら。さすがに蕎麦屋ぢゃないから「親子丼をヌキで」といふわけにもいかず親子丼の具を肴に昼酒。偶然だが昨晩から池波正太郎を読んでゐた。
f:id:fookpaktsuen:20210211204101j:image

先代の又五郎丈のことが懐かしく思へたのは昨秋三宅坂で養成所開所50周年の展示を見て研修生を指導する播磨屋の姿が何枚もの写真にあつたからで晩年の播磨屋の舞台姿が目に浮かび又五郎に関するあれこれネットで見てゐたら池波正太郎に『又五郎の春秋』あり、これを読んでゐなかつたと早速図書館で漁つたら池波先生の全集にそれがあつて借り出して読まうとしたら講談社の完本池波正太郎大成第29巻の巻頭は「青春忘れもの」で正太郎少年の青春記を読み直ししたら止めらられない。小学校を出たてで兜町の株屋に働きに出た小僧が小遣ひを握つては煉瓦亭や資生堂で舌鼓打つのは有名なエピソードだが一時期株屋を外れて塗装業に従事した時には重光葵邸に仕事に行き「そんな偉い人になら何か一つ記念に書いてもらはう」と神楽坂の文房具やで白扇買ひ求める。重光邸では本当に主人に遭遇して白扇を差し出す13歳。重光葵から三日後に「精神一到何事不成」と認ためた白扇手渡され応接間で紅茶とケーキ用意され御大自ら紅茶を淹れてくれたのだといふ。歌舞伎も好きで義太夫を習ふほどだつたが三越ホールで羽左衛門XVが頻繁に出てゐる上に買ひ物にも現れたところに出くわし手帳に万年筆差し出しサイン請ふたところ十五代目は若いご贔屓に礼をいひ「ちゃんと色紙に書いたものを差し上げませう」「二日後にまたこゝで」で本当にきちんと紅梅の一枝描いた色紙をくれた上に歌舞伎座の一等席の切符二枚が封筒に入つてゐたといふ。何とも美談。その月の木挽町といふのが團菊祭で六代目の踊りで〈年増〉と〈浮かれ坊主〉。このつなぎの駕籠かきが男女蔵左團次Ⅲ)と時蔵Ⅲなのだ。そして七代目の〈暫〉に六代目の〈塩原多助〉。十五代目は〈源氏店〉の切られ与三。何と羽左衛門XVに、このお礼にと銀座のレストラン保米樓(ほめろ)名物のローストビーフのサンドヰツチを大箱に詰めさせ歌舞伎座の楽屋に届けさせた池波少年は数へでやつと十六なのだ。そして吉原での筆下ろしは相手してくれたお女郎が成就のあと祝儀にと赤飯と蛤の吸物を用意してくれてゐたといふのだから粋な時代。このお女郎とは数年懇ろとなり正太郎出征の折には母親が「お世話になりました」と吉原まで礼をいひに行つたといふ。この全集「青春忘れもの」の次は「食卓の情景」なのだから、なかなか『又五郎の春秋』にゆきつかない。

f:id:fookpaktsuen:20210211203959j:plain

夜は夜 昨夜の咖喱 冷や酒の 肴に一盞 除夕かな

東都は太田記念美術館笠松紫浪没後30年記念の大規模な作品展開催中。ぜひ参観したいのだが2月も後半で展示作品総入れ替への3月も何うにもタイミングが合はず出向けない。今回の展覧図録が京都の芸艸堂から出てゐたので、それを買ひ求め今日届いた。


f:id:fookpaktsuen:20210211111143j:image

f:id:fookpaktsuen:20210211111138j:image

陋宅には祖父の代から玄関にこの(左下)「春の夜 銀座」が掛けてあり幼稚園に行くときも玄関で、なんでこんな寂しい絵を掛けてあるのだらうと思つてゐたのだが少し大人になつて昭和9年の東京で夜これだけ人が出てゐるのは戦争前の一時の賑やかさで祖父も遊びにゆけば楽しい時代の思ひ出なのだらうと感じるやうになつた作品。「東京タワー」(右下)は平成になつて芸艸堂の版をアタシが自分で購入したもので紫浪の作品では「春の夜 銀座」と並んでお気に入り。


f:id:fookpaktsuen:20210211111204j:image

f:id:fookpaktsuen:20210211111159j:image

談志『現代落語論』三一書房(昭和40)


f:id:fookpaktsuen:20210210072815j:image

f:id:fookpaktsuen:20210210072812j:image

もはや法治などない香港では英国籍の司法大官が追はれ高裁で保釈認可となつたジミー黎智英は最終裁で保釈不可に。司法が権力忖度するのだから法治などない。


f:id:fookpaktsuen:20210210104534j:image

f:id:fookpaktsuen:20210210104531j:image

毎日のやうに立ち寄る陋宅ご近所の市立図書館で書架にあつた小玉武洋酒天国とその時代』をぱらりと頁捲つたら酩酊についての一文あり「また健某ったら」と思つたら、これが『死霊』の埴谷雄高なのには驚いた。晩年の埴谷先生が吉祥寺の自宅から着流しで出てきて散歩しながら声高に語る姿にも驚いたが、こんな洒脱な随筆を『洋酒天国』に書いてゐたとは。

f:id:fookpaktsuen:20210211082147j:plain
f:id:fookpaktsuen:20210211082151j:plain
白菜は黒豆のあと口直し

談志師匠の落語は苦手だが三一書房の『現代落語論 』は10年に一度くらゐ読み直してみたくなる。破天荒なやうで真面目な人である。本当に噺家に向いてゐたのか?と思ふ。中学からどっぷりと落語にハマり寄席通ひで高校中退して小さんの弟子に。朝太(志ん朝)に真打出世抜かれたのは何とも辛かつた小ゑん(談志)だが当時(昭和38年頃)二つ目でもう独演会はまず〈三人旅〉を小1時間たつぷりとやつて洋服に着替へ漫談。中入り後は半時間ほど雑談で客をいぢりそのあと本題噺だといふ。これは聞いただけで食指が動く。漫談では森繁への賛美。あんな落語が下手な三平の化け具合に舌を巻く小心さ。何だかんだいつて落語について意見が合ふのはやはりライバルの志ん朝だつた。

現代落語論 (三一新書 507)

辻真先『深夜の博覧会』


f:id:fookpaktsuen:20210209072551j:image

f:id:fookpaktsuen:20210209072548j:image

大公報はもう正月気分で盆菜(お節料理)の特集記事とお目出たい。蘋果日報で「8人が無罪放免」は一昨年の10月1日、国慶節当日の香港各地での抗議活動に黄大仙で現行犯逮捕された9人の「暴徒」のこと。一人だけ裁判継続となつたのは当日「有溪錢的」で「溪錢」とは葬儀で撒くあの世への餞別だが、それを所持が容疑といふのも何だが警察に「死ね!」と撒けば立派な犯罪といふことか。この裁判で現場にゐた警官らの供述が実際の証拠映像等と異なる点あり意図的な有罪誘導ではないかと蘋果日報

f:id:fookpaktsuen:20210210104458j:plain

徹底的に紐で十字に縛って供出される資源物の紙類(水戸市

コロナで毎日、読書くらゐしかすることがない。辻真先『深夜の博覧会』(東京創元社) を読む。辻先生は昭和7年生まれで今尚健筆。アタシらの世代はアトム、エイトマンオバQジャングル大帝、サリーちゃんに巨人の星サザエさんまで、まさに辻先生のアニメで育つた世代だが当時、毎回の筋を担当した脚本家の名前までは知る由もない。「タイガーマスク」は原作が梶原一騎で作画が辻なおきで、辻真先という名前を初めて認識したときに、あのタイガーマスクの漫画家が脚本や小説も書くのか、と誤解したこともあり。で、この推理小説は評判なのだといふ。昭和12年の東都で話が始まり辻先生の故郷である名古屋に話は展開する。
f:id:fookpaktsuen:20210210073804j:image

辻先生は昭和7年生まれで今尚健筆。アタシらの世代はアトム、エイトマンオバQジャングル大帝、サリーちゃんに巨人の星サザエさんまで、まさに辻先生のアニメで育つた世代だが当時、毎回の筋を担当した脚本家の名前までは知る由もない。「タイガーマスク」は原作が梶原一騎で作画が辻なおきで、辻真先という名前を初めて認識したときに、あのタイガーマスクの漫画家が脚本や小説も書くのか、と誤解したこともあり。で、この推理小説は評判なのだといふ。昭和12年の東都で話が始まり辻先生の故郷である名古屋に話は展開する。

深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 (創元推理文庫)

冨原眞弓『ミンネのかけら』


f:id:fookpaktsuen:20210208085822j:image

f:id:fookpaktsuen:20210208085819j:image

春節も近づき陰暦では今が歳末……といへば大掃除。漂白剤濃度1%の水溶液では除菌にならずと大公報。蘋果日報が「富裕層の"離港"移民ブーム」と叫ぶのは香港のインターナショナルスクールで入学枠保証の債権は転売可で、これの相場が下落。それが香港の情勢不安定で富裕層の移民ブームがあるとするのだがインター校ブームの退潮の主因は大陸富裕層子女の香港進学が「暴動」や疫禍もあり国内留学が低調なことだらう。貴族学校の新設続き需要と供給が逆転。

本日農暦十二月廿七日。快晴。気温は朝摂氏零度で北風も寒いが陽光はもう春のやう。明るさがちがふ。家人と郊外の、といつてもそのあたりが今では一番賑やかなのだが、スズキ自動車の営業所へ参る。アタシは基本的に鉄道や公共交通機関が好きでいつも酒ばかり飲んでゐるから自動車の運転はあまり興味もない。昔、所有してゐた自動車も母の友人から譲られた中古車だし父が入手したビートルに乗つたりもしてゐたが自動車を購入した経験がない。東京や大都市圏なら自動車なしで暮らせるが水府は日本でも自家用車保有率の高い北関東三県で絶滅危惧種の暴走族がまだ生存するほどの自動車社会。自転車で何うにかなるかと思つてゐたが冬になるとさすがに自転車もつらい。家人と二人で自転車って郊外にサイクリングなら良いが、ちょっと遠いスーパーや飲食店に自転車で出かけるのも何とも……。東京や大都市圏なら何うにかなるが、やはり地方都市では自動車なしでは生活できない。今日もカーシェアで時間単位で自動車を借り上げて月に数度なら便利といへば便利だが、ちょっと外食とかスーパー銭湯に行くのに自動車を借りるわけにもいかない。老いた身で自家用車購入など人生でこれが最初で最後。折角なら旧タイプのビートルにしたいがメンテなど大変で新型ならルパン三世のやうにFIATに乗りたかつたが家人と相談して結局これになつた。

f:id:fookpaktsuen:20210208155910j:image

いはゆる女性向けで、しかも若い女性がターゲットの軽自動車で、それに老爺が乗つてゐるのも滑稽かもしれないが今人気の車高のあるボックスタイプの小型車は何だかピンとこなくて結局これに。軽自動車は価格的にはお手頃と思つたがあれこれ付属品をつけると、それなりの値段。香港のクレジットカードで払つてマイルを稼ごうと思つたがクレジットカード払ひは能はず。ならば即金でなら少し勉強してもらへる?と思つたらさうでもない。むしろスズキ独自の「かえるプラン」なるもの組むと5年の時点で7割の返済でスズキで買替へするか乗り捨て?すると、そこで実質7掛の完済扱ひで更に乗り続ける場合は残り3割支払ひださうで結局これにしたが低金利とはいへ5年で10万円だか利息になるので、機転のきく営業女子と相談で、このプランを組める月額の返済が最低3千円でプラン組んで残りは頭金で支払ひといふことで契約。そこまで話が進んだらアクセサリーのナントカだとかナントカの年会費とか値引きオファーあり。値引きなど話して逃げられるのもシケた話で契約成立で値引きなど出すものなのだらう。自家用車購入など初めてのことなのでいろいろ勉強になる。2週間くらゐで納車の由。

冨原眞弓『ミンネのかけら――ムーミン谷へとつづく道』(岩波書店) を読む。著者はムーミンの原作者・トーヴェ=ヤンソンに関する著述で注目浴びてゐるが聖心女子大で欧州近現代哲学の教授。専門はシモーヌヴェイユで40年ほど前に巴里に留学してソルボンヌ大学で博士。その冨原先生が何うして北欧の、このトーヴェの幻想世界にわけ入つたのか、といふ回想の良質の随筆で数年前まで岩波の『図書』に連載されてゐてとびとびで読んでゐたものを通しで。連載では著者がヘルシンキでトーヴェに会ふシーンが印象的でホテルに現れたトーヴェの個性が浮き彫りに。今回通しで読んでみると、この回想は著者がムーミンからトーヴェに惹かれる後半よりも巴里の留学記のほうがずつと興味深い。じつに知的好奇心に満ちた巴里の日々なのでした。

ミンネのかけら――ムーミン谷へとつづく道