富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

冨原眞弓『ミンネのかけら』


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春節も近づき陰暦では今が歳末……といへば大掃除。漂白剤濃度1%の水溶液では除菌にならずと大公報。蘋果日報が「富裕層の"離港"移民ブーム」と叫ぶのは香港のインターナショナルスクールで入学枠保証の債権は転売可で、これの相場が下落。それが香港の情勢不安定で富裕層の移民ブームがあるとするのだがインター校ブームの退潮の主因は大陸富裕層子女の香港進学が「暴動」や疫禍もあり国内留学が低調なことだらう。貴族学校の新設続き需要と供給が逆転。

本日農暦十二月廿七日。快晴。気温は朝摂氏零度で北風も寒いが陽光はもう春のやう。明るさがちがふ。家人と郊外の、といつてもそのあたりが今では一番賑やかなのだが、スズキ自動車の営業所へ参る。アタシは基本的に鉄道や公共交通機関が好きでいつも酒ばかり飲んでゐるから自動車の運転はあまり興味もない。昔、所有してゐた自動車も母の友人から譲られた中古車だし父が入手したビートルに乗つたりもしてゐたが自動車を購入した経験がない。東京や大都市圏なら自動車なしで暮らせるが水府は日本でも自家用車保有率の高い北関東三県で絶滅危惧種の暴走族がまだ生存するほどの自動車社会。自転車で何うにかなるかと思つてゐたが冬になるとさすがに自転車もつらい。家人と二人で自転車って郊外にサイクリングなら良いが、ちょっと遠いスーパーや飲食店に自転車で出かけるのも何とも……。東京や大都市圏なら何うにかなるが、やはり地方都市では自動車なしでは生活できない。今日もカーシェアで時間単位で自動車を借り上げて月に数度なら便利といへば便利だが、ちょっと外食とかスーパー銭湯に行くのに自動車を借りるわけにもいかない。老いた身で自家用車購入など人生でこれが最初で最後。折角なら旧タイプのビートルにしたいがメンテなど大変で新型ならルパン三世のやうにFIATに乗りたかつたが家人と相談して結局これになつた。

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いはゆる女性向けで、しかも若い女性がターゲットの軽自動車で、それに老爺が乗つてゐるのも滑稽かもしれないが今人気の車高のあるボックスタイプの小型車は何だかピンとこなくて結局これに。軽自動車は価格的にはお手頃と思つたがあれこれ付属品をつけると、それなりの値段。香港のクレジットカードで払つてマイルを稼ごうと思つたがクレジットカード払ひは能はず。ならば即金でなら少し勉強してもらへる?と思つたらさうでもない。むしろスズキ独自の「かえるプラン」なるもの組むと5年の時点で7割の返済でスズキで買替へするか乗り捨て?すると、そこで実質7掛の完済扱ひで更に乗り続ける場合は残り3割支払ひださうで結局これにしたが低金利とはいへ5年で10万円だか利息になるので、機転のきく営業女子と相談で、このプランを組める月額の返済が最低3千円でプラン組んで残りは頭金で支払ひといふことで契約。そこまで話が進んだらアクセサリーのナントカだとかナントカの年会費とか値引きオファーあり。値引きなど話して逃げられるのもシケた話で契約成立で値引きなど出すものなのだらう。自家用車購入など初めてのことなのでいろいろ勉強になる。2週間くらゐで納車の由。

冨原眞弓『ミンネのかけら――ムーミン谷へとつづく道』(岩波書店) を読む。著者はムーミンの原作者・トーヴェ=ヤンソンに関する著述で注目浴びてゐるが聖心女子大で欧州近現代哲学の教授。専門はシモーヌヴェイユで40年ほど前に巴里に留学してソルボンヌ大学で博士。その冨原先生が何うして北欧の、このトーヴェの幻想世界にわけ入つたのか、といふ回想の良質の随筆で数年前まで岩波の『図書』に連載されてゐてとびとびで読んでゐたものを通しで。連載では著者がヘルシンキでトーヴェに会ふシーンが印象的でホテルに現れたトーヴェの個性が浮き彫りに。今回通しで読んでみると、この回想は著者がムーミンからトーヴェに惹かれる後半よりも巴里の留学記のほうがずつと興味深い。じつに知的好奇心に満ちた巴里の日々なのでした。

ミンネのかけら――ムーミン谷へとつづく道