富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

立法會七月休會前放棄恢復二讀《國歌條例草案》

農暦五月十七日。六四(天安門事件)30周年で李怡先生の文章を拙訳し朝日新聞論座に掲載となつたのが「天安門事件30年 かつての香港はもう存在しない」で、そのあと逃亡犯条例改正で香港で大規模な市民デモとなり、かうした香港の政治性に天安門事件がどれだけ影響を与へてゐるのか、といふことで「「こんなはずじゃなかった」香港の無間道」富柏村自身で書いた。今回の香港の出来事については多くの記事があるなか、若者がなぜこゝまで政治性をもつに至つたのか、について「香港の若者たちは何を守ろうとしているのか」で整理してみた。今回の記事は一連の抗議活動の部隊となる香港“市役所”で立法会にある「デモ区」について。

民主主義が機能しないから、あんな大規模な市民デモが起きる……といふ見方もあるわけで普選実施も叶はぬ香港だからともいへるところ「それでも」あれだけ大規模なデモが平和裡に実行されて「しかも」政府敷地内に「デモ区」まであり、そこで反政府抗議活動ができる「政治の自由」の環境についての一考察。

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昨日、行政長官が本日、逃亡犯条例撤回と謝罪と書いてしまつた大公報社説だが今日は「社評\特首真誠打動人心 結束紛爭攜手前行」逃亡犯条例失敗で党政府中央の指示は「如何真正認識「一國兩制」,做好青年學生的愛國教育工作,以及提高施政效率、解決住屋問題,仍是特首和政府任重道遠的重要工作」やはり反政府的な若者への愛国教育。これが林鄭にとつての贖罪の最大任務か……と懸念されるところ今日から平常化された立法会で主席(議長)が今国会の会期中は国歌条例審議棚上げと言及。

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これをやると、またデモが湧き立法会取り囲まれ……で、もはや弱腰「屁たれ」の立法会ではとても国歌条例通し愛国教育邁進を政府に促す機運もなし。やればできるのだらうが、これ以上「赤方」で自律神経失調のまゝ親中土共通すと選挙での竹篦返し怖く多少なりとも「港方」の姿勢見せたいのが議員の本音か。いずれにせよ急場は凌げたり。昨年の状況では国旗国歌の条例化で(強制はしないまでも)侮辱=有罪は確定と思つてゐたが、まさかのところで、これの棚上げに至るとは。この数ヶ月の香港の政治状況急変は全く予想もしてをらず驚くばかり。民陣召集人の岑子杰君が実生活でのパートナーでもある天風君と語りあふ今年3月に社会民主連線のネットトーク番組もそのよき例。逃亡犯条例改正は、同性婚の話題の次に「これって実現したら危ないよねー」と語つてゐたものだつた。この改正案が立法会に提出されたのは、この番組から4日後の4月2日。それから昨日までの風雲を、この3月末に誰が予期してゐたかしら。

▼逃亡犯条例で話題に出てくる、香港政府が犯人引渡しの基準とする“the Rule of Law Index”がこれ。WJP Rule of Law Index® 2018-2019 これ見ただけで法治では日本に次ぎ世界16位にある香港が82位の中国にまともには対応しちゃいけないのは一目瞭然。

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朝日新聞夕刊(夕刊ない値域は翌朝総合版)で連載の、しりあがり寿地球防衛家のヒトビト』を私、呟板で無断転載しているのですが寿先生は暗黙の了解、ありがたいところ。今日、この『地球防衛家』で香港の支援に深謝。

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韓国映画寄生虫〉に対する北朝鮮🇰🇵の論評が興味深い(朝日新聞)。誰もが(実は特権階級もいるが)貧しく平等な社会……が幸せか。

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林鄭、逃亡犯条例(事実上)廃案で香港市民に謝罪

農暦五月十六日。今朝の大公報。反対派の道路占拠で通勤に不便する市民(笑)

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わざ/\中環から金鐘に向つて通行止めのHarcourt Rdを、しかもフライングオーバーを歩いてくるだなんて「ただの物好きのオッサン」か中共系企業の社員?だろ。地下鉄だつて平常通りなのに。しかもこれを今朝の一面トップにしたのに午前7時には最後まで道路封鎖されてゐた行政長官弁公室前の龍和道も封鎖解除されてしまつては、この記事の意味まるっきりなし。今回の一連の抗議活動に対しての大公報は空振りばかりで残念至極(涙)……なーんてバカにしてゐたら今日の社説「支持林鄭依法施政 発展経済改善民生」に「行政長官が今日、逃亡犯条例改正撤回と謝罪」と言及あり。

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今日の星島日報は昨日も禮賓府(公邸)にお籠りだつた林鄭が教育・宗教関係者集めての面談で逃亡犯条例の「事実上撤回」に言及し社会不安を増長させたことに謝罪、いっときは感極まり教育関係者との面談では洗面所に隠れ、宗教関係者には、その目前で涙を流した……と描写もあまりにリアル。晤各界求諒解 林鄭兩度飲泣 -- 星島日報

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金鐘のPacific Place前で逃亡犯条例改正反対で自殺事故者が出た現場に未だ多くの追悼と弔花あり。


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午後2時すぎに政府が「午後4時から行政長官が記者会見」とプレスリリース発表。

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大公報は上述の社説の掲載された第2面をいつのまにかネットから削除。

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やはり党紙が政府より先に発表は拙いと思つたのか。党と政府の関係ではスクープ!と誇れる立場非ず。午後4時からの行政長官リンテイゲツガ記者会見はBCCとCNNも臨時ニュースで生中継。

行政長官會見傳媒開場發言(附圖/短片)

Opening remarks by CE at media session (with photos/video)


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林鄭は逃亡犯条例改定については立法化の過程で見過ごせなぬ不備と市民の納得得られない矛盾があること認め「これが解消できない限り立法化はできない」「立法会の今期の日程も限られており立法化は困難」と言及……立法化の作業断念しており今後再開予定なしといふことは事実上の撤回なのだが、けして「撤回」とは言わず、そして自らの非力につき市民にふかく謝罪……では辞職するか、といへば自らの瑕疵を反省した上で任期の残りに全力を尽くす、と。これを誰も望んではゐないのだが。しぶといものよのぉ。ところで今日の記者会見の服装は「反省」がよく表はれてをり合格。どうせなら往年の董建華なみに「逃亡犯条例改正はすでに断念されてゐた」くらゐ言つてほしかつたのだが。さて大公報が「逃亡犯条例改正「撤回」を予告した社説を撤回したこと」を何う理解すべきか?である。結局のところ「絶対に「撤回」とは言はない」といふところだけが北京中央と港方で確認され「撤回」と先走つてしまつた大公報が叱られた、といふところか。立法会は午後2時に「黄色警報」解除で運営正常化。逃亡犯条例改正は事実上取り消しだが、この状況でリンテイゲツガが国旗、国家の条例をどこまでできるかは注目に値するところ。意地になつても中央党政府に成果見せるか、もはやレイムダッグで何もできないのか。

「あれ、さういへば」と気になつたのが、これまで市民デモとかあるたびに香港市民に社会安定の大切の徳を説いてきたジャッキー=チェン(成龍)だつたが今回はダンマリを決め込んでゐるやうで。そして一時は香港“市役所”で教育局長の職を欲してゐたアグネス=チャンも政府寄りの発言目立つてゐたが、これも今回の条例改正ではダンマリでアグネスでも別の民主派のアグネス(チャウ、周庭)ばかり目立つてしまつた。

丘の上 禮賓府の庭で
占うのあの人の心 今日もひとり
謝罪する 謝罪しない 辞める
あの人は決めないのよ遠い
北京にいるの〜

愛のおもいは胸にあふれそうよ
党への涙は今日もこぼれそうよ

農暦五月十五日

親政府系の星島日報がもはや行政長官リンテイゲツガに三行半つきつけたかのやうに。共産紙・大公報は挙つて行政長官指示を謳ふが。それにしても200万人デモに道路渋滞の写真で「市民生活に痛手」は弱い。

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金鐘で香港“市役所”周辺、怒れる若者たちによる道路占拠は夜を徹して継続。香港警察もこれまでなら機動隊導入で武力鎮圧も辞せず、だつたが今回は昨日のデモ対応から市民の反感かはぬやうにいたって穏便な対応続けており今朝も幹線のHarcourt Rdなどには拳銃は携へてゐるので丸腰とはいへぬが防御服など着ず普通の制服の警官が若者に対峙するのみ。そこに朝七時、警察の「談判専家」で現れた私服の女性警官。まるでデモ参加者のやうな雰囲気。

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道路占拠する若者たちと談判となるが警察は市民の抗議は理解しつゝ安全第一で道路占拠は不法であり、これがどれだけ市民生活に支障与へるかを理解の上、とにかく道路占拠中止のみ丁寧に根強く請ふ姿勢は立派。民主党の立法会議員も若者たち説得で午前十時には道路占拠解消。

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路上のゴミや抗議物品を清掃する占拠の若者たちも立派。


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香港“市役所”の公共の「デモ区」に集結の若者たち。


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数千人がさっと去つたは行政長官官邸への対話、辞任求めるデモのため。

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雨のなか行政長官に逃亡犯条例撤回、市民との対話、謝罪を求める。

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だが行政長官リンテイゲツガは本日も公邸に籠り公衆の面前に姿見せず。この特首弁前での抗議の様子を添馬公園の高台から眺めてみる。

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(実はあとになつて気がついたのだが)このとき通り雨のなか添馬公園の高所から厳重警備の特首弁を見下ろしていると、隣に立つてゐる、手持ちぶさたでタバコ吸つてゐるお兄さんたち二人、一人は抗議現場にしてはオシャレで、もう一人もアンディ=ウォーホールのやうな痩せぎすの金髪、何処かで見たことある……と思つたら民陣の岑子杰と陳皓桓。

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100万人単位の市民デモを統率する彼ら、今日も抗議の真ん中にゐさうなところ、まさかこんなところにゐるとは思ひもせず。抗議は膠着状態で、お互ひヒマだつたので話を聞けばよかつた。今日、行政長官・林鄭何は大学の学長や宗教関係者との面談だつたさうで夜には司長、局長クラスを集めての会合。本来であれば毎週月曜午前は行政会の定例会開かれるが今日はそれもできず、での代替の夜の会合か。

今日は久々にRicoh GRの出動。


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素人が撮ってもデジタルとはいへ写真の圧力が違ふ。久々に湾仔のバーMで口開け。


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午後九時半といふ晩遅くに香港警察トップが記者会見。12日の抗議活動につき「全体としての活動を〈暴動〉としたのではなく」「一部、暴動罪適用に該当する者がいた」といふことだつた、と釈明。よって警察も「事態鎮圧のため必要最小限の武力行動を採らざるを得なかった」とまで言へれば幸ひなのだが実態は、警察が逮捕し起訴するであらうたつた5人!が「暴徒」なのだとしたら、なぜ、その逮捕のために(画像が流れてゐる通り)丸腰の抗議活動参加者をボコボコに殴る、蹴る、胡椒スプレーから催涙弾まで撃ち放題だつたか。今更何ら言ひ訳もできず、今日の抗議活動でも行政長官弁公室を警備する警官に、昨晩の警察トップの弁明など何ら効果もなく、抗議者からの罵声は止みもせぬのであつた。しかし少なくとも事態沈静化に向け言ひ訳であれ記者会見で警察の立場の見直しをするだけ、しないよりマシ。

▼逃亡犯条例の陰で目立たぬ地味なニュースだが13日以来、湾仔の出べそ広場で朝の国旗掲揚が「修繕のため」ずっと中断。やはり時節柄、無作法なデモ隊に狙はれたくないか。

▼香港の逃犯条例で台湾は中国の一国両制による台湾統一への反発で弱勢だつた蔡英文総統への支持が高まり、ネットで記事無料配信してゐた蘋果日報の有償化も大義名分がついた形に。

香港の若者たちは何を守ろうとしているのか

農暦五月十四日。晴。九龍に終日の野暮用あり始発のMTRに乗る。日曜朝も始発で仕事に向かふ人々でそれなりに混雑。朝日新聞論座に拙文掲載あり。

函館M記者に「山口文憲さんの文章みたいなリズムと勢いを感じますね、ホメ言葉になるかどうかは分かりませんが」と言はれたが、事実、この記事はアタシにしては些か感情的かもしれない。逃犯条例反対の香港の数多くの若者のシーンが見られるなか、通りがかりでふと撮つた、この“Free HK”のスナップから何か伝へられないか?と思つたもの。

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あるイベントなのか大陸から来た多数の高校卒業くらゐの若者の集まる現場に遭遇。彼らの外見や仕草、言動を見てゐると香港の若者と何ら変はらず。香港に来たからといつて緊張も気張りもなくフツーにしてゐる。彼らは香港の今日の事態から何か感じるのかしら。閑さえあればスマホに傾頭してゐるが、そもそも彼らのアプリは微博とかアリババで香港の市民デモなんてまともに入らないか。彼らにジョン=ロックの

何人も侵すことの出来ない各人固有の権利として「生命」「健康」「自由」「財産」という、自己保存の中に更に広範な自由の概念や財産権を含み、国家(政府)は社会契約(統治契約)によって成立するもので、国家(政府)が統治契約に背いてその自然権を侵害すれば、国民は抵抗権(革命権)によって革命も正当化されるとして自然権の優位性を唱えた。

とか読んで、これについて何を感じるか尋ねてみたいところ。……なんて考へながら野暮用も一段落すると市民デモが大変なことになつてゐる。先週の100万人デモがあり一先ず政府が逃犯条例審議見直しなのだから世論は沈静化されさうなのだが水曜日の道路占拠での警察の武力(暴力)沙汰と行政長官リンテイゲツガの記者会見でのふてぶてしい態度が更に反発呼んだ形。先週同様に午後3時発のデモが警方からの要請もあり前倒しでヴィクトリア公園出発となつたが参加者多く銅鑼湾、天后は地下鉄站爆満で地下鉄は不停、九龍からの参加者で金鐘、香港の両站も規制、地下鉄は天后一つ先の炮台山站からデモ参加者は歩いてゐるといふ。

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ピーク時はこれが更に先の北角站からになる。尖沙咀から地下鉄で渡れぬ人々が湾仔行きのスターフェリーにも長蛇の列。これは先週より更に大規模なデモの証左。

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先週と違ひ今日は香港警察も早めに全車線をデモに開放。先週の100万人にも驚いたが今日のデモ参加者数は人類史上最多のデモ参加者数なのではないか?

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ヴィクトリア公園を出て最初の関門となる銅鑼湾では裏通りにまでデモの市民が溢れ本来のデモ行進予定はHennessy RdであつたがLockhart RdそしてJaffee Rdにもデモは広がりJohnston RdからGloucester Rdの西行きにまで拡大。

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今日は終日の野暮用もあり、まさか先週の市民デモのあと今日のやうなことになるとは思ひもせず晩に尖沙咀で映画見る予定だつたが一先ず様子を見に荃湾線で金鐘へ。地下鉄站のコンコースは比較的空いてゐたが出口から路上に出ようとするとQueenswayもデモが凄く地下鉄站への入場規制中。こゝで出てしまふと地下鉄站に当面は戻れぬ。慌てゝ逆行して尖沙咀へ。尖沙咀はいつものやうな人出。香港島であれだけの市民デモが行はれてゐるといふのに尖沙咀のこの人混みとは香港はいつたいどれだけ人がゐるのか。重慶マンションの外のモニタで犯送中の市民デモ実況中継眺めてゐるが尖沙咀からは別世界。重慶マンション2階の印度料理屋で夕餉。数台あるテレビのモニタはクリケットの試合の中継。店員も仕事手につかぬほど、この試合が気になるやうで食肆の亭主にクリケットのワールドカップで印度vsパキスタンなのだといふ。

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尖沙咀のThe One(旧東英商場)の映画館で先月のカンヌ映画祭韓国映画として初のPalme d'Or受賞した〈기생충〉(寄生虫、パラサイト)の香港での先行上映でこれを見る。十数年ぶり?の韓国映画

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ソウルの下町の底辺で暮らす失業中のキテク(ソン=ガンホ)家族。兵役も終わったが大学にも入れぬままの息子・ギウが学籍偽装で富裕層のパク家で娘の家庭教師として働くことになるが、そこから予期せぬ事件に巻き込まれ始める

 このキテクの家族がパク家にどう寄生してゆくか……。冒頭からの面白可笑しい展開で、だがある程度の顛末は予期されるところ更に「まさか」の展開。現代の〈天国と地獄〉なのだ。それにしてもカンヌ映画祭のPalme d'Orが昨年が是枝監督の〈万引き家族〉で、今年がこれ。〈家族〉それも他人だつたり肉親でも明らかに何か壊れてゐる、いずれも社会システム論としても面白い東アジアの映画が注目を浴びてゐるか……で映画終はると已に午後十時近かつたが市民デモ始まって八時間近くたち最終尾は未だ湾仔を進行中なのだといふ。金鐘も香港“市役所”周辺の道路は全て封鎖され路上集会。

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尖沙咀からMTRで金鐘へ。どれほどの群衆か出てみようかと思つたが金鐘站の構内放送で「列車運行は平常通りとなつてゐるが乗降客多く移動に予想以上の時間を要するので注意を」と呼びかけ。今日、二度目の金鐘だつたが亦た退散……といふか帰途につく。香港“市役所”が今日の大規模デモを受け広報を発表。

Government response to public procession

考慮到社會有強烈不同的意見,政府已停止立法會大會對修訂《逃犯條例》的工作,希望藉此可讓社會盡快回復平靜和避免任何人受到傷害。政府重申並無重啟程序的時間表。
行政長官承認由於政府工作上的不足,令香港社會出現很大的矛盾和紛爭,令很多市民感到失望和痛心,行政長官為此向市民致歉,並承諾會以最有誠意、最謙卑的態度接受批評,加以改進,為廣大市民服務。

逃犯条例につき「立法化撤回」とはいはぬが立法化作業を「停止」。行政長官・リンテイゲツガがやつと今になつて市民に謝罪。当然、辞任など口にするはずもなし。すべてを決めるのは北京中央。通常であれば晩の七時、八時にはデモ参加者数発表になるが今日は晩二更になつてもまだデモ行進中だといふのだから参加者数もなか/\発表にならぬまゝ晩11時。民陣が参加者数は200万人近いと発表。

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午後遅くには150万人くらゐか?と言つてゐたのだが、この大規模なデモ発生では150万人では収まりつかず?で一気に景気づけで200万人。実際には100万人にも達してゐないだらうが「これでいいのだ」。遅れて香港警察は33.8万人と発表。警察発表7掛けに基づけば50万人となるが50万人といふやうな「小さな」規模ではない。それにしても33.8万人とは、何うして34万人にしなかつたのか338は中国語で縁起のよい数字並び。

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万人の渋滞するデモのなか卒倒者乗せた救急車の通行にさっと道が開き路上のゴミは分別して収集されてゐるとは。香港のデモ文化の成熟。

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▼うーん、大川隆法総裁……さすがだ、もうアグネス=チョウの守護霊を呼んでしまった。守護霊もアグネスくらい日本語上手なのかしら。

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行政長官“林鄭月娥”宣布暫緩修例

農暦五月十三日。本日快晴。

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逃犯条例修訂につき主管港澳事務の中共政治局常委兼中央港澳工作協調小組組長韓正が已南下深圳坐鎮處理なんださうで昨日今日と姿見せぬ行政長官リンテイゲツガ昨日隠密裏に深圳で上級職の韓正に面談で今後の対応協議の由。更に深夜、香港“市役所”の司長、局長級を市長官邸に集め今後の協議……といふか中共上層との確認事項を話しただけ、か。

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今朝の星島日報が「林鄭料今宣布暫緩修例」と報じる。董建華の御代から香港政府には恩義ある星島ゆゑの特ダネ。今期の立法会で逃犯条例修訂ばかり話題になるが国歌条例もあり。

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義勇軍行進曲を侮つたりすると犯愛国で逃犯条例で中共に引渡しかしら。土曜日なのでFCCで朝の珈琲&新聞読み。

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折角だからFCCの前からLower Albert Rdに入りAlbert Pathの小径を上がると行政長官官邸横ゆゑ警官待機で「どこに行く?」と尋ねられる。

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まさか「林鄭月娥に物申したく候」とはいへぬので「香港動植物公園」と答へると警官「そこに住んでるのか?」と突っ込み見事。「ホームレスだって住めないでしょ、夜は閉まるんだから」と答へたら「それぢゃYouは何しに公園へ?」と尋ねるので「天気のいゝ清々しい土曜日の朝に公共の動植物公園に行くのに「何しに?」と尋ねるとは御主もまた無粋な……ふぉふぉふぉっ」とアタシ。もう一人の警官が「いゝから、行かせろ」と促したのを幸ひに安宅の関を越ゆる。

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星島日報の記事はガセネタに非ず行政長官公邸(禮賓府といふのだがキモ悪い)には黒塗りの車が次々と入り門前にはマスコミ各社陣取る。行政会議成員や初代行政長官の董建華ら。建制派の議員らも。リンテイゲツガにしてみれば

思フニ、今後特区政府ノ受クベク受難ハ元ヨリ尋常ニ非ズ、汝建制派ノ衷情モ朕ヨクコレヲ知ル、然レドモ朕ハ時運ノ赴クトコロ、耐へ難キヲ耐へ、忍ビ難キヲ忍ビ、以ツテ万世ノタメニ逃犯条例改正ノ延期ヲ欲ス

……ってなところか?

香港公園抜けPacific Placeへ。家人と待合せ香港サザビーの画廊で邱良の写真展。

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邱良を香港のアンリ=カルティエブレッソンとはよくぞ言つたもの。紛れもなし。

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トラムで中環へ。家人の買ひ物物色につきあひ蘭桂坊近くの有緣小敍に昼餉。陝西のBiángbiáng麺啜る。

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つい大辛注文してしまつたが供されてみると「これで大辛?」と思つたが混ぜたら真っ赤。銅鑼湾の誠品書店。家人の買ひ物済ませぶらぶら。

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午後3時より行政長官リンテイゲツガが香港市役所で記者会見で、それに合はせ帰宅。記者会見中継眺める。

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この香港政府トップの才媛……かなり優秀かと思つたが肝心なところで空気読めぬ上に一昨日の某局の独占インタビューでも自分が行政長官となり「自分も家族も多くの犠牲を払つた」だの息子二人が一時の感情で間違ひを犯したらとデモ参加の若者たちを窘め、まさに「物言へば口唇寒しリンテイゲツガ」だが今日とて、何うせいくら話したところで市民の同情など得られないのだから「世論の同意が十分に得られてゐない、立法会での審議は延期します」で済ませればいゝのに案の定で記者との質疑応答になるとボロ/\。「平和的な抗議活動だったが一部、暴力的で、あの投石用の煉瓦の数……あれは何?」なんて余計なことで反論してみせして、それを言ふときに冷笑してみせてしまふ……本人は意識してはいないのでせふけど肝心なところで性根の悪さ露見。結果的に「心証を悪くした」だけ。もう党中央としては烙印押してゐるのだらうが。それにしても、今日のこの場でそのファッションセンスが理解できない……弁明の記者会見で銀メタルの高襟なんて着るか、普通? どこでこんな服を誂へるのかすら不思議。昨晩、深圳で党中央幹部と面会で途中で羅湖の深圳商業城にでも寄つたのかしら。アタシがこのファッションについてSNSにコメントしたら畏友T嬢が「やはりそこに目を付けられたか、お目が高い!」と褒めるので「いえ、襟が高かったもので……」でお後がよろしいやうで、で鳴り物だよ、まったく。ところでSNSといへば香港の日本人の間で

デモは勿論、SNSで逃犯条例関連で「いいね!」するだけで危ない

といふ話がまことしやかに広がつてゐるのだといふ。戦前に「隣の下宿の学生さんはアカなんだってよ」で特高警察怖れるやうな「政治は怖いもの」の陋巷の民草意識。核禍や晋三の暴力政治には鈍感なのに……。

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夏は黙つて肉骨茶。

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The rule of law in Hong Kong - People v power

農暦五月十二日

早朝06:15(JST)からJ-WAVEでジョン=カビラさんの“TOKYO UNITED”の冒頭“Close Up This Week”といふコーナーで香港の反送中の状況について香港から5分余、語る。

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親共紙は挙つて市民運動の名を借りた暴力沙汰と呷るが香港警察も〈雨傘〉の時の青二才的ビビりモードに比べると随分と暴力的に訓練されたやうで抗議活動中の若者への「攻撃」も容赦なし。この殴る蹴るはかなりヤヴァい。国家権力は唯一合法的な暴力装置であり、だからこそ暴力使用に冷静沈着かつプロの仕事が求められるのだが、これぢゃ「キチガイに刃物」で、この憶病者らに武器を与へてはいけない、と思ふ映像はこちら(下記)。

この逃犯条例改修は北京中央の要請かと思つてゐたが中共の在英大使がBBCでそれを否定、香港市役所独自の判断と言及したりとリンテイゲツガ可愛さうに孤立無援。ビジネス界もこれに消極的で懸念と聞いてゐたが基本は親政府である田北辰議員は全人代代表辞職も覚悟で条例改正採決の場合の反対表明で兄の第一線退いた田北俊(自由党名誉総裁)も延期提案。泛民主党から親政府に転向で行政局成員になつた湯家驊も懸念表明。田兄弟の時は曽我五郎、十郎かと思つたが湯家驊も名乗りを上げると三人で〈車引〉か、水面下で何だか芝居づいてきた予感。

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まるでNHKの「懐かしのメロディ」か東京12チャンネルの「懐かしの紅白」のやうに往年の香港返還前後の元政客や元官僚など冬眠明けのやうに啓蟄で条例改正審議強行見直しを!と。泛民主派やリベラルばかりか保守的で親政府派にまで広がる危惧。

農暦五月十一日

香港の怒れる若者たちの乱暴は昨日のうちに警察が排除して香港の治安も正常化に向かひ金鐘一帯の道路も今日は未明から自動車通行できてゐるのに何故にMTRの金鐘站は未だ封鎖。

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しかもMTRは午前6時に「始発から平常通り」と発表したのに、その後、警察からの要求で金鐘閉鎖に。午後2時閉鎖解除。また香港“市役所”は公務員に向けて早朝に今日と明日は市役所総部閉鎖で出勤不要と指示。金鐘の現場はどう見ても公務員が出勤できぬやうな混乱一切なし。

[行政署通知] 基於保安理由,今日和明日(6月13日及14日)政府總部暫停開放。同事無需返回政府總部工作,並應按照所屬決策局或部門的應變計劃工作。所有訪客活動亦會延期或取消。

「乱暴」対応が大袈裟すぎないか? かうした「反抗者の暴動」により市民の日常生活にどれだけの影響あるか……の宣伝とすら思へなくもなし。大公報も「どうだ!」とばかりに正義心で乱暴を報道。

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今日の人民日報〈海外版〉にも香港暴動批判。暴力祸港者不会得逞--港澳--人民网 当然この論評は同じ人民日報でも国内版には出ておらず。中共に「法治」だのといはれたくはない。それでも興味深いのは大陸の若者たちの間でSNSで(といつでも国内ではなく香港や日本のSNSに対してだが)香港の不法分子たちは厳正に取り締まられるべきといふ主張少なからず。これが「官製」の声と窺ふこともできるが天安門事件より後に中共で生まれ育つた若者たちには彼らなりの安定や自由に対する価値観が育まれてゐるのかもしれない。それに対して香港の反対派の若者たちの運動もお粗末で示威變招癱港鐵 上班族鬧爆

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反送中に抗議する若者たち、金鐘での道路占拠に失敗すると今度は一部の若者たちが将軍澳線のMTR站のホームで車両との隙間に足がはさまったと大騒ぎしてみたり、電車の閉まるドアに手をはさんで痛がってみたり、卒倒して心臓マッサージしてみたり……この「地下鉄邪魔作戦」は稚拙すぎ、呆れて言葉もなし……。

通りかゝり、香港警察総部の前で人ごみは何かと思へば親中土共団体の警察慰問。

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警察にしてみたら感謝でも忙しく疲労困憊の時に対応面倒でせうね……別に親中土共を「真の同胞」とは思つてもゐないはず。

數十人圖經中信天橋往立法會 警方設防線阻止 - RTHK

(11:30am )民陣の岑子杰君が警察のバリケードの前で黒衣青年たちに不要な衝突は避けるため「ここは一旦退却を」と求め、警察にも抗議者に武力制圧しないよう求めている。この理性的な動きは動乱期待の権力にとっては困つたところか……。(午後)金鐘站から香港“市役所”に渡る陸橋も公民広場も怒れ者たち失せてしまひ平静そのもの。これは困ったぞ……か中聯辦。


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24時間前と今。


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 友人と徒党も組まず「金鐘の現場」には独り独りの若者少なからず。自分の目で何かを見て何かを考へ自分の意思での行動は立派。

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このあと大雨となる。燈刻、FCCで報道チャンネルの生中継見てゐると香港警察トップが記者会見。

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昨日夕方からの反対派の道路占拠一掃につき市民生活に重大な影響与へる違法活動に対して最低限の武力行使が必要、その実行前に「警察の指示に従わぬ場合は」と警告してをり……と釈明。それでも数時間で放たれた催涙弾は150発で雨傘運動での数を上回りプラスチック弾や散弾銃から布袋弾=ビーンバッグ(小さな鉄玉を満たしたナイロンバッグ)が撃たれ81人(内警官22人)が受傷で、記者にまで鎮圧行為が行われ、すでに抵抗してをらぬ者を警棒や盾で「これでもか」と痛めつけ、行政長官リンテイゲツガが約束した「徹底した捜査」は怪我人が運ばれた病院での治療中から大学宿舎の家宅捜査まで形振り構はず。

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昨日のFCCは特派員らは金鐘での反対派一掃の現場取材に忙しいか閑散としてゐたが今晩は悪天候のなか普段にない賑はひは一先ず取材も小休止か。S氏夫妻と家人とで印度料理頬張りつゝ四方山話。帰宅すると夜半に大雨雷雨。