富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

年末休暇その①

農暦十一月廿三日。曇。こゝ数日、両脚ともかなり重く感じる。気温は摂氏13度で季節風も強く防寒ウェアで小走りでジムへ。

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途中にある人気の粥屋(金峰靚靚粥麺)はこの寒さでかなり繁盛。筋肉は適度に酷使すべきなのか少し楽に。昼に台湾のKIKIの老醋撈麺啜り午後は今年最後の香港競馬中継。途中で東京大賞典の中継をCSのグリーンチャンネルで眺める。このところ競馬は運が向ひてゐたが、こんなこと続かないと覚悟して余り強きな投票せず。だが掠りもせず。最終レースにサイズ様、モレイラ様で二番人気の単勝でぎりぎり今日の負債解消。競馬せず本でも読んでゐれば良かつたか。

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晩はグラタン。Louis Jadotの2017年のシャブリを飲む。家人に勧められテレビで中居正広金スマSP(後述)を数日遅れで見る。中野好夫『悪人礼賛』読了。
中居正広金スマSPでジャニーズ事務所でジャニーさんより印綬を帯びプロデュース業に専念するといふ滝沢秀明の特集。父が蒸発し鉛筆も買へなかつたといふ赤貧の少年時代。自分からジャニーズ事務所のオーディション応募してジャニーさんとの遭遇。数多ゐるJr.の少年たちの中でジャニーさんの慧眼に適ひ数年のうちにJr.の棟梁となつたが嵐や後輩たちが次々とデビューするなか温存され当時から築地H君のやうな好事家はタッキーのプロデュース能力と「小さい子好き」で将来はジャニーさん後継かと見抜いてゐたが本人もそれなりにアイドルでブレイクしたものゝトレンディドラマや大河ドラマで主役張つても大成功しては定着せぬ間にアイドルとしては薹が立ちタッキー&翼は今イチ、パッとせぬなか翼君の疾病と活動中止で今回のプロデュース専念。ジャニーズ事務所内の喜多川家での確執(ジャニー社長に抗するメリー副社長→娘のジュリーへの経営権掌握)もあるなか跡目はマッチやヒガシと云はれてゐたのを差し置いての相続。中居君とは不仲説もあつたタッキーだが二人を結ぶのは何よりも信心か。いずれにせよ気になるのは、この番組も含め芸能マスコミのジャニーさん神格化。過去には事務所の少年たちへの性的行為が所属の元アイドルたちから暴露本に書かれたり文藝春秋の執拗なジャニー報道も近頃それも下火。メリー→ジュリーの経営路線は、さうした「清末の北京の芝居小屋での稚児遊び」のやうなジャニーさんテイストの払拭なのだらうが毛沢東の「犯した誤りより業績が多大」と一緒なのかジャニーさんが起訴もされずタッキーに分社化してまで?ステージ重視のジャニーワールドの継承。そこで「ジャニー社長」が神話のやうに美化されるのだから。それはやはり健全と隠微で、人はどこか隠微に惹かれるところなのか。

滝沢秀明金スマ」出演で飛び交う中居正広「ジャニーズ帝国へ宣戦布告」説!(朝日芸能) https://t.co/9kTmODov7u #
安野光雅編による 悪人礼賛―中野好夫エッセイ集 (ちくま文庫)

好夫を最初に知つたのは高校生の時に貪り読んでゐた太宰治が『如是我聞』で中野を「貪婪、淫乱、剛の者、これもまた大馬鹿先生の一人」と罵倒した一文。これは中野が太宰の短編『父』を「まことに面白く読めたが、翌る朝になったら何も残らぬ」と評し(ある面、正鵠を射つた指摘だが)中野は「場所もあろうに夫人の家の鼻の先から他の女と抱き合って浮び上るなどもはや醜態の極である」「太宰の生き方の如きはおよそよき社会を自から破壊する底の反社会エゴイズムにほかならない」と太宰を罵倒。その中野好夫の訳者とまでは気づかぬまゝ中野の英文学翻訳をディケンズモームの『月と六ペンス』や雨』、コンラッドの『闇の奥』といくつも読んでいたのだが。著書では岩波文庫の『アラビアのロレンス』や『蘆花徳富健二郎』筑摩書房(全3巻)、『人は獣に及ばず』は今でも余の書架にあり。この『悪人礼賛』では表題の短編随筆で「およそ世の中に善意の善人ほど始末に困るものはないのである」と、これはつくづく頷ける名言。それにしても、この評論集は戦後の明るい時代のリベラルによる元気な精神そのもの。先の大戦と敗戦後の講和問題での全面講和主張する中野の小泉信三への批判も痛快。巻末にある「羽仁五郎さんに伺う」(1964年)も印象深い。いつも正義感強い中野の印象あるが、務台理作の戦時中の翼賛体制加担について戦後、自己批判したものゝ、その文言に「迂遠といえば迂遠きわまるわけだが致し方ない」といふ言ひ草がいけないが羽仁五郎が強烈に務台を批判し、それに対して中野が羽仁の指摘もわかるが務台が正直に戦時中の自分を猛省したのだから許してやつていゝぢゃないか、と。レジスタンス派で治安維持法で逮捕までされてゐる、畏友三木清を獄中死させたと悲しむ五郎が中野の戦時中は翼賛的で戦後その瑕疵を認めたものゝ「あの当時は致し方なかつた」なんて甘っちょろい発言を許すはずない。それでも中野は左派リベラルが教条主義的に内部分裂や対立する弱さを感じてゐたのだらうが。

ぼく自身は再軍備反対であり「卑屈なる」平和主義者であるが平和運動もまた厳にスローガン化を戒めねばならぬ。スローガン化の危険は平和主義の側にもまた大いにあるのである。いわゆる愛国心の如きも同様であろう。いわゆる愛国者は、まず今日の世界の中にあって国家というものの意味、というよりも国家というものの存在意味がいかに変化してきたか、またいかに変化しなければならなぬか、ということを考えなければならぬはずだ。でなければ愛国心もまた標語化する危険性が大いにある。

ぼくは現存する明治の日本人諸先輩に対し、その抱く見解の相違は別として人間として非常に尊敬を抱いている。しかしそれら先輩に共通して固守観念のように残念に思うことは国家というものに関する考え方である。ことひとたび国家に関すると反射的にパトス的に十九世紀における民族国家全盛時代、したがってその延長としての明治時代の富国強兵時代の祖国愛の亡霊というのが、どうしようもなく顔を出してくることである。その意味でぼくは、ちょうど旧幕時代の藩観念が、やがて明治の民族国家観念によって止揚されたように、現代の民族国家というものもまた、もうあまり遠くない将来において当然否定されなければならぬ、いや、好むと好まぬにかかわらず否定されるに決まっていると信じている非愛国者だが、それだけに愛国心というものの標準化が、その好ましからぬ呪術性を発揮することを今から深く憂慮をもって警戒するのだ。

……なんて今まさに晋三の御代にこの愛国心の亡霊が跋扈してゐる時代まさに、その危惧の通りになつてゐるのだ。

エクセルシオールホテル最後の冬

農暦十一月廿二日。快晴。どうにか仕事を終はらせたい。2年前に購入したiPad Pro(9.7吋)、普段はiPad Mini携へ、Proは余り使つてゐない間に10.5吋発売となり、この秋には新型発売。何とも目紛しい機種の改良についていけず。だが自宅で旧型のMacBook AirはキーボードがガタついてをりMacBookは好きになれず仕方なく使つてゐたがAirの新型が出て「これに買ひ換へか」と思つてゐたものゝかうしてブログを綴るときくらゐしか使つてをらずiPad Proがあれば、もうノートブック不要とも思ひつ旧型のProは重く感じて蘋果商店で新型購入で旧型の引き取りあるので旧型持ち込んでみると新品同様で不良もなくHK$1,250といふ査定で新型の11吋を入手してみたら実にこれが使ひ勝手良し。iPad Pro - Apple(日本) ペンシルも新型はかなり高感度で別売のキーボードもフルサイズ。日本語の手書き入力ソフトも重宝。もうこれならノートブックはアタシには不要。このブログもiPadで綴つてゐる。早晩に銅鑼湾。O氏と手羽先山ちゃんで手羽先しゃぶりつ早酒。寒波襲来。日本人倶楽部の入る大厦最上階のバーでヴィクトリアハーバー眺めつ一盞。


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エクセルシオールホテルは来春にビル取り壊しで、このホテルにとつて最後の冬、年越しとなる。少し小腹空き広島ばくだんつけ麺。バーSの口開け、だがこちらは四軒目。晩九時過ぎにお開きで帰宅。

1989年の天安門事件のあと英国サッチャー首相と面談で星加坡の李光耀の発言が英国外交文書で明らかに。李光耀中共による香港統治に悲観的。最悪の事態に備へ軍事基地と空港を郊外の離島に移す保全、暴政あらば香港政財界の20万人でもディアスポラ企図すれば中共にも打撃と何とも大胆な放言のやう。だが悲観的な未来は現実。

 

晋三はあれで頑張ってるの?

農暦十一月廿一日。快晴。聖誕祭連休明け。明日が日本は仕事収めで今日は誰彼皆な今日中に的に仕事片付けたく電話やメールも慌しい。
▼二十四日のマツコの『月曜から夜更かし』の年末特集だつたか大久保だかの路上で昼から酒に溺れる初老の男性、職は解雇され持ち金千円で、それでも酒を飲んでしまひ「死にたいよ」と一言ぽつり。スタッフも少し引いたが「今の政治がダメだよね、安倍じゃ無理だよ」と続ける。取材スタッフは「安倍さん、頑張ってるんじゃないんですか」と一応フォローしたが男性は「あれで 頑張ってるの?」と。よくぞ言った、それによくぞ流した。深夜番組だからか、ぎりぎりの本音の世界。

香港芸能界きつての酒乱、酒での失態は数多のエリック曾志偉が女連れで北海道は余市郊外の雪道を運転してゐて他の車に衝突の事故。相手の車の乗客はコトもあらうに香港警察高層が家族連れで、この警察幹部が下半身の神経やられ半身不随の危険性もあつたが治療は良好。蘋果日報はエリックが酒酔ひ運転と大々的に報道したが、これは日本で交通事故の場合、運転手には当然のアルコール検査。この運転時はシラフで検挙免れる。それにしても、こんなところで偶然とはいへ香港人同士、しかも醜聞少なからぬ芸人と警察が、とは。どれだけ北海道がブームなのか。

▼寝耳に水の「高輪ゲートウェイ」100年使われる駅名なのか - 毎日新聞 https://t.co/5s8kX88L3X 選定プロセスが、公募の形を取った「出来レース」ではないか、との疑念がある。新駅建設は元々、JRの車両基地跡地を再開発する計画の一部。そのプロジェクト名が「グローバルゲートウェイ品川」なのだ。 https://t.co/uzkgQEffqm

女性客室乗務員が乗務中に飲酒を日航発表 - 毎日新聞 https://t.co/WgryKtIiRe 昔、成田から香港にアリタリア航空が飛んでいた頃、ミールサービス終わって何だかタバコのにおいがギャレーから、と思ったらスチワーデス… https://t.co/rrCSWG7f7A

▼女性客室乗務員が乗務中に飲酒を日航発表 - 毎日新聞 https://t.co/WgryKtIiRe 昔、成田から香港にアリタリア航空が飛んでいた頃、ミールサービス終わって何だかタバコのにおいがギャレーから、と思ったらスチワーデスがカーテン閉めたギャレーで白ワインのグラス片手に一服しながら談笑。実にのんびりした時代だつた。https://t.co/rrCSWG7f7A

Boxing Day

農暦十一月二十日。快晴。Boxing Day*1の祝日。昼に中環。FCC香港大学に東京の某大学から留学してゐたH嬢とランチ。

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彼女は文化人類学専攻でトイレや排便、人間だけがいかに本能が崩れてゐるのかについての考察しつゝ。映画の話になつて人間の進化の話から『2001年宇宙の旅』、人間の業から『市民ケーン』の話をアタシが持ち出す。まだ見てゐないといふ。今ならネット経由で気軽に見られるが本当は是非、映画館の巨きな銀幕の、を見てもらひたいところ。晩に久々に蓮香樓。三重からM女史来港中で今日は家人とマカオに買ひ出しで戻つてきたところ。M女史の子息J君もバンクーバーから彼女連れで来港中。旧交温め夕食。

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蓮香樓は味も老給仕らの接客も良いが帳場の女将の無愛想は呆れるほど格別。思わずアタシも勘定で悪態つく。J君が今晩はこれからハッピーヴァレイ競馬場に行き友だちと落ち合ふといふので今日の夜競馬、最終のメインレースはClass-2の哩競争で、これだけアタシも馬券買ふつもりだつたので慌てゝ予想。LITTELRATEURといふ馬が不人気だがHV競馬場得意とするChadwick騎手で穴馬狙ひで6.5倍だかの複勝は美味しい。1番人気のRED WARRIORはサイズ厩舎でモレイラ騎手で固いところ。このRED WARRIORを軸にLITTELRATEURを入れて、後はまぁ来てもおかしくない馬を、とオッズも見ずに3頭選んで「これで買ってごらんなさいよ」と蓮香樓のテーブルに敷かれた紙に書いて破いて渡す。帰宅して第5Rから競馬中継見て地味に複勝狙ひ。3R続けて当てて、さて最終レース。J君に言つた手前、その予想で複勝と折角なのでRED WARRIOR軸に、それを複式バンカーとして珍しく三連単馬券購入。すると44倍で12頭だて10番人気のLITTELRATEURがChadwick騎手の果敢な騎乗で見事1着。2着に1番人気のRED WARRIORで、3着からアタシの選んだ3頭が見事に5着まで順当に。

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まぁ穴馬1頭に着目した以外はオッズ見たら結果的に1〜4番人気馬なのだが、それでも、この穴馬のおかげで高配当で払ひ戻しはHK$7,059也。12月に入つてからは有馬記念もあつて競馬運がいゝ私。

▼女性客室乗務員が乗務中に飲酒を日航発表 - 毎日新聞 https://t.co/WgryKtIiRe 昔、成田から香港にアリタリア航空が飛んでいた頃、ミールサービス終わって何だかタバコのにおいがギャレーから、と思ったらスチワーデス… https://t.co/rrCSWG7f7A

*1:英連邦でよく見られる基督教に由来の休日。日付は12月26日。聖誕祭翌日で元々は教会が貧民に寄付を募つたクリスマスプレゼントの箱(box)を開ける日であつたことから”Boxing Day"と呼ばれる。スペルは同じだが、スポーツのボクシングの意味ではない。

「香港公共広播九十年」展覧

農暦十一月十九日。快晴。聖誕節で休日。家人と太古から682系統のバスで沙田第一城へ。吐露湾岸……といつても巨大な運河のやうだが、水質もいくらかは改善されてゐる、そこを沙田方面に歩く。小一時間で歩行者専用の瀝源橋を渡り沙田公園抜けて香港文化博物館。香港公共放送90年展。

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香港の公共放送はBBCの姿勢と体制が基本。それが中共統治となり政府の干渉のなかぎりぎりの奮闘。戦前は中環の郵政総局に間借りのやうだつたが戦後は九龍塘にRadio Television HK(RTHK)として発展。戦前は福建、潮州方言でのニュース、音楽番組があつたのだつた。

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その敷地を巡る道路もBroadcast Drive(廣播道)と名付けられ、このポスターの建物も現存。日本でいへばNHKの神南のやうな場所。

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今でこそイスラム=テロリスト扱ひの偏見だがRTHKは香港のマイノリティ重視もありモスリム理解の番組やフィリピンや東南アジアから出稼ぎの家政婦相手の番組も。

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今でこそ大スターの周潤發もこの局の番組出身。青春歌謡といへば、やはりBeyondである。

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そしてRTHKといへば社会派ドラマ『獅子山下』である。名作揃ひ。公共団地の室内ロケの復元が見事。羅文の歌つた主題歌も秀逸。

ゴールデンハーヴェストの映画プロデューサーだつた蔡瀾とSF小説の作家・倪匡……30年前は当然、若い。

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ほんのさらりと参観のつもりが展示内容の充実で一時間余費やし昼も過ぎたが沙田の休日の人混み想像しただけで二の足を踏み大圍に向かつて歩く。古い集落や廃屋となつた洋館などあり。岸辺は車公廟。

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聖誕節に車公廟して春節に基督教会礼拝とか臍曲がりなこと考へる。吐露湾の突き当たりには初めて来た。城門水塘からの水がここに流れ出て、こゝからが海となる。かつてはもつと広い湾だつたが今では埋め立てられ巨大な用水路に見えるのだが。大圍の市街に入り路面の林園といふ食堂で昼食。

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昼はあまり食べないアタシには食べ過ぎ……これで夜もあまり食欲なし。MTRで深水埗へ。汝州街。布地や装飾関係の問屋多く家人がボタン、リボンやゴムの専門店へ。アタシの倫敦Foxの長傘二棹のゴムが伸びきつてしまひ、それを直すのに黄色と紺色のゴムを調達。太古。誠品書店。先日どこかで失くした台北の誠品書店で購入した携帯用のKawecoの万年筆を再び購入。

スポーツといふ銘柄でHK$290と万年筆にしては廉価なので、まだ助かつたが。帰宅すると家人が傘のゴムをすでに直してくれてゐた。晩は日テレで明石家さんまの何だか芸能人集めたトークバラエティの年末特集をだらだらと眺める。

▼呉座勇一「誤解生む「日本文化」の絶賛」朝日新聞 https://t.co/CPF3cjOKpu

戦前においては後醍醐天皇を裏切って室町幕府を開いた足利尊氏は逆賊として非難された。結果、逆賊の子孫である義満・義政も否定的に評価されたのだ。

室町時代の政治を肯定できない戦前の歴史教育は、代わりに文化を賛美した。義政の時代の東山文化は、和室・和食・茶の湯・生け花など日本の生活文化の源流として特筆されたのだ。

こうした傾向は平安時代への評価にも見られる。摂関政治を「世の中の嫌な事件や現実には目を瞑り」「権力争いに明け暮れていた」と批判する百田尚樹氏の『日本国紀』も、この時代の国風文化については「真に日本らしい傑出した文化」と絶賛する。

この評価には二つの問題がある。第一に「政治がダメでも文化は花開く」という誤解が生じる。実際には政治が安定してこそ文化は隆盛する。摂関政治の確立が『源氏物語』を生んだのだ。室町文化の絶頂も、義政の時代ではなく、政治的安定期である義教(義政の父)の時代に迎えた。

第二に「中国の影響を脱した純粋な日本文化があった」という誤解を生む。紫式部は『白氏文集』など漢籍を愛読し『源氏物語』に多く引用している。日本文化と中国文化を対立的に見るべきではないのだ。

聖誕前夕かよ

農暦十一月十九日。曇。世の中は聖誕祭気分。こちらは年末迄に済ます仕上げ物多く齷齪気分。アタシは耶蘇に非ずハロヰンだ、クリスマスだ、ヴァランタインだといつた異教徒の世俗的な騒ぎ、それが消費活動に直結するものには全く興味もなく寧ろ毛嫌ひ。たんに偏狭な臍曲がりか。晩に陋宅にて焼鵝でCh. Lynch Bages 2012年抜栓。まるで聖誕宴のやうだが、そこはご愛嬌。

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▼世道人生:聖誕快樂(李怡) - 李怡 https://t.co/sdmnNjwgLQ
昨今の中共での国粋主義西洋文化排斥の動き。聖誕祭を公共レベルで騒ぐな、世俗の聖誕風俗まで良く思はれず。これにつき李怡先生曰く、西洋文明がどれだけ中国の「科学的進歩」に影響及ぼしてゐるか、そも/\元号制を止め西暦とすることすら基督誕生が源なら、おかしな話だろ、と。太陽暦もさう、日曜日を祝日にするのとて耶蘇の信教に基づくもの。

在整個社會物慾橫流,人民失去信仰、靈性、善意和推己及人之心的情況下,有一則消息在大陸網上流傳:「昨日中午,聖誕老人因到中國摔倒,無人敢扶,已經凍死了,節日取消,請相互轉告。」
為了不讓聖誕老人凍死,西方世界開始不讓聖誕老人去中國了。聖誕老人意味現代西方文明,難怪西方抵制中國的聲音出現並上升。
香港何時會出現讓聖誕老人凍死的社會?

 

平成最後の天皇誕生日の有馬記念

農暦十一月十七日。小雨。昨日に続き官邸にて周末の残務処理。といひつゝ有馬記念も気になるところ。執務室で昨日はイーヴォ=ポゴレリチショパンを聴いて仕事のBGMにはならない、と思つたが今日はMaria João Piresで聴いて、いろ/\考へることばかり。仕事中は「脳を活性化するモーツァルト100選」とか聴かないといけないのだ、きっと。で有馬記念。先日、居酒屋一番での飲み会に出張帰りの京都B氏が当日の有馬記事多い日刊スポーツ買つてきてくれて予想を聞かれ余り考えてもゐなかつたが「唯一3歳馬のブラストワンピース、オッズ的にも3番人気くらゐでオイシイのでは?」と言つてしまつたのでブラストワンピースから1番人気のレイデオロとして障害で強くなつたオジュウチョウサンサトノダイヤモンド、ミッキーロケット、キセキと流すことに。キセキがハナを取り最後直線も残つてゐたが、そこに外枠からブラストワンピースが悠然と襲ひ最後はキセキの追ひ上げ躱し優勝。

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ブラストワンピースの単複、レイデオロとの連複、ワイドを取る。三連単複はシュヴァルグラン3着に入り残念ながら逃したが4着からミッキーロケット、キセキ、サトノダイヤモンドと6着まで的中(オジュウチョウサンは9着)で「佐々木大魔神のシュバルグランさえ来なければ」。配当はありがたいことに香港もレイデオロ単勝1.4倍と集中でブラストワンピースは3番人気ながら18倍(日本では8.9倍)、連複は12.2倍(同9.4倍)。三連単はHK$4,123だつたがミッキーロケット来てたら更に高配当だつた、惜しい。沙田で開催の地場競馬も当てるか、かなりいゝ線で掠るかでダメなし。かういふ日もたまにあつてもいゝ。夕方、官邸を出ると雨は本降り。金鐘へ。クリスマス前で混雑のパシフィックプレイス地下でワイン調達。湾仔の益新美食館へ。「有馬記念的中!」とワインはお振る舞ひ。三連単的中してゐたら今晩の食事は香檳酒つけてご馳走できたのに。

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東京から研究者で、大陸帰りで太平天国研究疲れしてゐるK先生来港。T嬢、S嬢と家人で女子会なので経営学M先生に援軍で来ていたゞく。雨で気温下がる。八時半にはお開き。

▼今上さま天皇誕生日。日本国内のみならず中国や先の対戦での被害国も含め天皇皇后への敬愛の念まで確立。日本の歴史を負の面まできちんと認め平和の尊さの体現。政府がブレるのに比べ天皇がゐることによる日本の安定とまで理解されてきたとは。

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天皇として最後の民草へのお言葉。これまでの慰霊の旅、被災地訪問に触れ聖上は涙堪へ声震はせ「私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝する」と。立憲制の下、憲法遵守され憲法の謳ふ理念がだうあるべきか、を体現。平成の30年で幾多の災害は悲劇的だが、そのなかで天皇にしかできない行ひを続け、天皇制も賛否あるなから現実は民草の一木一草に宿る天皇制の形を痛感させられた平成の世。ところで宮中の会見の場に掲げられたこの背景の画。晴れのその場に?と驚くほど、あまりの形相にぞっとするほどだが久ヶ原T君によれば名人・14世喜多六平太の舞ふ能〈石橋〉後シテ。喜多流の「一人石橋」特有の巻毛獅子。左右の紅白牡丹は宮殿納入後に前田青邨画伯が追加揮毫の由。石橋の物語はアタシも香港でも数年前に宝生流で二十代宗家・宝生和英のものを拝見。

中国、印度の仏跡巡る旅続ける寂昭法師[大江定基]は、中国(現在の山西省)の清涼山にある石橋に辿り着き、そこにひとりの樵の少年現れ寂昭法師と言葉交はし、橋の向かふは文殊菩薩、この橋は狭く長く深い谷に掛かり人の容易に渡れるものではないこと=仏道修行の困難を示唆等を教へ、ここで待てば奇瑞を見るだらう、と告げ姿を消す。法師が待つてゐると、やがて橋の向かふから文殊の遣ひである獅子はれ香り高く咲き誇る牡丹の花に戯れ獅子舞のあと獅子の座=文殊菩薩の乗り物に戻り……といふ物語。

橋の向かふは文殊菩薩の浄土、ただ我々は谷の向かふに容易に渡るに能はず。アタシには聖上が、その現実を教へる、まるで文殊様の遣ひの獅子に見えた。久ヶ原T君は「げにも上なき獅子王の勢ひ、の心」と。