富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

鈴木賢「アジアが互いに学び合う時代 なぜ台湾に注目するのか」水戸市国際交流センター

辰年八月初六。気温摂氏23.9/31.4度。晴。水戸市国際交流センターで「台灣很有趣」といふシリーズの一つで鈴木賢教授(明治大法)のこのセミナーあり。末席を汚し拝聴す。

アジアが互いに学び合う時代 なぜ台湾に注目するのか – 水戸市国際交流協会

水戸市はこの秋に台湾の台南市と友好交流都市になるさうで、それがあつての台湾月間。国家間外交の困難な台湾にとつて都市間交流はまさに外交の基盤づくりであつて台南市にとつての友好交流都市締結で水戸市は50数番目で茨城県でも何番目か。水府にとつては「飛虎将軍」が台湾との結びつき。

「飛虎将軍」故杉浦茂峰氏について - 水戸市HP

これについては数ヶ月前に拙筆の記述家永真幸『台湾のアイデンティティ』文春新書 - 富柏村日剩も参照いたゞければ。

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鈴木賢先生は台湾理解の基本の「き」のやうなところから台湾の近代史と現状をきちんと語られる。台湾は国家か。国家成立の条件として領土、国民と政府はあり「国際承認」だけが実際にはあるが減少。日本政府が(台湾を)国家承認してゐるか何うかは「個人が台湾を国だと考えるか何うか」とは別次元の問題。

  • 台湾住民の圧倒的多数は漢民族だが原住民族(約2%)とほゞ同数が結婚や就労等で中華民国籍取得の「新住民」。
  • 多言語社会。台湾の各固有エスニックグループが使用する自然言語及び台湾手話を国家言語として認定し一律平等で差別制限を禁止
  • 中国🇨🇳の反国家分裂法(2005年制定)。中国法で唯一、中華人民共和国◯◯法ではない法律。「世界には一つの中国しかない。大陸と台湾はともに一つの中国に属する。中国の主権と領土の完全性は分割を許さない」。中国 ≠ 中華人民共和国
  • 台湾は中共政権の「核心的利益」。中共の国家創成物語(国造り神話か)=失地回復ストーリーであつて台湾回収不能の確定は政権そのものの正統性を揺るがす。
  • 台湾は親日国なのか? 日本統治下で当時の台湾には台湾アイデンティティはなかつた漢民族と原住民。朝鮮との差異。反日機運に至らず。戦後の国民党政権への不満。戦前の日本統治への反射的利益(昔は良かつた)。
  • 日本の台湾への思考停止から→深い理解(いずれも思ひ込み)。政治的。米国と同盟しつゝ対等しつゝある中国と向き合ふ運命。
  • 中国ファクターと台湾ナショナリズムの発展。自由、民主主義、人権など普遍的価値が国民統合のイデオロギー/国際的な存在感向上に寄与。中国との違ひ。同志国族主義(homonationalizm)の作用。エスニシティジェンダーセクシュアリティなど包容する多文化主義が台湾アイデンティティに。

一つの共同体に生きる人々が主体的意識に目覚め、自己決定を求める意識を高めている。平和的に、自分たちの存在をきっちりと包み込む政治体制を求めている。(野嶋剛)。

「転型正義」といふ概念について。移行期の正義(Transitional Justice)。専制体制独裁〈体制〉から民主化するにあたり、かつての人権侵害について見直し調査(真相究明)、責任追及(責任の明確化)、正義の回復(謝罪)、賠償(補償と被害者救済)、再発防止策などをおこなふこと。日本がまさにおざなりにしてゐること。これができぬのは日本が近代市民革命も経ず民主国家といひながら実質的にはまさに自民党専制体制独裁にあることなのだ、と思はされた。さうした点も含めに日本は先進国、アジアのトップランナーではない。それゆゑアジアが互いに学びあはなければいけない時代にある。