甲辰年二月廿二日。魁春忌。気温9.1/24.1度。晴。家人がFMで聴いたラヴェルのピアノ協奏曲ト長調の所謂「弾き振り」が凄かつたといふ。それはコロンビア交響楽団での演奏だつたさうだが映像でこちらがあつたので、それを聞く。1975年のパリ、フランス国立交響楽団での演奏。
本当にこのバーンスタインといふ音楽家のためにすべてが仕込まれたやうな演奏会。こんな「出来過ぎ感」は長嶋茂雄や小澤征爾同様に天から舞ひ降りてくるらしい。
音羽屋(菊之助)は才能に恵まれてゐる。それでもどこか役になりきれないといふか、この芝居でいへば長兵衛のあまりの無防備な情や「てやんでぇ」感が弱い。中村屋や澤瀉屋なら先代も倅や甥も若いときから汗だくで熱演してゐたやうな。それでも仁左衛門丈だつて若いころは線が細かつたのが大役もこなすやうになつたのだから今どき46歳なんてまだこれからなのかも知れない。文七元結は先日、三三師匠の噺で聞いたあとだつたで余計に面白味に欠けて思へたのかもしれない。角海老女房お駒の萬次郎がセリフ回し上出来。文七役の萬太郎やはり芝居上手。小柄で文七役はこれで良いが大役が待ち受けてゐるわけで、あとは演技力でどれだけ役を大きく見せるか、だらう(中村屋や音羽屋が出来たやうに)。
原武史『戦後政治と温泉 箱根、伊豆に出現した濃密な政治空間』(中央公論社)読む。戦後の箱根や熱海で政治家の温泉政治。これを湯治といふ、と原先生(ウソである、今思ひついた)。政治家の日記や回顧録、当時の新聞記事から温泉政治実態をよくまとめてゐる。だが「なぜ戦後の一時期、温泉と政治は強く結びついたのか?」と帯にあるのだが「なぜ」は「箱根の景勝地に温泉があつたから」でしかなく書かれてゐることは「どのように戦後の一時期、温泉と政治は強く結びついたのか?」だらう。とても精緻な研究なのだが読後感としては「だからどうした?」なのだつた。赤坂の料亭/があつて箱根の温泉/があつて当時の政治家のオジサンたちは政治を好きに動かしてゐた、なるほどね、である。
酒井順子『鉄道無常 内田百閒と宮脇俊三を読む』(角川書店)も通読。百鬼園も宮脇先生の紹介本のやうで両者とも一通り読んでゐる身には特に目新しいこともなし。そも/\「鉄道無常」といふタイトルが好けない。
む‐じょう 【無常】 ムジヤウ
①〔仏〕一切の物は生滅・変化して常住でないこと。方丈記「その、主と栖と、―を争ふさま」。「諸行―」
②人生のはかないこと。「人生の―を知る」
③人の死去。徒然草「―の身に迫りぬる事を心にひしとかけて」【広辞苑第七版】
百鬼園も宮崎も「鉄道が好きだから鉄道に乗つてゐる」わけで「無常」でもなんでもない。寧ろ「有情」である。原武史の箱根の「湯治」で「どのように」を「なぜ」と言ひ替へしてみせた修辞同様に、この「無常」も宜しくなく受け入れ難いところ。
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日本調教馬G1は勝ちナシ。UAEダービーは一昨年のクラウンプライド、昨年のデルマソトガケに続きを3連覇。