陰暦二月十五日。3.6/18.4度。曇。地震のあとキクマサを湯呑みで一杯呷つて寝たがやはり大きな揺れのあとで安眠できなかつたか寝不足。避難所で夜を明かす、家財散乱に落胆の人に比べれば地震の一時間後に布団にくるまつてゐられるなんて申し訳ないほど。夜中まで東京など大規模な停電。地震で東北新幹線が白石付近で脱線で今朝から不通。時間が時間ゆゑ回送列車かと思ひきや東京発21：44の仙台行き最終のやまびこ223号で仙台着23：46の10分前のこと。今日、JR東日本の副社長が会見で謝罪してゐたが地震大国（日本が今でも大国といへるのは地震くらゐになつてしまつたか）を時速320kmで走る列車に乗るなんてことは乗客は「いつ命失つても良い」と覚悟すべきほどの沙汰だらう（鉄道会社にできることといへば列車の減速くらゐしかない）。今回の地震はM7.4で最大震度６強。それで死者は宮城と福島両県で２人。昭和53年の宮城沖地震では死亡が28 人（内ブロック塀倒壊での死亡18 人）で負傷者1,325 人。電気水道ガスの復旧に８日要してゐるのだが地震の規模は昨晩と同じM7.4で仙台は震度５（昨晩は５強）で当時はあれほどの被害だつたとは。
(東北地震）仙台城跡「伊達政宗騎馬像」傾き馬の足が破断する被害（NHK）
競馬馬であればレース中にこの損傷なら、その場で安楽死させられさうな傷。
会見での発言、記者への応答はじつにご立派。あれだけの内容を原稿も読まず（永田町とは大違ひ）。自分の長所短所もユーモアも交へてのこれで愛子さん高感度上昇であらう。これほどの人なら天皇になつてもらつて良いのではないか？と思つた臣民も多いことだらう。同日、秋篠宮の倅どのも中学（御茶大付属）卒業。記者の撮影で記者らの前に現れちょこっと頭を下げたが、もう少し姿勢はよく。皇位継承順にある皇族で民草に深々と首を垂れろとはいはないが首を傾げてみせるにも仕草に品位といふものは必要。さうしたら倅どのばかりか秋篠宮と妃のお辞儀も同様であつた。
村上湛（劇評）国立劇場「近江源氏先陣館」吉右衛門の遺志継承の秀演：朝日新聞
畏友・村上湛君の国立劇場〈盛綱陣屋〉の劇評（本日の朝日新聞夕刊）読む。いつもながら劇評が一つのディスクールの作品。評者自らがなぜこの劇評を書かなければいけないのか、といふ根拠が要ること。評される役者にとつても、この芝居で何を表したいのか（極端な場合この舞台で演じられゝば死んでも良いといふほどの覚悟）あつてこそ、それが演じる者と見る者の間で見事な共鳴となる。湛君がそれぞれの役者のそれを実に見事に一つずつ述する。役者も自分の身体表現をこゝまで見てくれたら本望だらう。今回のこの〈盛綱〉は役者も良かつたが葵太夫さんの竹本が素晴らしかつた。葵さんをいつも信用して義太夫に指名してくれた吉右衛門Ⅱが亡くなり、それによつて葵さんは吉右衛門の伝統歌舞伎に従ふ者から次の役者のそれを率ゐる立場にもはやなられた、その覚悟がさらに葵さんの竹本を素晴らしいものにしてゐるのだらう。その葵さんの竹本を湛君は「先代猿之助が根を養い、歌右衛門が枝葉を茂らせ、吉右衛門が花を咲かせた彼の語り芸」と言つてみせた。この短い表現に葵さんの40年の全てが（そしてその義太夫で舞台を勤めた大役者たちの至芸までが）言ひ表されてゐるといつてよいだらう。
