富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦四月初七

快晴。土曜朝恒例でFCCで週末の新聞読みながら珈琲飲む。土曜朝にFCCのラウンジに無聊に寛ぐ御仁はだいたい同じメンツと思ふ。昼に帰宅すると北角から戻つてきた家人が北角街市の路上でインドネシアの鳥料理ランチ買つてきてくれた。粗質の紙を折つたパッケージがステキ。

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これが今どきHK$20ださうで実に美味い。

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午後は沙田の競馬中継を見る。今日はHK Macau Trophy(Class-1芝1400m)ありMission Tycoon(羅厩舎、Moreira騎手)応援したが2番人気の2着で優勝は1番人気のGood Standing(Moore厩舎、Purton騎手)。澳門からは5頭が来たが(今回から大橋を自動車で渡つてきたのか)実力的には香港馬が圧倒的に強いなか今回は澳門馬のPearl Green(単勝44倍)4着に。2004年から続くレースで第1回に澳門馬のCrown's Gift優勝以来ずっと香港馬優勝が続くなか2010年に1度だけ澳門カジノ王 Stanley Ho博士所有のViva Pronto単勝110倍)が優勝(2番人気のYummy Spirits2着で連複でHK$2020配当)といふあばらかべっそんは一度きり。今日もアタシの成績は不調続き。R9(Class-2芝1000m)で7番人気(14頭だて)のSpeedy King(姚厩舎、Chadwick騎手)が気になり5頭まで自分ではしつかりと絞り込め、このSpeedy Kingと1番人気のRefined Treasureをバンカーマルチにして残り3頭に流したところSpeedy Kingが400mからハナをとりRefined Treasureが差すのを鼻差で躱して1着。

穴馬で見事なレース見せる、実にChadwick君らしい騎乗は見事。この記事にある通り本来はK C Leung騎乗予定が水曜日の悪馬場での沙田夜競馬で最終レースでK C Leung騎手最後直線で落馬し軽い脳震盪あり大事をとり今日は休場となりChadwick君に乗り換への由。姚調教師の話として今日はChadwick騎手で斤量113ポンドだつたがLeung騎手だと115磅だつたので、この軽2磅は馬にとつて幸運だつた、と。アタシの三連単は1-2-4着で推定10万円ほどの配当が夢に。最終R10は予想を3頭まで絞りんだら1〜3番人気。面白くないと単勝に選んだ馬は2着で結果この3頭で固い結果となり三連単逃す。競馬むずかしい。HKジョーッキークラブ(HKJC)のアカウントにアタシにしたら現金多過ぎ掛金がつい多くなつてゐるのに我ながら警戒して銀行口座に余剰振替へやうとしたらネットでもアプリでも上手くいかずHKJCから「銀行に問ひ合わせを」と出るので銀行に電話したら問題ない。HKJCに電話すると競馬開催の後だから妬きが回つたパンターからの「勝ったはずの馬券の配当がない!」とか問ひ合わせ多いのか15分も待たされたが電話に出た職員は機転きゝ「銀行口座のカード、更新とかしてゐませんか?」と。確かに去年の末にその通り。銀行口座番号変はらずともカード更新されるとHKJCとのリンクが一旦切れると知る。

▼週末の新聞の読書欄。毎日新聞のほうが朝日に比べ近年興味深いと思ふが今日の土曜朝日の読書欄が面白い(読売は論外)。ロバート=キャンベルさんの谷崎『陰翳礼讃』書評は文章が上手すぎて書評を超へロバート=キャンベル小品になつてゐる。

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文章が上手ければいゝといふものではない。それに対して重田園江の「統計」は実に見事に社会統計の門外漢にまで統計の面白さに興味もたせた上で内容も深い。

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国民国家」といった巨大すぎて漠然とした存在にリアリティを持たせる統計のような技術は、人びとの「生」のすべてを政治と国家の関心事としていく「生権力」の発展とともにある。(フーコーの言説の通り)

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横尾忠則先生も朝日毒書評の常連で週間読書人の連載日記も面白いが最近上梓された『小津安二郎大全』で小津映画の要である原節子について共演した女優たちが語るエピソード以外にもう少し突っ込んだ評論があってもよいのでは?と注文づける。さうかしら。原節子のことを誰が書いても、これまで書かれた原節子伝説の範疇にあると思へば、なくてもいいのでは。さらにもう一編、中川越著『すごい言い訳!二股疑惑をかけられた龍之介、税を誤魔化そうとした漱石』も読んでみたい一冊。よくも文豪たちのかうした言ひ訳蒐集したものである。

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面白いことを書く人、面白い記事はいくつでもあるのだが「不思議な都知事」だつた猪瀬直樹毎日新聞「今よみがえる森鴎外」その②「改元への切実な思い 安普請の天守閣に金の鯱」は面白い。

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鴎外の『元号考』は有名だが猪瀬は鴎外が元号問題託した漢学者で宮内省編集官であつた吉田増蔵のことを書いてゐる。中国ばかりか(日韓は当然として)チベットベトナムまでこれまであつた全ての元号を集め整理し注記までつけた「年号検索」作成したのが、この人。猪瀬はさうした鴎外、この吉田の思ひをかう解釈する。

明治国家は、伊藤博文山県有朋ら維新世代が建設した。鴎外や夏目漱石は貧しい国家が未来を託して海外留学をさせた第二世代であった。建設に加え、リベラルアーツで内装を充実させねばならない。彼らの後につづく自然主義作家たちは明治国家の権威に反撥する。だが家長の鴎外には明治は慌ててつくった安普請の天守閣に見えた。権威は壊すよりつくるほうが難しい。せめて金の鯱にあたる元号ぐらい完璧にしておきたい。それが鴎外の痛切な思いであった。

このあたりが猪瀬節のサビで肝。かういふことをさらりと書かせると本当にお上手。かなり充実した取材スタッフ、編集スタッフのゐる出版事務所の出版物のやうな人である。ちなみに明治は十回、大正は三回過去に元号の候補となり落選。それに対して昭和は初で平成も幕末に慶応となる際の案にあつたといふ。「令和は候補に挙がったことはない」ってそりゃさうだろ、無理やりな国書から。猪瀬はそして最後を「鴎外の意志はこうして結実しているのだと思う」と結ぶ。これが余計。この一文で「猪瀬、此処にあり」の欲が出る。この一文さえなく「令和は候補に挙がったことはない」で結んでおけば含蓄ありで良かつたのに。

▼マハティール首相苦境 多数派マレー系優遇見直し支持率激減……何ともよくわかるところのジレンマ https://t.co/QBasZ9NEJW 

農暦四月初六

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今にして思へば日米貿易摩擦など可愛いもの。米国の対中輸入への関税大幅引上げで中共も報復を示唆。早朝から銅鑼湾「そごう」周辺にとんでもない買客鳩まり何かと思へば半年一度の大売出し。殊に化粧品は人気で行列はCHANEL、Estée Lauder等銘柄別で少なからずの客はキャリングケース持参で何う見ても個人消費とは思えず。

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関税の高い中国にでも再販目的なのか。それにしても消費、消費の凄さ。

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昼にニュータッチの奈良天理スタミナラーメン。オリジナルの「天理スタミナラーメン(天スタ)[奈良]」は天理教とは何ら関係なく天理に本店あり関西一円にチェーン展開してゐるがニュータッチのこれも即席だと思ふと本当に本格的。ニュータッチ=ヤマダイの即席麺なんて小学生の頃にニュータッチ焼きそば食べて以来か。

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Singapore Airlinesからゴールドでラッゲージタッグ近々郵送とメールあり。SAどころかStar Alliance系に、もう2年近く?乗つてをらぬのに?で網上でステータス見たら何故か今月から有効でKrisFlyerが1年ゴールドになつてゐる。ゴールド失効して一度も搭乗せぬ客呼び戻しのプロモーションかしら。

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競馬の予想紙はいつも『大勝』購入。以前この日剩にも綴つた通り『大勝』は内部分裂で『大勝馬經』と派生の『今天大勝馬簿』お互い罵り合ひ。一澤帆布信三郎帆布、麻布永坂更科と更科堀井の如し。私はつい判官贔屓で『大勝』派だつたが今回、初めて両誌購入して内容比べ。編集内容、レイアウトは極めて相似。だが単純に『今天』の方がレイアウトきれい。予想こそ当然違ふがデータしか見たい私にはレイアウトがきれいな方がいゝので『今天』派に鞍替へしさうな気配。

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画像の上下は上が『今天』で左右では左が『今天』。

▼安倍首相「悪夢戻らぬよう」また旧民主批判 - 毎日新聞 https://t.co/qESfVBStFY

悪夢また戻らぬようにと言う悪魔

である。その晋三、今晩は代々木町のピザ店「エンボカ東京」で「TOKIO」のメンバーらと食事。福島の復興支援の話題とかで盛り上がってみせたのか。

▼明るい北朝鮮で「フェイクニュース法」与党の圧倒的多数で(って当然だが)成立。

Singapore Parliament: Fake news law passed after 2 days of debate https://t.co/wd36v9BDbR

社会にフェイクニュース流布は悪いこと。但し誰が何う取締るかで「フェイク」の判断難しく権力にとつて不利益なニュースはフェイクとされ権力が意図的に流すニュースはフェイクでも真実となることはジョージ=オーウェルの世界。シ政府は当然さうしたことはないといふが。ネット規制中共と一緒。だが中共は政治的には神経質だがポルノなど「ガス抜き」として放置。それに対してシンガポールはすでにネット上での猥褻画像送信も刑事罰とする法令用意。例へば他人の裸像勝手に流布は問題あるが自分の自慰画像を特定の好事家サイトに投稿も規制対象。好事家の知己によればシンガポールはかうしたセルフエロ画像投稿が少なくないのだといふ。自由なやうで圧迫されたストレスの裏返しなのか。

(令和に寄せて)肥大する星条旗、いまや「国体」に 政治学者・白井聡さんに聞く https://www.asahi.com/articles/DA3S14007861.html

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Victoria Dockside

農暦四月初五。曇。早晩久々に尖沙咀。Victoria Docksideといふ再開発地区、まだピンと来ずNew World Centreで東急デパートのあつた」といふと老香港にはピンと来る。

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Victoria ParkとかVictoria Harbourとかヴィクトリア女王の名を冠した大時代的な名前ならまだしも香港返還から20年以上経つた今、Victoria Docksideなんて港独派喜びさうな。しかも香港は中国なのにVictoria Docksideには中文名無し。ふと「昔はVictoria何某といふ地名が由来?」とも思つて調べたらNew Worldが再開発の前はSwire財閥によるHolt’s Wharfといふ貨物埠頭。30年前なら九龍半島の先端ではRegent Hotel(今のIntercontinental HK)がとても大きく見えたが、このVictoria Docksideの再開発で光景も随分と変貌。

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そこのK11 Atelierといふ超高層複合ビルはみずほ銀行入居したがRosewood HKといふ高級ホテルあり。さてこのホテルがどんなものかと寄つてみる。MTRのJ出口からSalisbury Rdの何とも微妙な殺風景は嫌なところK11 AtelierはVIPでも来るの?と思ふほど警備員目立ちホテル入口は「宿泊客専用」で「バーに行きたいんですがね」と扉嬢に告げるとオフィスタワー玄関の先の専用エレベータで2階へ、と。専用エレベータのところにもスタッフ配置。2階に上がると楼上の車寄せ主玄関あり。こゝでは何も聞かれず扉男に「いらっしゃいませ」と迎へられる。何うやら路面は物見遊山の田舎者多く、それがホテルに入りロビー陥落、トイレ汚して……の対策で、このホテルはショッピングモールもない?で宿泊と飲食の客以外は歓迎しませんで敷居高くしてゐるのかしら。でロビー階にあるDarksideといふ酒吧へ。夜6時開業で口開けかと思ひきやすでに数組の客。ヴィクトリアハーバー眺めよきテラスあり。バーカンターの止まり木に羽根休める間もなくバーのレセプション嬢が名前と連絡先尋ねてきた。予約ならまだしも一見の客に今更。開業間もないので顧客獲得でPRのSMSでもこれから送つてくるつもりか。ここで“My name is Bond, James Bond”とでも名乗りウオツカマティーニをスティアでなくシェイクで……なんてアホだと思はれるだけか。普通に倫敦ジンでマティーニ注文。バーテンダーは偉いハンサムな東南アジア系で礼儀正しいがカクテル作るお作法はまだ要勉強。酒調合で使ふもの並べておく段取り大切。それで数秒ずつでも時間がかかる、酒が薄くなる。

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マティーニ供された後、コースターに銀皿出され意味不明。グラスが汗かき……といつてもアタシの場合、グラスが汗をかく前には飲み干してしまふのだが銀のコースターではグラス底は濡れたまゝで意味ないのでは。此処は中環Landmark AtriumにあるダイニングバーZumaのマネージャー引き抜か仕切つてゐる由(今日はそのマネージャーは非番と後にある筋より聞く)。まぁ二度目に来たら、もう常連扱ひしてくれさうな接客は香港でホテル飲食のレベル低くなるなかでは立派。バーテンダー君に入口の警備厳重だつたけどVIP宿泊でも?と尋ねたが今日とくにさういふことはないさう。この一帯は今でも「新世界発展」財閥の所有ゆゑに、このホテルの中華は鄭裕彤の故郷広東省順徳の料理供すと識る。MTR尖東站上の空中庭園抜け尖東へ。幸福中心。久々に五味鳥。午後7時開店の口開け。15分もする内に相変はらずの繁盛で狭い肆は爆満。

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会食ののち久々にバーWで独酌で啤酒二杯(平日なのでTwo for One)して帰宅。

▼香港立法会では中共への犯人受渡し条例に向け香港市役所と土共会派が無理矢理だが本来、政治的中立であるはずの立法会秘書處の秘書長・陳維安が条例制定に偏向と民主派が非難。丸1日行方晦まし「尋ね人」ポスターまで巫山戯て貼られる始末。

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この陳維安がマスコミの取材に言ひ訳がましく秘書處の中立嘯き“We always worked against this principle”と。原則に抗して?……と気になつたがやはり嗤はれてゐる。

陳維安的英文 - 馮睎乾 | 蘋果日報 | 果籽 | 名采 | 20190509

香港のエリート校Diocesan Boy's Schoolからプリンストン大学に留学して電気工学とコンピュータサイエンス学びハーバード大学ペンシルバニア大学で修士のくせに、と。本来言ひたかつたのは“We always worked against Anti-Government Democrats”だつたのか。英語水準低下は高級官僚のみに非らず。

新香港法官不必懂英文 - 古德明 | 蘋果日報 | 果籽 | 名采 | 20190509

これも相当にひどいもの。雨傘運動での裁判官による判決

When D1 called for the over-cramming of Admiralty first, and then over-cramming of Central on 27 September, he must had in mind a number of turnout which would be enough to over-cram Admiralty and Central.

一読して意味不明だが古徳明先生がきちんと添削。

When D1 called for the over-cramming first of Admiralty and then of Central on 27 September, he must have had in mind a turnout large enough to over-cram the two places.

▼晋三動静(8日)18:27 丸の内のパレスホテル東京。宴会場「桔梗」で渡辺恒雄読売新聞グループ本社主筆、福山正喜共同通信社社長、熊坂隆光産経新聞社会長、海老沢勝二NHK元会長らと食事……あー、不愉快な面々が不愉快な首相取り囲んで。その晋三、4月晦日の先帝退位礼正殿の儀で「天皇皇后両陛下には末永くお健やかであらせられます事を願って已みません」を「やみません」が読めず「いません」。麻生漫画太郎の未曾有が「みぞゆう」はまだ嗤つてゐられるが退位礼正殿の儀でこれは万死に値せやせぬか。訂正、謝罪もせぬことに一水会が叱つてゐる(こちら)。官邸HPから映像も削除された由。

令和元年5月1日 即位後朝見の儀 国民代表の辞 | 令和元年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

先帝は「晋三の政事が末永くお健やかであらせられます事を願って已(い)ません」と返したいところか。

このやうな晋三のおかげで、これまで自民党の保守政権による安定に親近感もつてゐた方々が「ダメだこりゃ、もう」で良心の呵責から反自民党、反権力で正しい見方の追求の道を選ぶことになる。

さらば「改憲マニア」たち 自民党の元「指南役」小林節・慶応大名誉教授 - 毎日新聞

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かつては自民党改憲の論理的支柱のやうに思はれてゐた節先生が今の状況では「護憲」といへば鈴木邦男先生も、この方は従前からの右翼に疑問もつた新右翼ではあるが晋三や百田尚樹のやうな輩がのさばるから平成帝の戦後リベラリズムによるこの国の理想を「國體」とまで認識するに至る。近い将来に於いて〈平成のパラダイム変換〉といふ認識がもたれるぞよ。

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朝日新聞(科学季評)ジャポニスムと先端技術「溶け合う文化を今こそ」山極寿一:2025年の大阪万博で第2のジャポニズムを、と京大総長。19世紀後半のジャポニズム鎖国や当時の状況での稀。日本独自の感性に基づいた技術を、といわれてもねぇ……今更。

農暦四月初四

農暦四月初四。このところ涼しい日続き寝てゐるときの寒さからか喉痛めリンパ腺少し腫れて微熱。午後遅くから雨。水曜日だが今日は沙田の夜競馬で全レースがダート。夜のダートは先行馬逃げ切り、マイルまでは内枠有利だが雨で重馬場、証明も暗い沙田ではテレビ中継見てゐても何とも気持ちも塞ぎがち。少し負ける。

▼五四運動と中国の100年 歴史学者・袁偉時さんに聞く(朝日新聞https://t.co/xqpUBtRgGl

1957年に反右派闘争があったのはなぜか。実際に右派、つまり自由、民主を求める知識人が大勢いたからだ。

かう言はれると当たり前のことを言つてゐるだけのやうだが実に大切な指摘。

たびたび弾圧されたが、中断しなかった。1928年に国民党が全国統一を実現した後、言論の自由を奪おうとした。そこで胡適ら知識人が抗議した。なぜ中国でいまだに憲政が実現しないのかと。作家の魯迅も国民党の専制を痛烈に批判した。30〜40年代には多くの雑誌が発行され、抗日戦下でも憲政を求める運動が続いた。

共産党が権力掌握したが、この新思想潮流、西欧社会民主主義標榜するリベラル勢力が中国に根付いてをり(これは今もさうなのだが)中共にとつて、これほど不愉快な存在はない。「中国でいまだに憲政が実現しないのか」。ところで坂本龍一胡適と似てゐることに気づいた。アジアの典型的な近代文化人の風貌。

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▼週間読書人2019年5月3日論壇 長濱一眞

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▼クレジットカードかざすだけ VISAタッチ決済、東京五輪にらむ……まさかカードのタッチ決済もこれからとは驚いた。10年近く遅れている。 https://t.co/uGXVvooqnh

農暦四月初三

農暦四月初三。朝早く目覚めてしまひ『13・67』の4編目『泰美斯的天秤』読む。前編で逃亡に失敗した黒社会のドン・石本添がまだシャバで勢力張つてゐた1989年の話。天安門事件の年で香港では大きな反中共の世論と抗議活動が起きてゐるが、それはこの話は4月末。北京では清明節のあと民主化運動を展開始めてゐた頃、香港では8年後の香港返還前に香港の治安が何うなるのかと社会不安も生じてゐた頃。香港警察は麻薬や武器の取引で裏社会を牛耳る石本添と石本勝の兄弟逮捕に全力あげ、この組織の幹部集合する日時と場所掴み一網打尽狙つたが捜査での判断ミスあり銃撃戦となり弟の本勝こそ上司の待機指示聞かず突入した刑事により射殺されるが人質となつた無辜の市民5人が本勝によつて殺され警察に対しての信用問はれ……香港警察で捜査力がすでに高い評価受けてゐた關振鐸(当時は刑事情報科A組の警視)が事件の真相に迫る。当時、英国人が幹部であつた香港警察がローカル化するなかで警察の立ち位置までよく物語つてゐる作品。だが事件の発端は一人の人物を殺害するために真犯人がこゝまで仕組むかよ、と。日暮れに驟雨。O氏と銅羅湾の「酒の和」といふ酒バーで塩辛など肴に伊賀・森喜酒造の「るみ子の酒」といふ日本酒飲む。何だか変はつた銘でラベルも漫画で不思議な酒だが『夏子の酒」といふ日本酒造り漫画を描いた尾瀬あきらといふ人のイラストださうで銘はこの酒造の女将の名前ださう。飲んでゐてO氏が西營盤の「綾」で未だつけ麺食べたことないといふので地下鉄で行く。

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つけ麺専門店だが啤酒持ち込み。新宿吉野製麺機といふ会社の製麺機が店に置かれてゐるが、このフォルムがとても美しい。

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きれいに扱はれる調理道具もきちんと並べるとアート。

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綾のある路地で人懐こい猫を愛でる。

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雨は歇んだが東風強し。The Junk Yard Dogでギネス啤酒飲む。本当に静かな小さなパブで大人の客が静かに酒を飲んでゐる雰囲気が素敵。

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陳浩基『13・67』の5編目“Borrowed Place”と終章つまり最も時代の早い“Borrowed Time”を読む。前者は1977年の話で当時、香港警察の汚職が深刻、さうした汚職蔓延改善のためMurray MacLehose総督は総督直属の独立機関・廉政公署(ICAC)設立。MacLehose総督香港総督として歴史上最も長い11年(1971〜1982)で香港の経済成長期にインフラ整備や文革後の鄧小平復活の中共との談判など香港総督として最も功績のある御仁。そのICACで警察汚職調査する英国人オフィサーの子どもが誘拐され九龍區刑事偵緝部の頭脳明晰な高級督察である關振鐸が、この誘拐事件の解決に動く。誘拐犯が身代金を何う受け取るか、その凝つた手段が面白い。だが誘拐の本来の目的が……といふところは、その目的のためにこんな手のかゝる手段を用ゐるかよ、と思つてしまふ。“Borrowed Time”は1967年、中共文革余波で香港も反英暴動のあつた年。まだ十代後半の關振鐸は社会不安、混乱のなか全うな仕事にも就けず湾仔の小さな士多(ストア)でアルバイトしながら、その店の親切な夫婦に可愛がられ兄貴分と身寄りのない二人、士多の二階に狭い部屋住まひ。偶然のことから下宿の貧弱な仕切り壁の隣から暴動に加担する左派一味の計画を知り士多に警邏中に立ち寄る馴染みの警官にそれを通報。關振鐸は事件の解明と某重大計画を未然に防ぐ大手柄で、これをきっかけに香港警察に入ることになるといふ話で、この章だけが關振鐸の「私」といふ一人称で語られる。だが会話の中でも相手が「私」を呼ぶときはいつも「あなた、おまえ」で名前で呼ばれぬ。この十代の若者が關振鐸とは、この一人称小説の中では断定できないのだが、この『13・67』の読者は当然、この若者がその後、香港警察一の捜査推理力で賞賛される關振鐸であることを前提に読む。全6編の中では、この1967年の話が真相に至る迄の、またトリックの大げさな仕掛けがなくシンプルな筋だて。まぁ關振鐸がまだ若者で警察組織に入る前のことで、そのいくら頭脳明晰とはいへ陋巷の一人の若者なのだから偶然、反英暴動の扇動家に出くわし警察にそれを通報して捜査協力でも十分なところ。

中共のロボットなど何年か前まではあまりのレベルの低さとデザインの未熟で日本のホンダのASIMOなどに比べられ嗤はれてゐたが、この警察ロボット、設計デザインはダサいにせよ道案内など可愛らしい任務ではなく監視カメラであり顔認証までできるものか。これにより監視され「反社会的」分子は取り締まられる恐ろしい現実。

農暦四月初二

農暦四月初二。曇。立夏といふがこゝ数日涼しい日続く。昏刻に小雨のなか北角陋巷に寄る。英皇道の琴行街角に、もう二十年は前からある新聞スタンドの主人は旧知で新聞が数碼化される前は毎朝、信報、蘋果にSCMP買つてゐたのでオマケでくれる紙巾(ポケットティッシュ)もオマケ用の低級品ではなく毎日一個、上質のTempoをくれてゐた。今では通りがかりに馬簿の『大勝』買ふくらゐだが、この主人は熟客には割引で新聞雑誌を売る。定価HK$30のそれにHK$30丁度渡すとHK$2硬貨を返さうとする。朝刊を午後も半ば過ぎの売れ残りならわかるが水曜日の競馬予想紙を月曜の発売日から割引とは。それでなくとも新聞スタンドは新聞は読まれない、喫煙者は減る一方で商売難儀のところ。HK$2受け取らぬと恐縮した笑顔で「贏多的!」と。常飲のジンと果物屋でドリアン(品種は金枕)贖ひ帰宅。今年2度目のドリアンは今日は金枕頭(Mon Tong)といふ品種で香港で最も出回つてゐるタイ産。先日のは青尼(Chanee)といふ同じくタイ産。これからマレーシア産の猫山王(Musang King)やD24に上手く出会へるかしら。常温で新鮮なのを頬張るのが格別だが傷みやすいので冷蔵庫に入れるときは強烈な芳香ゆゑパックした上に密封式タッパー「ど」出動となる。

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陳浩基の『13・67』の続き読む。2編目の『囚徒道義』は2003年、九龍に勢力はる2大黒社会の抗争と芸能人アイドル少女殺害の話。当時、暴力団背景にした大手芸能プロダクションに醜聞もあり2003年の春で広東省から香港に拡散した謎の感染症SARS)もあり。さうしたエポックをうまく一つの小説に纏めると陳浩基に関心しつゝ2大暴力団の勢力壊滅のために警察が発端となる事件を仕組むといふのは何うなのかしら。続く3編目『最長的一日』は1997年の6月6日。香港が英国から中国に返還されるまで1ヶ月を切り全編を通しての主人公・關振鐸(高級警司)は55歳で皇家香港警察退職前の最後の日。当時、旺角の繁華街でビルの屋上から腐食性液体が撒かれる事件が話題になつたが、この日、それと同じ事件が中環の市場で起き、朝には危険物運搬のトラックが横転し道路混乱、さらに服役中の黒社会のドン・石本添が腹痛訴へ通院のため移送されたQueen Mary Hospitalから逃走し逃走中に警察と銃撃戦となり……と香港島西は朝から警察は大混乱となる。香港警察一の推理捜査誇る關振鐸・總部刑事情報科B組組長が腐食性液体散布の現場から、この捜査に乗り出すが……といふ、これもよく練られた筋書き。この事件では前2編に見られたやうな警察の無理やりな事件演出こそないが偶然に偶然が、がよくもかう繋がるものだ、と、まぁそれなしには推理小説など成り立たないのだが。この事件を見事に解決した關振鐸は香港警察退職するものゝ、その手腕かはれ約聘顧問といふ形で1997年の香港返還後も香港警察の捜査サポートすることとなり前2編に繋がる。夜になり雷雨。

(1条 憲法を考える:6)加害の歴史、向き合うのは誰:朝日新聞デジタル「贖罪」委ねた今の政治

今月3日の憲法記念日明治大学のホールが約1200人の市民で埋まった。昭和天皇を題材にした連載小説を執筆中の作家高橋源一郎さん(68)が講演し、平成天皇による「慰霊の旅」の理由に言及した。

戦争責任を問われないまま、昭和天皇がやり残したことの贖罪の旅をやってきたのではないか」

戦後70年の節目を迎えた2015年8月15日の全国戦没者追悼式平成天皇は初めて「深い反省」に言及した。慰霊の旅に深い反省。その言動は、政治的権能を持たない象徴天皇としてのぎりぎりのラインのようにみえる。そこから浮かび上がるのは、過去への真摯な反省の言葉を持ち得ていない最近の政治の姿だ。安倍晋三首相は2013年以降の戦没者追悼式で、1993年から歴代の首相が触れてきたアジア諸国への加害責任や「深い反省」に言及していない。

1条は、象徴天皇とは何かを語らない。平成天皇は「祈る」姿を通じて、自ら象徴の姿を示してきた。

だが、1条は国民主権も定めている。「祈る天皇」の退位とともに列島各地に「ありがとう平成」という感謝の言葉が広がった。政治が本来やるべき贖罪を天皇に委ね、安心して過去を忘れたかのようで、国民主権をどう機能させるかという緊張感はうかがえない。

過去から学ぶことの大切さを、高橋さんは講演でこう表現した。「令和が始まったというが、平成が終わったわけではない。昭和も終わってはいない」

陳浩基『13・67』

農暦四月初一。曇。薄ら寒。毎日新聞の読書欄に陳浩基なる香港の推理小説家の『ディオゲネス変奏曲』(稲村文吾訳、早川書房)の評あり。

借りた場所、借りた時間……わたしのような世代の人間には、この言葉はすっかり頭の中に刷り込まれている。ハン=スーインが書いた自伝的小説の中に出てきて、その映画化〈慕情〉でも使われて有名になった、香港という都市を表す言葉である。その言葉が人口に膾炙してから半世紀以上が経過した今、わたしたちが香港に対して抱くイメージは様変わりした。ブルース=リーの出現を契機とした香港映画の隆盛はめざましく、カンフーブームのみならず、1980年以降には俗に香港ノワールと呼ばれる香港製の犯罪映画が流行し、現在に至っている。そして今、わたしたちが受容する香港発の文化に、もうひとつの注目すべき存在が加わった。それは、2017年に翻訳紹介され、ミステリ界の話題をかっさらった『13・67』の著者で、台湾でも活躍中の香港生まれの作家、陳浩基である。

と始まる若島正による書評は、その『13・67』が好評だつた著者の推理小説といふジャンルと香港といふ土地柄を超へた新境地について。香港にゐながらにして陳浩基といふ作家のことも数年前に台湾から火がついたらしい『13・67』といふ小説のことも寡聞にして知らず。小雨のなかジムに行つたついでに誠品書店に寄り中文現代小説の棚で陳浩基を探すが見つからず勘定場で尋ね「在庫あるのでお持ちします」待つて書店をぶらぶらしてゐると『13・67』は壁の大きなベストセラー棚に中文書籍で三番目くらゐに陳列あり。『13・67』は2014年に発売されて和訳が日本で推理小説の賞とり評判となつてゐたやうだが昨年改訂版出たことでリバイバルのやう。そして今年になり刊行の『第歐根尼變奏曲』の二冊贖ふ。

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今年になり誠品書店で購買少なからず先日、数年ぶりで誠品書店の何某会員になつてゐたので9掛はありがたい。午後、沙田からの競馬中継。2レースので予想は確実に的中だつたのに馬券購入で失敗り我ながら集中力のなさに呆れる。『13・67』は前述の書評によれば

六本の中篇を集めた連作警察小説の形式を取り、最初は現代に始まり、最後には半世紀前の「借りた場所、借りた時間」の時代へと逆行していく。この連作集は、ひとつひとつが独立した古典的なミステリとして読めるような体裁を取りながらも、全体として見れば、香港の独特な歴史がくっきりと浮かび上がる長篇小説になるという、気宇壮大な仕掛けがみごとに成功している傑作だった。香港を代表する映画監督の王家衛が映画化権を獲得したというのも、なるほどとうなずける話である。

王家衛の映画完成は5年後か10年後か、またワケのわからぬストーリーなのかしら。この『13・67』のうち最初の、つまり最も現代に近い『黑與白之間的真實』を読む。推理小説なんて日本語でも登場人物の多さや人間関係、経緯などやゝこしいわけで中文でも然り。邦訳がどの程度のものかはわからぬが香港モノなら俗語も含め正字中文の方がよりリアルかもしれない。この一連の話にわたる關振鐸といふ主人公の最期を描く物語。面白いが、こゝの舞台になる或る富豪の殺人事件で証拠不十分の真犯人が最後にしでかす殺人は一寸、無理やりな感あり。それでも李嘉誠ら戦後の香港で成功する富豪や、それを取り巻く人々の半生を劇的に描いてゐるのは確か。