富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦四月初七

快晴。土曜朝恒例でFCCで週末の新聞読みながら珈琲飲む。土曜朝にFCCのラウンジに無聊に寛ぐ御仁はだいたい同じメンツと思ふ。昼に帰宅すると北角から戻つてきた家人が北角街市の路上でインドネシアの鳥料理ランチ買つてきてくれた。粗質の紙を折つたパッケージがステキ。

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これが今どきHK$20ださうで実に美味い。

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午後は沙田の競馬中継を見る。今日はHK Macau Trophy(Class-1芝1400m)ありMission Tycoon(羅厩舎、Moreira騎手)応援したが2番人気の2着で優勝は1番人気のGood Standing(Moore厩舎、Purton騎手)。澳門からは5頭が来たが(今回から大橋を自動車で渡つてきたのか)実力的には香港馬が圧倒的に強いなか今回は澳門馬のPearl Green(単勝44倍)4着に。2004年から続くレースで第1回に澳門馬のCrown's Gift優勝以来ずっと香港馬優勝が続くなか2010年に1度だけ澳門カジノ王 Stanley Ho博士所有のViva Pronto単勝110倍)が優勝(2番人気のYummy Spirits2着で連複でHK$2020配当)といふあばらかべっそんは一度きり。今日もアタシの成績は不調続き。R9(Class-2芝1000m)で7番人気(14頭だて)のSpeedy King(姚厩舎、Chadwick騎手)が気になり5頭まで自分ではしつかりと絞り込め、このSpeedy Kingと1番人気のRefined Treasureをバンカーマルチにして残り3頭に流したところSpeedy Kingが400mからハナをとりRefined Treasureが差すのを鼻差で躱して1着。

穴馬で見事なレース見せる、実にChadwick君らしい騎乗は見事。この記事にある通り本来はK C Leung騎乗予定が水曜日の悪馬場での沙田夜競馬で最終レースでK C Leung騎手最後直線で落馬し軽い脳震盪あり大事をとり今日は休場となりChadwick君に乗り換への由。姚調教師の話として今日はChadwick騎手で斤量113ポンドだつたがLeung騎手だと115磅だつたので、この軽2磅は馬にとつて幸運だつた、と。アタシの三連単は1-2-4着で推定10万円ほどの配当が夢に。最終R10は予想を3頭まで絞りんだら1〜3番人気。面白くないと単勝に選んだ馬は2着で結果この3頭で固い結果となり三連単逃す。競馬むずかしい。HKジョーッキークラブ(HKJC)のアカウントにアタシにしたら現金多過ぎ掛金がつい多くなつてゐるのに我ながら警戒して銀行口座に余剰振替へやうとしたらネットでもアプリでも上手くいかずHKJCから「銀行に問ひ合わせを」と出るので銀行に電話したら問題ない。HKJCに電話すると競馬開催の後だから妬きが回つたパンターからの「勝ったはずの馬券の配当がない!」とか問ひ合わせ多いのか15分も待たされたが電話に出た職員は機転きゝ「銀行口座のカード、更新とかしてゐませんか?」と。確かに去年の末にその通り。銀行口座番号変はらずともカード更新されるとHKJCとのリンクが一旦切れると知る。

▼週末の新聞の読書欄。毎日新聞のほうが朝日に比べ近年興味深いと思ふが今日の土曜朝日の読書欄が面白い(読売は論外)。ロバート=キャンベルさんの谷崎『陰翳礼讃』書評は文章が上手すぎて書評を超へロバート=キャンベル小品になつてゐる。

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文章が上手ければいゝといふものではない。それに対して重田園江の「統計」は実に見事に社会統計の門外漢にまで統計の面白さに興味もたせた上で内容も深い。

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国民国家」といった巨大すぎて漠然とした存在にリアリティを持たせる統計のような技術は、人びとの「生」のすべてを政治と国家の関心事としていく「生権力」の発展とともにある。(フーコーの言説の通り)

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横尾忠則先生も朝日毒書評の常連で週間読書人の連載日記も面白いが最近上梓された『小津安二郎大全』で小津映画の要である原節子について共演した女優たちが語るエピソード以外にもう少し突っ込んだ評論があってもよいのでは?と注文づける。さうかしら。原節子のことを誰が書いても、これまで書かれた原節子伝説の範疇にあると思へば、なくてもいいのでは。さらにもう一編、中川越著『すごい言い訳!二股疑惑をかけられた龍之介、税を誤魔化そうとした漱石』も読んでみたい一冊。よくも文豪たちのかうした言ひ訳蒐集したものである。

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面白いことを書く人、面白い記事はいくつでもあるのだが「不思議な都知事」だつた猪瀬直樹毎日新聞「今よみがえる森鴎外」その②「改元への切実な思い 安普請の天守閣に金の鯱」は面白い。

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鴎外の『元号考』は有名だが猪瀬は鴎外が元号問題託した漢学者で宮内省編集官であつた吉田増蔵のことを書いてゐる。中国ばかりか(日韓は当然として)チベットベトナムまでこれまであつた全ての元号を集め整理し注記までつけた「年号検索」作成したのが、この人。猪瀬はさうした鴎外、この吉田の思ひをかう解釈する。

明治国家は、伊藤博文山県有朋ら維新世代が建設した。鴎外や夏目漱石は貧しい国家が未来を託して海外留学をさせた第二世代であった。建設に加え、リベラルアーツで内装を充実させねばならない。彼らの後につづく自然主義作家たちは明治国家の権威に反撥する。だが家長の鴎外には明治は慌ててつくった安普請の天守閣に見えた。権威は壊すよりつくるほうが難しい。せめて金の鯱にあたる元号ぐらい完璧にしておきたい。それが鴎外の痛切な思いであった。

このあたりが猪瀬節のサビで肝。かういふことをさらりと書かせると本当にお上手。かなり充実した取材スタッフ、編集スタッフのゐる出版事務所の出版物のやうな人である。ちなみに明治は十回、大正は三回過去に元号の候補となり落選。それに対して昭和は初で平成も幕末に慶応となる際の案にあつたといふ。「令和は候補に挙がったことはない」ってそりゃさうだろ、無理やりな国書から。猪瀬はそして最後を「鴎外の意志はこうして結実しているのだと思う」と結ぶ。これが余計。この一文で「猪瀬、此処にあり」の欲が出る。この一文さえなく「令和は候補に挙がったことはない」で結んでおけば含蓄ありで良かつたのに。

▼マハティール首相苦境 多数派マレー系優遇見直し支持率激減……何ともよくわかるところのジレンマ https://t.co/QBasZ9NEJW