富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三三独演会@イイノホール

辰年四月初十。気温摂氏12.8/27.2度。晴。午後神田淡路町。散髪(The Gollum)は刈上げの単発でふだん40分くらゐで済むのだが本日はストレートパーマかけることに。こどもの頃からそれなりにクセのある頭髪なのだがパーマは人生初で興味津々。2時間ほどで終了。丸の内線で銀座。空也。注文してをいた最中を受領。

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銀座サンボアでちょいとひっかけてから電車通り渡つて老舗の蕎麦屋へ。「本日満席」とあり。まだ客のゐる気配もなく一応、覗いてみる。夜の予約が多いので面倒な客は入れぬ手配のやう。相変はらず無愛想なご亭主がこちらピンなので「どうぞ」と入れてくれて入り口に近い席に。


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酒で天種は穴子。もりそば。お運びのお姉さんが蕎麦湯の入つた湯桶を運んできたが湯桶には取つ手があるのに注ぎ口を取つ手かはりに持つてたのにはあばらかべっそん。老舗の暖簾で商売に一寸胡座をかいてゐる感あり。夜の落語までもう少し時間があつたので数寄屋橋サンボアでハイボールを飲む。

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日比谷の市政会館昭和4年竣工から今年でもう95年。日比谷の図書館も美しい。


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内幸町のイイノホールへ。こちらも建替へからもう12年なのだつた。

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かつて東京のホール落語といへば東横名人会かイイノホールだつた。前者は何といつても黒門町の師匠。後者は矢野誠一さんの主宰で昭和37年から。終ぞ来たことがなかつたまゝ。贔屓の三三師匠の独演会。最前列のかなり良い席がとれた。

毎月定例の独演会で今月のネタ下しは〈両泥〉。二人の泥棒が遭遇の滑稽話だが本当に初演なのかと恐れ入谷の鬼子母神。まことに結構な話っぷり。続いて圓朝の怪談話で〈乳房榎ちぶさえのき〉。絵師として活躍せし菱川重信の妻おきせに惚れた浪人・磯貝浪江は重信の弟子となつておきせに近づいた挙句に師を惨殺して……の話を休憩挟んでたつぷり。だがまだ圓朝のこの怪談はそれでもまだ半分のやう。

夫の死のショックで乳の出なくなったおきせの元に、死んだ重信の亡霊が現れ、乳を出す不思議な榎が松月院にあると教え、やがてその榎の乳で育った子・真与太郎は父を殺した浪江を討ち仇を取る。

といふ後半もあり。毎月この三三師匠の独演会を通して聞きたい。やはり落語会でいま最も落語の上手い噺家だらう。

今ではイイノホールから地下の飲食店街を抜け地下鉄(霞ヶ関駅)直結。丸の内線なら東京駅まで行けるが霞ヶ関駅構内を抜けるとイイノホールに近い改札から千代田線、日比谷線を越えて随分と歩く。それなら日比谷公園の傍を歩いた方が丸の内線に近いが千代田線で二重橋駅へ。二重橋駅から東京駅までの無機質な核戦争時のシェルターのやうな地下道を歩いてみたくなつた。常磐線最終の特急に乗り損ね土浦でホームレスしたのが一週間前の金曜晩。本晩は下りの特急がまだあと2本ある余裕で帰宅できた。

(寄稿)李琴峰「隣に暮らす外国人」朝日新聞

政府は今、税金や社会保険料の未納や滞納を理由に、永住資格を取り消せるようにする法改正を検討している。外国人労働者を増やそうとする中で、外国人を「選別」しようという思惑が透けて見える。それを知った時、私は国からこう言われた気がした。「確かにお前を住まわせているが、日本人と同じ生活者だと認めたわけではない。お前はいつまでも日本人より格下だし、国が守るべき対象ではない」と。(略)政府は今、税金や社会保険料の未納や滞納を理由に、永住資格を取り消せるようにする法改正を検討している。外国人労働者を増やそうとする中で、外国人を「選別」しようという思惑が透けて見える。それを知った時、私は国からこう言われた気がした。「確かにお前を住まわせているが、日本人と同じ生活者だと認めたわけではない。お前はいつまでも日本人より格下だし、国が守るべき対象ではない」と。