農暦六月十九日。昨晩見た〈僕はイエス様が嫌い〉について。この映画をアタシに勧めてくれた若い友人のＫ君曰く「ごっこ遊び的な「いのり」が、大切な人との離別という苦難を契機に「信仰」に深化していくという話ではない、キリストが宙吊りにされている結末とすれば、それ自体極めて日本的テーマと言えませんか」と。なるほど。かういふふうに、あの映画作品を見られる感性に惚れぼれ。昨日の建制派による「守護香港」は落雷暴雨で正に「恵みの雨」であつたが民陣が市民デモ開催の今日は快晴猛暑。
香港の逃亡犯条例改正廃案で今後の展開について厳家祺は３つを挙げる。
①林鄭市長辞任
②中共が全人代常委の名を借りて情勢不安定な香港特区に保全を理由に「緊急事態における決定」を施す。
③林鄭市長辞任もなく膠着状態でデモ等続くなか社会は疲弊しつゝも上記②の非常事態化避けるため良識と社会的影響力ある人々が協調して立法会等に参画して民生、民政の改善を図る。
厳家祺であるから③が香港にとつて唯一の出路であり、それが中国に変化を齎すこに期待する。とはいへ②が最も実現の可能性が高いと警告。8月11日であるとか9月11日であるとか30万人規模の解放軍が香港に進入。これは天安門事件とは異なり「無血」であり解放軍はあくまで「秩序維持」のため（の視覚的、精神的圧力）で戒厳令施行やタンクによる武力鎮圧もない。「緊急事態における決定」に基づき幾つかの国内法を香港で実施する。……これは「危言聳聽」（狼が来たぞ）に非ず。2015年6月18日に立法会で否決された行政長官選出方法の見直し案を挙げる。
Imogen Cooper - 富柏村香港日剩
林鄭月娥はこの618否決の最大の利得者なのだ、と厳家祺。もしこの選出方法改定が実現してゐたら今の行政長官は林鄭に非ず曾俊華になつてゐたはず。その林鄭市長が辞任したとして次の行政長官選挙の方法が当然、争議の課題となり普選実施求める世論なら北京は間違つても林鄭辞任させるはずもない。そこで反政府の抗議活動は更に過激化し、それを口実に中央政府は基本法18条*1に基づき緊急事態管制となる。1976年4月5日の（第一次）天安門事件の時も「四人組」の手法は天安門広場で歴史博物館前に停車してゐた一両の自動車を燃やすことで、それが抗議者たちによる仕業として鎮圧に乗り出してゐる。香港でも平和的なデモが続いてゐたところで何かさうした暴力的行為が意図的に画策され、それで警察と市民の抗争が激化すれば、それを口実に中共が介入し一国両制は壽終正寢、世界の金融センターとしての香港が見事に衰落となる。北京は天安門事件の時の反省で絶対に「流血の惨事」は仕掛けない。それでゐて巧妙に香港を中共一党独裁の牢獄に入れることができる。そのような悲惨な未来を避けるために何ができるのか？といへば上述③の方法しかないのだと厳家祺はいふ。
香港的民主，不僅需要抗爭，而且需要智慧。抗爭是後盾，智慧出民主。這就是英國傳統的自由的保守主義，或保守的自由主義精神。1688年英國的光榮革命，使英國走上了民主的康莊大道，2019年的香港「反送中」運動，就是香港的光榮革命。2019年香港的「反送中」運動，也將影響中國大陸內地的14億人，引發中國內地的變革，民主將成為中國不可阻擋的潮流。
民主潮流，浩浩蕩蕩，順之者昌，逆之者亡。21世紀的中國，一定是一個民主、自由、文明、每一個人的人權都得到保障的、現代化的強國。在實現中國民主化的道路上，香港人民幾十年的抗爭付出了沉重的代價，作出了不可磨滅的巨大的貢獻。
厳家祺先生のこの主張かなり理想論のようにも映るが香港の良識ある中道の右派、左派、財界などの立ち位置はかなり収斂してきてゐるのではないか。少なくとも「林鄭ではダメ」「中共の介入も不可」で纏まれると願うのところなのだが……その林鄭市長である。最近のSCMPは林鄭市長に手厳しい。
逃亡犯条例改正でなぜ財界が林鄭市長に協力的ではないのか。この記事は2014年の雨傘運動のときに李嘉誠始め財界人が若者たちに冷静さと香港の安定説いた時のやうな姿勢と比べ、での考察。ちなみに記事中にある2015年10月25日の消された新華通信の配信については、こちら参照。
HK tycoons reluctant to take side amid Occupy turmoil - 富柏村香港日剩
当時はCY梁がいくら不人気でも孤立はしてゐなかつた。今回の条例改正は先ず林鄭市長のスタンドプレーであつたこと（中央政府にとつては緊切の案件に非ず）と、この改正で香港資本の大陸ビジネスにも影響があること。さうした点で一つの情勢改正であれ政治的な判断力欠いたことで林停市長への失望が重なるところ。
といふわけで午後３時からの民陣主催のデモは7月1日以来。それから毎週末に屯門、西九龍、上水、沙田と地方巡業終へ戻つてきたやうなもの。毎度のことだがかうしたパロディや政治風刺は上手い。銅鑼湾のデモ起点にある高士威道（Causeway Rd）はデモ（示威）に捩り高示威道（Go Protest Rd）にされ林鄭正仆街（林鄭バカヤロー街）なんて看板も。777は林鄭市長が選挙委員会で選ばれた際の得票数。選挙の街頭演説で晋三にヤジ叫んだだけで警察に引きずられる日本では、こんな道路標識のパロディだけで犯罪で重罪である。
街頭のあちこちに貼られてゐるポスター「LIAR」（嘘つき）は何かと思ひ、よく見れば林鄭市長（Carrie Lam）の“L”から始まり頭文字で上手くLIARなのかと思つたが警察處處長・盧偉聰（Stephen Lo）、律政司・鄭若驊（Teresa Cheng）と保安局局長・李家超（John Lee）で、そこまで上手くはいかなかつたやう。
デモ行進がヴィクトリア公園を出発する午後３時に合はせMTRで銅鑼湾へ。途中、北角で将軍澳線からの乗り換へ客かなり黒シャツで2003年の50万人デモ彷彿。だがあの時は北角の手前でもう一面の黒で天后はホームからコンコースにデモ参加者溢れ臨時で不停止のまゝ銅鑼湾へ。それに比べると天后も止まるし６月の200万人デモの時など天后も銅鑼湾も陥落で手前の炮台山站が直近だつたのを思へば今日はまだ緩い。銅鑼湾站ももちろん立錐の余地もないほどで地上に出る通路も大渋滞、Hysan Placeは平常通り営業してゐるが、この商場からHennessy Rdへの出口は閉鎖。白色のポロシャツだつたアタシは何だか決まりが悪く無印で黒色のポロシャツ購ふ。無印の試着用の更衣室で店員君に「これに着替へたいのだけど」といふとデモと合点したやうで笑顔で「どうぞ」と。その黒の衣装でHennessy Rdの方に向かふが手前で渋滞。デモがすでに進行してゐて警察が途中からのデモ参加を制限してゐる……といふかつての状況に非ず。デモ行進はしてゐなければ警官の姿も見えず、だが渋滞。何だか全く状況がわからず歩道橋に上がつてみる。
なんだこの光景は……今日は西行き片側３車線とトラム軌道のみの開放と警察が決めてゐたのにすでに全車線、立錐の余地なき人、人、人。デモ行進どころか道路が遠くまで人で溢れ巨大な集会のやう。繋がりにくい須磨帆でRTHKの速報ニュース見るとデモは警察の決めた進行路制限でヴィクトリア公園から未だ出られぬ状態だといふ。
ちょうど銅鑼湾で歩道橋の下で公民党、党首で旧知の梁家傑先生と余若薇女史が二人でデモ行進来るまでで政治談義してゐたので、それを聞く。午後３時半にデモ行進がやつと始まり銅鑼湾で「さぁ、来るぞ」と聞こえてきたのが午後４時。するとHennessy Rdに溢れてゐた市民が「さーっ」と道路を開け、まるでモーゼの出埃及記のやう。かうした即応性、香港は大したもの。
デモ行進の先頭で民陣のJimmy Shum君が爽やかな笑顔は梁家傑先生への挨拶。
Hennessy Rdのデモに入れる参加者が猛暑のなか我慢強く待つてゐる。Hennessy Rdと並行する第二線のLockhart Rdも自動車通行してをらず実質的にデモに開放されてゐるが、それでも第二線を歩くデモ参加者はかなり疎ら。このLockhart Rdもデモで埋まれば100万人、更に第三線、四線となれば200万人だが今日はこの感じだと50万人くらゐ。
今日のデモの終点は湾仔。湾仔のMTR站前で民陣のスポークスマンであるFigo 陳皓桓君笑顔で市民にデモ参加の謝辞、気をつけてお帰りください、今日のデモは此処が終点です、この先は民陣のデモではありません、此処で解散と警察にいはれても路線バスは迂回してをり地下鉄も混雑してゐます、この先に歩行するのは自分の責任で、と上手なコメントにデモ参加者は笑ひながら先へと進む。
この先の右側が香港警察総部。かなり厳重な警備でデモ参加者が外から野次る。じっと忍耐の警察。
7月1日のデモのやうに金鐘が関所。香港政府総部の方に向うデモ参加者は３分の１ほどか。大半はこのあたりでデモ終了。
Pacific Place（太古廣場）は「デモに優しい」で平常通りの営業。デモ参加者も弁へたもので「ここは新鴻基の沙田New Town Plazaに非ず」で「寄らせてゐたゞきます、できるだけご迷惑はおかけしません」で慎み深く静か。何事もかうあるべき。理解と調和。
今日のデモの本来の終点だつた終審法院。デモは湾仔が終点で此処に民陣の代表者らが30人だかで来て612など警察の防暴対応の是非につき独立の法的調査を求めることになつてゐた。此処まで来るデモ参加者は殆どをらず法院の周辺はいつもの日曜のやうに家政婦をするフィリピン人らが憩ふばかり。今日のデモは随分と平和に終はつたもの。だがいつものやうに黒蟻社中が香港警察や香港政府周辺に集まつてをり今日も宵闇の頃からまた騒々しくなるかしら、と思ひつつFCCへ。冷えたジントニック二杯。バーの壁にモニタスクリーン下ろされデモの現場中継。湾仔にはまだまだ行進中の市民。金鐘はHarcourt Rdを黒蟻たちが占拠。かといつて香港政府を取り囲むでもなし香港警察の前もデモでゴールした市民らが見物モード。今日は日本で参院選もあり開票速報見やうと帰宅せねば。
FCCから坂を下り中環でThe Landmarkの方に渡るとタクシー乗り場のところで突然、黒蟻君たちが車道でカラーコーン引き摺りながらタクシーの列に去るやう促しPedder街の入り口を封鎖。
あれよ、あれよといふ間に封鎖完了。あまりの手口の見事さ。何も知らぬ自動車の運転手はThe Landmark側に曲がらうとするが黒蟻の道路封鎖だとわかると「OK」と右折止め皇后大道を直進で、このへんも手慣れたもの。
１時間前は全く平常通りだつた日曜の中環の中心部がいつの間にか黒蟻の群れで占拠されてゐる。
2014年の雨傘は「佔領中環」が念頭にあつたが実際の占拠は金鐘で始まり中環の占拠は実際にはなかつたと思ふと今日、突然の「佔中」が実行されるとは。黒蟻の群れは今日は香港警察も香港政府総部もターゲットではなく予め仕組まれてゐたかのやうに夕方の１時間ほどで中環へ移動。何といふ計画性と統率力。
そして彼らは中環に居座るのかと思へばConnaught Rd Centralを上環の方へ、西へと進む。本来であれば警察が湾仔でデモ終点で道路封鎖はここ迄とし、その先は自動車通行のまゝ、デモ参加者の進行を食い止めるべきはずなのだが今日も警察は全くといつていゝほど姿を見せず、かうした黒蟻社中のデモの先の道路占拠も警察お得意の放置プレイ。Connaught Rdが不通になるとは思つてゐなかつた自動車で渋滞もかなり。黒蟻たちは何処へ向かふのか、Connaught Rd Centralを西行きで上環を過ぎれば西環。そこにあるのは中聯辦なのだ。これまでも「六四反思」だとか普選実現とかで泛民主派の議員や団体が請願で小さなデモで中聯辦に向かふことはあつても実力行使伴ふやうな抗議活動はこれまで一度もなかつたこと。
民陣稱43萬人參與反修例遊行 警稱最高峰13.8萬 - RTHK
昨日の「守護香港」は主催者側発表で31.6万人を警察は10.3万人としたが今日の反政府デモは主催者43万人で警察がこれを10万人以下にすると可笑しいのだけど……13.8万人とは。これまた縁起良い数字を選んでくれたものである。
香港は黒蟻の群れが中聯辦前で悪態をついて狼藉のかぎり。最初は防犯カメラのセンサー部分に黒のスプレーかける程度だつたが正門前から中共の国徴に卵を投げつけ、それが卵から墨汁の入つたビニール袋に代はり国徴が黒く汚れるまでに。
民建聯、工聯會及新民黨等建制議員亦紛紛火速抨擊「挑釁行為等同侵犯一個國家領土尊嚴及向其宣戰」，又指摘有示威人士自行宣布成立「違法的臨時立法會」，是公然破壞「一國兩制」。（信報2019-07-22）
その間、警察は現れもせず一切、制御もせず。この中聯辦の裏が西区警察署なのに、である。建物へのスプレーでの落書きも散々。「Fuck 支那」もあり。中国への軽蔑が支那で香港は支那に非ず、か。だが香港もかつて「南支」に属す。「支那」は差別語となつたが元々は「秦」が謂れのChinaであり支那だと思へば黒蟻が言ふべきか「Fuck中共」であるはずか。黒蟻たちはさんざん暴れ20時すぎに後退を始める。そのまゝ今度はConnaught Rd Cでマカオ行きフェリーターミナル西の中区警察署前。
黒蟻の群れと警方の対峙。だがその間に多くのメディアが陣取り、メディアが最前列で、その後ろにはボランティアのソーシャルワーカーらが警察に過度の武力を使はないやう説得し黒蟻にもつと後退するやう求める。22時くらゐに催涙弾の発射。何度かプラスチック弾やビーンバッグ弾も撃たれたやう。
この抗議活動に関はる黒蟻君の多くは行動追跡できるオクトパスカードの使用厭ふ者多く現金で切符買ふ乗客多し。切符販売機の行列紛らわしく無賃乗車もいけないと切符販売機の上に小銭置く者、また他の抗議者への現金持たぬ場合のカンパで運賃にと現金置く市民もゐるとは。
梁振英譴責示威者塗污中聯辦國徽：暴徒、敗類！ | 立場報道 | 立場新聞
前行政長官の梁“党員”振英が中共の国微を汚されたことで若者たちを国賊のように罵る。まぁわかってたことだが「本性見せたり」である。この国徴であるが中共にとつては本当に大切な神器のやうなもので黒蟻たちが退去し上環で警察の防暴部隊と対峙してゐる頃、中聯辦では30分もかけずに新しい国徴と交換したといふのだから。
もう本日はこれで終はりか、と思つたら元朗で騒ぎ。元朗のMTR站でデモや抗議活動から戻つてきた黒シャツの市民を站で待ちかまへた白シャツの愚連隊が無差別に殴りかかりホームに停車中の列車にまで押し入り殴る蹴るの狼藉。
数十名の重軽傷。この騒ぎの直前に驛舎警邏してゐた警官２人が白シャツ群団が暴れ始めるのを無視して場所を離れてゆき、警察に通報しても警察の到着は遅れ、その警察の対応にも猛烈な非難集まる。また元朗地盤とする民建聯の立法會議員がこの狼藉働いた愚連隊を労ふ画像まで流れる。
抗議活動、警察の対応に加へ今度は白色テロ。もう香港市役所で林鄭市長が何うかう制御できるものではない。そして中聯辦に狼藉働いたことが、何ういふ竹篦返しでくるか。知人の話では黒蟻たちの中には「解放軍が早く出てくればいゝ」とまで宣ふ者もゐるとか。解放軍が出てくれば、市民や世界中で中共に対する非難轟々で香港を利する結果を期待といふところか。それほど容易いものとは思へず。
