富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

雨風と嘯く海に崖の松

fookpaktsuen2016-08-24

農暦七月廿二日。朝五時が日の出ださうで目覚しもつけず五時前に起きてしまふ。さすがに不安定な天候で東灘の水平線に昇る陽こそ拝めずも母と水平線の雲の上に明陽。遠くに雨雲もあるが幸ひ五浦は雨の気配なし。母は二度寝。旅館の屋上に上がり朝日と東光に映える五浦の景観を愛でる。この旅館の南棟からは直接、六角堂を見下ろす場所あり荒波の潮音に心洗はれつゝ暫し佇む。崖の松は長年の荒波ばかりか311の大津波にも耐へ何を語る哉。
雨風と嘯く海に崖の松
朝風呂。昨日とは男湯女湯が替はり南側の今日の風呂からは露天風呂に浸かりつ東灘見下ろす景観。透明プラスチックの塀は邪魔だが。朝食。二度目の風呂。朝九時に退房。常磐線は午前中には運転再開の由。妹の車で宿を発たうとすろと見送りに出た女中……否、服務員が雨風に汚れた自動車の窓まで拭いてくれる心遣ひは正に日本の世界に誇る「お・も・て・な・し」か。宿から自動車で数分の五浦の県立美術館。特別展は近代日本画で興味もなく売店のみ。天心の風呂敷が欲しかつたがあれこれ爆買ひ。店員が天心の風呂敷は新聞で五浦紹介で取り上げて貰つたりで人気で……といふので朝日の夕刊のそれ、書いたのが友人で、と私。あら、さうですか、読者プレゼントのこの天心の風呂敷ね、お一人、此処に応募の葉書を書かれてきた方がゐたんですよ、と。磯原まで上り野口雨情記念館参観。此処も311の大津波で被災。高萩に住まふ父方の叔母宅に十五、六年ぶりに寄りご挨拶。高萩の山間にあるアトリエ小麦といふパン工房に寄りパンをいくつか贖ふ。常磐高速に少し乗り(といつても妹の運転でアタシは寝てゐたが)勝田(現ひたちなか市)日清の沢工場近くにある木挽庵といふ蕎麦屋。来春で十三回忌となる先考が贔屓にした蕎麦屋の一つ。昼酒。水戸駅に寄り台風の影響で本日来水の家人歓迎で水戸警察署に家人連行。運転免許証の更新手続き。真言宗豊山派神崎寺に掃墓。千波のLeblancといふケーキ屋に憩ひ四方山話。ケーキ屋で珈琲が美味い。家人の話では家人一人で運転免許証の更新に来水の折、掃墓のあと先考が「ケーキでも食べよう」と此処に連れてきてくれた、といふ話。水戸駅に家人を送る。一昨日、家人来水の予定が台風でのダイヤの乱れに東京からの往路も未だ運行中だつたが復路確実に不通という前提で手数料無しで払ひ戻しと新宿駅の迅速な判断だつたが切符購入がクレジットカード(大人の休日ビューカード)だつたため払ひ戻し手続きはクレジットカード持参で後日1年以内に何れかの驛で、と家人いはれてゐたが水戸駅みどりの窓口で払ひ戻し手続きするとスムーズにはいかず払ひ戻しは手数料差し引いて、とはれて新宿驛の話ではあれこれと説明し15分ほどかゝり手数料なしで払ひ戻しにはなつたが係員の説明では「乗車変更」ではなく「旅行中止」のはずで新宿驛での切符の上書きが違つてゐたやうで、との事。台風は三日前で、今日の夕方やつと晴れる。駅前で街頭演説は日共の大内くみ子元県議。手を振られて「なんでアタシが在外投票したの、知ってるの?」と思つたら、隣の母と手を振つてゐた。デパート(水戸でデパートといへば泉町に京成百貨店辛うじて一軒)に行き中華料理屋で冷し中華啜る。母を家に先送りして妹に超級銭湯迄車に乗せていつてもらふ。帰宅して晩酌。湯疲れで早寝。

天皇生前退位について内閣法制局等が「将来にわたって生前退位を可能にするためには憲法改正が必要」と指摘してゐる……といふ御説が読売など御用マスコミから流れてゐる(こちら)。これについて南野森先生ら皇室典範の改定で十分といふ反論が早速(こちら)。天皇とは何か。毎日新聞(水説)「キヨッソーネの創作」中村秀明(こちら)。明治帝。わたしたちの知る凛々しく健やかで権威的な明治天皇の肖像写真は創りもの。お上が写真嫌いというのも、恐らく明治天皇の姿をそのまま撮らせないために周囲が作つた話だらう。朝日新聞の記事「天皇と「戦争の歴史」の関係、生前退位で変わるのか」(こちら)。陛下、陛下と呼ぶのが気になる。「天皇」といふだけでも十分に敬称なのだが、天皇と呼ぶことが不敬といふ感覚が築地にもあるのかしら。さまざまな天皇論のなか片山杜秀先生が天皇の行為のうち「国見」について(朝日、こちら)。
天の香具山登り立ち国見をすれば国原は煙立ち立つ (舒明天皇万葉集
の歌から

象徴天皇の行為は一種の国見と切り離せない。そうもとれる。天皇が神性を除かれれば、国民が天皇を一方的に崇敬する構図は成り立たない。残るのは「相互ノ信頼ト敬愛」。自然にできる感情ではない。具体的な行為で作るものだ。国見だろう。象徴天皇とは国見により国民とつながり、国見が困難になれば退位も辞さない。生前の退位となれば天皇の生死と結び付いた神秘化現象も軽減されるかもしれない。先帝の「人間宣言」すなわち「天皇脱神秘化宣言」を完遂しようとする今上天皇の志の表れ。「おことば」は私にはそのような内容を含むものとも思われる。

LGBTであってもそうでなくても、障害があってもなくても、自分たちと性格、嗜好も異なるわが子の存在を受け入れていくのは親にとっては「苦労」がつきものでございます、楽しくもあるのですが……と畏友M記者。御意。NHKに登場した高校生が「実は貧困ではない」といふネットでの炎上、この無責任な放言はもはや驚くでもないが、これに片山が便乗で公儀の代表としてNHKに質す行為に出た。あまりにお粗末な話。