富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

乙女デザイン❤

fookpaktsuen2016-08-25

農暦七月廿三日。朝食の後、母と県立近代美術館。「乙女デザイン」と題した大正から昭和初期のデザイン展が特別展であり夢二とか、さういふ内容と思つてゐたが参観してみると大正からの日本のモダニズム商業デザインの十分なる展示。ことに非水の蒐集は圧巻。この活気的な少女趣味やモダニズムのデザインの隆盛が、その後の昭和の軍国主義に席巻されると思ふと何とも。昭和戦後の1960〜80年代の商業主義デザインの勃興はどうにかさうした崩壊もなく今日に至つてゐるが2020年の東京オリンピックに象徴されるやうに戦後の当時のセンスは今のデザイン界には見当たらず。陋宅に戻り旅荷片付け。昼過ぎの特急ひたちで一路、品川迄一時間半。昼から汽車酒。京急品川驛ホームの驛蕎麦でかけ蕎麦。本来こゝではコロッケ蕎麦を食べるべきだつたか。京急線羽田空港。CXでチェック済ますと職員が飛んできて切符の指示で同伴者と一緒でないと登機できぬ扱ひで、との由、別途で麻布旅寓より空港に向かふ家人待ち。坊主頭の可愛らしい小僧さんたちが野球のユニフォーム姿は中華台北チーム。ラウンジで珈琲を飲みながら離着陸する飛行機をフライトレーダーのアプリで確認しながら遊んでゐたら、このアプリ、今ではシャレで路面の空港車両まで分析とは。CX549便に搭乗。C君が出張だといふF夫妻に家人が搭乗のところで遭遇。機内、今回はかなり別行動だつた家人とあれこれ物語りしつゝ葡萄酒の杯を重ねる。香港に戻り夜中まで旅荷片付け。

小熊英二朝日新聞論壇時評)天皇と「公務」お言葉を受け考える(こちら)。

国民の中には、政治への苛立ちから、天皇に政治的発言を期待する声もある。横田(耕一「憲法からみた天皇の公務そして生前退位」世界9月号)によれば、現天皇憲法順守を表明しているため「歴史認識原発再稼働・改憲問題で天皇に期待する者まで現れている」。だがそうした人は天皇天皇として政治的発言をする前例を作れば様々な方向での政治利用と混乱も招来しかねないことを知るべきだ。
今回のビデオが国の予算で作成され放送を想定して配布されたなら、それは「私的行為」でなく「公務」と考えられる。それに対しては内閣が責任を負っているはずだが、その責任のあり方がみえない。また事ここに至るまで内閣は何をしていたのかという意見もあろう。西村裕一が言うように「宮内庁や内閣の責任追及を可能にするためにもメディアには一連の経緯を検証することが求められ」る。それは日本が国家としての安定と秩序を維持するため欠かせないことであるはずだ。

同じ面に天皇生前退位につき憲法改正は要らないといふ立場で木村草太「生前退位、明確な基準必要」(こちら)。

今回の天皇陛下のお言葉を聞いて国民統合の象徴として「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」を大切にしてきたという高い倫理観に尊敬の念を覚えた。しかし同時に不安も感じた。国民の側から後代の天皇にそうした高い倫理観を期待するようなことになれば天皇にとってあまりにも過大な負担となる。
象徴天皇を維持したいのであれば政治家は天皇の政治利用をしない、国民も過度な期待を押し付けない、そうした慎みが不可欠だろう。

東京新聞(夕刊)の社会時評では吉見俊哉「ポゲモンGOが変える現実」が面白い。日本ではついに自動車運転中のポケモンGO遊びで歩行者が命失ふに至ったが、このポケモンGOで遊びながら何処へでも入つて行つていまふのは「空間の混乱」。日常とは異なる空間の定義を生きる。これは今日に始まったことではなく遠くの人と話す電話は時空の遠近感覚に混乱を生じさせ電話も郵便局からの通話が自宅の玄関、居間、寝室の子機から携帯電話となり、テレビから須磨帆も同様。この1世紀にわたる「遠近法の解体」は遠く離れた他者の声や姿の複製だつたがポケモンGOは「自己の近傍の複製」で現実の空間の中に仮想の風景ができる。かうした疑似体験はディズニーなど自己とキャラクターの関係と似てゐるが少なくても遊園地やファンタジー映画を見る映画館といふ仕切られた空間があつたものがポケモンGO=現在ではその仕切りが失はれ如何なる場所も仮装の風景に変容可能。吉見先生は、もはやこの流れは止まらない、として、少なくてもさうした「風景の仮想化」の技術を大資本のものにせず地方の観光活性化などにとりれるべき……とチョット的外れな?結論。