富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月十六日(月)佛誕。天気予報は雨ながらどうにか保ちそうな天気の気配。Z嬢と久々に二人で山歩きと決まり朝八時半に隧道バスでホンハム站。KCRで大埔墟。亡父の寝室の書棚から何冊か本をもらつて来た一冊の司馬遼太郎街道をゆく 沖縄・先島への道』車中少し読む。1974年の南方諸島の旅行記。あらためてさすが司馬遼太郎の上手さ。何気なく歴史の見直しだの戦争反対だのを散りばめる筆致。だが上手すぎるから、あー面白かった、で終わつてしまひ、日本であれだけ司馬遼太郎が愛読されても司馬遼太郎の思想がconstruction(小文字でね)にならぬこと。烏蚊騰行きのミニバスはかなりの人出でバスも少なく取敢えず大尾督行きに乗り終点から新界タクシーで新娘潭を過ぎ烏蚊騰。晴天猛暑。吊燈籠の嶺を仰ぎながら先週の雨で水豊かに流れる山間の細き渓流愛でつつ今では廃村となつた上苗田、下苗田は住まえば桃源郷のはず。三亜涌まで水音楽しみながら一時間半ほど歩けば目下に印洲塘湾の海が広がる。三亜村まで歩き数軒だけの村落の福利茶室にて豆腐花と豆乳。美味。小高い峠越え新界の最東北の位置する茘枝窩の集落。鶴山寺。山に介り緩やかな坂上ること半時間で分水凹。四年前だかZ嬢と吊燈籠上り藪漕ぎで梅子林の廃村から下ってきたのがこの分水凹。時々重い灰色の雲走るが風に流れずつと晴天に恵まれたが峠越えで少し曇る。谷埔の廃村から沙頭角湾に出る。このあたり山間に土墓多し。いずれの墓も大陸を眺める北陵に位置し香港から帰れぬ遠き故郷を眺め望郷の念か。中英分境の徒花の如き沙頭角の市街の開発まだ続くを遠くから眺める。鶴藪に出て最新鋭のミニバスで粉嶺の聯和墟。肌ぢりぢりと灼く太陽。食の集落・聯和墟で今日の目当ては先日昼時の行列で断念の群記牛肉圓店でまずは清淨牛肉丸。当然美味。これだけ食し次ぎなる目当ては此処も先日通り過ぎて食感ピンときた和泰街聯昌街角のその名もズバリで山東餃子店。一皿六個だというのでそれなら、と店の自慢の山東餃子、羊肉餃子に韮菜猪肉餃子と三皿頼めば餃子の大きさ並ではなし(笑)。だが美味い。店ぢまんの山東餃子だけは奇を衒つて具盛り沢山過ぎていただけず。だが正宗の餃子は実に美味い。鶴藪でバス待ちで飲んだ麦酒とこの店で餃子を肴に更に二罐でかなり酔心地。お薦め……つて粉嶺の聯和墟などあまり行かぬだろうがジャズラーメンだけじやない!である。ミニバスで粉嶺のKCR站に着くと驟雨。KCRの一等席で爆睡でホンハム站。また驟雨。隧道バスで香港島。ジムのサウナに一浴し帰宅。NHKで午後八時になぜか「世界ふれあい街歩き」といふ番組の再放送で香港。中環から西環界隈の散策だがかなり笑える内容。とにかく風水先生に依存しすぎ。かつての総督府中国銀行の新ビル完成で風水が悪くなり一人目(中国銀行ビル完成から一人目)の総督(つまりヨード総督)は亡くなり二人目(ヰルソン総督)は対中国政策で失敗し三人目(パツテン総督)は中国政府の反発かい今は誰も住んでいません、と。ヨード総督の北京訪問中の客死も中国銀行ビル完成での風水が原因だつたとは。で風水が香港にとても大切だそうで中環のエスカレーターで遊んだあとは「そろそろお腹もすいた」と入つた店が中環Jubilee街の金華焼臘店でとびきり美味い叉焼を、はいいのだが「このお店、今年二月に改装したのですが風水を考えて今は大繁盛、でも改装前は信じられないくらいお客さんが少なかったのです」だそうな。「嘘もいい加減にしろっ!」である。改装前の方が明らかに繁盛していたしこの店の評判の白切鶏も昔は美味かつたのが事実。で「叉焼の作り方です」と紹介するのだが何処の家庭で気軽に香港式の直火焼きの叉焼など作れるものか。で中環から皇后大道西(ちなみに日本語読みの場合、余は皇后大道「にし」と呼ぶがNHKは「だいどうせい」であつた)に散策続き次が魚翅(ふかひれ)。上環の魚翅問屋が卸す店は海都海鮮酒家で「なるほど」だが、この店の厨房からも簡単な紅焼魚翅の作り方……っていい加減にしろ。家庭で簡単に出来るなら誰が大枚叩いて料理屋で食すだろうか。海都海鮮酒家といへば鮫の魚翅で思い出したが懐かしきは森首相。南アフリカだか訪問の折に飛行機のテクニカルストップオーバー(成田→香港で必要性もなき給油)で香港立ち寄り当時は豊かであつた外務省機密費で香港総領事が海都海鮮酒家で接待。官官接待の典型。で森君も給油済み香港飛び立つ。この番組、最後の〆は「欲が彼らにエネルギーを与えている香港」「欲をかなえるために生れた風水」だそうな(笑)。番組まとめるためなら嘘八百誤解ふんだんに盛り込むエネルギーのテレビ番組制作で呆れるばかり。NHKニュース10には外相町村君出演。冒頭から満足そうな笑顔で何かと思えば世界中から(イラクだの一部を除く)百何十名だかの大使召還して前代未聞の集会開催し日本の国連安保理入り目指し各国の大使に各地での工作に励むようハッパかけ、それ終わつてのテレビ出演でさすがNHKの報道芸者ぶり。町村君「常任理事国入り目指し各国に駐在する大使に『気合いを入れる』ことが目的」つてイトーヨーカドーの支店長集めての会議ぢやないのだから。スーパーやコンビニの支店長ならともかく特命全権大使。畏れ多くも何の特命かといへば陛下の信任状もつての各国への赴任であり陛下よりの信任状をば当地の元首に奉して全権大使として任に当たる。そりゃ外務大臣からしてみれば我が社の支店長感覚なのだろうが。気合い入れるために世界中から大使集めるとはお気楽もここまで出来るのはさすが小泉政権。飛行機のファーストクラス料金だけでいくら浪費したのだろうか。外務省内でもこの召還はかなり呆れられているそうで有事でも起きれば一大事。だが平気。何故か。テロの脅威、脅威と宣ふ政府が米国にせよ日本にせよ、その政府ぢたいがテロなど勝手に起きぬことを百も承知ゆへの話。ただ呆れるばかり。

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