富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

吉田秀和「私の好きな曲」を聴く


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「港人幸有内地疫苗」つまり「内地のワクチンがある香港市民は幸せ」。世界的にワクチン需要高まるなか内地製のワクチン供給されるのだから中央政府をありがたく思へ、愛国心をもてと大公報。今日から英国の「5+1」の英国居留申請開始で「90後」つまり1990年以降の生まれで修士号、博士号もつ若者が厨房で働く仕事でもと渡英と蘋果日報。 

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茨城県内の公共施設は11都道府県に対する緊急事態宣言に準ずる形での県独自の緊急事態宣言で18日から来月7日まで休館となつたが水戸芸術館はすでに切符販売してゐる催事のみ当日限定会館で実施継続。

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昨年春から演奏家の来演が難しくなるなか「せめて名演をレコオドで聴かうぢゃないか」といふ発案で始まつた「“吉田秀和初代館長の好きな曲”を聴く」が今月はその第2弾で今日は3回目でシューベルトハ長調交響曲(D944)である。コロナ禍でさまざまな活動が消えてゆくなか単にレコオド聴くイベントなのだが、それがあるだけで何とありがたいことか。ATMのコンサートホールに3、40人の聴衆が静かに坐つて開演を待つ。解説は同館音楽部門主学芸員の関根哲也さん。秀和先生の同著ではベルリン・フィルの演奏で古い方がフルトヴェングラー指揮、新しい方がカール=ベーム指揮。今日は冒頭の解説ではベーム指揮のものから抜粋で中入り後の本聴はフルトヴェングラー。同館には秀和先生のレコオドコレクションが多く寄贈されてゐるが、このアルバムに関しては所蔵ないさうで今日のLPは関根さん個人のものださう。

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シューベルトが苦手なわけではない。歌曲も素晴らしい。今朝もNHKラヂオ〈音楽の泉〉でアルペジョーネソナタと〈鱒〉から第4-5楽章を愉しんだ。だがピアノ曲とか聴いて「さぁ終わりか」と思ふと、そこからまた繰返しになつたり主題の変奏や展開があつたり「終はらない」でアタシは食傷気味になりがちなのだが、この大きなハ長調交響曲もアタシは何度か聴いても楽章を入れ替へられてもわからないかもしれない。秀和先生はこの曲の青春の躍動を感じたといふがアタシは何うしても、この曲は「私の好きぢゃない曲」か。だが1951年の伯林で演奏されたといふことに当時のドイツが感じた躍動はあつたのだらう。

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「緊急事態になった」と言うとその真偽を議論する余地が生まれる。だが「宣言を出した」と言われると宣言したこと自体が一つの行為となり、その宣言の内容の真偽は問題でなくなる。緊急事態とは何なのかという問い返しをせずに、そのまま受け入れられてしまう。

その背景には日本人に特徴的な「落としどころを探す」という発想がある。たとえば新型コロナウイルス対策なら経済と医療のはざまに立たされ、その妥協点を見いだそうとする。弁証法のようにAとBという問題に対してCという新たな解決策をつくる西洋的な発想ではなくAとBの中間でどこか折り合えるところを探す。誰もが賛成するのではなく「誰からも文句を言われない」ことを目指す解決法だ。

 
 

農暦十二月十八日


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大公報が叱るのは香港の大律司*1公會の主席・夏博義(Paul Harris)が専業精神と良識、法治の原則を忘れ香港の安定を撹乱する動きに加担してゐる、といふこと。一般論としては個人の人権や言論の自由など普遍的なものがあり、この主席もそれに基づいてゐるだけなのだが中共的にはダメ。蘋果日報は香港で携帯電話実名制実施を報じる。実名制ぢゃなくても通話通信内容などいくらでもトレースできる世の中で今更これに驚かなくなつてゐるのも悲しいこと。両紙とも1面最上段に見出しだけ「中共がBNO旅券を旅行証書として承認拒否」とあり。

BNOは正式にはBritish National (Overseas)で英国海外市民。英国での在留権はなく滞在は6ヶ月迄だつたが英国公民としての権利や領事保護あり。中共への香港返還となるなか1983年にこの旅券の発行が始まり1997年までに340万人が申請だとか。中共の支配受ける香港市民にとつてBNO旅券は身分安全の御守りのやうなもの。実用面では英国に準じての海外のビザ免除あり(現時点で186カ国・地域)*2。それに対してそれに対して1997年からの香港特区旅券も善戦して170は悪くない(中国が74カ国・地域しかビザ免除がないと思へば香港特区がどれだけ優遇されてゐるか明らか)。このBNOに対して英国が中共による香港弾圧への報復としてBNO旅券保持者及び扶養家族に英国で5年の居留許可等の優遇を決定。更に何らかの条件クリアして合法的に1年滞在すれば英国での市民権も得られる(5+1)。それに対して中共がとつたのが今回の措置。かなり深刻な影響出さうだが現実的には香港から大陸との往来は「国内」なので回郷証あればよく香港の出入りは香港の永久居民の場合は香港IDで良いので旅券の提示不要。中共が制する関所でBNO提示することはない。強いていへばフライトは香港からでもHKIDではなく渡航に有効な旅券提示が必要で中共系エアラインがBNOでは搭乗不可とするかもしれないが、これはリスク回避も可能(CXはBNO旅券を理由に搭乗拒否はせぬらしい)。便宜上は今すぐに何か不自由はないだらう。次は香港市民が海外で領事サポート受ける場合に(二重国籍を認めぬ中共の方針で)保護は香港特区旅券保持者に限る、BNOは英国の援助受けろとでも突っ放すのかしら。香港での選挙権剥奪もあるかもしれない。

 

明日で1月もお終ひ。それにしても疫禍で外出自粛とはいへ本当に無聊な毎日が続く。外食は数回さっと昼食はあつたが夜はずっと家にて。1度だけ馴染みの居酒屋で早酒にコップ酒飲んで30分で退散のみ。掃墓と八幡宮参拝が各1。近所のご不幸でご焼香と市立博物館の戦争展見学。病院は内科と歯科が各1で散髪1。遠出といへば正月に笠間に遊んだのと先日の歌舞伎見物だけ。歌舞伎といへば廿七日に楽を迎へた歌舞伎座の一月興行。播磨屋の七段目で途中休演もあつたが由良之助の「うれしそうな顔わいやい」が毎日楽しみだつたと葵太夫さん。

お軽の肩を扇でチョンと叩きトントントン…とよろけるのを踏みとどまって扇をザラリと開き顔の右側にかざし顎を左下にちょっと引いて気味合い。これが「チャン」と独吟二の句のカカリ。〽世にも因果な…」となり、右足を少し引いて扇の骨の間からお軽の様子を窺い、右足を前に出しスンと泣き上げ、気を変える。この「スン」が〽因果〜ツツン」の三味線と大体合っている。

仮に歌右衛門丈ならば「あたしここはお腹で泣いているの。泣ける様なツツンを弾いてちょうだい」とご注文が有りそうな箇所である。おそらく吉右衛門丈もそういうお気持ちで、ここを演じておいでではないかと勝手に想像した。「演じる」と書いたが、吉右衛門丈の境地となると役を「生きる」とした方が適切であろう。義太夫節でも「語らずして語る」という禅問答の様な教えが有るが、眼前現れている〽世にも因果な」がそれなのだと思う。吉右衛門丈の細胞が由良之助の細胞になっている…。晩年の延若丈は一度も平舞台へ降りずに勤めたと聞くが、吉右衛門丈は体調万全ではない中を極力型を変えずいろいろな工夫をなさって勤め上げられた。千穐楽の幕切れはご見物も心の中で「大播磨〜!」と声を掛けておいでの様な拍手であった。

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*1:大律司は英国の司法制度で法廷弁護士(Barrister)のこと。

*2:因みにこのビザ免除だけは日本は190で世界一……日本が世界一なんてこれと長寿くらゐか。

農暦十二月十七日


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土共政党・民建聯の元代表で今は全人代常委といふ中共べったりの譚耀宗。本人も豪州の大学出だが倅らも豪州に永住の豪州籍。本人は中共に忠誠誓ふが実のところ自由な豪州への未練が強い。その譚耀宗の娘婿が豪州で経営する移民コンサルタント会社が中共の「走派」マネー取扱ひでは?と蘋果日報

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香港でも日本のお菓子は大人気だが高い。知己が顔本に載せた画像を借用して見てみると「きのこの山」が19.9香港ドルで268円也。これがイトーヨーカドー価格は159円でアーモンドチョコは198円が21.9ドルで295円もする。香港に空輸される運賃と家賃が加算されるとかうなるのだがさまざまなコストが加算されたものが売れることで経済がまわる。インフレは適度な潤滑油か。

茨城新聞)ごみ処理行政で水戸市が中国・重慶とネットで意見交換(こちら

先日、水戸市が国際での友好交流都市*1である中国の重慶市とゴミ処理事業に関する行政討論会をリモートで開催。大国中国とかつての経済大国日本でも環境問題やゴミ分別などは日本が先輩で中国はまだまだ……といふ印象ありやなしや。その水戸と重慶のやりとりを見て、さうした日本先進神話も崩壊かと理解。全市を上げてファッショのやうなごみ分別事業邁進の水戸。中国も環境問題を考慮したゴミ処理が中国全土で行はれてゐるかといへばまだまだだが重慶でも重点地区*2では徹底したゴミ分別どころか中国お得意のIT化でのシステムがすごいのだといふ。ごみ分別については各世帯に1枚のICカードが配布されスマートごみ箱へのごみ投入ではICカードのコードを読み取りが必要。それがGPS機能でクラウドやモバイルとリンクしてゐるのだといふから。これによりゴミにまで紐づけが行はれ違反すれば誰だかわかるのだから管理社会の怖さもあるが誰だかわからない分別ルールに従はないごみ捨てが防止される利点もある。ごみ分別の実績に応じてポイント付与されポイントがたまれば景品に交換したり有料のゴミ袋と交換できたりするのださうな。かうした社会システムはもはや日本は後進国になつてしまふのかしら。感染対策でも国会の焦点が刑事罰導入の可否であつたり外出や「夜の街」の営業自粛のなか与党議員が銀座のクラブで深夜まで密な飲酒だとか、さういふレベルなのだから「だめだこりゃ」である。

*1:「友好交流都市」は「友好都市」関係とりは格下で重慶市の日本での友好都市は広島市

*2:中国では「経済特区」以来、特定地域で経済や教育、環境など重点政策が徹底。

水府でも雪


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習王曰く「愛国者が香港を治めることで香港が長期的に安定することができる」。これは「長期的には」がミソで現状はマイナス面があつても。いずれにせよ林鄭が一昨年は辞任も仄めかしたが開き直りで強圧的な香港当地に積極的であることへの評価。

習氏、香港国安法を正当化 バイデン米政権を意識 施行後初言及:朝日新聞

習王に失礼な話で中共にとつて香港国安法は正当であつて今更正当化どころではない。蘋果日報の記事は紅磡地区の封鎖で紅磡には大きな葬儀場がいくつもあり日に60ほどの葬儀あり封鎖地域となる付近の葬儀屋は封鎖を前に死装束や台帳など慌てゝ持ち出し。 

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今日の紐育時報で久しぶりに香港ニュースがトップ記事。Hong Kong's First Covid-19 Lockdown Exposes Deep-Rooted Inequality - The New York Times 香港の反民主化ではなく感染でのロックダウン。世界でも有数の富裕都市で香港の特徴は低層階級の貧困。それと感染特定地域を結び付けてゐる。 

▼昨日この日乗で米国の高い感染率ながら社会崩壊せず歴史的株高が何故に?と書いたが紐育時報のこの記事 "Capitalism and Socialism, American-style" by Thomas L. Friedman - The New York Times を読んで思つたのは米国で人口の1割の富裕層が米国株の8割所有してゐるのだから株式市場にコロナ感染など悪影響ないどころか寧ろ投資の重要条件となつてゐるだらう。それにしても、この記事にある“Socialism for the rich and capitalism for the rest”問不発送は興味深い。

本日、水府でやつと雪らしい初雪といひたいところだがみぞれが小一時間あつただけで雨となる。雪を待ち望むなど豪雪の地域からしたら呆れるだらうが茨城は本当に雪が少ないので雪が降るのをどこか期待してしまふ。

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刈番茶


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 香港で特定区域の突発的な「封検」続く。これで感染が抑へられるとは思へない。何ういつた意図があるのか。世界で感染1億人。78人に1人といはれると周囲に誰一人感染者ゐないことが不思議。米国では12.9人に1人となるが、それほどの実感が米国人にあるのか、またそんな感染ぢゃ医療崩壊どころか社会崩壊しさうなのに何故さうならないのか。株価だけ見ても史上最高値。

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久ヶ原T君より京都の柳櫻園の抹茶と、この刈番茶をいたゞいた。封を切るなり独特の強烈な香りが漂ひ煮たてれば何やら漢方でも煎じてゐるやうだが漉して茶となる。どこか性格が悪くなりさうな美味しさ。 


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銀座百点


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大公報が反政府組織で11歳のリーダーが野望陥落と騒ぐのは昨年6月に組織された「天水圍社区関注組」で6名の中心メンバーの平均年齢は13歳で、そこの主席である王君は11歳の小学校6年生。マスク不足時には低層市民へのマスク配給など民生活動続ける。彼の口ぐせは「為民請命堅持至底」。その彼の政治活動が「更生」されることへの体制側の期待。一昨年から民主化運動で小学生や中学生で自分の意思でデモや抗議行動に参加する若者たちはまだ転向はしてゐないやう。蘋果日報が報じるのは九龍東のラグナシティの特定の棟での感染拡大。2003年のSARSでアモイガーデンでの下水道管通じた感染拡大を彷彿。


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久が原T君と話してゐて播磨屋のことである思ひ出を披露したら「まぁ銀座百点にでも書けそうな話」と言はれたら、それは戸板先生のやうな「ちょっといい話」といふこと。良質といふこと。銀座で老舗にゆけば『銀座百点』が置いてある。大阪には鶴屋八幡が出してゐた『あまカラ』があつたが今はない。銀座で六丁目の箸の夏野か八丁目の渡辺版画に寄ると店頭に前月や前々月の号もあつて、それをいたゞいてくる。美味しい話がいくつもあるが今は関容子さんの連載が面白い。先月と今月で團十郎(まだ先代とはいへない)と雀右衛門(こちらはもう先代か)の思ひ出話。成田屋が亡くなる直前までの話。つらいなかに夏雄さんの人間としての素晴らしさが表れる。 

これまで僕は人の命は地球より思いと思っていましたけど、この江戸時代そのままのような舞台に立ったら、作者の黙阿弥という人にはそんな感覚はゼロだったんじゃないか、と思った。もともと人の命なんてはかないもので、死は生のすぐ隣りにある、というのが実感としてわかったんです。

そして京屋。アタシらの世代までは昭和の終はり、京屋の全盛期を見て楽しんでゐる。大成駒がゐて京屋はまだ若いと思つてゐたが実は七十すぎ。それでも楽屋入りは黒の革ジャンだつたとかハーレイダビットソンに跨つてゐたとか京屋神話数知れず。幸四郎Ⅶの娘婿だから團十郎XI、幸四郎Ⅷと松緑が義兄の京屋。戦争から戻つてきて七代目に女方をやれといはれたのだといふ。我童や大成駒を見て努力した勉強家。それにしても、この関容子さんの文章に成田屋と京屋の肖像画があまりに見事。画家は誰?と見てみたら南伸坊画伯であつた。 

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銀座木村屋のあんパンにはほうじ茶が合ふ

播磨屋の七段目


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九龍佐敦で実行された強制封鎖に大公報は春節前に全市民対象の検疫をと叫ぶ。封鎖地区の拡大企図もあるやなしや。


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東京都が出勤削減とテレワーク導入求めてもニュー新橋ビルは世の中忙しくてもヒマでも関係ないテレワークやリモートなんてハイテクからは縁遠さうなオジサンたちが徘徊で結構な密。烏森神社参詣。寒いときは虎ノ門の砂場で温かい蛤蕎麦だねぇと久が原T君と先日呟いてゐたら大阪屋砂場は虎ノ門の再開発で木造の立派な建物こそ残るが道路拡張で曳家実行ださう。それで仮店舗が内幸町から虎ノ門の手前に。浅利を肴に昼酒と蛤蕎麦。


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とてもよい陽気で内幸町から日比谷を歩く。日比谷花壇を眺めT君と思ひ起こすのは我童さん。帝国ホテル抜けて御幸通から線路潜つて銀座へ。昼下がりの喫茶ウエストがかなり空いてゐるとはご時世。かつては路面にあつた東哉が寿司九兵衛の隣のビルに入つてゐた。


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四丁目の交差点の横断歩道、和光の前の地面に白色の花束がいくつも据ゑられ何か交通事故で犠牲者でも?と思つたらこちら。

銀座で托鉢 震災犠牲者を弔い続けた僧侶 新型コロナで突然の死<あの日から・東日本大震災10年>東京新聞

確かに何度もお見掛けした托鉢のお坊さま。合掌。


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歌舞伎座。第二部 <夕霧名残の正月>は藤十郎追悼で鴈治郎(伊左衛門)と扇雀(夕霧)。緊急事態宣言で播磨屋休演もあつたからか余計に客入りは芳しからず。忠臣蔵の七段目は十七日から休演の播磨屋がめでたくも本日より復帰。遊女おかるに雀右衛門。橘三郎(九太夫)と梅玉(平右衛門)。大星役の播磨屋は病ひ明けで手術もしてをり、さすがにセリフに力も入らないが播磨屋の「やはり舞台は良いなぁ」といふ表情の尊顔かうして拝めるだけでも幸ひ。葵太夫さんの義太夫がそれをカバーするやうにハリがある。おかる役で京屋の声のまぁ大きいこと。おかるの置かれた境遇、勘平の死への悲しみを思へば一寸違ふ気がしないでもなし。播磨屋休演の間、代役で大星勤めた梅玉さん本役の平右衛門で溌剌。播磨屋の平右衛門はニンで、それが懐かしい。もう播磨屋の平右衛門は無いであらう、記憶の彼方に。久ヶ原T君に聞いてはゐたが今日の演目での七段目は大星の二度目の出、釣灯籠からで、それにしても幕開けでいきなり晩内と九太夫が大星の錆刀に「さて錆たりな赤鰯、ハハハハハ…」と揶揄いふやゆからで勧進帳の筋なんてしつかり覚へてゐたつもりが、ふと慌てゝ六段目からの流れを脳内で復習。この段はやはり由良之助の茶屋での遊蕩から蛸の場、力弥が密書届けてくれないとノリが悪い。

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芝居なんてフィクションで見てゐればよいのにアタシの悪いところは芝居の展開にリアリズムを考へてしまふところで七段目は殊に「おかる」があの高さから手鏡で何うやつて由良之助への御前からの文を読んで見せるのか。読めるはずもないだろ、で芝居の世界から乖離してしまふ自分が厭らしい。だが、あのおかるの手鏡を使つた所作も先代の京屋だと本当に手紙が見えてしまふくらゐにエビぞつてみせたのが懐かしい。もう四半世紀前?の冬に歌舞伎座で昼夜通しで忠臣蔵があつた。塩冶が梅幸で師直が羽左衛門だつたのだから。


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夕方の銀座を有楽町まで歩き国電で東京駅。電車の時間まではせがわ酒店で酒を一盞。時節柄空いてゐるが少しの酒の注文もQRコードで須磨帆からで店員との接触も限りなくゼロに。別に店員に酔つて話かけるやうな野暮なことはしないアタシだが無機的であんまり。帰宅して今日、久ヶ原T君からいたゞいた伴手禮を開けてみれば京都は柳櫻園のお抹茶で紙のお包みの叮嚀だけでもため息をつくほどありがたい。京都は寺町通で御池から御所まで北にゆつくりと古書肆や道具屋など覗きながら歩いてみたいところ。